2012-01-01から1年間の記事一覧

東京芸術劇場・テルアビブ市立カメリ・シアター国際共同制作『トロイアの女たち』/異文化の融和/言語的対話の不在

(舞台を見ても、そのメモをアップできないでいる公演がかなり溜まってしまった。気になりながらも、あっという間に年の瀬だ。せめて『トロイアの女たち』だけでもアップしておきたい。) 蜷川幸雄演出の『トロイアの女たち』を観た(12月13日/東京芸術劇場…

新国立劇場バレエ『シンデレラ』全3キャスト/清新に蘇った振付・演出/米沢唯によって生きられたシンデレラ/本島美和の成長した仙女に感動

新国立劇場バレエ『シンデレラ』を全3キャストで観た(12月15日/16日/18日)。 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ 振付:フレデリック・アシュトン 監修・演出:ウェンディ・エリス・サムス 美術:デヴィッド・ウォーカー 照明:沢田 祐二 指揮:エマニュエ…

コリン・カリー・グループ:ライヒ《ドラミング》ライヴ Steve Reich's DRUMMING/果てしない反復の果てに微かな変化=希望が/日本の若者気質との親和性?

コリン・カリー・グループによるライヒの《ドラミング》他を聴いた(12月5日/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル)。 スティーヴ・ライヒ作曲: 「クラッピング・ミュージック——2人の手を叩く奏者のための」(1972) 演奏者:スティ…

新国立劇場オペラ《セビリアの理髪師》/音楽的求心力が不十分/カーテンコールは舞台と客席の対話である

新国立劇場オペラ《セビリアの理髪師》の再演を観た(12月1日)。初日はハーディング指揮の新日本フィル公演と重なったため、エクスチェンジサーヴィスでこの日に変更。 【指揮】カルロ・モンタナーロ 【演出】ヨーゼフ・E ケップリンガー 【美術・衣裳】ハ…

新日本フィル定期演奏会 サントリーシリーズ 室内楽のようなチャイコフスキー/『ハルサイ』は瑞々しいが

新日本フィルハーモニー交響楽団の第501回定期演奏会を聴いた(11月28日/サントリーホール)。 指揮はダニエル・ハーディング。曲目は、チャイコフスキーの交響曲第4番 ヘ短調 op.36と、ストラヴィンスキーのバレエ音楽『春の祭典』。コンマスは崔文洙。 前…

新国立劇場 DANCE PLATFORM 2012 Aプログラム/ダンサーの質は高いが振付にはバラツキが

「DANCE PLATFORM 2012」のAプログラムを新国立小劇場で観た(11月30日)。 演出・振付:キミホ・ハルバート 音楽:M.ラヴェル、Fred Malle、小瀬村 晶 ほか 照明:足立 恒 衣裳:荻野 緑 音響:黒野 尚 舞台監督:堀尾 由紀 出演: 「skin to skin」平原慎太…

川村毅『4four』/新たな試みは歓迎したいが/モノローグとダイアローグの虚構性/決めきらないのは演出の不徹底では

『4four』の初日をシアタートラムで観た(11月5日)。 あれから三週間も経ってしまった。その後、刺激的な舞台が目白押しで、つい、そのままに。遅ればせながら、ごく簡単なメモを記す。 作:川村毅 演出:白井晃 美術:松井るみ F:池田鉄洋 O:田山涼成…

F/T12 イェリネク『光のない。』"Kein Licht."/異和感と強度/シンポの社会学者に唖然

イェリネク作『光のない。』の舞台上演を観た(11月17日/東京芸術劇場プレイハウス)。・・・やはりメモしておく。 作:エルフリーデ・イェリネク 翻訳:林 立騎 演出:三浦 基(地点) 音楽監督:三輪眞弘 美術:木津潤平 出演:安部聡子、石田 大、窪田史…

マリインスキー・バレエ『アンナ・カレーニナ』/ドラマは立ち上がらず単調/タイトルロールに問題が

ラトマンスキーが振り付けたバレエ『アンナ・カレーニナ』を観た(11月22日/東京文化会館)。 音楽:ロジオン・シチェドリン 振付:アレクセイ・ラトマンスキー 音楽監督:ワレリー・ゲルギエフ 装置・衣装デザイン:ミカエル・メレビー ビデオ映写:ウェンドー…

モリエール台本 音楽付きコメディ《病は気から》北とぴあ国際音楽祭2012/楽しい!/歌手も役者も水準が高い

モリエールの音楽付きコメディ《病は気から》を観た(11月23日/北とぴあ・さくらホール/セミ・ステージ形式/歌詞原語・台詞日本語上演/日本語字幕付き)。北とぴあ国際音楽祭は低料金で水準の高い舞台を提供してくれる。昨年の《コジ・ファン・トゥッテ…

F/T12 イェリネク『光のない II —エピローグ?』 ツアーパフォーマンス/新橋からフクシマを視る/充実した演劇体験

『光のない II —エピローグ?』を観た(11月10日/新橋駅周辺)。というより聴いた、もしくは参加したというべきか。 作:エルフリーデ・イェリネク 翻訳:林 立騎 構成・演出:高山 明 写真:土屋紳一 舞台監督:清水義幸(カフンタ) 装置:江連亜花里(カ…

新国立劇場オペラ 《トスカ》低血圧な音楽作り

プッチーニのオペラ《トスカ》の再演を観た(11月11日)。ごく簡単にメモしたい。 【指揮】沼尻竜典 【演出】アントネッロ・マダウ=ディアツ 【美術】川口直次 【衣裳】ピエール・ルチアーノ・カヴァロッティ 【照明】奥畑康夫 【トスカ】ノルマ・ファンテ…

F/T12 『レヒニッツ(皆殺しの天使)』"Rechnitz (Der Würgeengel)"/音楽としての演劇/硬直した倫理の壁を打ち破る【追記アリ】

イェリネクの『レヒニッツ(皆殺しの天使)』を観た(11月9日/東京芸術劇場プレイハウス)。 作:エルフリーデ・イェリネク Elfriede Jelinek 演出:ヨッシ・ヴィーラー Jossi Wieler 舞台美術/音楽:アンヤ・ラベス Anja Rabes 音楽:ヴォルフガング・シ…

新国立劇場バレエ『シルヴィア』/驚嘆すべき米沢唯/相手を誠実に受けとめる菅野英男/安定した佐久間・チー組/貧弱な販売プログラム

バレエ『シルヴィア』の3キャストすべてを観た(10月27日/11月2日/3日)。 11月2日 家庭教師/シルヴィア:佐久間奈緒 召使い/アミンタ:ツァオ・チー 伯爵/オライオン:厚地康雄 庭師/エロス:福田圭吾 伯爵夫人/ダイアナ:本島美和 ゴグ:野崎哲也 …

新国立劇場 演劇『るつぼ』/前半は総じて芝居臭い/プロクター夫妻の最後のやりとりは見応えが/【追記】追加場面「第2幕 第2場」について

今日アーサー・ミラーの『るつぼ』を新国立小劇場で観てきた(11月1日 13時)。 翻訳:水谷八也 演出:宮田慶子美術:長田佳代子 照明:中川隆一 音響:長野朋美 衣裳:加納豊美 ヘアメイク:川端富生 歌唱指導:伊藤和美 演出助手:渡邊千穂 舞台監督: 堀 …

能「隅田川」+教会オペラ《カーリュー・リヴァー》/ブリテンの教会寓意劇とその原作を連続上演/充実した希有な企画

能の「隅田川」とベンジャミン・ブリテンの教会オペラ(教会寓意劇)《カーリュー・リヴァー》を東京藝術大学の奏楽堂で観た(10月28日)。《カーリュー・リヴァー》はブリテンが日本訪問時に観た能の「隅田川」に触発され作曲した作品。プログラムによれば…

新国立劇場バレエ『シルヴィア』初日/はからずも小野の非凡さが/音楽(指揮者)は物足りない

新国立劇場でビントレーのバレエ『シルヴィア』初日を観た(10月28日)。まずは簡単なメモから。 音楽:レオ・ドリーブ 振付:デヴィッド・ビントレー 美術:スー・ブレイン 照明:マーク・ジョナサン 庭師/エロス:吉本泰久 伯爵夫人/ダイアナ:湯川麻美…

新日本フィル定期演奏会 トリフォニーシリーズ第一夜/代役指揮者はエル・システマ出身/聴き手の免疫性を高める演奏

新日本フィルハーモニー交響楽団の第500回定期演奏会を聴いた(10月26日/トリフォニーホール)。 当初予定の指揮者ヴォルフ=ディーター・ハウシルトが急病のため来日できず、代わりにドミンゴ・インドヤンが出演。この若手指揮者は、例のエル・システマで…

新国立劇場 演劇『リチャード三世』/卑小で道化たリチャード/倉野章子のヨーク公爵夫人に感動/演出としては物足りなさも

シェイクスピアの『リチャード三世』を新国立中劇場で観た(10月3日=初日/19日)。 演出:鵜山仁/翻訳:小田島雄志/美術:島次郎/照明:服部基/音響:上田好生/衣装:前田文子 三年前の『ヘンリー六世』三部作は、一挙上演の祝祭性と演出家(当時は芸…

新国立劇場オペラ『ピーター・グライムズ』(3)質の高い上演/字幕・対訳には疑問も

(字幕=対訳の不適切な部分をいちいち指摘するのは気が重い作業だが、せっかくの優れた舞台が不正確な字幕によって損なわれたとの思いが拭えないため続けざるをえない。) 第2幕 第1場から続く間奏曲 IV パッサカリアは、不吉な調べを奏するヴィオラのソ…

BCJによるメンデルスゾーン《パウルス》/永遠に聴いていたいと思わせる名演

バッハ・コレギウム・ジャパンによるメンデルスゾーンのオラトリオ《パウルス》を聴いた(東京オペラシティコンサートホール タケミツ メモリアル/10月14日)。 指揮:鈴木雅明/合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン(コンサートマスター:寺神戸亮…

新国立劇場オペラ『ピーター・グライムズ』(2)質の高い上演/字幕・対訳には疑問も

前回に続き、だらだらと舞台を追っていきたい。 休憩後は間奏曲 III「日曜の朝」から始まる。ホルンが教会の鐘を打ち鳴らし木管のスタッカートで小鳥の囀りが朝を活気づけると、ヴィオラとチェロがエレンのアリアを予告するように奏し、そのまま第2幕 第1…

新国立劇場オペラ『ピーター・グライムズ』(1)質の高い上演/字幕・対訳には疑問も【加筆】

ベンジャミン・ブリテンの『ピーター・グライムズ』初日を観た(10月2日)。 指揮:リチャード・アームストロング/演出:ウィリー・デッカー/美術・衣装:ジョン・マクファーレン/照明:デヴィッド・フィン/合唱:新国立劇場合唱団/合唱指揮:三澤洋史…

野田秀樹『エッグ』/演劇性と劇場キャパシティの関係について

野田秀樹の新作『エッグ』を観た(9月7日/東京芸術劇場プレイハウス)。 作・演出:野田秀樹/音楽:椎名林檎/美術:堀尾幸男/照明:小川幾雄/衣装:ひびの こづえ/音響・効果:高都幸男/振付:黒田育世/映像:奧秀太郎/美粧:柘植伊佐夫/舞台監…

世界バレエフェスを見なくなった訳/日本人は創作の追随者か/オペラ・バレエの引越公演/『文化からの復興』/地続き文化論

世界バレエフェスティバルを見なくなった。といっても観たのはほんの僅かの期間にすぎない。初めて見たのは12年前の第9回(2000年)で、A・Bプロを見た。第10回(2003年)も同様だ。第11回(2006年)はAプロのみ。第12回(2009年)に至ってはシムキンが出…

小林紀子バレエ・シアター ケネス・マクミラン振付『アナスタシア』全3幕/全幕としては失敗作

小林紀子バレエ・シアターの創立40周年記念公演『アナスタシア』全幕を観た(新国立オペラ劇場/8月19日)。 芸術監督:小林紀子/監修:デボラ・マクミラン リハーサル・ディレクター&ステイジド・バイ:ジュリー・リンコン 音楽:ピョートル・チャイコフ…

オールニッポンバレエガラ2012/ハイライトは米沢・厚地組/フィナーレの振りにぐっときた

「オールニッポンバレエガラ2012——日本人バレエダンサー達による復興支援チャリティー」を観た(8月15日)。会場:メルパルクTOKYO/主催:オールニッポンバレエガラ2011実行委員会(遠藤康行、西島千博、酒井はな、島地保武、山本隆之、森田健太郎、伊藤範…

8/6 世界平和への祈り 広島特別演奏会 奇跡的な沈黙

昨夜、標記の「読売日本交響楽団創立50周年特別公演」を上野学園ホール(広島県立芸術文化ホール)で聴いた。 秋にカンブルラン=読響が取り上げる細川俊夫の『ヒロシマ・声なき声』を目当てに同響のHPを覗いたら、この特別演奏会について告知されていた。偶…

演劇ユニット「僕たち私たち」の『胎内』がInternational Student Drama Festivalで三部門を受賞

ブログを始めた四ヶ月半ほど前、真っ先に取りあげたのは演劇ユニット「僕たち私たち」による三好十郎の『胎内』だった(3/23 http://d.hatena.ne.jp/mousike/20120323/1332505900)。この舞台は、来日した審査員の舞台審査を通過し、6月にイギリスのシェフ…

劇団銅鑼アトリエ公演『遺骨』 劇団員の顔見世/想像力の行使を促す

一昨日〈劇団創立40周年記念公演 第1弾&新稽古場杮落し公演〉と銘打った『遺骨』の初日を観た(8月1日)。場所は劇団銅鑼の新アトリエ(上板橋)。 原作:内田康夫/脚色・演出:平石耕一/美術:大田創/衣装:広野洋子長方形の稽古場を段差がついた三列の…