10月のフィールドワーク予定 2026

今月はオペラ1,演劇1,コンサート2,バレエ4の計8公演。

初台の新制作 ロッシーニの《イタリアのトルコ人》(1814/ペリー演出初演2023@マドリード)はいわゆる〝トルコもの〟で、見るのはこれが初めて。〝トルコもの〟といえばモーツァルトの《後宮(ハーレム)からの誘拐》(1782)が有名だが、8月に東バが上演した『海賊』もそのひとつ。

(ちなみにバレエ『海賊』(1856)の最初の台本では、コンラッドがトルコ人を憎み復讐するのは、彼の妹が幼い頃、あるトルコ人にさらわれたからとなっていた。が、当時の検閲官は、このくだりをトルコ人に対して政治的に敵対的だと判断し、削除する。サン=ジョルジュが台本を書いていたこの時期、クリミア戦争(1853-56)の最中で、オスマン帝国はフランスの同盟国だった[ファリントン&スミス『パリとサンクトペテルブルグの五つのバレエ』2024]。もし検閲を免れていたなら、バイロンの原作詩(1814/《イタリアのトルコ人》初演と同年)を支配する〝暗さ〟が多少なりともバレエに残ったかもしれない。が、初演台本を読む限り、その痕跡は微塵もない。さらに、バレエがパリからペテルブルグへ移動するなか、その重点も〝物語〟から〝踊りとスペクタクル〟へと移動していく。結果、現在の上演では、「劇的なバレエ・パントマイム」としての初演版からは、はるかに遠く隔たってしまった。)

英語能『青い目のメンフィス』は、能から着想を得た米国の劇作家による戯曲を下敷きに、エルヴィス・プレスリーの亡霊(シテ)と、彼の熱烈な女性ファン(ワキ)が出会う物語らしい。能を現代化した岡田利規の舞台を見慣れた眼に、能を英語化した今回の舞台はどう映るのか。興味津々。

初台のオペラ研修所・公開マスタークラスは、今秋、エヴァ・メイを講師に迎える。どんな指導が見られるか。

新国立バレエの新制作は、なんとチャップリンの『街の灯』だ。振付は、4年前『ジゼル』の新制作でステージングと改訂振付を任されたアラスター・マリオット。マリオットが提示した複数案から『街の灯』のバレエ化を選んだのは、吉田芸監の方らしい(マリオットのインタビュー)。サイレント映画と言葉のないバレエは、たしかに親和性はありそうだが…。先日、NHK Eテレで新作文楽『まちの灯』が制作ドキュメント付きで放映された。脚本・演出は大野裕之(日本チャップリン協会会長)。文楽という芸能はもとより、チャップリン原作に対する深い愛情と理解と解釈に裏打ちされた素晴らしい人形浄瑠璃だった(題名の解釈等々)。映像を介してとはいえ、そう感じた。大野氏と文楽側の豊竹若太夫(浄瑠璃化・語り)、鶴澤友之助(作曲・三味線)、桐竹勘十郎(人形監修・与次郎役)の協働作業の賜物だろう。話をバレエに戻せば、吉田監督は、古典の改訂よりもカンパニーのオリジナル作品を望んだ。うまくいけば、二度目のロンドン公演が見えてくるかもしれない。

BCJの定期では、J. S. バッハ(1685-1750)以前のシュッツ(1585-1672)やブルーンス(1665-97)の作品とバッハのカンタータを聞き比べ、宗教音楽の源流を辿ることになる。

2日(金)18:00 新国立劇場オペラ《イタリアのトルコ人》[新制作]全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉作曲:ジョアキーノ・ロッシーニ(1792-1868)/台本:フェリーチェ・ロマーニ(1788-1865)/初演:1814年/指揮:アレッサンドロ・ボナート/演出・衣裳:ロラン・ペリー/美術:シャンタル・トマ/照明:ジョエル・アダム/演出補:クリスティアン・レート/衣裳補:ジャン=ジャック・デルモッテ/舞台監督:髙橋尚史/セリム:アレハンドロ・バリニャス・ビエイテス/ドンナ・フィオリッラ:クラウディア・ムスキオ/ドン・ジェローニオ:パオロ・ボルドーニャ/ドン・ナルチーゾ:ルジル・ガティン/詩人プロスドーチモ:ブルーノ・タッディア/ザイダ:但馬由香/アルバザール:山本康寛/合唱:新国立劇場合唱団/管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団/共同制作:テアトロ・レアル、リヨン歌劇場 @新国立劇場オペラハウス

10日(土)18:00シアター能楽 英語能『青い目のメンフィス』上演言語:英語(舞囃子は日本語)字幕言語:日本語・英語舞台上字幕 /舞囃子『高砂』(15分)出演:松井 彬/大島衣恵/地頭:塩津圭介//狂言『節度の報い』(20分)作:トーマス・オコナー/共同演出:トーマス・オコナー、ルイス・バイス/[出演]シテ(司祭):ジュビリス・モーア/アド(犬):ルイス・バイス//英語能『青い月のメンフィス』(初演2015年/75分)作:デボラ・ブレヴォート/作曲・音楽監督:リチャード・エマート/共同演出:松井 彬、ジョン・オグルビー/[出演]シテ(エルヴィス・プレスリー):ジョン・オグルビー/ワキ(ジュディ):ローラ・サムソン ミカ・オスカソン・キンドストランド/アイ狂言(オスカー):ルイス・バイス/笛:リチャード・エマート/小鼓:大村華由/大鼓:河内孝子/太鼓:桜井 均/地謡:デビッド・クランドル/地謡:ケビン・サルフェン デビッド・サタースキー マシュー・デュブロフ アシュレー・ソープ ゲイリ・マシューズ ロバート・モリス 章舒涵/後見:大島衣恵 ジュビリス・モーア @芸劇プレイハウス

15日(木)14:00 新国立劇場オペラストゥーディオ 公開マスタークラス/講師:エヴァ・メイ/ピアノ:西 聡美/受講者:新国立劇場オペラストゥディオ(オペラ研修所)研修生 @新国立劇場オペラハウス ホワイエ

23日(金)19:00 昭和100年記念公演 令和8年度(第81回)文化庁芸術祭主催公演 新国立劇場バレエ団『街の灯』[新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演]/振付:アラスター・マリオット/原作:チャールズ・チャップリン/音楽:チャールズ・チャップリン&ホセ・パディーヤ『La Violetera』/編曲:ティモシー・ブロック/美術・衣裳:ディック・バード/照明:エレン・ルーゲ/放浪者(トランプ):奥村康祐/盲目の花売り娘:米沢 唯/指揮:ティモシー・ブロック&冨田実里/管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 @新国立劇場オペラハウス

24日(土)13:00 新国立劇場バレエ団『街の灯』放浪者(トランプ):石山 蓮/盲目の花売り娘:柴山紗帆 @新国立劇場オペラハウス

24日(土)18:00 新国立劇場バレエ団『街の灯』放浪者(トランプ):木下嘉人/盲目の花売り娘:小野絢子 @新国立劇場オペラハウス

25日(日)17:00 舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」岡田利規&山田和樹 東京芸術劇場芸術監督 コラボレーション企画『静寂のガツンとした一撃』主催:東京舞台芸術祭実行委員会〔東京都、東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)〕@芸劇アトリウム

28日(水)13:00 新国立劇場バレエ団『街の灯』放浪者(トランプ):水井駿介/盲目の花売り娘:東 真帆 @新国立劇場オペラハウス

31日(土)15:00 BCJ # 175定演〈十字架上の七つの言葉Ⅰ〉 教会カンタータシリーズvol. 95 ——ルター派音楽の系譜をたどる—— H. シュッツ:《十字架上の七つの言葉》SWV 478/N. ブルーンス:《プレリューディウム ホ調》*/カンタータ《涙を流すのをやめ、頬をぬぐいなさい》/J. S. バッハ:カンタータ第4番《キリストは死の縄目につながれたり》BWV 4/カンタータ第79番《主なる神は太陽にして盾なり》BWV 79/指揮:鈴木雅明/ソプラノ:松井亜希/アルト:青木洋也/テノール:櫻田 亮、吉田志門/バス:加耒 徹/オルガン独奏:鈴木優人*/合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン @東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

 

すみだ五彩の芸術祭 山﨑広太『梅若はまだ帰らない』〈戯曲ダンス版〉2026

山﨑広太『梅若はまだ帰らない』〈戯曲ダンス版〉の楽日を観た(9月6日 日曜 15:00/すみだパークシアター倉)。

「梅若伝説」に触発された新作とのこと。〝隅田川〟のダンス版は、1月に中村容が『BLINK』を上演したばかりだし、今回の音楽担当は、岡田利規の〝現代版夢幻能〟(「珊瑚」「円山町」/「座波」「敦賀」)に欠かせない内橋和久が務めるという。どんな舞台になるのだろう。

錦糸町駅で下車。強い雨のなか、かつて新日フィルの定期で15年通ったトリフォニーホール前を経由し、きれいに整備された大横川親水公園をしばらく北上すると、すみだパークシアター倉に辿り着いた。

   

振付・脚本:山﨑広太/音楽・演奏:内橋和久/出演:SHIon Sebastian Geilings 堀田千晶 藤村港平 西村未奈/照明:岩品武顕/音響:齊藤梅生/衣裳:藤谷香子/舞台監督:河内崇/宣伝美術:八木幣二郎/制作:林慶一/ディレクター(すみだ五彩の芸術祭):荻原康子/アートコーディネーター(すみだ五彩の芸術祭):水野立子/主催:「すみだ五彩の芸術祭」実行委員会、墨田区/令和8年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業

平安中期、人買いに拐かされて、隅田川のほとりで命を落とした梅若丸。梅若を追って狂女に身をやつした母は、旅の僧がつくった塚の前で念仏を唱えると息子の亡霊が現出し、母子の対面を果たす…

この「梅若伝説」を基に、能をはじめ歌舞伎や浄瑠璃や教会オペラなど、様々なジャンルの作品が作られてきた(能『隅田川』とブリテン《カーリュー・リヴァー》のメモはこちら)。

ちなみに、忠円阿闍梨が柳の木を植えて築いたという塚は、木母寺(もくぼじ/天台宗/墨田区堤通)に再現されているらしい(梅若丸の「梅」→「栂」→「木母」寺)。

冒頭に山崎広太の即興ダンス付き説明が10分ほどあった。

広太は「伝説」から〝梅若を現出させる〟タスクを思いつき、そこに至る時空を「戯曲ダンス」化したようだ。「梅若を現出させる=主体性を不安定にする云々」(山崎)。つまり〝梅若現出〟のタスクは、日常の網の目の隙間から、つかの間、いまここにないもの(外部)——死んだ梅若を覗き見ること、母が息子と対面することか…上演時間は約90分。

5人のダンサー(女3人男2人)が腹ばいになり、一人ずつ起き上がり、コトバを発しつつ踊る… 

椅子を出して、二拍子の速い音楽で… 西村未奈が緑の黒板になにかを、抽象画のようなものを書いていく…

…聞き取れないコトバもあったが、地名は分かった。隅田川、墨田、小塚原、スカイツリー、浅草、北原宿、神保町、向島、木母寺、京島等々…

発語された隅田川周辺の地名は、いわばテキストの〝外部〟となり、地霊を呼び覚まし、〝梅若現出〟に至る条件が整えられていくかのよう…

…気持ちのよいラップ音楽になり、そのリズムに乗ってダンサーたちが次々にブームマイク等で語り、踊る …激しく踊った果てに倒れ込んだSHIonがつぶやく…

三拍子の太鼓のリズムで、SHIonがソロを踊り、捌ける… 堀田千晶がソロを踊り、藤村港平/Sebastian Geilings とデュオを踊り、トロアを踊り、男は捌けるが千晶は残り、踊る…

激しく踊った果てに倒れ込んだ千晶は もうろうとし 空間を解きほぐすような 慈しむようなしぐさで、つぶやく「ウメワカ いつもいっしょだね」…

これが「わたしはさめたことをしらないというすきまに梅若丸というさっかく」(西村)を観客と共有した時空だったのか…

SHIonの、千晶の激しい踊りは見応えがあった。西村の発話が他のダンサーと比べて明晰なのは、ナレーターの役を担っているからだろう。創り手と他のダンサー+観客を媒介する役を。

内橋がダンサーと共振しつつダクソフォンを演奏すると、ライブ感が倍増する。

アフタートークは、山崎氏が「ダサかっこ悪い」から触発されたという郡司ペギオ幸夫氏と。司会はアートコディネーターの水野立子氏。話題は「不在」「外部」等々。広太にとって、不在/外部の「梅若を現出させる」のは「主体性を不安定にする」こと… あくまでも主体、意識の内側から捉えている? というか、一見ハチャメチャに見えるが実は繊細に分節化された身体の非日常的な動き(ダンス)によって日常的な意味の網の目をぶち壊し、その裂け目から、つかのま立ち現れる(かもしれない)なまなましい生を、見る者と共有すること。広太が目指しているのは、舞台を見ている限り、これだと思う。

一方、郡司氏の話は、ものや世界を構造的に、俯瞰的に見ているように聞こえた。科学者なら当然だが。とはいえ、郡司氏の本は読んだことがないのでよくは分からない。ただ『やってくる』という著書のタイトルは、柄谷行人の「向こうからやってくる」交換様式Dを想起させる。両者は響き合うものがあるのか。いずれ読んでみたい。

・戯曲ダンス《右の眼、交差するデリカシー、⻘炎球、骨と直線(する)》WWFes (2026年1月28日)の感想

・劇場プロジェクト ダンス『机の一尺下から陰がしのび寄ること』(2022年12月28日)の感想

 

コリン・カリー・グループ/ライヒ《18人の音楽家のための音楽》2023

コリン・カリー・グループのライヒ《18人の音楽家のための音楽》を聞いた(2023年4月21日 金曜 19:00/オペラシティ コンサートホール)。

3年前のコンサートを昨夜(26年14日)NKHのBSプレミアムで再放映した。やはりスティーヴ・ライヒは面白い。

当時(4/29)感想メモをツイートし、その後「フィールドワーク予定」に貼り付けてた。これを機に別立てでアップしたい。

作曲:スティーヴ・ライヒ[ライシュ](1936- )/出演:コリン・カリー(パーカッション&指揮)/コリン・カリー・グループ/シナジー・ヴォーカルズ

ライヒを初めて聴いたのは2012年12月。前回が2017年3月1日。今回(2023)ライヒは来日せず。

《ダブル・セクステット》(2007)

セクステット(六重奏)の構成はフルート、クラリネット、ヴィブラフォン、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ。これが〝ダブル〟(x2)に。ヴィブラフォンとピアノが通奏低音のようにリズムを刻み、前へ前へと駆動する。…後半テンポが緩み、メロディが印象的なシークエンスではバンドネオンの響きが聞こえた。実際はヴァイオリン、フルート、クラリネット等の重奏。面白い。また最初のリズムに戻り、前へ進んでいく…。

《トラベラーズ・プレイヤー[ママ]》(2020)[日本初演][オランダ公共放送アムステルダム土曜マチネ、サウスバンクセンター、カーネギーホール、フィルハーモニー・ド・パリ、ハンブルク・エルプフィルハーモニー、バークレー・カルパフォーマンス、東京オペラシティ文化財団共同委嘱]

[タイトルの「プレイヤー」は誤表記で《トラベラーズ・プレアー(旅人の祈り)Traveler’s Prayer》だと思う。Prayerを「プレイヤー」と読むと「旅人の祈る人」になってしまう。]

編成はテノール2、ソプラノ2、ヴィブラフォン2、ピアノ、ヴァイオリン4、ヴィオラ2、チェロ2。ヘブライ語の祈りの言葉(創世記、出エジプト記、詩篇からの抜粋)に付された音楽はグレゴリオ聖歌を想起したが、ハーモニーならぬカノンでズレながら独特の響きを生み出していく。彼の地の空気(本で想像するのみだが)を彷彿させる不思議な音楽。歌われた詩句は「旅の無事を祈る時、さらに、この世からあの世への旅の無事を祈る時にも唱えられる」と(ライヒ)。なるほど。

《18人の音楽家のための音楽》(1974-76)

編成はヴァイオリン、チェロ、クラリネット(バスクラを兼ねる)、女声4、ピアノ4、マリンバ3、シロフォン2、ヴィブラフォン(モーターなし)、マラカス2(打楽器奏者が兼ねる)。

一つのリズムを繰り返し(パルス)後から少しずらして別の奏者が同じリズムを反復していく。するとハレーションというか眩暈が生じ、聴く者をめくるめく世界に没入させる。聖歌が唱えられなくとも、読経に似た、ある種の宗教的体験を誘発する。時折入るバスクラのクレッシェンドがよく効いてた。マラカスうまい。最後は奏者が次第に減り、音が徐々に弱まり、ヴァイオリン一人となり消滅。ハイドンの《告別》みたい。拍手が早すぎたのは残念だが、始終頬が緩み、心と体が満たされた。

客席は一気にスタンディング。相変わらず若い人が多い。個々の〝平凡な作業〟の積み重ねが奇跡的な効果を生み出す。ミニマルミュージックはデモクラティックな価値観と親和性が高そう。だから若者に受けるのか。2012年の感想メモはこちら。

新国立劇場「バレエ・アステラス ~海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて世界とつなぐ~」2026

「バレエ・アステラス 2026」の初日を見た(8月1日 土曜 14:00/新国立劇場オペラハウス)。簡単にメモする。

第1部

『サタネラ』より パ・ド・ドゥ 振付:マリウス・プティパ/音楽:チェーザレ・プーニ

出演:小森世楽(ポーランド国立バレエ団)、ジョージ・エドワーズ(ポーランド国立バレエ団)

曲はヴェネチアの謝肉祭のヴァリエーション。コンマスはヴィブラートが細かすぎる?

エドワーズは相手とコミュニケーションをとりつつ、雰囲気が作れる。技術はもっと欲しいけど。

『ジゼル』第2幕より パ・ド・ドゥ 振付:ジョゼ・マルティネス/音楽:アドルフ・アダン

出演:丸尾麻日花 (クロアチア国立劇場)、吉岡遊歩 (クロアチア国立劇場)

ヴィオラのソロはまずまずだが、ホルンが…。丸尾はジゼルタイプではなさそう。吉岡は一定の技術はあるが、アルブレヒトタイプでは… 

『ハムレット』第1幕より ハムレットとオフィーリアのパ・ド・ドゥ 振付:レオ・ムジック/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、カミーユ・サン=サーンス/ヴァイオリン独奏:川田知子

出演:エミリー・タシナリ (スロヴェニア国立バレエ団リュブリャナ)、山本健太 (スロヴェニア国立バレエ団リュブリャナ)

悪くないけど、Shを数多く見て読んできた眼にはハムレットとオフィーリアに見えない(振付・演出・衣裳が)。

《序奏とロンド・カプリチオーソ》の川田知子のヴァイオリンは素晴らしい。

『グラン・パ・クラシック』振付:ヴィクトル・グゾフスキー/音楽:フランソワ・オーベール

出演:東 真帆(新国立劇場バレエ団)、李 明賢(新国立劇場バレエ団)

東はちょっと硬いかな。真ん中で場数を踏めばどんどんよくなると思う。

第2部

『道(La Strada)』より ソロとパ・ド・ドゥ 振付:マリオ・ピストーニ/音楽:ニーノ・ロータ

出演:ミラノ・スカラ座バレエ・アカデミー マリア・ヴィットーリア ミケーレ・フォルギエリ 

オケの曲もいいし、二人の踊りもよい。キャラが出てる。

『En Bateau』振付:デヴィッド・ビントレー/音楽:クロード・アシル・ドビュッシー

出演:新国立劇場バレエ研修所 I. 人見紗来 美濃大和 松田昴祐 II. 園田瑞季 山本海理 前上友希 III. 平山凪 末吉慶次 IV. 廣沙帆子

1988年にRBスクールの生徒たちが初演。互いに競いつつ腕を磨く若者に向けたビントレーらしい作品。

スイミングみたいなコスチュームに素足で…

『ロッシーニ・カード』より ソロとデュエット 振付:マウロ・ビゴンゼッティ/音楽:ジョアキーノ・ロッシーニ/ピアノ演奏:巨瀬励起

出演:ミラノ・スカラ座バレエ・アカデミー マリア・ヴィットーリア ヴィオラ・ボルダ サラ・ペトロジーノ

丸と四角の照明…。さほど面白くないけど、個の表現力をつけるにはいいかも。日本と対照的。両方に出てたヴィットーリアは好いダンサー。

ソロはフーガ。テーマはチャイコフスキーの「悲愴」みたいな、それをフーガで展開する。ロッシーニ晩年はこんなピアノ曲を書いてたのか。

第3部

『Three Preludes』より 第1楽章、第3楽章 振付:ベン・スティーブンソン/音楽:セルゲイ・ラフマニノフ/ピアノ演奏:巨瀬励起

出演:畑戸利江子(テキサス・バレエ・シアター)、アンドレ・シルバ(テキサス・バレエ・シアター)

バーレッスンでPDD。面白いけど、もっと女性はラインがほしい…。ピアノはOK

『コンクール』より 裸足のパ・ド・ドゥ 振付:モーリス・べジャール/音楽:アルフォンス・ツィブルカ

出演:大橋真理(ベジャール・バレエ・ローザンヌ)、クウィンテン・ギリアムス(ベジャール・バレエ・ローザンヌ)

ワルツ 弦楽、木管、ハープ、ホルン… 

『ドン・キホーテ』第1幕より キトリの登場とヴァリエーション[マーセル・グティエレス(レ・グラン・バレエ・カナディアン)が体調不良で降板のため第3幕のパ・ド・ドゥから変更]振付:マリーナ・ヴィアヌエヴァ/音楽:レオン・ミンクス

出演:石井杏奈(レ・グラン・バレエ・カナディアン)

ひとりで頑張った。終わってバクランに投げキス!

『Coco Chanel: the Life of a Fashion Icon』第1幕より テーブルのパ・ド・ドゥ[日本初演]振付:アナベル・ロペス・オコア/音楽:ピーター・サレム

出演:吉田合々香(クイーンズランド・バレエ)、エディソン・マニュエル(クイーンズランド・バレエ) 

開始直後、いいと思った。吉田、面白い。音楽も 

『マノン』第1幕より 寝室のパ・ド・ドゥ 振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ/編曲:マーティン・イェーツ

出演:奥村 彩(チェコ国立バレエ団)、フェデリコ・イエヴォリ(チェコ国立バレエ団)

 好きな演目・音楽だが、踊りは、らしいかたちがあっただけ。オーボエ…

〈フィナーレ〉出演者全員

今回は少し物足りないか。ただプログラムの不便さは多少改善されてた。

サントリーホール サマーフェスティバル 2026 国際作曲委嘱シリーズ No. 48 オーケストラ・ポートレート

サントリーホール サマーフェスのオーケストラ・ポートレート(委嘱新作初演演奏会)を聞いた(8月29日土曜18:00 /サントリー大ホール)。テーマ作曲家はルカ・フランチェスコーニ(1956- )。

この公演では、初代監修を務めた武満徹(1930-96)の意向を受け継ぎ、1テーマ作曲家自らが影響を受けた作品、2テーマ作曲家の代表作、3若い世代の作品、4書き下ろしの新作(サントリーホール委嘱)の4曲が演奏される。1と3を選ぶのは、もちろんテーマ作曲家。

監修:細川俊夫/指揮:大野和士/ヴァイオリン:リーラ・ジョセフォウィッツ/東京都交響楽団/主催:サントリーホール サントリーホール開館40周年記念公演/助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)│独立行政法人日本芸術文化振興会

演奏順が後半だったベリオと前半のシュシャクを入れ替えた。たぶんベリオ作品の変則的なオケ配置に時間を要するため、当初はこれを休憩直後に入れていたと思われる。発表年順となってすっきりした。ただ、ベリオ作品の終曲から『ドゥエンデ』開始まで10分以上待つことにはなったが。

ルチアーノ・ベリオ(1925-2003):管弦楽のための『フォルマツィオーニ』(1987)

タイトル(隊形)が示す通り、オケが「音色によって大きく5つの〝室内楽的グループ〟に分けられ」、通常とはかなり異なるフォーメーション(配置)。それで音が違って聞こえるのか、目で見てそう感じるのか… よく分からないけど、コンマスの位置に居るフルートはよく聞こえた。全体的に、わりあい強く響き、ちょっと悲劇的な感触も。

フランチェスコーニ:ヴァイオリンと管弦楽のための『ドゥエンデ(鬼気迫るもの)―黒い音』(2013)

Vnコンチェルト形式では通常オケ編成は小さめだが、これはフルオケ。はじめはヴァイオリンソロの高音トレモロ、震えが、他のヴァイオリン等の楽器に伝播し、広がっていく。リーラはコパチンスカヤとはまた別タイプの、凄まじい奏者。〝気〟を音に込めるあり方は、まさに〝鬼気迫るもの〟で、特にカデンツァは格闘技のよう。最後はふっと終わった。

「ドゥエンデ」といえば、スペイン人ナチョ・ドゥアト(1957- )のダンスを想起する(1991初演)が、あれはドビュッシーの音楽と結びつく〝不思議な魔力/精霊〟(ドゥエンデ)を造形した振付で、本作とは対照的。

アンコールは、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番 BWV1005 より「ラルゴ」。あのように激しく弾いた直後だけに、切り替えは大変だったろう。少し不安定な箇所も…

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フリスティナ・シュシャク(1996- ):管弦楽のための『POPA』(2025/26)[世界初演]13分

低音の響き。…空からなにかが降ってくる… 爆弾? 空襲? 遠くで着弾したような…ラストで歪んだ讃美歌のようなメロディが。弦楽器だったと思うが、人声というか合唱にも聞こえた。ベリオやフランチェスコーニとはまったく異なる音楽。POPAはセルビア語で司祭を意味し、3歳ごろ祖父母の家で感じた恐怖のメタファーだと(プログラム)。1996年セルビア生まれか。コソボ紛争でNATOの空爆を経験したかもしれない。もう一度聞いてみたいと思った。

フランチェスコーニ:管弦楽のための『フェローチェ・インノチェンツァ』(獰猛な無垢)(2026) [世界初演 サントリーホール委嘱]25分

タイトルはオクシモロン…。そもそも音楽を、特に初めて聞く新作をコトバにするのは無謀だけど、ひとことで言えば、豊かな響きだった。柔らかな弦楽から、オンド・マルトノみたいなユーモラスなものまで。《ドン・ジョヴァンニ》から抽出された4つの音に基づいているらしいが…

サントリーのサマーフェスへ足を運ぶと、あまり使っていない脳が刺激される。それがことのほか楽しい。

 

9月のフィールドワーク予定 2026 +

もう9月か。あっという間に夏が過ぎてゆく。今月はダンス1,コンサート2【,演劇1】の計3【4】公演。先月より少なくなった。

山崎広太の新作は梅若伝説に触発されたという〈戯曲ダンス〉。〝隅田川〟のダンス版は、1月に中村容が『BLINK』を発表したばかりだし、音楽担当が岡田利規の現代版夢幻能と切り離せない内橋和久というのも気になるところ。どんな舞台になるのか。

N響Bプロの新シーズンは、サントリーホールが27年3〜8月まで改修のため、3公演のみとなる。今月はドイツロマン派の三作家がフィーチャーされる。ハーデリヒのヴァイオリンがまた聴けるのは嬉しい。

BCJの定期はベートーヴェン・シリーズの第2弾で《エロイカ》(1804)とケルビーニの《レクイエム ハ長調》(1816)を取り上げる。ベートーヴェンは10歳年長のイタリア人作曲家を高く評価し、影響も受けているらしい。古楽で両者を聞き比べることになる。指揮は優人氏。

【中村容が振付・ステージングをすると知り 演劇集団円の『冬物語』を追加した。円の公演は安西徹雄演出を含め 80年代によく通ったものだ。最後に見たのはいつだったか。】

6日(日)15:00 すみだ五彩の芸術祭 山﨑広太『梅若はまだ帰らない』〈戯曲ダンス版〉振付・脚本:山﨑広太/音楽:内橋和久/出演:SHIon Sebastian Geilings 堀田千晶 藤村港平 西村未奈 @すみだパークシアター倉/照明:岩品武顕/音響:齊藤梅生/衣裳:藤谷香子/舞台監督:河内崇/宣伝美術:八木幣二郎/制作:林慶一/ディレクター(すみだ五彩の芸術祭):荻原康子/アートコーディネーター(すみだ五彩の芸術祭):水野立子/主催:「すみだ五彩の芸術祭」実行委員会、墨田区/令和8年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業

17日(木)19:00 N響 #2070 定演 B-1 ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲/ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77/シューマン:交響曲 第4番 ニ短調 作品120(改訂版)/指揮:ファビオ・ルイージ/ヴァイオリン:アウグスティン・ハーデリヒ @サントリーホール

【25日(金)18:30 演劇集団円『冬物語』作:W・シェイクスピア/翻訳:安西徹雄/演出:中屋敷法仁(柿喰う客)/美術:乘峯雅寛/照明:木下尚己/音響:藤田赤目/衣裳:半田悦子/振付・ステージング:中村 蓉/演出助手:宮田清香/舞台監督:清水義幸/宣伝美術:チャーハン・ラモーン/制作:桐戸英二/出演:藤田宗久、上杉陽一、吉見一豊、谷川清美、瑞木健太郎、岩崎正寛、薬丸夏子、石原由宇、吉田久美、清田智彦、相馬一貴、大橋繭子、古賀ありさ、豊浦奏斗、但馬 爽。円演劇研究所 第50期生/主催:演劇集団円/助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動))独立行政法人日本芸術文化振興会/提携:公益財団法人武蔵野文化生涯学習事業団 @吉祥寺シアター】←追加

27日(日)15:00 BCJ #174 定演  ベートーヴェンへの道 vol. 2 ベートーヴェン没後200年へ寄せて/ L. v. ベートーヴェン:交響曲 第3番「英雄」作品55/L. ケルビーニ《レクイエム ハ短調》/指揮:鈴木優人/合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン @東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

 

新国立劇場〈20の物語 —週末を、劇場で— 〉7の物語 2027

「20の物語」のうち、7の物語を観た(新国立小劇場)。

照明:鈴木武人/音響:秦 大介/衣裳アドバイザー:山野辺雅子/ヘアメイク:高村マドカ/舞台監督:川除 学

第1週に見た『水のほとりの女』( 7/19)は別立てでアップ済み。以下、それ以外の舞台について簡単にメモする。

第2週〈2本立て〉7月23日(木)18:30-19:30

『命を弄ぶ男ふたり』(1925)作:岸田國士(1890-1954)/眼鏡をかけた男:寺内淳志(第7期修了)/包帯をした男:渡邊りょう/演出:大澤 遊

『口に花を持つ男』(1918/23)作:ルイジ・ピランデルロ(1867-1936)/翻訳:小川絵梨子/口に花をもつ男:渡邊りょう/通勤者:寺内淳志/演出:大澤 遊 

岸田の短篇は2007年に高橋克実(包帯)、八嶋智人(眼鏡)で見たけど、細かな内容は覚えてなかった(ケラの演出構成@世田谷パブリック)。今回は、岸田の非凡な〝対話と笑い〟の創作力を再確認したが、それ以上は特にない。

ピランデルロの方は、ちょっとオールビーの『動物園物語』みたいだが、もっと狂気的、神経症的か。渡邊りょうは演技力あるな。彼は『兵卒タナカ』に出てたのか。フルオーディションの『かもめ』にも。

にしても二作を同じキャストで上演する趣向は好い。むかし『動員挿話』『屋上庭園』でやってたな。

7月23日(木)20:15

『不毛ドライブ』(1012)作・演出:蓬莱竜太(1976- )/安野(36才):濱仲 太/菊田(33才):関口アナン

居酒屋バイトの先輩に呼び出され、愛車で飲み屋から自宅へ送ることになったシチュエーションでの、運転席と助手席の対話。年は安野の方が上だが… 派手なアロハシャツにプリン頭のヤンキーふう菊田が、安野に無理な要求を連発し… どうやら、菊田の彼女が安野に乗りかえた、その腹いせらしい。菊田が用を足すため停車した後、かからなくなった車のエンジン。菊田はボンネットを開けさせ、アロハシャツを脱いで、ぼろ布代わりにそのシャツで直す、客席に背中を向けて。背中に血が滲むのは、彼女が刺したのか。それで顔色が悪いと。

安野目線でヤンキー風の菊田にイラつかせる趣向だが、男同士の〝党派性〟というか、ホモソーシャルな紐帯が透けて見える。

再演『消えていくなら朝』に主演の関口はここでも達者、濱仲もうまい。 

7月24日(金)18:30-19:30

『軽塵』(1947)作:秋元松代(1911-2001)/演出:須貝 英/佐伯理一:猪野 学/佐伯房子(妻):横山友香(第6期修了)/佐伯悌子(妹):堺 小春/佐伯裕介(叔父):まいど 豊/矢島要子(房子の妹):小口ふみか/岸本和子(隣の娘):きし朱紗(第16期修了)

三好十郎の「戯曲研究会」で三好に勧められ初めて書いたのが本作。初演は創造座、演出は笠松草一郞。

15才で一家の主となった長男(兄)は、その苦しみを小説(習作)に書いていた。それを盗み読んで兄の思いを初めて知った悌子は、尊敬する気持ちと、その正しさに押しつぶされる自分をすくうため、東京に出ていた。が、頻発する空襲や病気のため、いまは兄嫁の妹や叔父の居候らと共に、同居している。なにかとぶつかる悌子と兄。

…空襲後、大破した兄の家に帰り着き、その兄と初めて向き合い、ギリギリの意思疎通をなしえる。…その家を出て行く悌子。別れ際に、叔父が掛け軸の漢詩を吟ずる。「渭城の朝雨(ちょうう) 軽塵を浥(うるお)し…」。惜別の詩が、悌子のこころのserenity を告げている。

房子(小口ふみか)と対照的な悌子(堺小春)の内に思いを秘めた〝暗い〟造形。それが幕切れで見事に晴れる。こんな役者がいたのか。チャリダーの猪野は自分を犠牲にしてきた痛みは出ていたが、小説や絵を描くようには見えなかった。小口ふみかは新国立バレエのダンサーから裏方に転身した小口邦明の妹なのか。

7月24日(金)20:00-21:05

リーディング公演『マクベス』(1606)作・ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)/翻訳:小田島雄志/構成:小田島創志/演出:鵜山仁/マクベス、マクダフ、マルカム:岡本健一/マクベス夫人、マクダフ夫人、使者:中嶋朋子/ダンカン、ロス、バンクォー、医師、使者:木下裕之/魔女、ロス、アンガス、暗殺者、貴族、レノックス、マクダフ息子、シーワード:一柳みる

ドラマの流れを50分にうまく再構成し、リーディングがある意味〝様式〟として機能していた。岡本はOK。木下は久しぶりに見た。中嶋がいい役者。一柳は舞台を支えていた。

第3週 7月30日(木)18:30-19:22

『ロング・クリスマス・ディナー』(1931)作:ソーントン・ワイルダー(1897-1975)/翻訳:水谷八也/演出:宮田慶子/ルシア(ロデリックの妻):浅野令子(第1期修了)/ロデリック(マザー・ベイアードの息子):前田一世(第1期修了)/マザー・ベイアード:村中玲子/いとこのブランドン:中山祐一朗/チャールズ(ルシアとロデリックの息子):中西良介(第10期修了)/ジェネヴィーヴ(ルシアとロデリックの娘):岡崎さつき(第9期修了)/リオノーラ・バニング(チャールズの妻):美利(第17期修了)/ルシア(リオノーラとチャールズの娘、サミュエルと双子):石川愛友(第18期修了)/サミュエル(リオノーラとチャールズの息子、ルシアと双子):佐々木優樹(第17期修了)/ロデリック(リオノーラとチャールズの末っ子):森 唯人(第19期修了)/いとこのアーメンガード:中原果南/看護婦:向井里穂子(第19期修了)

人がくぐれるシモテの〝ドア枠〟は花飾り付きで、生命誕生の入口。カミテの黒っぽい枠は死の入口。名家のクリスマスディナーを定点観測ふうに、世代の移り変わりが早回しで描かれる。生と死、戦争…。面白い。研修所出身の役者たちはみないい仕事をした。中原華南はさすがの存在感。

7月30日(木)20:00-20:20

『ラスト・ヤンキー』(一幕版)(1991)作:アーサー・ミラー(1915-2005)/翻訳:小田島創志/演出:蓬莱竜太/リロイ・ハミルトン:本折最強さとし/フリック:石母田史朗

精神科病院の待合室で二人の男が対話する。妻が精神を病んでいる点、その病状はほぼ共通しているが… 職業は服装でだまされる。

対照的な二人だが、職種は同じ建築関係。キャップを被りジャケットに白パンツの男が社長で、「信託銀行員」風のスーツ姿は大工。ただし家は建国に関わる名家の子孫(ヤンキー)だが。キャップ男がスーツ男の出自と職業を知ると、なぜ大工になったのか、父が弁護士なら、なぜ弁護士にならかなったのかと問いただす。やがてスーツはぶち切れて…

セリフが聞き取りにくいのは、後ろ向きの発話が多いからか、翻訳のせいなのか。

蓬莱の演出。『不毛ドライブ』との〝対〟として選んだのか。

〈20の物語〉は短篇・中篇ゆえに、値段も上演時間も手頃で、音楽祭のラ・フォル・ジュルネ同様、一日で複数の舞台を楽しめる(『命を弄ぶ…』『不毛ドライブ』と『軽塵』『マクベス』はそれぞれバレエ『人魚姫』のマチネ公演後に見た)。演劇研修所の修了生が出演した無料公演『ベッカンコおに』は残念ながら見ることはかなわなかった。が、修了した役者たちを活かせる点も含め、新国立にふさわしい企画だと思う。この小川芸監の置き土産は、次の芸監もぜひ継続してほしい。