[その他]4月のフィールドワーク予定 2024+感想メモ

先月は3公演のみでゆっくり本が読めた。今月はオペラ(コンサート形式)2、コンサート2,演劇3,バレエ2の全9公演。

あるきっかけで松下竜一の『狼煙を見よ——東アジア反日武装戦線〝狼〟部隊』(1986)を読み、芋づる式に、同じ松下の『豆腐屋の四季——ある青春の記録』(1968)『ルイズ——父に貰いし名は』(1982)『久さん伝——あるアナキストの生涯』(1983)、さらに鎌田慧の『大杉栄——自由への疾走』(1997)等々、アナキスト関連を読み継ぐことに。大杉の評伝は長年の〝積ん読〟からやっと救い出せた。その間、美術館から取り寄せた林倭衛と望月桂の画集でその画業を賞翫。林の作品は洲之内徹『気まぐれ美術館』の「出獄の日のO氏」に纏わるエピソードから馴染みはあったが、同じ長野の〝民衆画家〟望月桂については知らなかった。東京美術学校藤田嗣治岡本一平らと同級の望月は、当時、アナキストの大杉や和田久太郎を助けていたという。小松隆二の『大正自由人物語——望月桂とその周辺』(1988)も読まなくては。《ローエングリン》がらみで合間に読んだベディエ編『トリスタン・イズー物語』は面白かった。その〝芋づる〟も延びそうになったが自制。先月は永井潔アトリエ館で絵画を見た後、とても美味しいランチを賞味した。永井潔は劇作家の永井愛の父。永井さんと芝居の話をした。後で入手した『永井潔画集』(1994)の文も興味深い。潔の師で晩年の肖像を描いている硲伊之助は、林倭衛と共に欧州へ渡った仲らしい。…キリがないからこの辺で。

今日はこれから春祭の『指環』ガラを聴きに上野へ。花見客で混んでるだろうな。

7日(日)15:00 東京・春・音楽祭 The 20th Anniversary ワーグナーニーベルングの指環』ガラ・コンサート/舞台祝祭劇『ニーベルングの指環』より 序夜《ラインの黄金》より第4場「城へと歩む橋は……」〜 フィナーレ/ヴォータン:マルクス・アイヒェ(バリトン)/フロー:岸浪愛学(テノール)/ローゲ:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)/フリッカ:杉山由紀(メゾ・ソプラノ)/ヴォークリンデ:冨平安希子(ソプラノ/ヴェルグンデ:秋本悠希(メソ・ソプラノ)/フロースヒルデ:金子美香(メゾ・ソプラノ)//第1日《ワルキューレ》より第1幕 第3場「父は誓った 俺がひと振りの剣を見出すと……」〜第1幕フィナーレジークムント:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)/ジークリンデ:エレーナ・パンクラトヴァ(ソプラノ)//第2日《ジークフリート》より第2幕「森のささやき」〜フィナーレ 第2場「あいつが父親でないとは うれしくてたまらない」―森のささやき,第3場「親切な小鳥よ 教えてくれ……」〜第2幕フィナーレジークフリート:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)/森の鳥:中畑有美子(ソプラノ)//第3日《神々の黄昏》より第3幕 第3場ブリュンヒルデの自己犠牲「わが前に 硬い薪を積み上げよ……」ブリュンヒルデ:エレーナ・パンクラトヴァ(ソプラノ)/指揮:マレク・ヤノフスキ/管弦楽NHK交響楽団(ゲスト・コンサートマスター:ウォルフガング・ヘントリヒ)/音楽コーチ:トーマス・ラウスマン/合唱:東京オペラシンガーズ/主催:東京・春・音楽祭実行委員会/共催:NHK交響楽団/後援:ドイツ連邦共和国大使館、日本ワーグナー協会 @東京文化会館

↑《ラインの黄金》第4場〜フィナーレ

ヴォータンのマルクス・アイヒェは立ち姿から想像した通りの歌唱。先週の春祭《トリスタン》でクルヴェナールを歌ったのか。なるほど。もっと聞きたかった。ローゲのヴィンセント・ヴォルフシュタイナーはジークムント+ジークフリートも歌う。フリッカの杉山由紀はちゃんと夫のヴォータンに向けて歌った。なかなかのもの。ラインの娘は新国立劇場合唱団の三名。バックステージの歌唱は前方シモテ寄りから聞いたせいか響きがいまひとつ。

ワルキューレ》第1幕第3場「父は誓った…」〜フィナーレ

ジークムントのヴォルフシュタイナーが「父は誓った」を歌い始め、やがてジークリンデのエレーナ・パンクラトヴァがシモテから登場。すでに楽劇の世界へ入っている。7年前ペトレンコ指揮バイエルン国立の《タンホイザー》でヴィーナスを歌ったが、今回は感触が違う。役が違うとしても歌唱が柔らかくなった。ジークムントが歌う時オケのみの時、〝受け〟のあり方が素晴らしい。その身体を通し音楽のドラマが見えるよう。エレーナの歌+演技がヴォルフシュタイナーを引き込み劇が立ち上がった。ジークリンデ「誰か出て行った?」/ジークムント「出ていった者はないが、入ってきた者がいる。…春の訪れ!」そして「春の賛歌」を歌うヴォルフシュタイナー。実に巧みな作劇だ。アリアというより歌曲の趣き。ジークムントが名乗り、ヴォータンがトネリコの幹に差したという剣を引き抜き、それをノートゥングと名付け、最後にジークリンデが自分の本名を名乗る。固有名に拘るワーグナー。面白い。

20分の休憩後《ジークフリート》第2幕 第2場 森のささやき、第3場「親切な小鳥よ、教えてくれ…」〜幕フィナーレ

ジークフリートは森が囁く中、未知の母を牝鹿に譬え、男の子を産むと人間の母親はみんな死ぬなら悲しいなどと歌う。自分を産んだあと母が死ぬのはトリスタンと同じだ。森の鳥の中畑有美子はカミテ2階から囀った。《ジークフリート》は全部聞くとタフだけど(ワーグナーはどれもそうだが)森の自然を髣髴させるこの場面は美しい音楽が満載で、ほっと一息付ける。

《黄昏》第3幕 第3場 ブリュンヒルデの自己犠牲

当初パンクラトヴァは一人歌いのせいかジークリンデほどの没入感はなかったが、次第に乗ってきた。高音も綺麗。人間でないブリュンヒルデは(父ヴォータンに神聖を奪われたとはいえ)もっと強度があってもいいか。グラーネに乗り燃え上がる薪の中へ飛び込むくだりの後、立ち姿と動作でドラマを持続させる。ハーゲンの「指環から手を引け!」の箇所で不在のハーゲンを補うように彼女は左手を掲げ、指に嵌まった指環を見る。「愛による救済の動機」が何度か奏されるが、この音楽のために全てがあるといいたいほど美しい調べ。6台のハープも全開だ。終曲後の沈黙を客席はしっかり守った。

45分+45分のコンパクトな『指環』。少し物足りないがワーグナーの音楽を楽しめた。指揮のヤノフスキはこれまでのあまりに〝男性的〟な音楽づくりにやや閉口したものだが、久しぶりに聴くとそうでもなかった。年齢とともに変わってきたのか。4/8 のツイートに加筆修正。

8日(月)19:30 青年団 第99回公演 こまばアゴラ劇場サヨナラ公演『S高原から』作・演出:平田オリザ/出演:島田曜蔵 大竹 直 村田牧子 井上みなみ 串尾一輝 中藤 奨 倉島聡(体調不良のため休演)→永山由里恵 南波 圭 吉田 庸 木村巴秋 南風盛もえ 和田華子 瀬戸ゆりか 田崎小春 松井壮大 山田遥野/舞台美術:杉山 至/舞台監督:中西隆雄/照明:西本 彩/衣裳:正金 彩 中原明子/宣伝美術:kyo.designworks/票券:服部悦子/制作:金澤 昭 @こまばアゴラ劇場

13日(土)13:00 新国立劇場演劇 プログラムA デカローグ1&3 原作:クシシュトフ・キェシロフスキ/クシシュトフ・ピェシェヴィチ/翻訳:久山宏一/上演台本:須貝 英/演出:小川絵梨子/上村聡史/美術:針生 康/映像:栗山聡之/照明:松本大介/音楽:阿部海太郎/音響:加藤 温/衣裳:前田文子/ヘアメイク:鎌田直樹/演出助手:長町多寿子/西 祐子・中嶋彩乃/舞台監督:濵野貴彦/清水浩志/総合舞台監督:齋藤英明/デカローグ1「ある運命に関する物語」出演:ノゾエ征爾 高橋惠子 亀田佳明 チョウ ヨンホ 森川由樹 鈴木勝大 浅野令子 石井 舜 木下希羽 関 大輝//デカローグ3「あるクリスマス・イヴに関する物語」出演:千葉哲也 小島 聖 亀田佳明 ノゾエ征爾 浅野令子 鈴木勝大 チョウ ヨンホ 森川由樹 関 大輝 木下希羽 @新国立小劇場

18日(木)19:00 東京・春・音楽祭 R.シュトラウス:歌劇《エレクトラ》op.58全1幕(演奏会形式/字幕付)指揮:セバスティアン・ヴァイグレエレクトラ(ソプラノ):エレーナ・パンクラトヴァ/クリテムネストラ(メゾ・ソプラノ):藤村実穂子/クリソテミス(ソプラノ):アリソン・オークス/エギスト(テノール):シュテファン・リューガマー/オレスト(バス):ルネ・パーペ/第1の侍女(メゾ・ソプラノ):中島郁子/第2の侍女(メゾ・ソプラノ):小泉詠子/第3の侍女(メゾ・ソプラノ):清水華澄/第4の侍女/裾持ちの侍女(ソプラノ):竹多倫子/第5の侍女/側仕えの侍女(ソプラノ):木下美穂子/侍女の頭(ソプラノ):北原瑠美/オレストの養育者/年老いた従者(バス・バリトン):加藤宏隆/若い従者(テノール):糸賀修平/召使:(新国立劇場合唱団)前川依子,岩本麻里,小酒部晶子,野田千恵子,立川かずさ、村山 舞/管弦楽読売日本交響楽団/合唱:新国立劇場合唱団/合唱指揮:冨平恭平 @東京文化会館

20日(土)13:00 新国立劇場演劇 プログラムB デカローグ2&4 演出:上村聡史 デカローグ2「ある選択に関する物語」出演:前田亜季 益岡 徹 亀田佳明 坂本慶介 近藤 隼 松田佳央理/デカローグ4「ある父と娘に関する物語」出演:近藤芳正 夏子 亀田佳明 益岡 徹 松田佳央理 坂本慶介 近藤 隼 @新国立小劇場

23日(火)19:00 B→C バッハからコンテンポラリーへ 261 阪田知樹(ピアノ)J. S. バッハ:協奏曲 ニ短調 BWV 974から「アダージョ」/J. S. バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV 971/ブゾーニ:《エレジー集》から「イタリアへ!」/リスト:BACHの主題による幻想曲とフーガ/ブゾーニ/偉大なるヨハン・ゼバスティアンによる小ソナチネ/フィニッシー:我ら悩みの極みにありて(1992)/ビューロー/リスト編:ダンテのソネット《いと優しく、いと誠実な》/ルーザス:ピアノ・ソナタ第1番《ダンテ・ソナタ》(1970)/ペソン:《判じ絵、ローマ》から「ペンナを読んで」(1991〜95)/アイヴズ:スリー・ページ・ソナタ東京オペラシティ リサイタルホール

24日(水)19:00 N響 #2009 定演〈B-1〉シューマン:歌劇「ゲノヴェーヴァ」序曲/シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 作品129/シューマン交響曲 第2番 ハ長調 作品61/指揮:クリストフ・エッシェンバッハ/チェロ:キアン・ソルターニサントリーホール

27日(土)14:00 新国立劇場バレエ『ラ・バヤデール』振付:マリウス・プティパ/演出・改訂振付:牧 阿佐美/音楽:レオン・ミンクス/編曲:ジョン・ランチベリー/美術・衣裳・照明:アリステア・リヴィングストン/照明:磯野 睦/[主要キャスト]ニキヤ:小野絢子/ソロル:福岡雄大/ガムザッティ:直塚美穂/ハイ・ブラーミン(大僧正):中家正博/黄金の神像:奥村康祐/ラジャー(王侯):趙 載範/マグダヴェヤ:福田圭吾/つぼの踊り:渡辺与布/影の王国 第1ヴァリエーション:五月女 遥/第2ヴァリエーション:池田理沙子/第3ヴァリエーション:飯野萌子/指揮:アレクセイ・バクラン/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

28日(日)18:30 新国立劇場バレエ『ラ・バヤデール』ニキヤ:米沢 唯/ソロル:渡邊峻郁/ガムザッティ:木村優/ハイ・ブラーミン(大僧正):中島駿野/黄金の神像:木下嘉人/ラジャー(王侯):中家正博/マグダヴェヤ:上中佑樹/つぼの踊り:原田舞子/影の王国 第1ヴァリエーション:花形悠月/第2ヴァリエーション:金城帆香/第3ヴァリエーション:吉田朱里新国立劇場オペラハウス