10月のフィールドワーク予定 2020

今月は久し振りに公演数が多い。コロナ禍の影響で色々な変更はあるが、やっぱり嬉しい。延期になっていた演劇『馬留徳三郎の一日』や吉田都新芸術監督が初めて手がけるバレエ『ドン・キホーテ』等には期待が膨らむ。一方で、不安もある。9月23日の収容率緩和により、新国立劇場などは空けていた席を追加販売するからだ。『ドン・キ』もそう。経営的には(ダンサーたちにとっても)理解はできるけど。たとえば、せっかくペアで席を取っていても、連れとの間に別の客が座れば、やはり違和感は拭えない。様々な立場を勘案すれば、仕方ないのかもしれないが。/今日は『All My Sons』を見にシアタートラムへ行く。これはまだ緩和前の席割りだと思う。

2日(金)19:00 アーサー・ミラー『All My Sons』演出・翻訳:詩森ろば/舞台美術:杉山至+鴉屋/照明:榊美香(有限会社アイズ)/音楽:鈴木光介/衣裳:西原梨恵/音響:青木タクヘイ(STAGE OFFICE)/映像:浦島啓(colore)/演出助手:和田沙緒理/翻訳監修:佐藤澄子/舞台監督:田中翼(capital inc.)+中原和彦/演出部:長谷川ちえ/映像製作:吉田秀人/音響操作:鏑木智宏/映像操作:伊藤真優子/照明操作:鹿子澤栄・古矢涼子/衣裳助手:加藤千晶/宣伝写真:大村祐里子/宣伝写真メイク:COCO/宣伝写真ヘア:西村浩一/宣伝美術:詩森ろば/制作:イビケイコ・有賀美幸/舞台写真:保坂萌/企画・製作:一般社団法人風琴工房/助成:文化芸術振興費補助金舞台芸術創造活動活性化事業)/協力:オフィスゆっくり+ヒラサ・オフィス+ファザーズコーポレーションワタナベエンターテインメントテアトル・ド・ポッシュ+ECHOES+フォセットコンシェルジュ+ディケイド+劇団ひまわり/出演:神野三鈴、田島亮瀬戸さおり金井勇太、杉木隆幸、熊坂理恵子、酒巻誉洋、浦浜アリサ田中誠人、大谷亮介 @シアタートラム

4日(日)14:00 〈令和2年度(第75回)文化庁芸術祭主催公演〉2020/2021シーズン 新国立劇場オペラ《夏の夜の夢》全3幕〈英語上演/日本語及び英語字幕付〉ニューノーマル時代の新演出版/作曲:ベンジャミン・ブリテン/指揮:飯森範親/演出・ムーヴメント:レア・ハウスマン(デイヴィッド・マクヴィカーの演出に基づく)/美術・衣裳:レイ・スミス/美術・衣裳補:ウィリアム・フリッカー/照明:ベン・ピッカースギル(ポール・コンスタブルによるオリジナルデザインに基づく)/舞台監督:髙橋尚史/[配役]オーベロン:藤木大地/タイターニア:平井香織/パック:河野鉄平/シーシアス:大塚博章ヒ/ポリタ:小林由佳ライサンダー:村上公太/ディミートリアス:近藤 圭/ハーミア:但馬由香/ヘレナ:大隅智佳子/ボトム:高橋正尚/クインス:妻屋秀和/フルート:岸浪愛学/スナッグ:志村文彦/スナウト:青地英幸/スターヴリング:吉川健一/児童合唱:TOKYO FM 少年合唱団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

9日(金)19:00 青年団プロデュース公演/尼崎市第7回「近松賞」受賞作品/座・高円寺 秋の劇場01/日本劇作家協会プログラム『馬留徳三郎の一日』作:髙山さなえ 演出:平田オリザ/舞台美術:杉山 至/舞台監督:中西隆雄、小川陽子/照明:三嶋聖子/音響:櫻内憧海/衣裳:正金 彩/衣裳補佐:原田つむぎ/演出助手:野宮有姫/フライヤーデザイン:京(central p.p.)/制作:有上麻衣/制作補佐:河野 遥/出演:田村勝彦(文学座)、場睦子(フリー)、猪股俊明(フリー)、山内健司、山村崇子、能島瑞穂、海津 忠、折原アキラ、声の出演=永井秀樹座・高円寺

 18日(日)14:00 グランドオペラ共同制作 プッチーニ作曲 オペラ《トゥーランドット》全3幕/イタリア語上演・日本語及び英語字幕付き/新制作/指揮:アルベルト・ヴェロネージ/演出・振付:大島早紀子[配役]トゥーランドット姫:岡田昌子/皇帝アルトゥム:大野徹也/ティムール:デニス・ビシュニャ/王子カラフ:芹澤佳通/リュー:砂川涼子/大臣ピン:大川博/大臣パン:大川信之/大臣ポン:糸賀修平/役人:井上雅人/メインダンサー:白河直子/ダンサー:斉木香里、木戸紫乃、野村真弓、坂井美乃里、YUKI/ダンス:H・アール・カオス/合唱:二期会合唱団/児童合唱:赤い靴ジュニアコーラス/管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

23日(金)19:00 〈令和2年度(第75回)文化庁芸術祭主催公演〉2020/2021シーズン新国立劇場バレエ『ドン・キホーテ音楽:レオン・ミンクス/振付:マリウス・プティパ+アレクサンドル・ゴルスキー/改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ/美術・衣裳:ヴャチェスラフ・オークネフ/照明:梶 孝三/芸術監督:吉田 都/指揮:冨田実里/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団キトリ:米沢 唯/バジル:井澤駿 @新国立劇場オペラハウス

24日(土)13:30 新国立劇場バレエ『ドン・キホーテキトリ:木村優里/バジル:渡邊峻郁 @新国立劇場オペラハウス

25日(日)14:00 新国立劇場バレエ『ドン・キホーテキトリ:柴山紗帆/バジル:中家正博 @新国立劇場オペラハウス

29日(木)19:00 『The last night recipe』作・演出:横山拓也/舞台美術:柴田隆弘/舞台監督:青野守浩/照明:葛西健一/音響:星野大輔、今里愛/演出助手:朝倉エリ/衣裳:中西瑞美(ひなぎく)/ドラマトゥルク:上田一軒/文芸協力:カトリヒデトシ/映像収録:堀川高志(kutowans studio)/チラシ撮影・宣伝美術:下元浩人(EIGHTY ONE)/チラシヘアメイク:田沢麻利子/宣伝:吉田プロモーション/制作統括:笠原希/制作:德永のぞみ/制作協力:高村楓/出演」橋爪未萠里〈劇団赤鬼〉、竹内都子、福本伸一〈ラッパ屋〉、杉原公輔〈匿名劇壇〉、緒方晋〈The Stone Age〉、伊藤えりこ、小松勇司/後援:杉並区(東京公演)/提携:NPO法人劇場創造ネットワーク+座・高円寺(東京公演)/主催:一般社団法人iaku/令和2年度(第75回)文化庁芸術祭参加公演/助成:文化庁文化芸術振興費補助金舞台芸術創造活動活性化事業)独立行政法人日本芸術文化振興会+アサヒグループ芸術文化財

30日(金)19:15 新日本フィル定演 #626 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉シューマン:劇音楽『マンフレッド』 op. 115 序曲 /シューマン:ピアノ協奏曲イ短調 op. 54/シューマン交響曲第3番 変ホ長調 op. 97「ライン」/指揮:秋山和慶/ピアノ:上原彩子すみだトリフォニーホール

31日(土)13:00 新国立劇場バレエ『ドン・キホーテキトリ:池田理沙子/バジル:奥村康祐 @新国立劇場オペラハウス

31日(土)18:30 新国立劇場バレエ『ドン・キホーテ』キトリ:米沢 唯/バジル:速水渉悟 @新国立劇場オペラハウス

9月のフィールドワーク予定 2020【追加】

舞台公演は少しずつ戻ってきてはいる。政府は19日頃から「観客が大声を出す場面が少なく、飛沫が飛散する恐れが小さいコンサートや、能・歌舞伎など古典芸能のイベントを対象に、50%以内の制限をなくす方向で検討している」らしい(「朝日新聞」9月9日)。が、いまのところ客席は50%以下のままで、様々な変更や工夫も強いられている。新日本フィルなどオケの定演は、編成縮小のため曲目を変更し、来日できない海外指揮者(音楽監督を含む)の代わりに日本人を起用。来月から始まる新国立劇場オペラもそうだが、国内アーティストのみの公演がしばらく続きそうだ。最初は新鮮に受け止められるとしても、問題はそのあとである。日本人アーティストにとってはまたとないチャンスだが、ある程度のクオリティを示せないと、客席は19日以降も「50%以下のまま」になりかねない。本当に聴きたい人だけが集うコンサートは実に気持ちの好いものだが、アーティストの生計が立たなくなったら元も子もない。いずれにせよ、今秋から冬にかけてが正念場となりそうだ。

11日(金)14:00 新日本フィル #33 定演 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉ビゼーカルメン組曲第1番/サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 op. 61* /プーランクシンフォニエッタ/指揮:矢崎彦太郎[沖澤のどかはキャンセル]/ヴァイオリン:三浦文彰すみだトリフォニーホール

12日(土)18:30 十二人の怒れる男』作:レジナルド・ローズ/翻訳:徐 賀世子/演出:リンゼイ・ポズナー/衣裳・美術:ピーター・マッキントッシュ/出演:ベンガル(1番) 堀 文明(2番) 山崎 一(3番) 石丸幹二(4番) 少路勇介(5番) 梶原 善(6番) 永山絢斗(7番) 堤 真一(8番) 青山達三(9番) 吉見一豊(10番) 三上市朗(11番) 溝端淳平(12番) @シアターコクーン

18日(金)19:15 新日本フィル #624 定演 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉ストラヴィンスキーバレエ音楽『カルタ遊び』/リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調サン=サーンス交響曲第3番ハ短調  op. 78「オルガン付き」指揮:沼尻竜典シャルル・デュトワはキャンセル]/ピアノ:實川 風/オルガン:石丸由佳 @すみだトリフォニーホール

19日(土)14:00 劇団銅鑼『センポ・スギハァラ』作・演出/平石耕一/演出協力/山田昭一/美術/内山 勉/照明/関 定己 音楽/寺田鉄生 音響/中嶋直勝/衣裳/山田靖子/舞台監督/村松眞衣/音声ガイド/早坂聡美 宣伝写真/宮川舞子/宣伝美術/山口拓三(GAROWA GRAPHICO)/制作/小関直人/キャスト:館野元彦(杉原千畝) 中村真由美(杉原幸子) 鶴田尚子(サリュテ) 池上礼朗(フー) 説田太郎(ボリスラフ) 横手寿男(ヤンクル) 馬渕真希(ギタ) 山形敏之(ヨセフ) 齋藤千裕(モイシェ) 植木 圭(メンデル) 竹内奈緒子(チポーラ) 宮﨑愛美(シェイネ) 鈴木正昭(デビット) 柴田愛奈(オランダ領事館員) 向 暁子(ドイツ将校) 大竹直哉(ドイツ兵) @シアターウエス

20日(日)15:00 BCJ 定演 バッハ《ロ短調ミサ曲》指揮:鈴木優人/[海外アーティストの来日不可のため出演者は日本人に変更]ソプラノⅠ:澤江衣里/ソプラノⅡ:松井亜希/アルト:布施奈緒子/テノール:西村 悟/バス:加耒 徹/管弦楽及び合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン @オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル

26日(土)14:00 ボンクリ・フェス “Born Creative” Festival 2020 スペシャル・コンサートアーティスト・ディレクター:藤倉 大 曲目:[1] 藤倉 大/Gliding Wings(日本初演)[2] 八木美知依/水晶の夢 [3] ハイナー・ゲッベルス/サロゲイト-ピアノと打楽器、声のための-(日本初演)[4] 牛島安希子/Distorted Melody(日本初演)[5] 蒲池 愛&永見竜生[Nagie]/between water and ray-グラスハープとライブエレクトロニクスのための- [6] 大友良英/新作(世界初演)[7] 坂本龍一/パサージュ(日本初演)[8] 藤倉 大/Longing from afar[ライブ版](世界初演)// 出演:アンサンブル・ノマド(指揮:佐藤紀雄)[1,3,4,6,7,8]/吉田 誠(クラリネット)[1]/八木美知依(筝)[2]/ダースレイダー (声)[3]/大久保利奈(グラスハープ)[5]/永見竜生[Nagie](エレクトロニクス)[5]/大友良英[6]/ノマドキッズ[6,8] @芸劇コンサートホール

【29日(金)15:40 映画『ミッドナイトスワン』監督・脚本:内田英治/エグゼクティブプロデューサー:飯島三智:プロデューサー:森谷 雄  森本友里恵/ラインプロデューサー:尾関 玄/撮影:伊藤麻樹/照明:井上真吾/録音・整音:伊藤裕規/美術:我妻弘之/装飾:湯澤幸夫/衣装:川本誠子/コスチュームデザイン:細見佳代/ヘアメイク:板垣美和 永嶋麻子/編集:岩切裕一/音楽:渋谷慶一郎/音響効果:大塚智子/助監督:松倉大夏バレエ監修:千歳美香子/制作担当:三浦義信  中村 元[キャスト]凪沙:草なぎ剛桜田一果:服部樹咲/瑞貴:田中俊介/キャンディ:吉村界人/アキナ:真田怜臣/桑田りん:上野鈴華/桑田真祐美:佐藤江梨子/桑田正二:平山祐介/武田和子:根岸季衣桜田早織:水川あさみ/洋子ママ:田口トモロヲ片平実花:真飛 聖 @イオンシネマ板橋】

8月のフィールドワーク予定 2020【加筆・修正】

 5ヶ月ぶりに生のオーケストラを聴いた。このかたちでBCJ の《マタイ受難曲》を体験したのは偶然だが、必然のようにも感じる。《マタイ》は一番好きな楽曲だ。感染防止のため器楽と合唱の配置が入れ替わり、奏者・歌手間もかなり距離がある。が、特に違和感はなかった【ヴァイオリン群が奥上段に移動したため、音色がいつもよりまろやかな印象】。海外からアーティストを呼べないため、日本人のみの《マタイ》。これも初めてだった。久々に鈴木秀美のチェロが聴けた。とはいえ、通奏低音だからソロがあるわけでもないが、やはり好い。どこが? とにかく音が生きている。他にいいようがない。雅明氏のテンポはいつもより遅めの印象。物理的な距離を考慮してか、それとも内的必然性か。エヴァンゲリスト櫻田亮は昼夜連続で心配したが、見事な歌いぶり(時として感情のうねりが歌唱をはみ出しそうで少しハラハラしたがこれこそ生の好さだ)。【イエスの加耒徹はノーブルでありながら実によく通る歌声。レチタティーヴォは以前から好かったが、近年はアリアでも真価を発揮している。】若手の女性アルト(布施奈緒子)やカウンターテナー(久保法之)のアリアは新鮮だった。森麻季は、バッハを歌い慣れたメンバーとはやや異なる感触(モーツァルトだとさほど感じない)だが、菅きよみのフラウト・トラヴェルソは、今回もこころ揺さぶられる美しさでソプラノを支えた。終曲後、これほど沈黙が保たれたのは珍しい! カーテンコールが終わっても拍手は止まず、再登場した鈴木氏らに聴衆はスタンディングで感謝を表した。/大和シティーバレエは、米沢唯の出演が決まったと教えられ、行くことに。

3日(月)18:30 BCJ # 137定演《マタイ受難曲》(4月10日の延期公演)/指揮:鈴木雅明/福音史家:櫻田 亮/イエス:加耒 徹/ソプラノ:森 麻季、松井亜希/アルト:青木洋也、久保法之/テノール:中嶋克彦、谷口洋介/バス:浦野智行、渡辺祐介/オーケストラ&合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン @オペラシティ・コンサートホール タケミツメモリアル

14日(金)18:00 大和シティーバレエ 夏季公演「SUMMER CONCERT 2020 想像×創造」[日本の怪談4部作]耳なし芳一振付:熊谷拓明 出演:熊谷拓明 他/『牡丹灯篭』振付:池上直子 出演:菅井円加 → 米沢 唯◇、宝満直也★ 他/『雪女』振付:中原麻里 出演:小野絢子◇、福田圭吾◇ 他/『死神』振付:福田紘也◇ 出演:本島美和◇、福岡雄大◇、五月女 遥◇ 他[ネオクラシック]『Scarlatti Pas de deux』振付:J. Martinez 出演:大谷遥陽◆、松井学郎♧「『NYX』よりルナティック」振付:中原麻里 出演:五月女 遥◇、渡邊峻郁◇/『Contact』振付:木下嘉人◇ 出演:米沢 唯◇、木下嘉人◇、相原 舞、古尾谷莉奈、林田翔平☆、森田維央/[奏者]ピアノ:榎本真弓 → 大滝 俊和 太鼓:小林太郎 琵琶:鎌田薫水/[大和シティーバレエ]萩原ゆうき、橋本侑佳、稲葉由佳利、牧 祥子、窪田夏朋、刀袮平美咲/[Dancer]山田歌子◇、成田 遥、金田優香、盆子原美奈、大上のの、加藤美羽、新名かれん、八幡顕光♣︎、牧村直紀●、渡邊拓朗◇、小出顕太郎、細野 生♤、望月寛斗/YCBアプレンティス/SBA Jr.カンパニー/[凡例]◇新国立劇場バレエ団、○ハンブルク・バレエ、◆スペイン国立ダンスカンパニー、★NBAバレエ団、♣︎ロスアンゼルス・バレエ、♧ノルウェー国立バレエ、●谷桃子バレエ団、☆スターダンサーズ・バレエ団、♤牧阿佐美バレヱ団 @大和市シリウスホール

23日(日)15:00 新国立劇場『Super Angels スーパーエンジェル』[新制作]創作委嘱作品・世界初演/全1幕〈日本語上演/日本語及び英語字幕付〉企画監修・指揮:大野和士/台本:島田雅彦/作曲:渋谷慶一郎/演出:小川絵梨子/総合舞台美術(装置・衣裳・照明・映像監督):針生 康/映像:ウィアードコア/振付:貝川鐵夫/舞踊監修:大原永子[キャスト]【ゴーレム3】オルタ3 (Supported by mixi, Inc.)/アキラ:藤木大地/エリカ:三宅理恵/ジョージ:成田博之/ルイジ:小泉詠子/世田谷ジュニア合唱団+練馬児童合唱団+新国立劇場合唱団ほか/渡邊峻郁、木村優里、渡辺与布、中島瑞生、渡邊拓朗(新国立劇場バレエ団)/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

 

7月のフィールドワーク予定 2020

 今月は新国立劇場バレエによる一公演のみ。7時間かかるというルパージュの舞台は見たかった。

4日(土)17:00 オラトリオ《箱舟》作曲:イェルク・ヴィトマン/指揮:ケント・ナガノ/ソプラノ:マルリス・ペーターゼン/バリトン:トーマス・E. バウアー/合唱:新国立劇場合唱団/合唱:アウディ・ユーゲント合唱団/児童合唱:NHK東京児童合唱団/語り(子役):斎藤來奏(子役):三宅希空 @サントリーホール

10日(金)19:15 新日本フィル定演 #622 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 op. 73 「皇帝」/ブラームス交響曲第1番 ハ短調 op. 68/指揮:尾高忠明/ピアノ:清水和音すみだトリフォニーホール コロナ禍で指揮・ピアノのラルス・フォークトが来日できず出演者が変更。代役の指揮者が苦手で払い戻した。

11日(土)13:00 『HIROSHIMA 太田川七つの流れ』演出・構成・ロベール・ルパージュ@Bunkamura シアターコクーン

26日(日)13:00 新国立劇場 こどものためのバレエ劇場 2020『「竜宮 りゅうぐう」~亀の姫と季(とき)の庭~』音楽:松本淳一/演出・振付:森山開次/美術・衣裳デザイン:森山開次/映像:ムーチョ村松/照明:櫛田晃代/振付補佐:貝川鐵夫、湯川麻美子/プリンセス 亀の姫:米沢 唯/浦島太郎:井澤 駿 @新国立劇場オペラハウス→コロナ禍で観客数を制限するため販売済みのチケットはすべて払い戻し、改めて販売し直すかたちとなった。 

6月のフィールドワーク予定 2020(中止の記録)【配信版の追記など】

 緊急事態宣言は5月25日をもって解除された。が、以下の通り、6月に予定していた公演もすべて中止。バレエの再演やオペラの新制作ももちろん残念だが、岡田利規版の夢幻能、鈴木雅明BCJ(コーラス)とN響とのコラボ『ミサ・ソレムニス』はぜひ見た(聴きた)かった。

新国立劇場の2020/2021シーズンセット券はオペラ・バレエのいずれもすべてキャンセルとなった(6月5日発表)。感染予防の措置として座席数を50%以下に削減せざるをえないためらしい。両部門とも新シーズンを楽しみにしていただけに残念だが、状況を見ればやむをない。吉田都新芸術監督のバレエ開幕作品に予定されていたピーター・ライト版『白鳥の湖』の新制作は来秋に延期となり、5月に中止となった『ドン・キホーテ』に変更された。「海外との連携協力はもとより、国内での準備作業もままならず、苦渋の決断とな」った由。バレエの新制作では海外から招いたスタッフからダンサーたちが新しい振付を教わり身体に入れなければならない。オペラの新制作よりは長い時間がかかるのだろう。

4日(木)19:00 『挫波(ザハ)』『敦賀もんじゅ)』作・演出:岡田利規音楽監督・演奏:内橋和久/出演:森山未來片桐はいり栗原類石橋静河、太田信吾/七尾旅人(謡手) @KAAT 第スタジオ →その一部を27日・28日に無料配信へ(下記)。

5日(金)19:00 新国立劇場バレエ『不思議の国のアリス音楽:ジョビー・タルボット/振付:クリストファー・ウィールドン/指揮:ネイサン・ブロック/美術・衣裳:ボブ・クロウリー/照明:ナターシャ・カッツ/照明リプロダクション:サイモン・ベニソン/台本:ニコラス・ライト/映像:ジョン・ドリスコル、ジュンマ・キャリントン/パペット:トビー・オリー/マジック・コンサルタント:ポール・キエーヴ/アリス:米沢唯/ハートのキング:タイ・キング=ウォール管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

6日(土)13:00 新国立劇場バレエ『不思議の国のアリス』アリス:小野絢子/ハートのキング:福岡雄大新国立劇場オペラハウス

6日(土)18:30 新国立劇場バレエ『不思議の国のアリス』アリス:池田理沙子/ハートのジャック:井澤 駿新国立劇場オペラハウス

14日(日)14:00 新国立劇場バレエ『不思議の国のアリス』アリス:アンナ・ローズ・オサリヴァン/ハートのジャック:渡邊峻郁新国立劇場オペラハウス

18日(木)19:00 #1943 N響 定演 Bプロ ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス ニ長調 作品123》指揮:鈴木雅明/ソプラノ:アン・ヘレン・モーエン/メゾ・ソプラノ:オリヴィア・フェルミューレンテノールベンヤミン・ブルンス/バリトンクリスティアン・イムラー/合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン管弦楽NHK交響楽団サントリーホール

21日(日)14:00 オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World ワーグナーニュルンベルクのマイスタージンガー》(新制作)指揮:大野和士/演出:イェンス=ダニエル・ヘルツォーク/美術:マティス・ナイトハルト/衣裳:シビル・ゲデケ/照明:ファビオ・アントーチ/振付:ラムセス・ジグル/ハンス・ザックス:トーマス・ヨハネス・マイヤー/ファイト・ポーグナー:ビャーニ・トール・クリスティンソン・クンツ・フォーゲルゲザング:村上公太/コンラート・ナハティガル:与那城 敬/ジクストゥス・ベックメッサーアドリアン・エレート/フリッツ・コートナー: 青山 貴/バルタザール・ツォルン: 菅野敦/ウルリヒ・アイスリンガー:小原啓楼/アウグスティン・モーザー:伊藤達人/ヘルマン・オルテル:大沼 徹/ハンス・シュヴァルツ:長谷川 顯/ハンス・フォルツ: 妻屋秀和/ヴァルター・フォン・シュトルツィング:トミスラフ・ムツェック/ダーヴィット:望月 哲也/エーファ:林 正子/マグダレーネ:山下牧子/夜警:志村文彦/合唱:新国立劇場合唱団、二期会合唱団/管弦楽東京都交響楽団

【21日(土)20:00 調布国際音楽祭2020〈オリジナル楽器で奏でる音楽家100人が参加したオンライン合奏〉ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調作品125 より第4楽章/指揮:鈴木雅明/ソプラノ:アン=ヘレン・モエン/アルト:オリヴィア・フェアミューレン/テノールベンヤミン・ブルンス/バス:クリスティアン・イムラー/合唱&管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン /エグゼクティブ・プロデューサー:鈴木優人】

聴き(観)応えがあった。

【22日(月)14:00 神田日勝 大地への筆触」展 東京ステーションギャラリー

前売り券を買っていたので時間帯は自由だった。馬の絵は「開拓の馬」(1966)を含めどれも素晴らしく、何より表情が可愛い。「死馬」(1965)には思わずグッときた。絶筆の「馬」(1970)は未完で腰から後ろ足は描かれていない。まるで「死馬」がヒョッコリこの世に姿を現したかのようだ。画家はその年に32歳で亡くなっている。

【28日(日)16:00「『未練の幽霊と怪物』の上演の幽霊」作・演出:岡田利規音楽監督・演奏:内橋和久/出演:森山未來片桐はいり栗原類石橋静河、太田信吾/七尾旅人(謡手)/映像:山田晋平、音響:稲住祐平、美術協力:中山英之、演出助手:石内詠子、制作:小沼知子 @YouTube配信/神奈川芸術劇場(KAAT)】

岡田版の夢幻能。前半は新国立競技場のデザイン案を撤回され急死した建築家ザハ・ハディドが、後半は廃炉が決まった敦賀高速増殖炉もんじゅがモチーフ。設定・演出の妙。じつに面白い! 岡田利規はやはり才能がある。机の上が舞台。壁には6月のカレンダー。シモテのガラス窓から時おり車の走りすぎる音。仕事帰りらしい人や、犬を散歩させる人なども通り過ぎる(状況劇場でテントが裂開したとき銭湯帰りのオジサンが見えたのを思い出した)。だが、決して顔は見えない(カメラの)絶妙な位置。窓外の往来は、パソコン画面で観ているこちらと同じ時間がそこにも流れていると感じさせる(あとで日の暮れ具合からイリュージョンだと分かるが)。机の上に和紙(?)が貼られた写真立てのようなものが登場のタイミングでその都度置かれ、そこに出演者の映像が映し出される。歌手と演奏者のそれは少し小さめ。何か可愛い。机の上方に木枠のようなモビールが吊されており、時折、揺れる。幽霊の気配のよう。音楽も歌も素晴らしい。片桐はいりのラップまがいの激した語りと内橋和久のエレキギターとのコラボはインプロのセッションみたいで楽しい。配信版は前ジテがハケるところまで。後ジテを含む全篇をぜひライブの舞台で観たい。

 

5月のフィールドワーク予定(中止・延期の記録)2020【改訂】

 今月はコロナ禍の真っ只中。観る予定の公演はほぼ中止か延期となった。後者すなわち中止を免れたのは BCJ定期とコンポージアム関連のみ。

舞台芸術を最後に観た/聴いたのは、オペラ 2月6日『セビリアの理髪師』(新国立劇場オペラハウス)、バレエ 2月26日『マノン』(同上)、コンサート 2月16日 BCJ定期(オペラシティコンサートホール)と軒並み 2月で、 3月に観られたのは三つの演劇公演のみ。「大規模なイベント」に該当しないと判断できたからだろう。その最後が 3月26日『歳月・動員挿話』(文学座アトリエ)。以来、生の劇場(音楽)芸術にはまったく触れていない。代わりに本や書類の整理とオンライン授業の準備に四苦八苦する毎日だ。

2日(土)14:00 新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ音楽:レオン・ミンクス/振付:マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴルスキー/改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ/美術・衣裳:ヴャチェスラフ・オークネフ/照明:梶 孝三/指揮:アレクセイ・バクラン/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団キトリ:米沢 唯/バジル:井澤 駿新国立劇場オペラハウス

3日(日)14:00 新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』キトリ:木村優里/バジル:渡邊峻郁新国立劇場オペラハウス

4日(月)14:00 新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』キトリ:柴山紗帆/バジル:中家正博新国立劇場オペラハウス

5日(火)14:00 新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』キトリ:池田理沙子/バジル:奥村康祐新国立劇場オペラハウス

9日(土)14:00 新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』キトリ:米沢 唯/バジル:速水渉悟新国立劇場オペラハウス

10日(日)14:00 新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』キトリ:小野絢子/バジル:福岡雄大新国立劇場オペラハウス

16日(土)13:00 新国立劇場演劇『ガールズ&ボーイズ』作:デニス・ケリー/演出:蓬莱竜太/翻訳:小田島創志/美術:乘峯雅寛/照明:中川隆一/作曲:国広和毅/音響:信澤祐介/衣裳:前田文子/ヘアメイク:鎌田直樹/演出:助手平井由紀/舞台監督:川除 学/出演:長澤まさみ @新国立小劇場

17日(日)14:00 新国立劇場オペラ《サロメ》全1幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉作曲:リヒャルト・シュトラウス/原作:オスカー・ワイルド/指揮:コンスタンティン・トリンクス/演出:アウグスト・エファーディング/美術・衣裳:ヨルク・ツィンマーマン/[キャスト]サロメ:アレックス・ペンダ/ヘロデ:イアン・ストーレ/イヘロディアス:ジェニファー・ラーモア/ヨハナーン:トマス・トマソン/ナラボート:鈴木 准/ヘロディアスの小姓:加納悦子/5人のユダヤ人1:与儀 巧/5人のユダヤ人2:青地英幸/5人のユダヤ人3:加茂下 稔/5人のユダヤ人4:糸賀修平/5人のユダヤ人5:畠山 茂/2人のナザレ人1:北川辰彦2人のナザレ人2:秋谷直之/2人の兵士1:金子慧一/2人の兵士2:金子 宏/カッパドキア人:友清 崇/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

24日(日)15:00 BCJ #138 定演〈創立30週年記念演奏会〉ファンタジアとフーガ ト短調 BWV 542/《イエスよ、あなたはわが魂を》BWV 78/マニフィカト 変ホ長調 BWV 243a(初期稿)指揮:鈴木優人/ソプラノ:ジョアン・ラン、松井亜希/アルト:ロビン・ブレイズテノール櫻田亮/バス:ドミニク・ヴェルナー/オルガン:鈴木雅明/合唱・管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン東京オペラシティ コンサートホール タケミツメモリアル→【12月16日(水)19:00に延期】

28日(木)19:00〈珠玉のリサイタル&室内楽ベートーヴェン《ホルン・ソナタヘ長調 Op.17《エコセーズ》変ホ長調 WoO.86 ※ピアノ・ソロ《6つのエコセーズ》WoO.83 ※ピアノ・ソロ/W.A.モーツァルト《バイオリン・ソナタヘ長調 K.377/ベートーヴェンモーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」の「伯爵様が踊るなら」の主題による12の変奏曲》ヘ長調 WoO.40/ブラームス《ホルン三重奏曲》変ホ長調 Op.40スペシャル・トリオ:小菅 優(ピアノ)佐藤俊介(バイオリン)トゥーニス・ファン・デァ・ズヴァールト(ナチュラル・ホルン)ヤマハホール

29日(金)19:00 リーラ・ジョセフォウィッツ&トーマス・アデス デュオ・リサイタル/ヤナーチェク《ヴァイオリン・ソナタ》/アデス《マズルカ》op.27(2009)[ピアノ・ソロ]]アデス《新作》(2020)[日本初演][ルイ・ヴィトン財団、東京オペラシティ文化財団共同委嘱作品]/ストラヴィンスキー《協奏的二重奏曲》/ナッセン《リフレクション》(2016)/ラヴェル《ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番》リーラ・ジョセフォウィッツ(ヴァイオリン)トーマス・アデス(ピアノ)@東京オペラシティ リサイタルホール2021年1月18日(月)に延期

31日(日)15:00〈コンポージアム2020武満徹作曲賞 本選演奏会〉/審査員:トーマス・アデス/指揮:杉山洋一(日程変更に伴い指揮者が篠﨑靖男から変更)/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団[ファイナリスト](エントリー順)シンヤン・ワン(中国)《ボレアス》/フランシスコ・ドミンゲス(スペイン)《MIDIの詩》/デイヴィット・ローチ(イギリス)《6つの祈り》/カルメン・ホウ(イギリス/香港)《輪廻》@オペラシティコンサートホール 2021年1月19日(火)に延期

文学座 3月アトリエの会 岸田國士フェスティバル『歳月/動員挿話』【加筆修正】

岸田國士の『歳月/動員挿話』を観た(3月26日 14:00/ 文学座アトリエ)。

美術:島根慈子、石井強司 照明:阪口美和 音響:丸田裕也 衣裳:宮本宣子 舞台監督:岡野浩之/制作:田中雄一朗、友谷達之、最首志麻子/宣伝美術:藤尾勘太郎

当初は他の公演と重なり諦めていた。が、予定の行事やバレエ公演等が新型コロナで続々中止となり、急遽、信濃町へ。見られてよかった。 岸田國士の対話劇の妙、科白の韻律美。こんな日本語はもう誰も書けない。『歳月』の演出(西本由香)は正攻法。転換でのギター曲や終幕のピアノ生演奏が印象的。『動員挿話』の演出(所奏)は大胆不敵。出鼻は違和感を覚えたが、ぐいぐい引き込まれ、全て科白に誘発されての発話/演技と納得した。

岸田國士については少し調べたことがある。感想を述べる前に、まず、この二作にまつわるメモを記したい。

「或こと」を言ふために芝居を書くのではない。/芝居を書くために「何か知ら」云ふのだ。(「言はでものこと」1924年

これは劇作家 岸田國士(1890-1954)の信条である。「『或こと』を言ふために芝居を書く」とは、「或る内容」や「思想」を表現するのが目的で、芝居や戯曲は二の次(手段/形式)という意味だ(両者は不可分だが)。これだと、内容や思想さえよければ、形式(演劇)はどうでもよいことになる。こうした考えが横行する「新劇界」に岸田は不満だった。

岸田にとって、演劇(戯曲)の価値を決めるのは、演劇を演劇たらしめる〝演劇性〟であり、それ以外のもの(主義主張や文学的要素)ではありえない。大事なのは「戯曲(演劇)でなくては現はせないもの」を捉まえることだ。

この信条から岸田は多くの戯曲を書いたが、今回の『歳月』(1935)は、岸田いわく「これが偶然私の『戯曲を書くために何か知らを云ふ』最後の作品となった。少なくとも、この種の天下泰平劇はここ当分書けさうにもない」と(「『歳月』前記」1939)。翌1936年、岸田は『風俗時評』と題する「戯曲ならざる戯曲」を「初めて『何かを云うために』書」き、これが岸田の転機となった*1。『風俗時評』は、脱稿直後【正確には掲載誌発売の一週間後】に起きた二・二六事件の空気を先取りした、ヒリヒリするような作品だ。この後、1943年に『かへらじと——日本移動演劇連盟のために』を書くまでの7年間、岸田は一篇の戯曲も書いていない(小説は別)*2。その背景にはもちろん戦争があった。ちなみに「『或こと』を言ふために」意識的に書いた最初の戯曲は、彼の唯一の戦争劇『かへらじと』であり、『風俗時評』は、図らずも書いてしまった、という方が当たっていると思う。

『動員挿話』(1927)の時代設定は「明治37(1904)年の夏」、日露開戦の年である。これは、明治の軍人家庭に生まれ、自らも陸軍士官学校へ進んだ後、文学に転じた経歴を持つ岸田國士にとって、個人的な意味があった。本作の宇治少佐同様、岸田の父庄造(当時少佐)は、この1904年に野戦砲兵第三連隊大隊長として出征し、同年9月、14才の國士は軍人を志して名古屋地方幼年学校に入学した 。つまり本作は、結局は軍職を捨てた劇作家が、軍人への志を初めて行動に移した23年前の我が家を題材にした作品である。

馬丁友吉と数代が過去に「痴情沙汰」を起こした挙げ句、夫人のとりなしで夫婦になったいきさつがほのめかされる場面があるが、これも、國士が幼少期に岸田家で実際に目撃した事件を基にしている*3 。つまり『動員挿話』の登場人物は、一般の観客や読者の眼には(当時としてもある程度は)特殊に見えるとしても、この作家には、きわめて身近な題材から作り出されたものである。

『動員挿話』は戦争に関わる内容ゆえに「或ることを言ふために」例外的に書いたと見る向きもある*4。本作が結果として「何か知ら」を語っていることは否定しない。というか、どの戯曲も「何か知ら」を表現しているだろう。当然のことだ。たとえば、数代の科白に見出せる〝反戦〟はいま観て(読んで)も説得的だが、これも、演劇美を実現するために創られた科白(動作と言葉)の絶妙なる「韻律的な配列」の結果、生まれた「何か知ら」にすぎない。

以下、それぞれ簡単にメモする。

『歳月』全3幕(1935)演出:西本由香

[配役]浜野計蔵:中村彰男 浜野計一:神野 崇 浜野紳二:越塚 学 浜野駒江:名越志保 友人(後に浜野)礼子:吉野実紗 浜野八洲子:前東美菜子 女中:音道あい (八洲子の長女)みどり:磯田美絵

 元高級官吏の浜野家が舞台。結婚前の長女が子を孕み自殺を図った事件を起点に、子の父親が〝不在の狂言回し〟となり、17年にわたる歳月で家族が変化していくさまを描く。場面転換の音楽はギター版モーツァルトか。初めは交響曲第40番のアンダンテ(第2楽章)? 幕切れは《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》の冒頭。ギター版を採用したのは、登場しない狂言回し(齋木一正)が「ギタアがそれやお上手だつた」(礼子)からだろう。岸田の悲喜劇はモーツァルトと相性がよい。…… 第3幕で、17歳となったみどり(磯田美絵)は、訪ねて来た顔も知らない父が別室で母と再会している間、伯母の礼子がよく「癇癪を起して、ガンガン音を出して」いた「熱情的」なショパンの「こがらし」を暗譜で弾き、父が帰ると、未来を予感させるグリーグの「春に寄す」を弾いて幕となる。大した腕前。

舞台は総じて悪くないが、どの俳優も、もう少し声を抑えてもよい。特にアトリエなどの小劇場では、そこまで強く声を出さなくても充分聞き取れる。岸田の場合、何より対話劇の音楽(韻律)を大事にして欲しい。八洲子役の前東美菜子は思いのほか声が低く太く、作品のイメージとは違った。神野崇は仕事にも就かず結婚もせずの長男役をうまく演じていた。母の名越志保は老け役を品良く演じて印象的。

『動員挿話』全2幕(1927)演出:所 奏

[配役]宇治少佐:斉藤祐一 馬丁友吉:西岡野人 従卒太田:西村知泰 少佐夫人鈴子:鈴木亜希子 数代:伊藤安那 女中よし:松本祐華

本作は、内容だけ抽出すれば、陸軍少佐に仕える馬丁の女房が夫の従軍に反対し井戸で自殺する話である。舞台にはなにもない。暗がりで上からモノが落下する音。座布団だった。あと旅行鞄も。天から人間に降りかかる。何かの隠喩か。天災、戦争、コロナ? 従卒太田の妙な動き。衝撃を受けた空間と見合っている、そういえなくもない。少佐夫人(鈴木亜希子)の対し方も奇妙。宇治少佐(斉藤祐一)と夫人は二人きりになると、思わず、磁石のように互いに引き寄せられる(ローラン・プティ振付のバレエ『こうもり』でベラとヨハン夫婦も同じ動きをする)。

本作の主軸は、少佐夫婦と馬丁夫婦という身分の異なるふたつのカップルだ。両者が動員に際して見せる態度の違いが芝居のツボのひとつ。普通はそう。たとえば、鈴子は数代のようにあからさまな態度はとらず、軍人妻ゆえに気丈に振る舞う。だが、鈴子だって夫が戦地に行くのは辛いし悲しいはずだろう(実際、本作の第一稿では、鈴子は夫の前で悲しみを直接的にも間接的にもさほど隠さない*5)。今回の少佐夫婦がにじり寄る動きは、二人の正直な内側を身体的に告げるものと見れば、これもアリだと、あとで思った。

言葉の語尾は所々で強調され、引き延ばされる。ディストーション? デフォルメ? 当初は地点の舞台(←苦手)を思い出し、ウェっと思ったが、どうもそれとは違う。岸田の科白の気持ち好さ、つまり音楽性(心理的波動)と呼応しているようなのだ。つまり、科白の韻律や意味が誘発するものに躊躇なくかたちを与えるとこうなった、そんな感じ。結果はコミカルで少々グロテスクでもあるが、芝居が進むにつれて、そこから感情や情動がみるみる湧き上がり、舞台に釘付けになった。たとえば第2幕の馬丁夫婦の部屋。夫の従軍を拒絶した数代(伊藤安那)は、友吉の代わりが見つかれば屋敷を出て行くことになっている。そこへ夫人が現れ、数代に優しい言葉をかける。しかし数代は、蔑みを受けるだけでは足りず、憐れみを受けなければならないのか、と泣き崩れるのだ。この泣き方も今時の女性と等身大で、なにか虚を突かれた。そこへ友吉(西岡野人)が入ってきて、やはり戦地へ行くことにしたと言い、夫婦の緊迫した対話の果てに悲惨な結末が……。

93年前に書かれた科白を、いまの役者の身体にひとつひとつ丹念にくぐらせていく。結果、途方もない仕草(科)や発話(白)が現出しても、あえてそれを採用する。そう見えた。その勇気は見事だと思う。この点、5日前に観た『冬の時代』の舞台(unrato/芸劇シアターウェスト)とは対照的だった。所奏の名前は覚えておきたい。

それにしても、どうして文学座にはこんなにいい役者が揃っているのだろう。文学座には、ぜひ『かへらじと』を上演してほしい。『風俗時評』も(かなり工夫が必要だと思うが)。

*1:1936年以降、現代演劇の再建という年来の悲願をいったん封印し「『新劇』から手を引いた」岸田國士は 、「根本的な工作に転じ」日本の文化を再建すべく評論を発表した。また大政翼賛会文化部長として(1940年10月~42年7月)文化運動を推進すべく全国を講演して回り、対談やラジオ放送等もこなした。こうした活動を通して訴えた岸田の〝戦争文化論〟とは、日本の伝統文化を現代に復興させ「力としての文化」の新たな建設と共に、人間性(人間といふものはどんなものかといふこと)についての認識の共有を促すことだった。認識の共有と新文化の建設は密接に関連しているが、岸田は、「この共通な認識」が「今無ことが、結局はいざといふ場合に、国民の本当の力を出し切ることのできない最大原因だと思ふ」と、表明していた(「文芸雑談」1940年12月) 。岸田だこう書いてから80年経つが、「この共通な認識」は未だに無い。

*2:演劇が、小説や詩等の文学と比べ、きわめて社会性の高い芸術分野であることと無関係ではない。演劇は、作者と観客のほかに、俳優、演出家、装置家、さらに劇場等の社会的な存在なしには成立しえない。

*3:「風呂場が騒々しかつた。朝である。/母の後ろからなかをのぞくと、女中のよしが、壁にもたれて泣いてゐる。馬丁のオカドが右手に木鋏を持つて、そのそばに立つてゐる。よしの髪の毛が半分、オカドの左の手から垂れてゐた」。「痴情沙汰」「『追憶』による追憶」(1926年)『岸田國士全集』20(岩波書店、1990年)

*4:渡邊一民『岸田國士岩波書店、1982年

*5:『動員挿話』にはヴァリアントが存在する。「第一稿」は1927年7月1日発行の『太陽』に掲載され、2ヶ月後「帝国劇場9月興行上演台本」と副題された「改作 動員挿話」が『演劇芸術』(同年9月1日発行)に発表された。もちろん後者が決定版。