新日本フィル #518定期演奏会/マイヤー&藤村美穂子/沈黙を味わえないサントリーホールの聴衆

新日本フィルハーモニー交響楽団の第518回定演(サントリーホール・シリーズ)を聴いた(11月29日 19:15/サントリーホール)。

#518 定期演奏会【マイヤー&藤村実穂子 最強コンビが贈るドイツ歌劇の真髄】


ルシュナー作曲 歌劇『吸血鬼』序曲
ルシュナー作曲 歌劇『ハンス・ハイリング』より ゲルトルートのモノローグ
ワーグナー作曲 楽劇『トリスタンとイゾルデ』より 前奏曲と愛の死
ウェーバー作曲 歌劇『オイリアンテ』 op.81 序曲
ワーグナー作曲(マイヤー編) 『パルジファル組曲

指揮:クリストフ・ウルリヒ・マイヤー
独唱:藤村実穂子
コンサートマスター:豊嶋泰嗣


主催:公益財団法人 新日本フィルハーモニー交響楽団 
後援:日本ワーグナー協会
助成:文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)


ルシュナーの音楽を聴くのは初めて。歌劇『ハンス・ハイリング』ゲルトルートのモノローグ は、ヴァイオリンを除く弦楽器群にファゴットとホルンを加えただけの珍しい編成。歌手も語りとハミングが大半で最後に少し歌う程度。
トリスタンとイゾルデ前奏曲と愛の死は、曲の最後まだ指揮者が手を降ろしていないのに、女性ひとりの声でブラボーが飛び、せっかくの沈黙を壊してしまった。だが、さほどブラボーとは感じない。オケはよいし、藤村も二度ほど高音が少しフラット気味に聞こえたが、悪くない。たぶん、指揮者と聴衆に原因がある。よりによって前奏曲の冒頭部、客席で落下音があった。まあこれはしょうがない。それよりマイヤーの軽いせかせかした指揮振りで、この曲の濃厚な緊張感が一向に生まれない。弦は艶やかで、ホルンはかなり強めに鳴らしていたが、指揮者に求心力がないと・・・。
後半のウェーバーの歌劇『オイリアンテ』序曲も初めてだった。世界の天から地まで末端から末端まで照らし出すような音楽。『魔弾の射手』の序曲もそんな感触があったが。
最後のマイヤー編『パルジファル組曲では、指揮者も歌手も気持ちの入り方がより濃密で、聞き応えがあった。「聖金曜日の音楽」後半、オーボエが弱音を出そうとするあまり音が少しかすれたが、すぐ持ち直した。ここでも、50分に及ぶ音楽が終息し指揮者は手を宙に保ったまま動かさないでいたが、数名の野暮な拍手で無理やり手を降ろさせてしまった。なぜ?
藤村実穂子はそんな聴衆にもかかわらずじつに丁寧なレヴェランスを繰り返した。オケのメンバーへも同様。何度目かのコールで、藤村は、ステージの後ろ、左右への聴衆にも(ここはサントリーホール)礼をするよう指揮者に促したほど。今回も藤村はすべて暗譜だった。それにしても、サントリーの客はなぜこうも音楽が消えていく沈黙の美しさを味わおうとしないのか。近年のトリフォニーではこんなことはまずないのだが。