今月はオペラ1,演劇1,コンサート2,バレエ4の計8公演。
初台の新制作 ロッシーニの《イタリアのトルコ人》(1814/ペリー演出初演2023@マドリード)はいわゆる〝トルコもの〟で、見るのはこれが初めて。〝トルコもの〟といえばモーツァルトの《後宮(ハーレム)からの誘拐》(1782)が有名だが、8月に東バが上演した『海賊』もそのひとつ。
(ちなみにバレエ『海賊』(1856)の最初の台本では、コンラッドがトルコ人を憎み復讐するのは、彼の妹が幼い頃、あるトルコ人にさらわれたからとなっていた。が、当時の検閲官は、このくだりをトルコ人に対して政治的に敵対的だと判断し、削除する。サン=ジョルジュが台本を書いていたこの時期、クリミア戦争(1853-56)の最中で、オスマン帝国はフランスの同盟国だった[ファリントン&スミス『パリとサンクトペテルブルグの五つのバレエ』2024]。もし検閲を免れていたなら、バイロンの原作詩(1814/《イタリアのトルコ人》初演と同年)を支配する〝暗さ〟が多少なりともバレエに残ったかもしれない。が、初演台本を読む限り、その痕跡は微塵もない。さらに、バレエがパリからペテルブルグへ移動するなか、その重点も〝物語〟から〝踊りとスペクタクル〟へと移動していく。結果、現在の上演では、「劇的なバレエ・パントマイム」としての初演版からは、はるかに遠く隔たってしまった。)
英語能『青い目のメンフィス』は、能から着想を得た米国の劇作家による戯曲を下敷きに、エルヴィス・プレスリーの亡霊(シテ)と、彼の熱烈な女性ファン(ワキ)が出会う物語らしい。能を現代化した岡田利規の舞台を見慣れた眼に、能を英語化した今回の舞台はどう映るのか。興味津々。
初台のオペラ研修所・公開マスタークラスは、今秋、エヴァ・メイを講師に迎える。どんな指導が見られるか。
新国立バレエの新制作は、なんとチャップリンの『街の灯』だ。振付は、4年前『ジゼル』の新制作でステージングと改訂振付を任されたアラスター・マリオット。マリオットが提示した複数案から『街の灯』のバレエ化を選んだのは、吉田芸監の方らしい(マリオットのインタビュー)。サイレント映画と言葉のないバレエは、たしかに親和性はありそうだが…。先日、NHK Eテレで新作文楽『まちの灯』が制作ドキュメント付きで放映された。脚本・演出は大野裕之(日本チャップリン協会会長)。文楽という芸能はもとより、チャップリン原作に対する深い愛情と理解と解釈に裏打ちされた素晴らしい人形浄瑠璃だった(題名の解釈等々)。映像を介してとはいえ、そう感じた。大野氏と文楽側の豊竹若太夫(浄瑠璃化・語り)、鶴澤友之助(作曲・三味線)、桐竹勘十郎(人形監修・与次郎役)の協働作業の賜物だろう。話をバレエに戻せば、吉田監督は、古典の改訂よりもカンパニーのオリジナル作品を望んだ。うまくいけば、二度目のロンドン公演が見えてくるかもしれない。
BCJの定期では、J. S. バッハ(1685-1750)以前のシュッツ(1585-1672)やブルーンス(1665-97)の作品とバッハのカンタータを聞き比べ、宗教音楽の源流を辿ることになる。
2日(金)18:00 新国立劇場オペラ《イタリアのトルコ人》[新制作]全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉作曲:ジョアキーノ・ロッシーニ(1792-1868)/台本:フェリーチェ・ロマーニ(1788-1865)/初演:1814年/指揮:アレッサンドロ・ボナート/演出・衣裳:ロラン・ペリー/美術:シャンタル・トマ/照明:ジョエル・アダム/演出補:クリスティアン・レート/衣裳補:ジャン=ジャック・デルモッテ/舞台監督:髙橋尚史/セリム:アレハンドロ・バリニャス・ビエイテス/ドンナ・フィオリッラ:クラウディア・ムスキオ/ドン・ジェローニオ:パオロ・ボルドーニャ/ドン・ナルチーゾ:ルジル・ガティン/詩人プロスドーチモ:ブルーノ・タッディア/ザイダ:但馬由香/アルバザール:山本康寛/合唱:新国立劇場合唱団/管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団/共同制作:テアトロ・レアル、リヨン歌劇場 @新国立劇場オペラハウス
10日(土)18:00シアター能楽 英語能『青い目のメンフィス』上演言語:英語(舞囃子は日本語)字幕言語:日本語・英語舞台上字幕 /舞囃子『高砂』(15分)出演:松井 彬/大島衣恵/地頭:塩津圭介//狂言『節度の報い』(20分)作:トーマス・オコナー/共同演出:トーマス・オコナー、ルイス・バイス/[出演]シテ(司祭):ジュビリス・モーア/アド(犬):ルイス・バイス//英語能『青い月のメンフィス』(初演2015年/75分)作:デボラ・ブレヴォート/作曲・音楽監督:リチャード・エマート/共同演出:松井 彬、ジョン・オグルビー/[出演]シテ(エルヴィス・プレスリー):ジョン・オグルビー/ワキ(ジュディ):ローラ・サムソン ミカ・オスカソン・キンドストランド/アイ狂言(オスカー):ルイス・バイス/笛:リチャード・エマート/小鼓:大村華由/大鼓:河内孝子/太鼓:桜井 均/地謡:デビッド・クランドル/地謡:ケビン・サルフェン デビッド・サタースキー マシュー・デュブロフ アシュレー・ソープ ゲイリ・マシューズ ロバート・モリス 章舒涵/後見:大島衣恵 ジュビリス・モーア @芸劇プレイハウス
15日(木)14:00 新国立劇場オペラストゥーディオ 公開マスタークラス/講師:エヴァ・メイ/ピアノ:西 聡美/受講者:新国立劇場オペラストゥディオ(オペラ研修所)研修生 @新国立劇場オペラハウス ホワイエ
23日(金)19:00 昭和100年記念公演 令和8年度(第81回)文化庁芸術祭主催公演 新国立劇場バレエ団『街の灯』[新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演]/振付:アラスター・マリオット/原作:チャールズ・チャップリン/音楽:チャールズ・チャップリン&ホセ・パディーヤ『La Violetera』/編曲:ティモシー・ブロック/美術・衣裳:ディック・バード/照明:エレン・ルーゲ/放浪者(トランプ):奥村康祐/盲目の花売り娘:米沢 唯/指揮:ティモシー・ブロック&冨田実里/管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 @新国立劇場オペラハウス
24日(土)13:00 新国立劇場バレエ団『街の灯』放浪者(トランプ):石山 蓮/盲目の花売り娘:柴山紗帆 @新国立劇場オペラハウス
24日(土)18:00 新国立劇場バレエ団『街の灯』放浪者(トランプ):木下嘉人/盲目の花売り娘:小野絢子 @新国立劇場オペラハウス
25日(日)17:00 舞台芸術祭「秋の隕石2026東京」岡田利規&山田和樹 東京芸術劇場芸術監督 コラボレーション企画『静寂のガツンとした一撃』主催:東京舞台芸術祭実行委員会〔東京都、東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)〕@芸劇アトリウム
28日(水)13:00 新国立劇場バレエ団『街の灯』放浪者(トランプ):水井駿介/盲目の花売り娘:東 真帆 @新国立劇場オペラハウス
31日(土)15:00 BCJ # 175定演〈十字架上の七つの言葉Ⅰ〉 教会カンタータシリーズvol. 95 ——ルター派音楽の系譜をたどる—— H. シュッツ:《十字架上の七つの言葉》SWV 478/N. ブルーンス:《プレリューディウム ホ調》*/カンタータ《涙を流すのをやめ、頬をぬぐいなさい》/J. S. バッハ:カンタータ第4番《キリストは死の縄目につながれたり》BWV 4/カンタータ第79番《主なる神は太陽にして盾なり》BWV 79/指揮:鈴木雅明/ソプラノ:松井亜希/アルト:青木洋也/テノール:櫻田 亮、吉田志門/バス:加耒 徹/オルガン独奏:鈴木優人*/合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン @東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル










三好十郎の「戯曲研究会」で三好に勧められ初めて書いたのが本作。初演は創造座、演出は笠松草一郞。
『ロング・クリスマス・ディナー』(1931
〈20の物語〉は短篇・中篇ゆえに、値段も上演時間も手頃で、音楽祭のラ・フォル・ジュルネ同様、一日で複数の舞台を楽しめる(『命を弄ぶ…』『不毛ドライブ』と『軽塵』『マクベス』はそれぞれバレエ『人魚姫』のマチネ公演後に見た)。演劇研修所の修了生が出演した無料公演『ベッカンコおに』は残念ながら見ることはかなわなかった。が、修了した役者たちを活かせる点も含め、新国立にふさわしい企画だと思う。この小川芸監の置き土産は、次の芸監もぜひ継続してほしい。