2013-01-01から1年間の記事一覧

チェルフィッチュ『地面と床』/死者と生者、格差と戦争

チェルフィッチュの『地面と床』を観た(12月15日 14時/KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ)。 先日F/Tで観た『現在地』は、3.11以降の日本の文脈では極めて selfish と見えたはずの行動やそこから派生した情念を見事に創作へ転化し昇華しえた舞台だった。も…

新国立劇場バレエ「DANCE to the Future 〜Second Steps 〜」/ダンサーたちに生きる糧を与える企画

新国立劇場バレエ団による「DANCE to the Future 〜Second Steps 〜」の初日を観た(12月7日 14時/新国立小劇場)。 バレエ団ダンサーたちの振付による「新しいダンス作品集」。たいへん面白かった。 監修・芸術監督:デヴィッド・ビントレー 照明:鈴木武…

新日本フィル #518定期演奏会/マイヤー&藤村美穂子/沈黙を味わえないサントリーホールの聴衆

新日本フィルハーモニー交響楽団の第518回定演(サントリーホール・シリーズ)を聴いた(11月29日 19:15/サントリーホール)。 #518 定期演奏会【マイヤー&藤村実穂子 最強コンビが贈るドイツ歌劇の真髄】 マルシュナー作曲 歌劇『吸血鬼』序曲 マルシュナ…

新国立劇場オペラ《ホフマン物語》/ポップでアーティスティックなプロダクション/初日の客は反応が悪すぎ

《ホフマン物語》の初日を観た(11月28日/新国立劇場オペラハウス)。 作曲:ジャック・オッフェンバック(1819-80) 指揮:フレデリック・シャスラン 演出・美術・照明:フィリップ・アルロー 衣裳:アンドレア・ウーマン 振付:上田 遙(振付助手:キミホ…

F/T13 チェルフィッチュ『現在地』/スタイリッシュな舞台の裏

チェルフィッチュの『現在地』を観た(12月2日 19:30/東京芸術劇場 シアターイースト)。 作・演出:岡田利規 出演:佐々木幸子、伊東沙保、南波圭、安藤真理、青柳いづみ、上村梓、石橋志保 美術:二村周作 音楽:サンガツ ドラマトゥルグ:セバスチャン・…

F/T13 イェリネク連続上演『光のない。(プロローグ?)』宮沢章夫 演出/イェリネクへの見事な応答/『想像ラジオ』のエコーも

エルフリーデ・イェリネク 作/宮沢章夫 演出『光のない。(プロローグ?)』の初日を観た(11月30日 19:40/東京芸術劇場 シアターウエスト)。 作:エルフリーデ・イェリネク 翻訳:林 立騎 演出/美術:宮沢章夫 出演:安藤朋子 谷川清美 松村翔子 牛尾千…

新国立劇場 演劇『ピグマリオン』

『ピグマリオン』の中日を観た(11月22日 14時/新国立中劇場)。 ごく簡単なメモ。 作:ジョージ・バーナード・ショー 翻訳:小田島恒志 演出:宮田慶子 【キャスト】 石原さとみ 平 岳大 小堺一機 綱島郷太郎 増子倭文江 橋本 淳 春風ひとみ 倉野章子(「…

北とぴあ国際音楽祭2013《フィガロの結婚》/アクシデントが顕在化させた舞台芸術の醍醐味

《フィガロの結婚》を聴いた(11月24日 14時/北とぴあ さくらホール)。 北とぴあ国際音楽祭2013 モーツアルト作曲 歌劇《フィガロの結婚》 セミ・ステージ形式/全4幕/イタリア語上演・日本語字幕付 指揮:寺神戸(てらかど) 亮 アルマヴィーヴァ伯爵:…

F/T13 イェリネク連続上演『光のない。(プロローグ?)』小沢剛 演出・美術/よく分からないが面白い/ゴリラのフラダンサー2人にグッときた

『光のない。(プロローグ?)』の初日・初回を観た(11月21日 14時/東京芸術劇場 シアターイースト)。エルフリーデ・イェリネク作/小沢剛 演出・美術。なんかよく分からないがとにかく面白かった。 分からないまま、経験した事/出来事をメモしてみたい。…

ネルソンス指揮 バーミンガム市交響楽団/ヒラリー・ハーンの完璧な演奏にも頬は弛まず

ネルソンスの指揮およびハーンのヴァイオリンを初めて聴いた(11月21日 19時/東京芸術劇場 コンサートホール)。 指揮:アンドリス・ネルソンス 管弦楽:バーミンガム市交響楽団 ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン ワーグナー:歌劇「ローエングリン」から第1…

ジャン=ギアン・ケラスの J. S. バッハ無伴奏チェロ組曲全曲演奏会/生について深々と内省させるコンサート

ジャン=ギアン・ケラスの J. S. バッハ無伴奏チェロ組曲全曲演奏会を聴いた(11月16日 14時/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル)。ごく簡単にメモする。 無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007 脱力した地点から少しずつ音楽が流れ…

新国立劇場バレエ「バレエ・リュス ストラヴィンスキー・イブニング」/色彩感あふれる『火の鳥』/じつに面白い『アポロ』/前近代的な味わいの『結婚』

新国立劇場バレエのオープニングを飾るトリプルビル「バレエ・リュス ストラヴィンスキー・イブニング――火の鳥/アポロ/結婚」の初日と二日目を観た(11月13日・15日 19時/新国立劇場オペラハウス)。 音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971) 指…

アリベルト・ライマンのオペラ《リア》日本初演/オール日本人キャスト・スタッフによる質の高い上演【追記】

《リア》の最終日を観た(11月10日 14時/日生劇場)。 日生劇場開場50周年記念 特別公演 二期会創立60周年記念公演/読売日本交響楽団創立50周年記念事業 オペラ《リア》日本初演> 全2部 原語ドイツ語上演(日本語字幕付) 原作:ウィリアム・シェイクスピ…

サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ No.36 テーマ作曲家〈細川俊夫〉管弦楽公演

9月7日に書いたような経緯で(ブリテン生誕100年 第529回 読響定演/意欲的なプログラム/災厄と芸術 - 劇場文化のフィールドワーク、サントリー財団によるサマーフェス、細川俊夫の管弦楽作品を中心とした公演を聴くことができた(9月5日19時/サントリーホ…

NODA・MAP 第18回公演『MIWA』

遅まきながら『MIWA』を観た(10月25日 19時/東京芸術劇場 プレイハウス)。 作・演出:野田秀樹 キャスト MIWA:宮沢りえ 赤絃繋一郎(あかいとけいいちろう):瑛太 マリア:井上真央 最初の審判/通訳:小出恵介 ボーイ:浦井健治 負け女:青木さや…

ムーティ conducts ヴェルディ/春祭オケは今回がベスト

春祭の特別公演「ムーティ conducts ヴェルディ」を聴いた(10月30日 19時/すみだトリフォニーホール)。 ごく簡単にメモする。 東京・春・音楽祭 特別公演 ヴェルディ生誕200年記念 ムーティ conducts ヴェルディ 歌劇《シチリア島の夕べの祈り》序曲 歌劇《…

新国立劇場 オペラ《フィガロの結婚》/アンサンブルはよいが、歌の喜びは乏しい/再演演出の品質管理を

《フィガロの結婚》再演の初日を観た(10月20日 14時/新国立劇場オペラハウス)。 ホモキ版《フィガロ》は2003年の初演だが、今回の上演は何度目だろう。 指揮:ウルフ・シルマー 演出:アンドレアス・ホモキ 美術:フランク・フィリップ・シュレスマン 衣…

dancetoday 2013 doublebill 島地保武+酒井はな〈アルトノイ〉& 関かおり/「進化以前」という視点

"dancetoday 2013" ダブルビルの初日を観た(10月18日 19:30/彩の国さいたま芸術劇場 小ホール)。 両作とも、動物から〝進化〟した人間のありようを相対化する視点が感じられた。フロアの穴(奈落)も共通項。前者は異界(黄泉の世界)への入り口? 後者は…

新日本フィル #516 定期演奏会/下野竜也のブルックナー

新日本フィルハーモニー交響楽団の第516回定期演奏会を聴いた(10月13日 14時/すみだトリフォニーホール)。指揮は下野竜也。前半はシューマンのチェロ協奏曲イ短調 op.129。チェロのルイジ・ピオヴァノは、オケの伴奏にも上体を傾け気持ちを合わせる。全体…

新国立劇場ダンスBプログラム「Shakespeare THE SONNETS」再演

中村恩恵×首藤康之の「Shakespeare THE SONNETS」再演を観た(10月9日 19:00/新国立中劇場)。 この日は13時から『エドワード二世』の初日を小劇場で観たのち中劇場へ。 <Bプログラム>Shakespeare THE SONNETS 構成・演出・出演:中村恩恵/首藤康之 振付…

新国立劇場 演劇『エドワード二世』/テンポがよくない

『エドワード二世』の初日を観た(10月9日 13:00/新国立小劇場)。 作:クリストファー・マーロウ(1564-1593) 翻訳:河合 祥一郎 演出:森 新太郎 出演: 柄本 佑/中村 中/大谷 亮介/窪塚 俊介/大鷹 明良/木下 浩之/中村 彰男/西本 裕行/瑳川 哲…

新国立劇場オペラ《リゴレット》新制作/美と醜の同居

2013/2014シーズンの新国立劇場オペラは新制作の《リゴレット》で開幕した(10月3日 19時/新国立オペラ劇場)。 [新制作] Giuseppe Verdi : Rigoletto ジュゼッペ・ヴェルディ/全3幕 【イタリア語上演/字幕付】 スタッフ 【指揮】ピエトロ・リッツォ 【演…

「rendance 世代間の対話」/Whenever Wherever Festival 2013/即興性をめぐって

「rendance 世代間の対話」を観た(10月13日 18:00/森下スタジオ B)。この日は錦糸町で新日本フィルの定演を聴いた後、地下鉄で森下へ。Whenever Wherever Festival は第5回とあるが、見るのはこれが初めて。テーマは「即興の再生」。ダンスというより舞台…

新国立劇場ダンス Aプログラム「小さな家 UNE PETITE MAISON」/人に使用されるアート/「ル・コルビュジエと20世紀美術」展

中村恩恵×首藤康之の「小さな家 UNE PETITE MAISON」を観た(10月4日 19:00/新国立中劇場)。新国立劇場ダンス2013/14シーズンの開幕でもある。 <Aプログラム>小さな家 UNE PETITE MAISON 構成・演出・美術原案:中村恩恵/首藤康之 振付:中村恩恵…

葛河思潮社 第三回公演『冒した者』/須永役の松田龍平が素晴らしい

三好十郎の『冒した者』を観た(9月7日 17時/神奈川芸術劇場 大スタジオ)。いま頃は東京公演(吉祥寺シアター)の中日あたりか。 今回もつい出遅れて、気がついたら〝予定枚数終了〟に。なんとかネットで横浜公演のチケットを入手。この取りにくさは「あま…

ブリテン生誕100年 第529回 読響定演/意欲的なプログラム/災厄と芸術

開演前にアークヒルズで食事をしていたら、細川俊夫氏に遭遇した。せっかくなので、昨年聞いた四つのコンサート(作曲コンクールの講評を含む)への称賛の意と新国立劇場委嘱作オペラ《夜叉ヶ池》のメモと同旨のことを伝えた(新国立劇場オペラ《夜叉ヶ池》…

『ジャンヌ』―ノーベル賞作家が暴く 聖女ジャンヌ・ダルクの真実―

バーナード・ショーの『ジャンヌ』(聖ジョウン)を観た(9月13日 19時/世田谷パブリックシアター)。 ネットで『MIWA』との抱き合わせが入手条件だったため、11月の『ピグマリオン』への前奏と自分に言い聞かせ、見ることに。ただ、終演は22時13分。長かっ…

新日本フィル #514 & #515 定期演奏会―インゴ・メッツマッハー Conductor in Residence 就任披露公演―

新日本フィルの2013/2014シーズン開幕はインゴ・メッツマッハーの〝Conductor in Residence〟就任披露公演となった(9月6日 19:15/すみだトリフォニーホール)。たまたま翌週のチケットを譲り受け、サントリーホール・シリーズも聴いた(9月14日)。 【トリ…

新国立劇場 演劇『OPUS/作品』2013/2014シーズン開幕

昨夜『OPUS/作品』の初日を観た(9月10日 19時/新国立小劇場)。 新国立劇場の2013/2014シーズンは演劇部門で開幕した。本作はシリーズ企画「Try・Angle –三人の演出家の視点 –」の第一弾。 【作】マイケル・ホリンガー 【翻訳】平川大作 【演出】小川絵…

松尾スズキ作・演出『悪霊 −下女の恋−』

『悪霊 −下女の恋−』を観た(8月31日 19時/本多劇場)。 NHKの朝ドラ「あまちゃん」人気で、すっかり株が上がった大人計画/松尾スズキだが、これは松尾の作・演出で1997年に初演し、2001年に再演した芝居の再々演版。広岡由里子だけは不動だが、初演のタケ…