新国立劇場 演劇『エドワード二世』/テンポがよくない

エドワード二世』の初日を観た(10月9日 13:00/新国立小劇場)。

作:クリストファー・マーロウ(1564-1593)
翻訳:河合 祥一郎
演出:森 新太郎
出演:
柄本 佑/中村 中/大谷 亮介/窪塚 俊介/大鷹 明良/木下 浩之/中村 彰男/西本 裕行/瑳川 哲朗
石住 昭彦/下総 源太朗/谷田 歩/石田 佳央/長谷川 志/安西 慎太郎/小田 豊/原 康義


美術:堀尾 幸男
照明:中川 隆一
音響:藤田 赤目
衣裳:西原 梨恵/ヘアメイク:佐藤 裕子
演出助手:城田 美樹
舞台監督:大垣 敏朗

うーん、あまりノれない。テンポがよくない。もっときびきび感がほしい。まったりすると、中途半端に内面性が出てしまい、マーロウ的とはいえない。
金箔を貼ったようなセットは黄金=欲望の根源ということ? 舞台前のカーテンを効果的に使用。音楽はフリージャズっぽく、現代的。これは悪くない。
脱力系の江本佑(エドワード二世)はそれなりに面白いのだが、全体のなかでどうなのか。王妃中村中は声が好いし(アルト)、正統的。バランスは? ギャビストン役(下総源太朗)はエドワード王と同世代にすべきだったのでは。男色のシーンはウケ狙いに見えたが外してないか。これもテンポと無縁ではないかも。カンタベリー大司教・ガーニー等役の石住昭彦とライトボーン等に扮した西本裕行の演技はこちらの身体に食い込んできた。

マーロウの芝居を初めて見たのは演劇集団円による『マルタ島ユダヤ人』(1990年/東京グローブ座)。このとき翻訳・演出の安西徹雄シェイクスピアの『ヴェニスの商人』と並行上演し、両者の作風の違いを際立たせる面白い試みだった(バラバス/シャイロックを演じたのはもちろん橋爪功)。『マルタ島』のドタバタ的なダイナミズムに比して、『ヴェニス』の方はいかにも穏やかでスタティックな印象だった。前者は外面的(必ずしも悪い意味ではない)で、後者はきわめて内面的。33年前だがいまでもはっきり覚えている。それだけ舞台に力があったのだろう。次に見たのはそれから30年後、蜷川幸雄が演出し今回同様 河合祥一郎翻訳の『ファウストの悲劇』(2010年/シアターコクーン)。例によって外連味たっぷりの大がかりな舞台だったが、マーロウへの印象は基本的に変わらない。
先に記した注文はこうした〝先入観〟のせいかも知れない。マーロウの作風など意に介さない観客はどう見たのだろう。あのゆるいテンポは公演回数を重ねれば変わっていくのか。