3月のフィールドワーク予定 2026【追加】

法事で離京したため遅くなったが、今月はコンサート1,バレエ4,ダンス1の計6公演。バレエは同じ『マノン』のキャスト違いで演目としては3と少なめ。

BCJはコラールカンタータ300年プロジェクトの最終回で会場はサントリー。『マノン』はバレエに魅せられた切っ掛けの演目。6年前の公演はコロナ禍の最初期と重なり、中止になった米沢・井澤ペアがやっと日の目を見る。どんな舞台を見せてくれるか。ダンスはフォーサイス作だがバレエ団の出演はない。

【映画『金子文子』を追加。2019年にイ・ジュンイク監督の『金子文子と朴烈』がイメージ・フォーラムで上映された。史実への関心から最後まで見たが、映画としてはいまひとつだった。今回はどうか。】

7日(土)BCJ #171 定演 教会コラールカンタータ・シリーズ vol. 94「コラールカンタータ 300年プロジェクト Ⅹ」(第10回/全10回)プレトーク/J. S. バッハ:〈平安と喜びをもって、私は逝こう〉BWV 616*/〈キリスト、神の子羊〉BWV 619*/《幻想曲とフーガ ハ短調》BWV 537*/カンタータ第1番《何と美しいことでしょう、暁の星が照り輝くのは》BWV 1/カンタータ第125番《平安と喜びをもって、私は逝こう》BWV 125/カンタータ第126番《我らを保たせたまえ、主よ、あなたの御言葉のもとに》BWV 126/カンタータ第127番《主イエス・キリスト、真の人にして神》BWV 127/指揮・オルガン独奏*:鈴木雅明/ソプラノ:松井亜希/アルト:ティム・ミード/テノール:吉田志門/バス:加耒 徹/合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン @サントリーホール 大ホール

【12日(木)15:15 映画『金子文子 何が私をこうさせたか』監督:浜野佐知/脚本:山﨑邦紀/企画:鈴木佐知子/撮影監督:高間賢治/照明:上保正道/録音:山口勉/美術:佐々木紀貴/セットデザイン:中嶋義明/衣装:青木茂/ヘアメイク:小堺なな/編集:目見田健/音楽:吉岡しげ美/助監督:永関勇/制作:森満康巳/[配役・出演]金子文子:菜葉菜/朴烈:小林且弥/立松懐清:三浦誠己/片山和里子:洞口依子/池田マサ:白川和子/前田吉文:結城貴史/長沢カネ:和田光沙/沼部よき江:鳥居しのぶ/大西ヤスエ:咲耶/吉川巳之吉:佐藤五郎/西田税:足立智充/財津富蔵:贈人/北一輝:浅野寛介/望月桂:森了蔵/牧野菊之助:関根大学/13歳の金子文子:巣山優菜/草野康太/伊藤雄太/紫木風太/小水たいが/藤本タケ/室井誠明/荒木太郎/柳束史/香月トヨ:大方斐紗子/秋山要:菅田俊/文子の朝鮮の祖母:吉行和子/2025年製作/121分/PG12/日本/配給:旦々舎 @ユーロスペース】←追加

19日(木)18:30 新国立劇場バレエ団『マノン』振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ/編曲:マーティン・イェーツ/美術・衣裳:ニコラス・ジョージアディス/照明:沢田祐二/監修:デボラ・マクミラン[主演]マノン:小野絢子/デ・グリュー:福岡雄大/レスコー:奥村康祐/ムッシューG.M.:中家正博/レスコーの愛人:木村優里/物乞いのリーダー:水井駿/娼家のマダム:湯川麻美子/看守:小柴富久修/指揮:マーティン・イェーツ/管弦楽:東京交響楽団 @新国立劇場オペラハウス

20日(金祝)18:00 新国立劇場バレエ団『マノン』マノン:米沢 唯/デ・グリュー:井澤 駿/レスコー:渡邊峻郁/ムッシューG.M.:中家正博/レスコーの愛人:木村優里/物乞いのリーダー:石山 蓮/娼家のマダム:関 優奈/看守:小柴富久修 @新国立劇場バレエ団

22日(日)13:00 新国立劇場バレエ団『マノン』マノン:柴山紗帆/デ・グリュー:速水渉悟/レスコー:木下嘉人/ムッシューG.M.:中家正博/レスコーの愛人:山本涼杏/物乞いのリーダー:上中佑樹/娼家のマダム:湯川麻美子/看守:渡邊拓朗 @新国立劇場オペラハウス

22日(日)18:00 新国立劇場バレエ団『マノン』マノン:米沢 唯/デ・グリュー:井澤 駿/レスコー:渡邊峻郁/ムッシューG.M.:中家正博/レスコーの愛人:木村優里/物乞いのリーダー:石山 蓮/娼家のマダム:関 優奈/看守:小柴富久修 @新国立劇場バレエ団

25日(水)19:00 新国立劇場バレエ「フレンズ・オブ・フォーサイス」〈日本初演〉企画・振付:ウィリアム・フォーサイス/企画・振付・出演:ラフ・"ラバーレッグズ"・ヤシット/振付・出演:レックス・イシモト(都合により降板25.3.5)→マット・ラック ライリー・ワッツ ブリゲル・ジョカ JAコレクティブ エイダン・カーベリー ジョーダン・ジョンソン/技術監督:ニールス・ランズ/カンパニーマネジメント:Plan B - Creative Agency for Performing Arts Hamburg @新国立小劇場

二兎社公演『狩場の悲劇』2025

二兎社公演『狩場の悲劇』の初日を観た(11月7日金曜18:00/紀伊國屋サザンシアター)。

以下、昨年の11月15日にポストした感想メモを貼り付ける。

原作:アントン・チェーホフ/脚色・演出:永井 愛/美術:大田 創/照明:中川隆一/音響:市来邦比古/衣裳:竹原典子/ヘアメイク:川村和枝(p.bird)/演出助:内田倭史/舞台監督:澁谷壽久/宣伝美術:永瀬祐一(BATDESIGN inc.)/宣伝写真:西村 淳/宣伝ヘアメイク:清水美穂 甲斐美穂/ロシア言語・文化アドバイザー:石川ヒロ/ドラマトゥルク:松井憲太郎/票券:熊谷由子/制作助手:大友 泉 佐伯凛果/制作:白坂恵都子 持田有美/出演:溝端淳平 門脇 麦(体調不良のため降板)→原田樹里 玉置玲央 亀田佳明 大西礼芳 加治将樹 岡田地平 ホリユウキ 水野あや 石井愃一 佐藤 誓/企画・製作:二兎社

舞台は新聞社編集長(亀田)の書斎。予審判事のセリョージャ(溝端)が原稿「狩場の悲劇」の採否を聞きに来る。まだ読んでない。じゃ返してくれ。探して返すが、いきなりその場で物語が始まるメタ構造。

原作だと編集長が原稿を読者に紹介する態で、それが全体の9割余を占める。そこに編集長(А・Ч)の注が付され、稚拙な箇所、作者が抹消し、編集長が「粗暴」さに「呆れて」削除した条り等が示される。

舞台では、編集長がその場で物語にツッコミを入れ、虚構(小説内小説の作者=セリョージャと編集長の対話)の地平とさらに奥の虚構(小説内小説)の地平が交差する。そのあり方が巧みで面白い。

キャラクターはみなコミカルにデフォルメされ、やや単純化される(当初は原作の造形とつい比較したが、前半中頃から舞台の面白さにナルホドと説得された)。

物語が終わり、実はすでに読んでいた編集長が、肝心の真犯人が書かれていない、犯人はあなただと。ここまでは原作の結末と同じ。がそれだけではない。オーレニカ(原田)をあのように変貌させたのはなぜか、それを描かなければ…(原作にも示唆はある)。

さらに、編集長はА・Ч=アントーシャ・チェホンテ(チェーホフ)さんと呼びかけられ、登場人物たちからツッコミが入る。注で言い訳せず本文でちゃんと書けよと。悲喜劇的ドタバタにチェーホフ批評のオチ。つまりはメタ+メタ構造だ。この結末には驚愕哄笑。あの長編小説からこんな脚本が書けるのか。

階級差の問題やポーランド(カエタン/加治)とロシアの非対称な関係等々を肉付け等(これ自体もチェーホフ批評だ)。さすが永井愛。

配役はみな適材適所。編集長の亀田が素晴らしく、その場との別次元を体現できる希有な役者。溝端はいかにもセルゲイみたいにやりそう(!)だし、オーレニカ代役の原田はあの変貌をよく演じ、ナージェニカ大西は令嬢がいつの間にコメディエンヌ? ウルベーニン佐藤は舞台を落ち着かせ、ソージャ/スイチーハの水野はドラマに深みを与え、森番/カリーニン石井は笑いのツボを外さぬ得がたさ…等々。役者はみな好演した。

原作は中公の全集版で読んだが文庫も出ていたのか。戯曲は11/21頃に出るという。(2025/11/13ポスト)

2月のフィールドワーク予定 2026【追加】

今月はバレエ4,コンサート2,演劇4の計10公演。

バレエは新制作を含む新国立トリプルビルのキャスト別(重複含む)を3公演(+クラスレッスン見学会)見る。同劇場の研修所修了公演を見るのは久し振りだがビントレー作品が楽しみ。

コンサートは、大塚直哉のレク・コンで「音の建築」をテーマにJ.S.バッハのインヴェンションとシンフォニアが演奏され、N響定期ではフルシャがブラームスのセレナード等を振る。

演劇では、新国立の本舞台で何度もイプセンを取り上げた研修所所長の宮田慶子が『社会の柱』で修了公演を演出し、世田谷は藤本有紀が劇化した鏡花の『黒百合』を杉原邦生が演出する。KAATの岡田版 夢幻能『未練の幽霊と怪物』第2弾のサブタイトルは「珊瑚」と「円山町」。埋め立てられた辺野古の「珊瑚」と渋谷のかつての歓楽街が幻視されるのか。劇団銅鑼の新作サブタイトル「本を焼き尽くす悪魔」はブラッドベリの『華氏451』を想起させるが、『HOPE』も言論弾圧が主題なのか。

【『未練の幽霊と怪物』をもう一度見たくなり追加。】

5日(木)19:00 新国立劇場バレエ団「バレエ・コフレ 2016」『A Million Kisses to my Skin』振付:デヴィッド・ドウソン/音楽:ヨハン・ゼバスティアン・バッハ/美術:デヴィッド・ドウソン/衣裳:竹島由美子/照明:バート・ダルハイゼン/出演:直塚美穂 花形悠月 飯野萌子 五月女遥 木村優里 根岸祐衣 渡邊峻郁 山田悠貴 中島瑞生//『ファイヴ・タンゴ』<新制作>振付:ハンス・ファン・マーネン/音楽:アストル・ピアソラ/美術・照明:ハンス・ファン・マーネン/衣裳:ジャン=パウル・フローム/出演:小野絢子、福岡雄大//『テーマとヴァリエーション』振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/美術:牧野良三/衣裳:大井昌子/照明:磯野 睦/出演:米沢 唯、速水渉悟/指揮:冨田実里/管弦楽:東京交響楽団/ピアノ:高橋優介(A Million Kisses to my Skin)@新国立劇場オペラハウス

6日(金)15:45~17:00 新国立劇場バレエ団 クラスレッスン見学会 @新国立劇場オペラハウス

6日(金)19:00 新国立劇場バレエ団「バレエ・コフレ 2016」『A Million Kisses to my Skin』東 真帆 赤井綾乃 小野絢子 堀之内咲希 山本涼杏 川口 藍 水井駿介 石山 蓮 森本晃介//『ファイヴ・タンゴ』木村優里、渡邊峻郁//『テーマとヴァリエーション』柴山紗帆、李 明賢/指揮:冨田実里/管弦楽:東京交響楽団/ピアノ:高橋優介(A Million Kisses to my Skin)@新国立劇場オペラハウス

7日(土)13:00 新国立劇場バレエ団「バレエ・コフレ 2026」『A Million Kisses to my Skin』直塚美穂 花形悠月 飯野萌子 五月女遥 木村優里 根岸祐衣 渡邊峻郁 山田悠貴 中島瑞生//『ファイヴ・タンゴ』奥田花純、井澤 駿//『テーマとヴァリエーション』米沢 唯、速水渉悟/指揮:冨田実里/管弦楽:東京交響楽団/ピアノ:高橋優介(A Million Kisses to my Skin)@新国立劇場オペラハウス

8日(日)14:00 大塚直哉レクチャー・コンサート 第13回 ~音の建築―インヴェンションとシンフォニア~/出演:大塚 直哉(ポジティフ・オルガン、チェンバロ、お話)/ゲスト:中山英之(建築家)/曲目:J. S. バッハ:インヴェンションとシンフォニア(全曲)/主催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団/後援:一般社団法人 全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)@彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール

10日(火)18:00 新国立劇場 演劇研修所 第19期生修了公演『社会の柱』/作:ヘンリック・イプセン/翻訳:アンネ・ランデ・ペータス/演出:宮田慶子/美術:池田ともゆき/照明:中川隆一/音響:信澤祐介/衣裳:西原梨恵/演出助手:日沼りゆ(第15期修了)/舞台監督:松浦孝行/出演:[研修所第19期生]井神崚太,大田真喜乃,菊川斗希,﨑山新大,田村良葉,千田 碧,辻坂優宇,中島一茶,野仲咲智花,向井里穂子,森 唯人,和田壮礼/[研修所修了者]日沼りゆ(第15期修了),小林未来(第17期修了),立川義幸(第17期修了),篁 勇哉(第18期修了)/主催・制作:新国立劇場/演劇研修所長:宮田慶子/後援:ノルウェー大使館 @新国立小劇場

12日(木)14:00 『黒百合』原作:泉 鏡花/脚本:藤本有紀/演出:杉原邦生/音楽:宮川彬良/美術:堀尾幸男/照明:北澤 真/音響:稲住祐平/衣裳:西原梨恵/ヘアメイク:国府田圭/振付・ステージング:下島礼紗/所作指導:藤間貴雅/演出助手:山下 茜/舞台監督:南部 丈/世田谷パブリックシアター芸術監督:白井 晃/出演:木村達成 土居志央梨 岡本夏美 白石隼也 村岡希美 田中佑弥 新名基浩 猪俣三四郎 内田靖子 鈴木菜々 佐藤俊彦 大西多摩恵 外山誠二 白石加代子/スウィング:小林宏樹 松本祐華/主催:公益財団法人せたがや文化財団/企画制作:世田谷パブリックシアター/企画協力:松竹株式会社/後援:世田谷区/協賛:東邦ホールディングス株式会社 トヨタ自動車株式会社/協力:東急電鉄株式会社/助成:文化庁文化芸術振興費補助金 劇場・音楽堂等機能強化推進事業(劇場・音楽堂等機能強化総合支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会@世田谷パブリックシアター

15日(日)14:00 神奈川芸術劇場プロデュース『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」―』作・演出:岡田利規/音楽監督:内橋和久/謡手:里アンナ/出演:アオイヤマダ 小栗基裕(s**t kingz)/石倉来輝 七瀬恋彩 清島千楓 /片桐はいり 演奏:内橋和久/美術:中山英之/照明:横原由祐/音響:佐藤日出夫/衣裳:Tutia Schaad/ヘアメイク:谷口ユリエ/演出助手:中村未希/舞台監督:横沢紅太郎/主催・企画制作:KAAT 神奈川芸術劇場/助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会 @KAAT 大スタジオ

19日(木)19:00 N響 #2059 定演 B-1/ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品53/ブラームス:セレナード 第1番 ニ長調 作品11/指揮:ヤクブ・フルシャ/ヴァイオリン:ヨゼフ・シュパチェク @サントリーホール

25日(水)19:00 劇団銅鑼公演 #63『HOPE〜本を焼き尽くす悪魔〜』作:斎藤栄作/演出:金澤菜乃英/美術:阿部一郎/照明:鷲崎淳一郎/衣装:藤田 友/音響:坂口野花/音楽:寺田テツオ/振付:下司尚実/殺陣:梶武志/舞台監督:長沼 仁/演出助手:佐藤 凜/舞台監督助手:大竹直哉/音声ガイド:佐藤響子/字幕サポート:舞台ナビLAMP/イラスト:さいとうりえ/宣伝美術:山口拓三(GAROWA GRAPHICO)/制作:平野真弓/出演:栗木 純 館野元彦 野内貴之 亀岡幸大 池上礼朗 北畠愛美 中山裕斗 立花三緒 松田直人/助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動)|独立行政法人日本芸術文化振興会 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【東京ライブ・ステージ応援助成】/後援:駐日リトアニア大使館 公益社団法人日本図書館協会/協力:千代田区立日比谷図書文化館 @劇団銅鑼アトリエ

【28日(木)19:00 神奈川芸術劇場プロデュース『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」―』作・演出:岡田利規/音楽監督:内橋和久/謡手:里アンナ/出演:アオイヤマダ 小栗基裕(s**t kingz)/石倉来輝 七瀬恋彩 清島千楓 /片桐はいり 演奏:内橋和久 @KAAT 大スタジオ】←追加(再見)

28日(土)14:00 新国立劇場バレエ研修所公演「エトワールへの道程 2026-新国立劇場バレエ研修所の成果-」[オープニング作品]音楽:リヒャルト・ワーグナー『En Bateau』振付:デヴィッド・ビントレー/音楽:クロード・ドビュッシー//[自作自演作品](上演日未定/録音音源使用)『Urban Pulse』振付・出演:桑山奈那子/音楽:ニコライ・カプースチン/『Heat』振付・出演:小寺夏鼓/音楽:De La Guarda/『Warmth』振付・出演:富加見 優/音楽:アベル・コジェニオウスキ//『タリスマン』よりパ・ド・ドゥ/振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリーゴ//『白鳥の湖』第3幕より黒鳥のパ・ド・ドゥ/振付:マリウス・プティパ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー//『眠れる森の美女』第3幕より/振付:マリウス・プティパ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/出演:新国立劇場バレエ研修所 第21・22・23・24期生/ゲスト出演:石山 蓮(新国立劇場バレエ団 ファースト・アーティスト),森本晃介(新国立劇場バレエ団 アーティスト)/指揮:冨田実里/管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団/主催:新国立劇場 @新国立中劇場

山崎広太 劇場プロジェクト 新作ダンス『机の一尺下から陰がしのび寄ること』2022

山崎広太の新作ダンス『机の一尺下から陰がしのび寄ること』初日を観た(12月28日 水曜 19:30/BankART Station 横浜)。

以下、2022.12.29, 30のポストを再掲する。

振付:山崎広太/ダンス:穴山香菜、岩渕貞太、小暮香帆、鶴家一仁、西村未奈、宮脇有紀、山野邉明香、山崎広太/音楽:大谷能生、永井健太/美術:山村俊雄/照明:岩品武顕/衣装:GAZAA さとうみち代、山崎広太/音響:齊藤梅生/舞台監督:河内崇/制作:霜村和子/制作協力:岩中可南子、くわはらよしこ/Flier design:Suzuki Seiichi Design Office/主催:一般社団法人ボディアーツラボラトリー/協賛:蟻鱒鳶ル/助成:文化庁「ARTS for the future! 2」補助対象事業/レジデンス協力:Dance Base Yokohama

三部構成+エンディングの80分。第三部の下駄踊りに心が動いた。素足女と下駄女のデュオで後者の木暮香帆がパドブレみたいにケタケタ進みながら上半身を嬉しそうに動かす。その喜びは即こちらに伝播した。初めてポアントで踊った時の喜びみたい。続く下駄踊りの群舞は壮観だった。男(鶴屋一仁)が下駄足を高く上げ、かけ声かけてステップし、見得を切る…。広太が奇声を発し意味不明の言葉を喋りつつ激しく踊る。あっという間にシモテから場外へ消え、怒濤のごとく再登場しエネルギッシュに踊る。グッときた。

かつて『Hyper Ballad』(2001年3月/新国立中劇場)『ショロン』(2001年5月/シアターコクーン)『浄められた夜』(2001年6月/芸劇小ホール)で広太が見せた岩石をドリルで穿つような〝ハチャメチャ〟ダンスを、この下駄ダンスが一瞬で照射した。この〝ハチャメチャ〟は実はとても繊細に分節化されている。そう感じた。

竹内敏晴は山崎広太を見て「これこそダンス」と言ったという。演出家の竹内によれば、「演劇は、日常のルールにのっとった行動を、新しく組み立てた約束事によってぶちこわし、その裂けめからなまなましく奔騰してくるものを突きつける装置」、「演技[アクション}とは、日常生活の約束事…によって疎外されている「生きられる世界」…をとりもどす試み」「からだを根源的にとり返す試み」のこと。竹内の演劇(演技)論は、ダンスにそのまま当て嵌まる。広太の下駄ダンスは、まさに「からだを根源的にとり返」し「からだを劈く」試みだった。単なるハチャメチャではこうはいかない。「これこそダンス」だ。12/29 ツイート

下駄履き8人の輪舞は盆踊りやアフリカの民族舞踊を想起させた。地霊と交歓する祭礼に見えたから。裏返った男2人を背景に西村未奈が語り踊る冒頭、四つん這いで始まる群舞、妖艶な仏像を思わせる西村のコーダは、気を蓄え噴出する下駄ダンスの工程/行程だったのか。キツい年の瀬[オペ入院前の検査等々]に観られたのは僥倖だった。12/30 ツイート

 

新国立劇場バレエ団 新制作『くるみ割り人形』2025-26 ②

新制作『くるみ割り人形』の初日・2日目夜・5日目・7日目昼・夜・11日目(新国立劇場オペラハウス)の感想その②

①では主に振付演出についてメモした。チャイコフスキーの三つのバレエでは『くるみ』が一番好きだ。『くるみ』の音楽はどれも好いが、特に「樅の森」と「パ・ド・ドゥ」は素晴らしい。「花のワルツ」から「パ・ド・ドゥ」へのトランジションにいつも引き込まれる。それがタケット版で無惨に切断されてしまった(詳しくはで)。

以下、キャスト別に舞台の感想を簡単に記す。

初日 19日(金)19:00[1F15列中央]クララ&金平糖の精:米沢 唯/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割りの王子:渡邊峻郁/ドロッセルマイヤー:福岡雄大/ダンス教師&ねずみの女王:根岸祐衣/わたあめ:花形悠月/ゼリー:宇賀大将、菊岡優舞/キャンディ:飯野萌子/ポップコーン:上中佑樹、山田悠貴、樋口 響/フォンダンローズ:直塚美穂、木下嘉人/指揮:マーティン・イエイツ/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/合唱:東京少年少女合唱隊/合唱指揮:長谷川久恵

福岡ドロッセルマイヤーは支配的なキャラ造形で、2幕のディヴェルティスマンでも階段上から常時舞台に視線を向ける。役というより、リハーサル指導補佐がダンサーの踊りに睨みをきかせている感じ。

米沢はつねに快活なクララを生きていた。特にパ・ド・ドゥではこれまでと感触が異なり、快活で明るい。タケット版を理解した上でのあり方だろう。【パーティの終わりでクララがドロッセルマイヤーの助手との別れ際、米沢クララは渡邊助手をチラッと後ろ見する仕草。恋の芽生えがよく出ていた。】

渡邊峻郁のドロッセルマイヤーの助手/くるみ割りの王子は、いまひとつノーブルに見えない。特に二幕でドロッセルマイヤーに促されシェフパティシエやマイスターにクララとの経緯を説明するマイムは、あれでいいのか。

関優奈シュタールバウム夫人は役にフィット、演技と踊りに奥行きがある。

根岸は、ステッキで厳しく指導するダンス教師にぴったりだ。

上中兵士人形、五月女コロンビーヌ人形、森本亮介ハーレキン人形、みなよい。

花のワルツ/ファンダンローズの直塚・木下ペアはとてもよい。直塚はここ初台では少し変則的に見えたラインが、伸びやかで美しくなった(ロシア風からロイヤル風にアジャストしたのか)。木下のたしかなサポートがそれを支えた。

イエイツが振ると響きが瑞々しい。オケに酸素が行き渡っているかのよう。フルートがよい。たぶん神田氏か。チェロも好い、たぶん服部氏か。コンマスは不明。

20日(土)18:00[3F 1列左]18:00 クララ&金平糖の精:小野絢子/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割り王子:李 明賢/ドロッセルマイヤー:中家正博/ダンス教師&ねずみの女王:関 優奈/わたあめ:花形悠月/ゼリー:宇賀大将、菊岡優舞/キャンディ:飯野萌子/ポップコーン:上中佑樹、山田悠貴、樋口 響/フォンダンローズ:直塚美穂、木下嘉人/指揮:マーティン・イエイツ

「樅の森」での小野、李、中家のトロアは素晴らしい! 李はきれいに回転し、踊る。中家が小野を李へ投げ渡す高さ! しかも優雅に。小野は怖がらず嬉しそうに踊ってる。【「戦い」でねずみの女王(関優奈)の頭をスリッパでパッカンと叩くクララの仕草は、小野の喜劇的センスが躍動。】

2幕頭で李くるみ王子がクララに助けられた経緯を説明するマイムもノーブルだった。

パ・ド・ドゥはグッときた。男女のヴァリエーションも素晴らしかった。李のva は昨日と別物に見えた。李のva が終わると、悲鳴のような女声と男声のブラボーが飛んだ。

フリッツ村田は生き生きしていてとてもよい。

大木シュタールバウム夫人は小野クララのママに見えた。

関優奈ダンス教師/女王はとてもよい。踊りが大きい。

フルートの表情豊かな響きはやはり神田氏だった。上階からだと見えた。

24日(水)19:00[3F L3列]19:00 クララ&金平糖の精:柴山紗帆/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割り王子:井澤 駿/ドロッセルマイヤー:渡邊拓朗/ダンス教師&ねずみの女王:山本涼杏/わたあめ:内田美聡/ゼリー:佐野和輝、田中陣之介/キャンディ:五月女 遥/ポップコーン:小野寺 雄、森本亮介、石山 蓮/フォンダンローズ:吉田朱里、中島瑞生/指揮:冨田実里

この日はあまりぱっとしなかった。柴山はクララに合ってない。渡邊拓朗ドロッセルマイヤーの造形はあれでいいのか?

群舞は上から見ると、ダンサーの居ないスペースが目立つ。雪のコール・ドは魅力がない。隊列が平凡。ダンサーのせいではない(詳しくはで)。ファンダンローズ吉田・中島はもっとできるはず。

指揮の冨田はパ・ド・ドゥの終結辺りで打楽器に必要以上に強音させる。なぜあそこで?

27日(土)13:00[3F L6列]13:00 クララ&金平糖の精:東 真帆/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割り王子:奥村康祐/ドロッセルマイヤー:福岡雄大/ダンス教師&ねずみの女王:根岸祐衣/わたあめ:花形悠月/ゼリー:宇賀大将、菊岡優舞/キャンディ:飯野萌子/ポップコーン:上中佑樹、山田悠貴、樋口 響/フォンダンローズ:直塚美穂、木下嘉人

東クララ/金平糖の精はアラベスクが美しい。ゲストプリンシパルの2人を相手に申し分のない踊り。今後が楽しみ。奥村は笑顔で若い東をサポートする。福岡は流石の演技と踊り。世代の違う男女が一緒に踊るのを見る面白さ、楽しさ。

27日(土)18:00[3F L5列]18:00 クララ&金平糖の精:木村優里/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割り人形&王子:速水渉悟/ドロッセルマイヤー:小柴富久修/ダンス教師&ねずみの女王:山本涼杏/わたあめ:内田美聡/ゼリー:佐野和輝、田中陣之介/キャンディ:五月女 遥/ポップコーン:小野寺 雄、森本亮介、石山 蓮/フォンダンローズ:吉田朱里、中島瑞生/指揮:冨田実里

木村は以前のような後味の悪さは薄れた。フリッツは小寺もよい。

速水に贈る言葉、《…果たして心を打っていただけるようなお芝居[舞台]になったかどうか、ただ「うまいな」では困るよね、「よかったな」って言われるのがええよね》(十五代目 片岡仁左衛門)。

組む相手が誰であっても「うまいな」ではなく「よかったね」と言われるような踊り(舞台)を目指してほしい。米沢唯のように。

2026年1月1日(木祝)14:00[4F L6列]14:00 クララ&金平糖の精:小野絢子/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割り人形&王子:李 明賢/ドロッセルマイヤー:中家正博/ダンス教師&ねずみの女王:関 優奈/わたあめ:花形悠月/ゼリー:宇賀大将、菊岡優舞/キャンディ:飯野萌子/ポップコーン:上中佑樹、山田悠貴、樋口 響/フォンダンローズ:直塚美穂、木下嘉人/指揮:マーティン・イェーツ

李のピルエットは大きく見えるような回り方。

中家はさすが。小柴・大木夫妻はとてもよい。村田フリッツめっちゃいい。

関優奈ダンス教師は、強すぎず、大きさを感じさせる演技と踊り。

山田兵士人形、奥田コロンビーヌ人形、佐野ハーレキン人形、みなよかった。

オケは弦がすっきり、トランペットはふっくら響く。この日が聞いた6回のうちでベスト。

新国立劇場バレエ団 新制作『くるみ割り人形』2025-26 ①【追記】

新制作『くるみ割り人形』の初日・2日目夜・5日目・7日目昼・夜・11日目を観た(12月19日 金曜 19:00,20日 土曜 18:00,24日 水曜 19:00,27日 土曜 13:00, 18:00,2026年1月1日 木祝 14:00/新国立劇場オペラハウス)。

要は全6キャスト中の5キャストで計6回見たということ。11日目は7日目と同キャストだが、元旦の舞台はどんなものかと初体験した。

以下は新制作の感想。ダンサーの踊り等については後ほど

令和7年度 文化庁 劇場・音楽堂等における子供舞台芸術鑑賞体験支援事業

振付:ウィル・タケット(レフ・イワーノフ原振付による)/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/編曲:マーティン・イェーツ/美術・衣裳:コリン・リッチモンド/照明:佐藤 啓/映像:ダグラス・オコンネル/イリュージョン:クリス・フィッシャー/イリュージョン監修:リアルマジシャンRYOTA/コレオロジスト:堀田真由美/指揮:マーティン・イェーツ&冨田実里/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/合唱:東京少年少女合唱隊

タケット版は全体的に明るく快活で、ドメスティック。物語を合理化し〝分かりやすく〟なった反面、群舞は編成の縮小と平凡な隊列で魅力が半減。個人的には、従来「アラビアの踊り」、特に「花のワルツ」中間部と続く「パ・ド・ドゥ」から感取された〝暗さ〟(死の影)がほぼ消失したのは大きい(後述)。

ドロッセルマイヤーが狂言回しで物語の中心に置かれ、魔術を駆使する場がより洗練され、鮮やかになった。

・必然的に「樅の森」のパ・ド・ドゥがドロッセルマイヤーを加えたトロワに変更。くるみ割りが倒れたのち、ドロッセルマイヤーは床から幕をV字状に吹き出させクリスマスツリー全体を覆い、闇に包まれた森を表すのか暗緑青の幕が妖しげに揺れるなか、トロアを踊る。彼がクララをリフトし、くるみ王子に投げ渡す動きは物語的にもバレエ的にも効果的。

・第1幕シュタールバウム家のパーティに集う人物と第2幕「お菓子の王国」の住人がリンクされ、また、パーティにバレエ女教師を新たに加えて、続く「戦い」の場の〝ネズミの王〟を〝女王〟にすることで、両幕・両場が現実と夢の関係に〝合理(平凡)化〟された。〝女王〟は、原作内でドロッセルマイヤーが語る「堅いくるみのメルヘン」(初演リブレットではカット)のマウゼ(ネズミ)リンクス夫人に依拠した設定だろう(ただホフマン原作には〝マリー=クララが見た夢〟だけでは説明しきれない合理を超えた妖しさ不気味さがあり、デュマの翻案はそれを消している)。

・ディヴェルティスマンのナショナルダンス(「アラビア/コーヒー」「中国/お茶」等)は「物語の明快さ」に沿うかたちで〝ポリコレ化〟され、バレエ初心者や親子連れも安心して楽しめる舞台とはなった(ナショナルダンス/民族舞踊の面白さはほぼ失せたが)。

他方〝バレエマニア〟やリピーターには気になる点がいくつか。

・先の通り、1幕「雪の結晶」と2幕「花のワルツ/グラン・バラビレ(大群舞)」の編成が縮小され(女26→20名,10組=20名→5組+女4=14名)*1もはや〝グラン〟とはいえず、新国立が誇るコール・ドを活かしきれない。

 そもそも2幕は奥の階段セットが踊るスペースを侵食し、狭苦しい。階段のない「雪の場」は奥行きがとれるはずだが、カミテの〝結晶〟セットがわざわざ階段の位置に降りてくるため、フロアの奥まで踊れない。群舞の貧弱さと物足りなさ(ダンサーが原因ではない)は、上階席ほど顕著になる。ツアーでの狭い劇場を前提にあえて限定した? それなら上田サントミューゼの『白鳥』同様、編成をその都度縮小すればよい。タケットは大編成のフォーメーションが苦手? 女6名/男5名女1名の減はコスト(出演料)カット? 雪のセット位置は人数減の口実? …色々勘ぐりたくなる。

・第2幕「花のワルツ」と「パ・ド・ドゥ」を切り離し、「ワルツ」の次に、お菓子の精たちが「ジゴーニュ小母さんと道化たち」の曲で再登場するコーダに改変。結果、チャイコフスキー創案のニ長調ワルツからト長調パ・ド・ドゥへの絶妙な流れが無惨に切断され、イ長調ジゴーニュの次に近親調でないPDDがくる不自然な移行に改悪された。【理由書くのを忘れていたが、多分、金平糖の精になったクララとくるみ割り王子がパ・ド・ドゥを踊るのを、ファンダンローズ(花のワルツ)だけでなく、他のお菓子の精たちにも見守らせたかったのだろう。音楽の流れを台無しにしても物語の〝意味〟や整合性を優先させたいと。】これだと、ワルツ中間部の〝死の影〟がアダージョのパニヒダ(追悼儀礼)へと引き継がれず、宙に浮いてしまう(詳しくは後で)。

・ディヴェルティスマン冒頭をトランペットのソロで飾る「スペインの踊り/チョコレート」がカットされ、代わりに王国のシェフパティシエ(1幕のハウスキーパー)・マイスター(同執事)等が踊る「イギリスの踊り」(?)が組み込まれた(聞き覚えの軽快な二拍子で後半ドロッセルマイヤーが加わると序曲のテーマが編み込まれる)。振付は平凡。

序曲後の「情景」で、パーティに訪れた親子が歌うクリスマスキャロルを組み込んだのはよいと思う。シモテで歌うのは「慈しみ深きウェンセスラス Good King Wenceslas」か。カミテのは「Joy to the World(もろびとこぞりて)」に聞こえた。

ダンス教師の存在、クララに綺麗なドレスを用意する、夢の世界から現実への移行にボディダブル(替え玉)を使う等、はアシュトン版『シンデレラ』を彷彿させ、現実へ戻るワープに(2幕のプロセニアムを縁取る)レースペーパーが舞う映像を使うのはウィールドン版『不思議の国のアリス』を想起させた。【パーティでクララがドロッセルマイヤーの助手と後ろ向きでぶつかる出会いのシーンはマクミランの『マノン』を(後者はデグリューがマノンにわざとぶつかる違いはあるが)。】

〝暗さ〟(死の影)について

チャイコフスキーのスコアでは「花のワルツ」中間部でチェロとヴィオラ群が奏するロ短調の〝暗い調べ〟が、そのまま、チェロ群の奏する下降音形のパ・ド・ドゥ(ト長調)へと受け継がれる。この〝暗さ〟は、帝室劇場の総監督フセヴォロシスキーが採用したデュマ版『くるみ割り人形の物語』(1845)(に基づくリブレット)には不在だが、ホフマン原作『くるみ割り人形とねずみの王さま』(1816)にしかと見出せる。

終章の「結び」でマリー(クララ)が「人形の国」から目覚めると、ドロッセルマイヤーの甥がシュタールバウム家に来訪。二人きりになると甥はマリーに求婚し、マリーは受け入れる(デュマ版のマリーは「両親の同意があれば」と条件を加え、両親も祝福する〝ブルジョワ的〟大団円/矢野正俊訳)。もとよりホフマンには両親への言及はなく、「挙式までの1年の期限が過ぎると、彼は銀色の馬に曳かせた黄金の車でマリーを迎えにきて、連れていった」(大島かおり訳)。そしてマリーは、いまでもお菓子の国の王妃であることが示唆される。それは、あるいは〝死後の世界〟かもしれない(識名章喜)。整合化されたデュマ版とは違い*2、ホフマンのテクストはそうした解釈を許す書き振りだ。

ホフマンの『くるみ割り人形とネズミの王さま』にはモデルがあった。友人の司法官ユリウス・エドゥアルト・ヒッツィヒには、長女オイゲーニェ、次女マリー、弟フリッツの三人の子どもがおり*3、ホフマンは、この子どもたちに向けて本書を書いたのだ(ルイス・キャロル『不思議の国アリス』と事情が似ている)。バレエのクララに当たるマリーは『くるみ割り』出版7年後の1822年1月に13歳で亡くなっている。マリーを特に可愛がったホフマンはマリーの夭折を予感していたらしい。ヒッツィヒへのお悔やみの手紙で次のように書いている。

「奇妙としか言いようがない——今だから言えるのだけれど——あの娘にはどこか独特のところがあったような気がします。彼女が真剣な思いにひたっているように見えたときに、彼女の表情(とりわけじっと凝視するような瞳)に、早世の相を垣間見たことがたびたびありました。貴君も知ってのとおり、あの子が幼いころから病気がちで、とくに生まれて間もない頃は病弱だったことを私はまったく知らなかったのですが。——」(1822年1月18日付、識名章喜訳)。

独文学者の識名氏は「こう書いたホフマンもそれから半年もたたずに病に倒れた。マリーと若いドロッセルマイヤーが王国へと旅立っていった後を追うように」と書き添える(光文社文庫版/解説)。音楽の〝暗さ〟は、デュマ版を超え、ホフマンのエンディングと響き合っているかのようだ。もちろん、チャイコフスキーはデュマ版に基づくリブレット(に基づくプティパの指示)から創作した。だが、ワイリーによれば、作曲着手の8年前、ローマ滞在中にモスクワ出身の音楽批評家セルゲイ・フレロフからホフマンのロシア語訳を進呈され、作曲家は「すばらしい物語である」とフレロフ宛ての手紙に書いていた(S.F.フレロフ宛書簡、1882年1月22日/2月3日付/R. J. ワイリー『チャイコフスキーのバレエ』1985)。

チャイコフスキーは『くるみ割り人形』のテーマ(台本)にあまり気乗りせず、作曲にかなり苦労したらしい。演奏旅行の途上で日夜「お菓子の王国」や「くるみ割り人形」の想念に苛まれ、その苦しみをフセヴォロシスキーに書簡で訴えて上演延期を望んだほどだった(1891年4月15日付)。この手紙を書いた翌日、作曲家は仲がよかった妹アレクサンドラ(サーシャ)の死を知る。ワイリーによれば、それ以降、最も悩ませた「お菓子の王国」のイメージに不満を漏らすことはなかった。遠い追憶のように感じられるサーシャへの思いが、お菓子の王国を作曲する問題を解決したのかもしれないと。さらに、ワイリーは、パ・ド・ドゥのアントレにはオペラ《エフゲニー・オネーギン》(1879)のタチアナやレンスキーの音楽と同様、パニヒダ panikhida(ロシア正教の追悼礼拝)「聖者等と供に憩わせ給え」のリズムが聴かれるという。パ・ド・ドゥでは、

「それ[追悼礼拝のリズム]が執拗な主旋律となり、下降するオクターヴの音階が無骨に、時に激しく反復される——これはサーシャへの葬送聖歌 otpevanie であり、お菓子の国を彼女の死と結びつけているのだ。こうして見ると、『くるみ割り人形』は、表面的な楽しさのうちに悲しみを抱えた、追憶のドキュメントとなる。ある批評家はこの性質を感知したが、説明することはできなかった」(ワイリー『チャイコフスキー』2009年)。

音楽学者がスコアから読み取ったチャイコフスキーの個人的経験は、くしくも、ホフマン原作の結末に読み取れるマリーの〝旅立ち〟と重なっている。

これまで『くるみ割り人形』のパ・ド・ドゥを聞くと、こころが粛然となり次第に込み上げてくる経験を何度も味わった。初演を聞いた「ある批評家」も同じだったらしい。それは、作曲家の亡き妹サーシャへの追悼と、ホフマンがマリーに見た「早世の相」が結びつき「表面的な楽しさのうちに悲しみを抱えた、追憶のドキュメント」となったから…

そう言いたい気もするが、こうした事情を知らずとも、「花のワルツ」から「パ・ド・ドゥ」に至る流れに身を任せれば、音楽と踊りの〝切ない歓喜〟をそれなりに味わうことができるだろう。

たとえば、クララ(マリー)が凝視した「世にもすばらしい不思議な」世界の熱い至福と、その世界に接する此岸のロシア的極寒との、オクシモロン的表現を享受する等…。

だが「ワルツ」と「パ・ド・ドゥ」を切り離したタケット版では、この体験が寸断されてしまう。これが最も残念な点だった。

少なくとも二つのワルツ(群舞)は改訂が必須だろう。個人的には、無駄に装飾の多いイーグリング版ではなく、牧版と交互に上演して欲しい。牧版はワイノーネン版がベースだが、東京が舞台で親しみやすく、なによりオラフ・ツォンベックの美術が本当に素晴らしい。ディヴェルティスマン(民族舞踊)を問題視する向きもあろうが、『焼肉ドラゴン』のように「ご観劇前にご確認ください」の断りを添えればよい。歴史的な意議も大切だと思う。

キャスト別の感想はここ

 

*1:初演時の「雪のワルツ」はなんと50人以上、「花のワルツ」は24組のコール・ドと8人のソリストで踊ったという(マリウス・プティパ協会のサイト)。

*2:ホフマン原作とデュマの翻案では色々違いがある。まずホフマンのドロッセルマイヤーは「ちびで痩せっぽち」だが、デュマでは「やせっぽちののっぽで、180センチくらは身長があ」る。前者ではドロッセルマイヤーがホフマン同様、上級裁判所顧問官でシュタールバウムが医事顧問官だが、デュマはドロッセルマイヤーを医事顧問官に、ジルバーハウス(=シュタールバウム)を判事にし、職業を入れ替えた。つまり、ホフマンはドロッセルマイヤーを自分に似せているが、デュマは、物語として〝一般化〟し、分かりやすくしている。また、デュマ版で「合戦(たたかい)」の章をより具体的に肉付けしているのは興味深い。他にもあるが、ひとつだけあげると、原作のマリーはパーティのあとで一人きりになり、ずっと心にかかっていたことに取りかかる。くるみ割り人形の傷のぐあいを調べ、ケアすることに。「でもさっきそれをママにどうして打ち明けなかったのか、自分でも分からない」(「不思議なものたち」大島かおり訳)。恋愛感情の芽生えをホフマンは逃さない。恋心と孤独は表裏だが、デュマ版はこの箇所をカットしている。

*3:ホフマン原作のシュタールバウム家は長女がルイーゼ、兄フリッツ、「7歳になったばかり」のマリーはその妹だ。クララは新しい人形の名だが、バレエ『くるみ割り人形』では主人公の名前に。デュマ版はシュタールバウム【鋼鉄の木】をジルバーハウス【銀の家】に変え、姉ルイーゼは人形の名となり、代わりにマリーの世話をする乳母が登場し、ホフマンでマリーが持っていた大きな人形の〝トルーデちゃん〟が、乳母の名前となっている(アレクサンドル・デュマ『デュマが語るくるみ割り人形』矢野正俊訳)。

1月のフィールドワーク予定 2026【追加】

新年最初の月はバレエ1,ダンス2,コンサート2の計5公演。

小野+李+中家の『くるみ』は2回目だが、元旦にバレエを見るのは初めて。どんな感じなのか。中村蓉は新作ダンスで歌舞伎に挑戦。山崎広太は〝新作戯曲ダンス〟(?)公演。N響定期でソヒエフがオールロシア音楽を振るBCJ定期は珍しく声楽なしプログラムで、CPEバッハのシンフォニアベートーヴェンの1,2番シンフォニーを優人氏が振る。どれも楽しみな公演ばかり。【個展・展覧会を追加】

1日(木祝)14:00 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』〈新制作〉/振付:ウィル・タケット(レフ・イワーノフ原振付による)/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/編曲:マーティン・イェーツ/美術・衣裳:コリン・リッチモンド/照明:佐藤 啓/映像:ダグラス・オコンネル[配役]クララ&金平糖の精:小野絢子/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割り人形&王子:李 明賢/ドロッセルマイヤー:中家正博/ダンス教師:関 優奈/わたあめ:花形悠月/ゼリー:宇賀大将、菊岡優舞/キャンディ:飯野萌子/ポップコーン:上中佑樹、山田悠貴、樋口 響/フォンダンローズ:直塚美穂、木下嘉人/指揮:マーティン・イェーツ/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/合唱:東京少年少女合唱隊新国立劇場オペラハウス

【8日(木)「木下晋展 いのちの系譜」@枝香庵】←追加

【11日(日)「木下晋展 いのちの系譜」@枝香庵】←追加

【12日(月祝)「戦後80年 戦争と子どもたち」@板橋区立美術館←追加

16日(金)19:30 中村蓉ダンス公演 2026『BLINK 双面改瞬間真似(ふたおもてあらためまたたきのまにまに)』作・演出:中村 蓉/舞台監督:熊木 進/照明:久津美太地/音響:相川 貴/ドラマトゥルク:中瀬俊介/プロダクションディレクター:内堀愛菜/出演:宮河愛一郎 池上たっくん 山田暁 中村 蓉 大江麻美子 荒俣夏美 河内優太郎 詠良カノン 村井友映 関口 晴 MASSAN×BASHIRY @KAAT 大スタジオ

28日(水)19:00 WWFes2026 山﨑広太 新作戯曲ダンス公演《右の眼、交差するデリカシー、⻘炎球、骨と直線(する)》戯曲&振付:山﨑広太/パフォーマンス:石川朝日、ナット・フレデリクソン、西村未奈、モテギミユ/共催:慶應義塾大学アートセンター(KUAC)/助成:公益財団法人セゾン文化財団 @旧ノグチ・ルーム(慶應義塾大学三田キャンパス

29日(木)N響 #205定演 B-1 ムソルグスキーショスタコーヴィチ編):歌劇《ホヴァンシチナ》前奏曲「モスクワ川の夜明け」/ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ長調 作品102/プロコフィエフ交響曲 第5番 変ロ長調 作品100/指揮:トゥガン・ソヒエフ/ピアノ:松田華音サントリーホール

31日(土)14:00 BCJ #170 定演 ベートーヴェンへの道 Vol. 1 べートーヴェン没後200年へ寄せて/C. P. E. バッハ:シンフォニア ト長調 Wq. 182-1/ベートーヴェン交響曲第1番 ハ長調 作品21,交響曲第2番 ニ長調 作品36/指揮:鈴木優人管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン