新国立劇場バレエ団『コッペリア』2017 全3キャスト

いまプティ版『コッペリア』の無観客ライブ配信をやっている。新国立劇場初演は2007年(ルシア・ラカッラ&シリル・ピエール x3/本島美和&レオニード・サラファーノフ x2/寺島ひろみ&山本隆之 x1 +ルイジ・ボニーノ 全日/ガーフォース=東フィル 全6公演)。2009年に再演(タマラ・ロホ&ホセ・カレーニョ x2/本島美和&カレーニョ x1, 江本拓 x2/寺島ひろみ&山本隆之 x1/小野絢子&八幡顕光 x1+ルイジ・ボニーノ x5, ゲンナーディ・イリイン x2/ガーフォース=東フィル 全7公演)、2017年が3回目の再演(全4公演)だった。この演目は一度もブログに書いていないが、17年の短い手書きメモが見つかったので転記した。

コッペリア』を全キャストで観た(2017年2月24日 金曜 19:00, 25日 土曜 13:00, 18:00/新国立劇場オペラハウス)。 

この演目は久し振り[上記の通り8年振り]。三回目のはずだが初めて見るような感触。たしかにドリーブの音楽はいい。艶っぽく、親しみやすく、牧歌的。セットはシンプル。

初日[小野絢子&福岡雄大+ボニーノ]。スワニルダの小野はコケティッシュでコミカルな役柄にはまっている。テレビカメラが入っているので緊張しているだろう[約1ヶ月後にNHK BS プレミアムシアターで放映]。フランツの福岡は緊張した様子を少しも見せず堂々と踊る。大したもの。もっと軽みや洒脱さがほしいけど、それは贅沢か。スワニルダの友人たちはみな好いが、特に寺田亜沙子は先週のバランシン[「ヴァレンタイン・バレエ」の『テーマとヴァリエーション』]同様、迷いがなくノッている。木村優里も感じを出している。コッペリウスを踊るボニーノの細かなニュアンスはさすがという他ない。衛兵の福田圭吾はとてもよい。キレの好さ、といってもやりすぎない。ポール・マーフィー指揮の東響はまずまずか。弦楽器はさらに繊細さがほしいが、ニキティンのソロはよかった。リーフレットはあまりに貧弱[いまなお販売プログラムは復活してない]。

第2幕。コッペリウスの家の中。第1幕がカミテに平行移動したかたち。鍵を拾ったスワニルダと友人たちはその中へ侵入。怖がりながらも好奇心からあちこち覗く娘たち。コミカルでカワイイ踊り。同時に人形的なのが意味深。そこへコッペリウスが帰宅する。コッペリウスとコッペリア(自動人形)の踊りは面白い。やがてスワニルダが人形と入れ替わりパ・ド・ドゥを踊る。オーボエ、トランペット。コッペリウスの喜び。孤独な老人の望外の、奇跡的ともいえる喜び。グッときた。小野も無心で応じる。スワニルダと人形が別人だと分かり、裸の人形を抱いて崩れる。ボニーノの粋な演技と踊りが舞台に生気を与えた。

広場。若い男女がペアで踊る。男の〝コマネチ〟まがいの動きは可笑しい[これを最初にやるのは第1幕のチャールダッシュの最後]。スワニルダとフランツも。ここでテーマの入りにヴァイオリン群が入れなかった。ひどい。指揮のせいか。二人の素晴らしい踊り。ラストに近づくと、群舞のなかにコッペリウスが人形を抱いて入ってくる。やがて人形がばらばらに。すごい作品。何度もカーテンコールが繰り返された。ボニーノの存在が大きい。

25日マチネ[米沢唯&井澤駿+菅野英男]。11列右寄り。米沢のスワニルダはプティのニュアンスはやや薄めだが、綺麗な踊り。対他的なやりとりが増すにつれ、コミカルな味が出てきた。井澤フランツは素晴らしい。これまで課題だった〝意志〟が出てきた。踊りは大きいし、綺麗で華もある。主役の演技。ヴァリエーションは素晴らしかった。菅野のコッペリウスはボニーノを見た後だと細かなニュアンスに物足りなさもあるが、それなりに踊り演技してはいる。友人では原田舞子が目に付いた。衛兵の福田圭吾は一つ抜きん出ている。井澤[衛兵]は福田と比べれば・・・[判読不能]下がるとしても出来栄えでは文句なし。

プティ独特の腰を振る、一方の肩を回す、頭をぷるぷる揺する、投げキスする、大きく開けた口を掌で押さえる、足を床に滑らせる等々。チャルダーシュ、ラッスーは男たち、フリスカで女たちが加わる。

第2幕。娘たちが怖がりながら踊る。コケットリーが出る踊り。人形振りとコケットリー。戻ってきたコッペリウス。コッペリア(人形)とパーティ。シャンパン。踊り。菅野はボニーノよりノーブル。・・・[判読不能]夢中で踊るときと、あーあ、所詮は人形だ、つまらない、のメリハリがよい。おかしみ、ペーソス。

フランツ登場。菅野と井澤のからみ、よい。なにが? 血の通った対話が成立した。菅野の力(二人は同門なのか)。コッペリアになりすました米沢スワニルダと菅野コッペリウスのやりとり。人形振りは半端ではない。井澤フランツの魂が吹き込まれて行くにつれ、コッペリアに扮したスワニルダ(米沢)は人間らしくなっていく。が、実は振りをしているだけの素の部分との演じ分けが素晴らしい。二人のパ・ド・ドゥ。涙が出た。(なぜ? 生きているから?)。コッペリアに扮したスワニルダのヴァリエーションは圧巻。米沢唯のよさが十二分に出た。

広場で。二人の踊り。フランツの踊り。カッコイイ。大きさ。出来栄えのよさ。裸の人形を抱いてコッペリウス登場。ボニーノのようなペーソスは出なかったが、考えさせられた。

オケは今日の方がよい。だが、全体的に透明感や叙情的な味が薄い。

25日ソワレ[池田理沙子&奥村康祐+菅野英男]。奥村フランツはよく動く。癖のある回転は残念。池田スワニルダは何でも・・・[判読不能]こなせるが、生のハラハラ感(どうなるのか)や面白みがもっと出ると好い。菅野コッペリウスは鍵を落とすシーンでハンカチからなかなか落ちず、振るい落とした! 疲れが出てきた(見る方の話[←ひどいな])。

5月のフィールドワーク予定 2021

3回目の緊急事態宣言(4月25日〜5月11日)により、またもや公演の中止が相次いだ。政権(政府)はこの一年間なにをしていたのか。政権が無能だと国民は不幸だが、それを許容したのは国民自身だからやむをえない(年内には衆議院選挙が控えている)。

中止になった新国立劇場バレエ団の『コッペリア』は1月の「ニューイヤーバレエ」同様、無観客の無料ライブ配信を決定した。今回は全4キャストを配信するという。「…無観客になってしまったことはとても残念ですが、 このような形で全国の皆さまにお届け出来ることを嬉しく思います。…今回デビューのダンサーたちもおりますし、同じ作品、振付でもキャストが変わるとこんなにも違うのだということを楽しんで頂けると思いますので、どうぞご期待ください」と、危機を好機に変える吉田都芸術監督は頼もしい。

BCJの定演は昨春の《マタイ受難曲》同様 8月に延期となった。変異株の影響から今のところ感染が収まる兆しはまったくない。11日で宣言が解除できなければ公演中止はさらに拡大するだろう。

こんな状況でも東京五輪の中止を決断できない政権(都知事)の人命軽視には、言葉もない。かつて岸田國士は危機(戦争)に対応しうる文化の「側衛的任務」を説いた。「結局いざといふ場合に、国民の本当の力を出し切ることのできない最大原因」人間性の無視といふものが瀰漫(びまん)してゐる」点にあるとし、「人間といふものはいつたいどんなものかといふことについて」「共通な認識を早くもたなければいかん」と訴えたのだ(「文芸雑記」1940)。あれから81年。戦時の岸田が憂えた文化の苦境は、残念ながら、ほとんど改善していない。むしろ悪化しているとさえいえる(近年の人文科学軽視や学術会議任命拒否問題等々)。この国はヒューマニティーズ(人間とは何か)に関わる教育が致命的なまでに欠けている。政権を担う人たちから〝文化/教養〟がほとんど感じられないのは、その証左だろう。人間性を学ぶには文学や哲学はもちろん、音楽を含む舞台芸術も「最良の学校」(バレンボイム)となる。ドイツのメルケル首相のように、クラシックコンサートを普通に楽しむ政治家はいないのか。オペラやバレエや演劇を愛好する政治家はどこにいるのか。

1日(土)14:00 新国立劇場バレエ団『コッペリア』振付:ローラン・プティ/音楽:レオ・ドリーブ/芸術アドヴァイザー&ステージング:ルイジ・ボニーノ・美術・衣裳:エツィオ・フリジェーリオ/照明:ジャン=ミッシェル・デジレ/指揮:冨田実里/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団小野絢子/フランツ:渡邊峻郁/コッペリウス:山本隆之 @新国立劇場オペラハウス→「緊急事態宣言発出に伴う政府等の要請を受け」公演中止→8日(土)14:00に無観客無料ライブ配信

2日(日)14:00 新国立劇場バレエ団『コッペリア』/スワニルダ:米沢 唯/フランツ:井澤 駿/コッペリウス:中島駿野新国立劇場オペラハウス→同日同時間に無観客無料ライブ配信

4日(火・祝)14:00 新国立劇場バレエ団『コッペリア』スワニルダ:木村優里/フランツ:福岡雄大/コッペリウス:山本隆之新国立劇場オペラハウス→同日同時間に無観客無料ライブ配信

5日(水・祝)14:00 新国立劇場バレエ団『コッペリア』スワニルダ:池田理沙子/フランツ:奥村康祐/コッペリウス:中島駿野 @新国立劇場オペラハウ→同日同時間に無観客無料ライブ配信

7日(金)19:00 BCJ #143 定演「バッハ結婚300周年〜ケーテンの愛」J.S.バッハブランデンブルク協奏曲第5番 BWV1050》《アンナ・マグダレーナの音楽帖より歌曲》《カンタータ「主なる神、万物の支配者よ」BWV120a》指揮:鈴木雅明/Sop:松井亜希&澤江衣里/Alt:青木洋也/Ten:櫻田 亮/Bas:渡辺祐介フラウト・トラヴェルソ:鶴田洋子/Vn:寺神戸 亮/Cho&Orch:バッハ・コレギウム・ジャパン @東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル→8月に延期(日時は未定)

9日(日)13:00 新国立劇場演劇『東京ゴッドファーザー』原作:今 敏/上演台本:土屋理敬/演出:藤田俊太郎/美術:乘峯雅寛/照明:日下靖順/音響:けんのき敦/衣裳:前田文子/ヘアメイク:川端富生/映像:横山 翼/振付:新海絵理子/演出助手:平井由紀/舞台監督:倉科史典/出演:松岡昌宏 マキタスポーツ 夏子 春海四方 大石継太 新川將人 池田有希子 杉村誠子 周本絵梨香 阿岐之将一 玲央バルトナー @新国立小劇場→「緊急事態宣言発出に伴う政府等の要請を受け」公演中止(払い戻して26日に取り直した)

15日(土)18:00 新日本フィル #39 定演 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉J.S.バッハ《ミサ曲 ロ短調 BWV 232》指揮:上岡敏之/ソプラノ:天羽明惠/ソプラノ:加納悦子/カウンターテナー:藤木大地/テノール:櫻田 亮/バス:加耒徹/合唱:IPCM連合合唱団(八千代少年少女合唱団 他)&ハルモニア・アンサンブル(男声)/合唱指揮:加藤洋朗上岡敏之の来日困難のため演目を J.S.バッハブランデンブルク協奏曲 全曲》に変更/指揮(ヴァイオリン)は崔 文洙に @すみだトリフォニーホール

18日(火)14:00 都響 #927 定演/サティ《バレエ音楽「パラード」》/サン=サーンス《ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 op.61》サン=サーンス交響曲第3番 ハ短調 op.78「オルガン付」》指揮:井上道義/ヴァイオリン:辻󠄀 彩奈/オルガン:石丸由佳 @東京芸術劇場コンサートホール

20日(木)18:30 新国立劇場オペラ《ドン・カルロ指 揮:パオロ・カリニャーニ/演出・美術:マルコ・アルトゥーロ・マレッリ/衣 裳:ダグマー・ニーファイント=マレッリ/照 明:八木麻紀/フィリッポ二世:ミケーレ・ペルトゥージ[健康上の理由により降板]→妻屋秀和/ドン・カルロ:ジュゼッペ・ジパリ/ロドリーゴ:髙田智宏/エリザベッタ:マリーナ・コスタ=ジャクソン[本人が降板を申し出たため]→小林厚子/エボリ公女:アンナ・マリア・キウリ/宗教裁判長:マルコ・スポッティ/修道士:大塚博章/テバルド:松浦麗/レルマ伯爵&王室の布告者:城 宏憲/天よりの声:光岡暁恵/合 唱:新国立劇場合唱団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団 @新国立劇場オペラハウス

22日(土)17:30 こまつ座 第136回公演『父と暮らせば』作:井上ひさし/演出:鵜山仁/出演:山崎一 伊勢佳世 @紀伊國屋サザンシアター

26日(水)19:00 新国立劇場演劇『東京ゴッドファーザー@新国立小劇場

30日(日)15:00〈コンポージアム2021〉武満徹作曲賞 本選演奏会審査員:パスカル・デュサパン/[ファイナリスト](エントリー順)ジョルジョ・フランチェスコ・ダッラ・ヴィッラ(イタリア)《BREAKING A MIRROR》/ヤコブ・グルッフマン(オーストリア)《TEHOM》/根岸宏輔(日本)《雲隠れにし 夜半の月影》/ミンチャン・カン(韓国)《影の反響、幻覚…》指揮:阿部加奈子/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団 @東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル

新国立劇場 オペラ《ワルキューレ》2021

ワルキューレ》の初日を観た(3月11日 木曜/新国立劇場オペラハウス)。奇しくも東日本大震災から10年目に当たる日だった。帰りの電車でツイートしたメモに少し加筆した感想を記す。

楽劇「ニーベルングの指環」第1日《ワルキューレ》全3幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉作曲・台本:リヒャルト・ワーグナー/演出:ゲッツ・フリードリヒ/美術・衣裳:ゴットフリート・ピルツ/照明:キンモ・ルスケラ/指揮:飯守泰次郎大野和士(11日・14日・17日・20日)/城谷正博(23日)飯守泰次郎は、昨年12月に手術を受けたため、本作品の規模を考慮し、現在の体調での指揮は困難であるとの判断から降板]管弦楽:東京交響楽団/協力:日本ワーグナー協会/後援:ドイツ連邦共和国大使館+ゲーテ・インスティトゥート東京

長丁場のワーグナーでは食事が気になる。いつもは用意したフードをフォワイエで食べていたが、いまは感染リスクからロビー・フォワイエの飲食は禁止。かといって食べに出て戻るのは40分+35分の休憩では時間的に不安(混んでるかもしれないし)。フォワイエ外のテラスに椅子はあるのか。ボックスオフィスに問い合わせたら、食事の場所に関する指示は届いてないと。たしか小劇場外の池の側にベンチがあったはず。そこで食べるか。花粉が多いなかの〝外食〟はちょっと辛いけど…。

…あれこれ心配したが、劇場内のブリッジに椅子が並べられており、そこで持参のフードを食べた。場外へ出かけていく人もけっこう居たな。 

[出演を予定していた招聘キャストは、緊急事態宣言の延長に伴い、新型コロナウイルス感染症に係る入国制限措置により出演が不可能となり…以下のとおり変更]

ジークムント:ダニエル・キルヒ→(第1幕)村上敏明/同(第2幕)秋谷直之/フンディング:アイン・アンガー→長谷川 顯/ヴォータン:エギルス・シリンス→(1/23 飯守泰次郎×関西フィルワーグナー特別演奏会」(ザ・シンフォニーホール)出演で来日していた)ミヒャエル・クプファー=ラデツキー/ジークリンデ:エリザベート・ストリッド→小林厚子/ブリュンヒルデ:イレーネ・テオリン→池田香織/フリッカ:藤村実穂子/ゲルヒルデ:佐藤路子/オルトリンデ:増田のり子/ヴァルトラウテ:増田弥生/シュヴェルトライテ:中島郁子/ヘルムヴィーゲ:平井香織/ジークルーネ:小泉詠子/グリムゲルデ:金子美香/ロスヴァイセ:田村由貴絵

とても好い公演だった。特に第3幕後半のヴォータンとブリュンヒルデ父娘のやりとりから幕切れまでこころが揺さぶられっぱなし。今回「オーケストラピット内の間隔を確保するため、アルフォンス・アッバスによる管弦楽縮小版」が用いられた。結果、オケに厚みがない分、ドラマのエッセンスがじかに届いてきたし、日本の歌手とオケとのバランスもよかった。〝化け物〟級の声量を誇る欧米のワーグナー歌手だとアッバス版では物足りなかったかもしれない。ただ「ヴァルキューレの騎行」ではさすがに重量感が足りなかったけど。

ジークリンデの小林厚子は初めて聞いたが歌唱に奥行きとメリハリがあり芝居も好い。第1幕のジークムント村上敏明は輝きある歌声(ベルカント)。ちょっと飛ばしすぎたか、後半「ベルゼ」絶叫の一回目はともかく二回目で腰砕けになり、続く「春の賛歌」をあっさり歌ったのは惜しい(このシーン フリードリヒの演出はちょっとショボい)。フンディングの長谷川顯を見るとキース・ウォーナー演出の「トウキョウ・リング」(2001–04)が懐かしくなる。役にぴったりのぶっきら棒で太い歌唱はいまも健在だった。

クプファー=ラデツキーは横暴で身勝手だが妻フリッカには頭が上がらないヴォータン造形が好かった。《フィデリオ》(2018)のドン・ピツァロでは声が埋もれがちだったが、今回はいい仕事をした。特に第2幕の長大で叙事的な語りは聞き応えがあった。日本の歌手との声量のバランスもよい。

池田香織は歌唱の強さと確かさに加え、父を見つめる後ろ姿に父を敬う娘らしさが滲み出ていた。彼女はメゾだよな。サーリアホのオペラ《遙かなる愛》(演奏会形式/2015)は歌手三人で一番好かった記憶がある。藤村実穂子は言葉と音楽を十全に融合させ的確に歌い切る。さすが。たしか藤村は「トウキョウ・リング」のフリッカ役が飛躍のきっかけだったはず。もう約20年が経つのか。

二幕のジークムント秋谷直之はタフな歌声とどこまでもサバイブしそうなあり方は役に合っていた。ヴァルハラについてブリュンヒルデに質問する所は大好きなシーン。日本のアーティストたちがここまでやってくれるとは! とても嬉しい。

何度かのカーテンコールの後、カーテンが降りて、退出順序のアナウンスが始まった。早く帰れと言わんばかりに。が、自分も含め何人かスタンディングで容赦なく拍手し続けたら、カーテンが上がった。初めてかも。歌手をサポートする大野和士の熱い棒が印象的だった。

4月のフィールドワーク予定 2021【追記・修正】

新年度がスタートする今月も少なめだが、見/聞き応えのある演目が並ぶ。恒例のBCJ定期《マタイ》は今回初めて優人氏が振る。つねに父 雅明氏と比較される〝宿命〟をどう乗りこえるか。一幕オペラのダブルビル《夜鳴きうぐいす/イオランタ》は引き続き海外招聘組の代わりに日本のアーティストが歌う。《イオランタ》はバレエ『くるみ割り人形』と同時上演されたチャイコフスキー最後のオペラだ。いつかこの劇場でその再現を見てみたい。5時間近い長丁場の三好十郎『切られの仙太』はどんな舞台になるのだろう。今月の新日本フィル定期は上岡の代わりに井上道義が振る。2017年初演の新国立《ルチア》は感心しない演出だが美術はとても好い。歌唱に集中しよう。 iaku『逢いにいくの、雨だけど』は3年振りの再見をとても楽しみにしている。

追記 アトレ会員の抽選に当たり新国立劇場オペラ《ルチア》を1階11列中央の良席で再見。初日よりさらに気持ちの入ったローレンス・ブラインリーの3幕アリアを堪能できた。『斬られの仙太』はフルオーディションで好い俳優が揃い、傷のない素晴らしい舞台(同じ条件でも三年前の『かもめ』はそうとは言えず)。新国立の演劇では久々にもう一度見たいと思い楽日のチケットを買ったが、三度目の緊急事態宣言 初日に当たり中止に。5月初めのバレエ『コッペリア』も同じ運命。政権はこの一年間なにをしていたのか。政権が無能だと国民は不幸だが、その存在を許してきたのは国民自身だから仕方ない。秋までに実施される衆議院選挙でも投票率が上がらなければ、この国の未来は…。】

2日(金)18:30 BCJ 定演 #142《マタイ受難曲》指揮:鈴木優人「ウイルス感染拡大による入国制限のため外国人歌手の来日が困難となり以下の通り変更」出演:テノールⅠ/エヴァンゲリスト:櫻田 亮 ソプラノⅠ:森 麻季 ソプラノⅡ:松井亜希 アルトⅠ:アレクサンダー・チャンス→久保法之 アルトⅡ:青木洋也 テノールⅡ:谷口洋介 バスⅠ/イエス:ドミニク・ヴェルナー→加耒 徹 バスⅡ:加耒 徹→加藤宏隆 合唱・管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパンサントリーホール

4日(日)14:00 新国立劇場オペラ 《夜鳴きうぐいす》〈新制作〉全3幕<ロシア語上演/日本語及び英語字幕付>+《イオランタ》〈新制作〉全1幕<ロシア語上演/日本語及び英語字幕付>「緊急事態宣言の延長に伴い、新型コロナウイルス感染症に係る入国制限措置により、充分な公演準備をしての出演が不可能となり…指揮者、出演者を以下のとおり変更」指揮:アンドリー・ユルケヴィチ→高関 健/演出・美術・衣裳:ヤニス・コッコス/アーティスティック・コラボレーター:アンヌ・ブランカール/照明:ヴィニチオ・ケリ/映像:エリック・デュラント/振付:ナタリー・ヴァン・パリス//ストラヴィンスキー作曲「夜鳴きうぐいす」夜鳴きうぐいす:ハスミック・トロシャン→三宅理恵/料理人:針生美智子/漁師:伊藤達人/中国の皇帝:ニカラズ・ラグヴィラーヴァ→吉川健一/侍従:ヴィタリ・ユシュマノフ/僧侶:志村文彦/死神:山下牧子/三人の日本の使者たち:高橋正尚、濱松孝行、青地英幸//チャイコフスキー作曲「イオランタ」ルネ:妻屋秀和/ロベルト:ユーリ・ユルチュク→井上大聞/ヴォデモン伯爵:ヴィクトル・アンティペンコ→内山信吾/エブン=ハキア:ニカラズ・ラグヴィラーヴァ→ヴィタリ・ユシュマノフ/アルメリック:村上公太/ベルトラン:大塚博章/イオランタ:エカテリーナ・シウリーナ→大隅智佳子/マルタ:山下牧子/ブリギッタ:日比野幸/ラウラ:富岡明子/合唱:新国立劇場合唱団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団 @新国立劇場オペラハウス

10日(土)13:00 新国立劇場演劇『切られの仙太』作:三好十郎/演出:上村聡史/出演:青山 勝 浅野令子 今國雅彦 内田健介 木下政治 久保貫太郎 小泉将臣 小林大介 佐藤祐基 瀬口寛之 伊達 暁 中山義紘 原 愛絵 原川浩明 陽月 華 山森大輔 @新国立小劇場

16日(金)19:15 新日本フィル定演 #632トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉バルトークルーマニア舞曲、ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 BB 48a/Sz. 36*/リムスキー=コルサコフシェエラザード op. 35指揮:上岡敏之井上道義、ヴァイオリン:豊嶋泰嗣*[芸術監督 上岡氏が来日不可の理由については以下の通り「現在、上岡敏之氏の体調はいたって健康とのことですが、数年前に大きな心臓の手術を受けております。新型コロナウイルスは血管を傷つける可能性が高いため、主治医からは長時間の渡航を禁止されております。また、ドイツでのワクチン接種が当初予定より遅れており、上岡氏の接種できる見通しも立っていないとのことです」2/18]すみだトリフォニーホール

18日(日)14:00 新国立劇場オペラ ガエターノ・ドニゼッティ《ルチア》全2部(3幕)〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉指揮:スペランツァ・スカップッチ/演出:ジャン=ルイ・グリンダ/美術:リュディ・サブーンギ/衣裳:ヨルゲ・ヤーラ/照明:ローラン・カスタン/[キャスト]ルチア:イリーナ・ルング/エドガルド:ローレンス・ブラウンリー/エンリーコ:マッティア・オリヴィエーリ[本人の都合でキャンセル]→須藤慎吾/ライモンド:伊藤貴之/アルトゥーロ」:又吉秀樹/アリーサ:小林由佳/ノルマンノ:菅野 敦/合 唱:新国立劇場合唱団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/共同制作:モンテカルロ歌劇場 @新国立劇場オペラハウス

20日(火)14:00  iaku『逢いにいくの、雨だけど』作・演出:横山拓也/出演:尾形宣久(MONO) 橋爪未萠里(劇団赤鬼) 近藤フク(ペンギンプルペイルパイルズ) 納葉 松本 亮 異儀田夏葉(KAKUTA) 川村紗也 猪俣三四郎(ナイロン100℃) /舞台美術:柴田隆弘/舞台監督:青野守浩/照明:葛西健一/音響:星野大輔(サウンドウィーズ)/衣装アドバイザー:阿部美千代(MIHYプロデュース)/演出助手:朝倉エリ/ドラマトゥルク:上田一軒/文芸協力:カトリヒデトシ/アンダースタディ:加茂井彩音 @三鷹芸術文化センター 星のホール

【23日(金)18:30 新国立劇場オペラ《ルチア》新国立劇場オペラハウス】←追加

25日(日)13:00 新国立劇場演劇『切られの仙太』作:三好十郎/演出:上村聡史 @新国立小劇場←三度目の緊急事態宣言発令のため中止

新国立劇場「舞姫と牧神たちの午後 2021」初日と楽日

舞姫と牧神たちの午後 2021」の初日と楽日を観た(3月26日 金曜 19:00, 28日 日曜 14:00/新国立小劇場)。

照明:杉浦弘行/音響:河田康雄

印象的なのは『かそけし』と『Butterfly』。あとは『Let’s Do It!』。以下ごく簡単にメモする。

『Danae』(DANCE to the Future 2019 にて初演)振付:貝川鐵夫/音楽:J. S. バッハ「無伴奏チェロ組曲第6番」よりサラバンド、「ピアノ[チェンバロ]協奏曲第5番」よりアリオーソ[第2楽章]、フルート・ソナタ第2番よりシチリアーノ[第2楽章](ケンプ編)/編曲:笠松泰洋/演奏(録音):奥泉貴圭(vc.)松木詩奈(pf.)

出演:木村優里&渡邊峻郁

初日は二年前の初演と同じ印象——〈ゼウスの性愛が絡むギリシャ神話といえば、「レダと白鳥(ゼウス) 」が有名だが、これは「アルゴスの姫ダナエと全能の神ゼウスとの情事を描い」た作品。冒頭とエンディングで使われる金色の紙切れはゼウスが変身した黄金の雨か。「エロティシズムの世界に身をゆだねていく」(貝川)バレエに、あえて官能的でない音楽を選んでいる。二人の踊りや身体性からそこはかとなくエロスを立ちのぼらせる目論見か。が、それは実現せず。振付はいいし、踊り自体は悪くないのだが。貝川は振付家としての才能を開花させつつある。本作もよいと思うが、今回のペアは役柄にあまりフィットしていない印象。貝川と小野絢子で見てみたい〉(2019年3月のメモ)。四回目の楽日は好くなっていた。特に木村のからだがほぐれ自分を開くあり方に少し近づいた印象。

『かそけし』演出・振付:島地保武/音楽・演奏:藤元高輝(gt.)/衣裳:萩野 緑/振付助手:大宮大奨

出演:酒井はな&森山未來

面白い! ニジンスキーの『牧神の午後』を島地流に換骨奪胎したような作品。酒井はなの魅力が存分に発揮され、始終、頬が緩んだ。つなぎのようなブルーの衣裳(男は首回りが、女はパンツの裾が紫色がかっている)。横歩き。ユニゾン、掛け合い等々。途中で酒井は回転しながらシモテへハケルと奥でガラガラバッシャーン、酒井の奇声等々。森山と手を繋いでメヌエットを踊るシークエンスはなんか懐かしかった(酒井の主演バレエをこの劇場でずっと見てきたから)。それを徐々に崩していく島地(なんでも崩さずにはいられない?)。酒井がギタリストを邪魔した後、何か発しながらハチャメチャに踊る(山崎広太みたい)。森山はかなり息が上がっていた(楽日はそうでもなかった)が、酒井は平気に見えた。藤元高輝のギター演奏は驚くほど質が高い。乾いた音色とリズム、かと思えば瑞々しい叙情的メロディ、突然ギターを叩く、こする、足で床を踏み鳴らず、喋る等々、じつに効果的。ラストで街のざわめきが聞こえる。なんだろう。この営為を相対化したかったのか。ダンスの時間とそれを取り巻く日常的時間の「境界線」を「ぼやけ」させ、その「かそけき」さまを表出するためか。

『Butterfly』(「舞姫と牧神たちの午後2005」で初演)構成・演出:平山素子/振付:平山素子&中川 賢/音楽:マイケル・ナイマン、落合敏行/演奏(録音):蛭崎あゆみ(pf.)/衣裳:堂本教子

出演:池田理沙子&奥村康祐(26日・27日18:30) 五月女遥&渡邊拓朗(27日13:00・28日)

ノイズとピアノ。初日は池田と奥村の全力ダンスになんか圧倒された。二人のよさがよく出ていた。『ペトルーシュカ』(2019年1月)以来の感動。平山本人が踊るとH. アール. カオス風のハードさが前面に出るが、池田だとむしろ〝健気さ〟も感じられる。奥村はバレエの様式性を気にせず思い切り踊れるコンテの方が合っているかも。髪型や衣裳、きれいに汚したメイキャップなどから、虐げられた者が過酷な現実にもめず何度も立ち上がっていく、みたいなストーリーが想い浮かんだ。この感慨はコロナの影響か。

楽日は五月女の運動能力の高さに目を見張った。自然界の運動の法則。不屈さ。男が女にへばりついてキープするシークエンスは、二人の身長差が大きいため、大丈夫か、と心配に。ここからピアノがメロディを弾き…。

『極地の空』 /構成・演出:加賀谷香/音楽・演奏:坂出雅海/衣裳:清水典子/稽古代役:薄田真美子

振付・出演:加賀谷 香&吉﨑裕哉

 薄闇の奥の台上で鑿を打つような音。ギターを琵琶のようにもっぱら低音弦を弾く。録音の人声、女声…。踊りは…途中で二人羽織みたいな振りもあったがよく分からない。ちょっと古くないか。「天守物語」? 玉三郎主演の舞台は見たが、こんな話だったか。

『Let’s Do It!』/音楽:ルイ・アームストロングコール・ポーター/衣裳:池田木綿子

出演・振付:山田うん&川合ロン

 ルイ・アームストロングの温かみのある歌声に合わせて、二人が動き、踊る(あれは変型二人羽織か)。山田は短パン。川合はスカート。コメディア・デラルテのような感触。山田を見ていて『道』のジェルソミーナが浮かんだ。川合はザンパノではないが、どっしりとした安定感がある。山田の〝人間性〟がこの時空を充実させている、そんな印象。

『A Picture of You Falling』より 振付・テキスト:クリスタル・パイト/音楽:オーウェン・ベルトン/作品指導:ピーター・チュー/衣裳協力:ネザーランド・ダンス・シアター

出演:湯浅永麻&小㞍健太

 英語の語り(録音)と男女の踊り。初日はあまり感情が動かず。楽日は、二人の呼吸もよく合って、思い切りのよい動きが楽しめた。〝言葉と動き〟からサミュエル・ベケットの後期の小品やT. S. エリオットの “La Figlia Che Piange” の詩句などを想起した…。二人はいいダンサーだとは思うが、この断片をラストにもってくる意図がよく分からなかった。ちょっと西洋礼賛の匂いも…。

3月のフィールドワーク予定 2021【再追記】

今月はバレエ/ダンス3,オペラ2,コンサート1,演劇1の計7公演と数は少なめだが、注目すべき点がいくつか。

新国立劇場オペラでは、先月に引き続き今月も《ワルキューレ》で「宣言延長・入国制限措置」のため出演者に変更が出ている。指揮者も当初の飯盛泰次郎が体調面の不安から大野和士と城谷正博に変わった。久々に大野の指揮でワーグナーが聴ける。2010年の《トリスタンとイゾルデ》以来だ。日本の歌手は長丁場のタフな楽劇でどこまで踏ん張れるか。ジークムントを1幕と2幕で別の歌手が歌うのも興味深い。聴くのはもちろん初めてだ。バレエでは『白鳥の湖』のオデットとオディールを別のダンサーが踊る例はあるが【この例は、別の役を同じダンサーで上演することが慣例化されていたのを、本来のやり方に戻すものともいえるけど…ややこしいな】。

吹田市主催の『白鳥の湖』がまさにそれ。大原永子監修の下、山本隆之の改訂振付・演出で米沢唯(オデットのみ)と井澤駿(ジークフリート)が出演し、オディール役は別キャスト。大阪公演は想定外だが、府の宣言解除に伴う追加販売(3/3)で席を確保。14ヶ月ぶりの帰省を利用して【やはり万が一にも高齢の親に感染させてはいけないと思い直し帰省は止めて、ただ】見ることにした。大原氏はスコットランドからリモートで「監修」するらしい。山本はどんな版を創るのだろう。新国立の「舞姫と牧神たちの午後 2021」では、先日米沢唯とコラボした島地保武の振付で酒井はな&森山未來が踊る。これも楽しみだ。

新日本フィル音楽監督の来日不可で苦境を強いられているが、今月のベートーヴェン《トリプル・コンチェルト》は注目だ。初めて聴いたのは、カラヤン指揮、オイストラフロストロポーヴィチリヒテルの共演が実現したレコード盤(もう手元にないが)。今回は鈴木秀美の指揮で、ヴァイオリンはコンマスの崔文洙、チェロは首席の長谷川彰子、ピアノに文洙の兄 崔仁洙の顔ぶれだ。期待したい。

7日(日)14:00 新国立劇場オペラ研修所 修了公演 オペラ《悩める劇場支配人》全1幕 イタリア語上演/字幕付/作曲:ドメニコ・チマローザ/台本:ジュゼッペ・マリア・ディオダーティ/指揮:辻 博之/演出:久恒 秀典/装置:黒沢 みち/照明:稲葉直人(ASG)/衣裳コーディネーター:増田恵美(モマ・ワークショップ)/管弦楽:新国立アカデミーアンサンブル/オペラ研修所長:永井和子/主催:文化庁文化庁委託事業「令和2年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」)+新国立劇場/出演:新国立劇場オペラ研修所 第21期生、第22期生、第23期生 @新国立中劇場

11日(木)16:30 楽劇「ニーベルングの指環」第1日《ワルキューレ》全3幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉作曲・台本:リヒャルト・ワーグナー指揮:飯守泰次郎大野和士(11日・14日・17日・20日)/城谷正博(23日)飯守泰次郎は、昨年12月に手術を受けたため、本作品の規模を考慮し、現在の体調での指揮は困難であるとの判断から降板]演出:ゲッツ・フリードリヒ/美術・衣裳:ゴットフリート・ピルツ/照明:キンモ・ルスケラ/[出演を予定していた招聘キャストは、緊急事態宣言の延長に伴い、新型コロナウイルス感染症に係る入国制限措置により出演が不可能となり…以下のとおり変更]ジークムント:ダニエル・キルヒ→(第1幕)村上敏明/同(第2幕)秋谷直之/フンディング:アイン・アンガー→長谷川 顯/ヴォータン:エギルス・シリンス→ミヒャエル・クプファー=ラデツキー/ジークリンデ:エリザベート・ストリッド→小林厚子/ブリュンヒルデ:イレーネ・テオリン→池田香織/フリッカ:藤村実穂子/ゲルヒルデ:佐藤路子/オルトリンデ:増田のり子/ヴァルトラウテ:増田弥生/シュヴェルトライテ:中島郁子/ヘルムヴィーゲ:平井香織/ジークルーネ:小泉詠子/グリムゲルデ:金子美香/ロスヴァイセ:田村由貴絵/管弦楽:東京交響楽団/協力:日本ワーグナー協会 @新国立劇場オペラハウス

【16日(火)14:00 「小倉尚人展—祈りと宇宙」日本橋高島屋S.C. 本館8階ホール】

18日(木)劇団銅鑼公演 ドラマファクトリーVol.12チムドンドン〜夜の学校のはなし〜』作:山谷典子/演出:藤井ごう/美術:乘峯雅寛/照明:鷲崎淳一郎/音響:近藤達史/衣裳:友好まり子/沖縄方言指導:今科子/舞台監督:村松眞衣/舞台監督助手:鈴木正昭/演出助手:池上礼朗/バリアフリーサービス:佐藤響子/切り絵:まちこ/宣伝美術:山口拓三(GAROWA GRAPHICO)/制作:佐久博美/[出演]山田昭一 谷田川さほ 説田太郎 館野元彦 竹内奈緒子 永井沙織 中村真由美 齋藤千裕 川口圭子 宮﨑愛美金子幸枝 青木七海 鵜澤秀行(文学座)/文化庁芸術振興費補助金舞台芸術創造活動活性化事業)独立行政法人日本芸術文化振興会/協力:NPO法人 珊瑚舎スコーレ/後援:日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会、一般社団法人協同総合研究所。一般社団法人日本社会連帯機構、SDGsいたばしネットワーク、一般社団法人若者協同実践全国フォーラム、東京中小企業家同友会 @劇団銅鑼アトリエ

21日(日)15:00 吹田市制施行80周年・開館35周年記念 第186回吹田市民劇場白鳥の湖』全幕 監修:大原永子/芸術監督・演出・改訂振付:山本隆之/音楽:P. I チャイコフスキー/原振付:マリウス・プティパ+レフ・イワノワ/[出演]オデット:米沢 唯/ジークフリート王子:井澤 駿/ロットバルト:宮原由紀夫/オディール:伊東葉奈/王妃:田中ルリ/家庭教師:アンドレイ・クードリャ/王子の友人:石本晴子、北沙彩、水城卓哉/道化:林 高弘 @吹田文化会館 メイシアター

26日(金)14:00 新日本フィル定演 #38 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉ベートーヴェン:ヴァイオリン、チェロとピアノのための三重協奏曲 ハ長調 op. 56*ベートーヴェン交響曲第 5 番 ハ短調 op. 67 「運命」指揮:鈴木秀美ソロ・コンサートマスター:崔 文洙(チェ・ムンス)チェロ:長谷川彰子ピアノ:崔 仁洙* @すみだトリフォニーホール

26日(金) 19:00 新国立劇場ダンス・コンサート「舞姫と牧神たちの午後 2021」[スタッフ]照明:杉浦弘行/音響:河田康雄『Danae』出演:木村優里&渡邊峻郁/振付:貝川鐵夫/音楽:ヨハン・ゼバスチャン・バッハ//『かそけし』出演:酒井はな&森山未來/演出・振付:島地保武/音楽・演奏:藤元高輝(gt.)//『Butterfly』(「舞姫と牧神たちの午後2005」で初演)出演:池田理沙子&奥村康祐/構成・演出:平山素子/振付:平山素子&中川 賢/音楽:マイケル・ナイマン、落合敏行//『極地の空』出演・振付:加賀谷 香&吉﨑裕哉/音楽・演奏:坂出雅海//『Let’s Do It!』出演・振付:山田うん&川合ロン/音楽:ルイ・アームストロング ほか//『A Picture of You Falling』より 出演:湯浅永麻&小㞍健太/振付:クリスタル・パイト/音楽:オーウェン・ベルトン @新国立小劇場

28日(日)14:00 新国立劇場ダンス・コンサート「舞姫と牧神たちの午後」『Butterfly』五月女遥&渡邊拓朗  他は同上 @新国立小劇場

【30日(火)映画『騙し絵の牙』監督:吉田大八/原作:塩田武士/出演:大泉洋松岡茉優宮沢氷魚池田エライザ斎藤工中村倫也坪倉由幸和田聰宏石橋けい/森優作/後藤剛範/中野英樹赤間麻里子/山本學佐野史郎リリー・フランキー塚本晋也國村隼木村佳乃小林聡美佐藤浩市 ほか @イオンシネマ板橋】

「音楽×空間×ダンス」第二回公演/米沢唯・島地保武の即興【追記】

「音楽×空間×ダンス」第二回公演を見た(28日(日)14:00/音の降りそそぐ武蔵ホール)。

             

ホールは建物の5階と6階に造られ、高い天井に吹き抜けた八角形の空間。キャパは134席だが、宣言下のいまは50席に制限している由。アシュケナージが選んだとの話もある(?)ベヒシュタインのピアノがカミテに陣取るフロアには、間をあけて椅子が3列、上階は1列だけの贅沢さ。音を聞くには上がよいそうだが、ダンスを見たいので下の三列目に座った。 ピアノは少々強めに響いたが、ダンサーはまさに手が届く距離。今回の衣裳は酒井はなさんが選んだらしい(上階にその姿が!)。

木ノ脇道元「UKIFUNE」

フルート:木ノ脇道元/ピアノ:松木詩奈

平均律のピアノが打ちつける打音と、十二に等分割された音程のあわいを揺れ動くフルート。その対照の妙。洋と和、もしくは男と女の絡みのようにも聞こえる。演奏後、笠松氏に促され、木ノ脇氏から題名の説明があった。「浮舟」は『源氏物語』の最後「宇治十帖」の登場人物の一人で…。

笠松泰洋「The garden in the South, or Solitude for piano」

振付・ダンス:島地保武/ピアノ:松木詩奈

ピアノが奏されるなか、男(島地)がカミテのドアから登場。縦ストライプの黒いセットアップに柄入りの金茶半袖シャツに素足のいで立ち。客席の間をゆっくり通って観客を睥睨する。舞踏のような感触。山崎広太を想起させる激しい動き等々(彼を初めて見たのは広太の作品で新国立中劇場だった)。やがて音楽がわらべ唄調に変わると、動きや踊りもとぼけた感じに。大きさと存在感。作曲の素材は南米での体験が元らしい。(ピアニストの松木氏が素足なのはダンサーに合わせたのかと思った。が、笠松氏によれば、このピアノはペダルの踏み加減で音が繊細に変わる名器なので、自分も靴を脱いで弾くとのこと。)

 J. S. バッハ「無伴奏フルート パルティータ」よりCorrente

振付:島地保武/ダンス:米沢 唯/フルート:木ノ脇道元

シモテから米沢が登場。鮮やかな模様のパンツルックはアルレッキーノを連想させる。眼に見えない捉えられないなにかを掴もうとしているような動き等々。

ドビュッシー前奏曲集第1巻」より「デルフィのの舞姫達」「アナカプリの丘」「亜麻色の髪の乙女

ピアノ:松木詩奈

響きが強い。近いからなのか、ピアニストのパトスが強いせいなのか。 

即興演奏×ダンス

ダンス:米沢唯/ピアノ:笠松泰洋

ギリシャの巫女のようなアイボリーの衣裳。静かな動きのなかに精神の充溢が感じられる。長いドレスからニョキッと現れる鍛え抜かれた脚の美しさ。

ここで休憩20分。

木ノ脇道元「月は有明のひんがしのやまぎはに細くていづるほどいとあはれなり」

ダンス:島地保武/1stフルート:鎌倉有里/2ndフルート:畢暁樺/3rdフルート:棚木彩水/アルトフルート:中村淳/バスフルート:木ノ脇道元

トイレから出たら拍手が。ぎりぎりセーフ。間接外しのような動きや…あまり覚えていない。 というかコンテの動きは言葉にしがたい。 

シューベルト「三つのピアノ曲」D946より第二曲

ピアノ:松木詩奈

出だしと終わりに抒情的で少しメランコリックなフレーズがある。が、このピアニストは激しい中間部のパートに気持ちが入る印象。やはりパトスが強いのかもしれない。

即興演奏×ダンス

ダンス:米沢唯 島地保武/フルートなど:木ノ脇道元/ピアノなど:松木詩奈/ピアノ・オーボエなど:笠松泰洋

島地は朱色のパンツにベージュのノースリーブ。米沢は先の〝アレッキーノ〟風パンツにトップスはブルーのノースリーブ。どちらのトップスもイッセイミヤケ風のプリーツ付き。まず〝狂人〟島地の登場。身体の奥からこわばりの奇声を発し笠松が座るピアノの鍵盤を叩く。笠松がそれに合わせて…。カミテでそれをクールに見詰めていた米沢がゆっくりとそこに介入していく…。島地はピアノの突起か傷跡かなにかを何度も指さす。すると米沢もそこを指で押すと、松木がチーンと鳴らす機敏さ。…米沢は『ジゼル』のミルタみたいにアラベスク・パンシェ(見事!)したり、片脚を上げて、どこに向かうか分からないという風にふらついた自己放棄ぶり、それを後ろから島地が何度も受け止めサポートする。あるときはぎりぎりで受け止め「危なかった!」と胸を撫で下ろす。これは沼地のパ・ド・ドゥのパロディなのか。そうして彼女をモノみたいに抱き留めたまま客席の方へ近づき、なんかつぶやく(差し上げますとでも言ったのか)。これに米沢がすねてみせると、「もうしません」と島地。あるいは、米沢のふくらはぎをモミモミして、米沢にパシッと叩かれる。これは『眠り』の猫のパロディか(一週間前『眠り』の米沢を見に来たらしい)。呟きが止まない島地に、米沢が自分の口を手で塞ぐと、「喋らない?」「バレエは喋らない」と懲りずにつぶやく島地。ここからラップ風になり、なにかの拍子に「くるみ割り人形」とつぶやくと、すかさず木ノ脇がバスフルートで「くるみ」のメロディを。すると松木笠松の弾くピアノに参戦し、その伴奏をつける。米沢はそれらしい踊りを始める…(「中国」だったか「葦笛」か? 思い出せない)。【…色々あって、再び米沢がピアノを指さしながら近づき例の部分を押すと松木が「チーン」。これが終了の合図となった。】

拍手で何度も呼び戻されるアーティストたち。実に楽しい時間だった。こんな近くでダンスや演奏を享受できる機会はめったにない。笠松さん、ぜひまたやってください。

【米沢唯と笠松泰洋が初共演した「DANCE to the Future 2016 Autumn」のメモはこちら(フルートの木ノ脇道元氏も出演していた)。「DANCE to the Future 2019」の初日と楽日はこちら。】