NODA・MAP 第18回公演『MIWA』

遅まきながら『MIWA』を観た(10月25日 19時/東京芸術劇場 プレイハウス)。

作・演出:野田秀樹


キャスト
MIWA:宮沢りえ
赤絃繋一郎(あかいとけいいちろう):瑛太
マリア:井上真央
最初の審判/通訳:小出恵介
ボーイ:浦井健治
負け女:青木さやか
半・陰陽(はん・いんよう):池田成志
オスカワアイドル:野田秀樹
安藤牛乳:古田新太


秋草瑠衣子/秋山エリサ/大石貴也/大西智子/川原田樹/菊沢将憲/木原勝利/河内大和/近藤彩香/佐々木富貴子/佐藤ばびぶべ/佐藤悠玄/ 紫織/下司尚実/竹内宏樹/手打隆盛/土肥麻衣子/鳥居功太郎/中原百合香/西田夏奈子/野口卓磨 深井順子/的場祐太/六川裕史(50音順)


声の出演(50音順)
天海祐希柄本明大竹しのぶ橋爪功/美波


美術:堀尾幸男/照明:小川幾雄/衣装:ひびのこづえ/選曲・効果:高都幸男/
振付:木佐貫邦子/美粧:柘植伊佐夫 /舞台監督:瀬崎将孝/プロデューサー:鈴木弘之
企画・製作:NODA・MAP


主催:NODA・MAP
共催:東京芸術劇場(公益財団法人 東京都歴史文化財団


ツルツルスベスベした舞台。たたみかけるようなスピード感。台詞の意味を聞き取らせることより、エネルギーの放出や交換を優先。言語の意味性はさほど重視されない。かといって、その物質性に重きが置かれているかといえば、そうでもない。たしかに、野田演劇では言葉遊び(pun)が頻出する。その意味では、音声としての言語が露出するとはいえる。だが、「言葉の持つ「ひびき」「におい」「手触り」などを感じとる感情が呼びさまされる」(別役実)ことはほとんどない。というか、そうした方向性とは異なる在り方。野田秀樹は、美術・セットの〝ツルツルスベスベ感〟と相乗させつつ、あくまでも言葉の「表層」で勝負する。今回あらためてそう感じた。小劇場とはいえない834席のプレイハウスでも成立するのは、そのためだろう。つまり、別役的な「等身大の人間から等身大へ」という演劇の「基本的な構図」とは一線を画し、演劇というよりショーのような作劇・演出といえる。
MIWAを演じた宮沢りえには脱帽だ。二時間余りほとんど出ずっぱりだが、ハイテンポの台詞や対話、スピーディな動きを見事にやり遂げた。舞台でのきれいな立ち姿、清新な存在感。大した役者だ。安藤牛乳の古田新太は登場する度に観客を強く惹きつけ、ツボを外さない。赤絃繋一郎に扮する瑛太は怒濤のように進行する舞台で恐ろしく自然な演技。静謐すら漂わせる。物怖じしない井上真央(マリア)も印象的。他の役者たちもみな達者。ただ、負け女の青木さやかは長丁場の公演で喉を痛めたのか、声が届いてこなかった。
両性具有を女優と男優の「二心同体」で演じさせる。意表を突く趣向。人間がこの世に生まれ〝落ちる〟直前に、最後の審判ならぬ「最初の審判」(小出恵介)が〝踏絵〟(男根が描かれている)を用いて性別を決定する冒頭場面もそう。長崎という土地を巧みに喚起。MIWAが歌うときアンドロギュヌス(両性具有者)→安藤牛乳の古田新太が突然顔を出す。MIWAの太い歌声(録音)と古田の太い存在感が妙にマッチし、かなり受ける。アメリカヘーイらが発する「ゲロゲロゲーロ」は痛烈。原爆投下のシーンも野田らしい創意が。池田成志一人二役から生じる〝不都合〟を逆手にとってのギャグ等々。とにかく二時間余り退屈することはけっしてない。ただ、芝居を構成する場面の展開や継続性に創作上の粘りが少し弱まった印象も。選曲はやや平凡か。