新日本フィル #516 定期演奏会/下野竜也のブルックナー

新日本フィルハーモニー交響楽団の第516回定期演奏会を聴いた(10月13日 14時/すみだトリフォニーホール)。指揮は下野竜也

前半はシューマンのチェロ協奏曲イ短調 op.129。チェロのルイジ・ピオヴァノは、オケの伴奏にも上体を傾け気持ちを合わせる。全体的に淡彩のような趣きで、突出した音量があるわけではないが、音楽的には悪くない。アンコールで、オケのチェロセクション六人とのアンサンブルを選んだのは象徴的。曲は山田耕筰(Roberto Granci 編曲)「あかとんぼ」チェロ四重奏版。とても美しいハーモニー。ピオヴァノは、ソロよりもアンサンブルの方が合っている。

後半はブルックナー交響曲第6番イ長調。あまり聞く機会はないが、なかなか面白い曲。至る所にブルックナー節が。第一楽章はスポーティに思い切り鳴らす。もっとオルガンのようなふっくら感があってもよい。第二楽章のアダージオは弦の響きが充実していた。第四楽章でヴァーグナーの《トリスタンとイゾルデ》と似たようなフレーズが聞こえてきた。下野の指揮はメリハリがあり明確だが、その先に、コントロールできないなにかを現出させるような構えが欲しい。
総じて日本の指揮者は少し振りすぎのように感じる今日この頃。指揮の〝かたち〟よりオケが作り出す音楽の方が何倍も重要だという、ごく当たり前のことが忘れられていないか。