新国立劇場 DANCE PLATFORM 2012 Aプログラム/ダンサーの質は高いが振付にはバラツキが

「DANCE PLATFORM 2012」のAプログラムを新国立小劇場で観た(11月30日)。

演出・振付:キミホ・ハルバート
音楽:M.ラヴェル、Fred Malle、小瀬村 晶 ほか
照明:足立 恒
衣裳:荻野 緑
音響:黒野
舞台監督:堀尾 由紀
出演:
「skin to skin」平原慎太郎(11月29日)/佐藤洋介(11月30日・12月1日)、キミホ・ハルバート
「MANON」よりデュオ 酒井はな、福岡雄大
「Beauties and Beasts」作間草、森田真希、キミホ・バルバート、上野天志、柴一平、平原慎太郎

前半の「skin to skin」は、男と女がくっつき、葛藤し、やがて離れ、すれ違い、ひとりで悩み、またくっつく。それを踊りで見せる(音楽:アルヴォ・ペルト)。振付は平凡で物足りない。佐藤洋介の強度ある踊りでかろうじて見ることが出来た。(なぜか、中央後方からひとり男の声で「ブラッボ」の連呼が・・・)。
「MANON」のパ・ド・ドゥ。初めはベッドルームの場面かと思ったら、ラストの沼地だった。マクミラン風のジャンプ&リフトをアレンジしたような動きの後、やがてマノンは死ぬ。その死に方がとても風変わりで、デ・グリューの背中で息絶える。ほどなく中央奧に雪が降ってくる。デ・グリューはそこへマノンを引き摺っていき、積もった雪でマノンの遺体を蔽う。さらに雪が激しく降りしきるなか幕。酒井はなの磨き抜かれた身体はとても美しい。彼女の存在でドラマが立ち上がりかけた。福岡雄大にとって貴重なレッスンとなればよいが。音楽は、前半はピアノとヴァイオリンとチェロによるトリオ。マノンが死んだ後は、ヴァイオリンとチェロのデュオ。だが、「マノン・レスコー」の〝聖と俗〟を往還する振幅の激しいドラマには、あまりにドメスティックな作風。それにしても最後の雪のシーンは納得いかない。最愛の人の遺体に雪を掛けるだろうか。そもそも流刑地アメリカ南部ルイジアナに雪が降るのか。
休憩後は「Beauties and Beasts」(約1時間)。演出・美術についてのコメントは省く。四人のインプロヴィゼーションと、ベル(キミホ・ハルバート)が解放されて後の、ラベルの明るい音楽に振り付けた四人の群舞は印象的。だが、ベルと野獣(上野天志)の二つのパ・ド・ドゥはいただけない。あのようなメロドラマに堕してしまうのは、ベル=自分を可愛がりすぎるからではないか。
総じて、発表会のレベルを超える舞台とは言い難い。この振付家は、才能を伸ばすためには、自分が踊ることを禁欲すべきだと思う。今回は作間草や平原慎太郎をはじめ、質の高いダンサーたちの踊りを見る喜びはたしかにあった。が、振付家自身が中央で踊ると舞台の水準が明らかに落ちた。個人のスタジオと、税金が投入されている国立の劇場とでは、社会的な意味が異なることを自覚してほしい。