川村毅『4four』/新たな試みは歓迎したいが/モノローグとダイアローグの虚構性/決めきらないのは演出の不徹底では

『4four』の初日をシアタートラムで観た(11月5日)。
あれから三週間も経ってしまった。その後、刺激的な舞台が目白押しで、つい、そのままに。遅ればせながら、ごく簡単なメモを記す。

作:川村毅
演出:白井晃
美術:松井るみ
F:池田鉄洋
O:田山涼成
U:須賀貴匡
R:高橋一生
男:野間口徹

自由席かと思ったら、チケットと引き替えに葉書大のカードが渡される(裏に四通りの役名が記され「刑務官」に赤丸が付いていたが、これは何だったのか)。そこに記された番号(チケットの整理番号とは別)が書かれた場所に、用意された木箱と座布団を使って自分で席を作るという趣向。通常の座席はすべて取り払われたフロアの中央に正方形の枠が赤で記され、観客は、その四角をランダムに囲むかたちで座る。赤枠にかなり近くに当たったため、居心地が悪い。そのうえ、木箱に2時間強座り続けるのは結構きつい。あとで腰が痛くて参った。
男五人が黒箱からそれぞれ紙片を取り出し、そこに書かれた役を、「裁判員に選ばれた大学職員」(池田鉄洋)、「法務大臣」(田山涼成)、「拘置所の刑務官」(須賀貴匡)、「未決囚/死刑確定囚」(高橋一生)の順に、ソロで演じる(モノローグ)。一通り終わると、次にどうするか五人で相談(ダイアローグ)。結局、役を交換することになり、再び男(野間口徹)が黒箱を持ってきて、男を除く四人が再度紙を取り出し、モノローグを始める。そして、最後は・・・。
この状況の場合、モノローグとダイアローグは虚構性の審級が異なるはず。とすれば、後者はもっと即興に近いリアルさがほしい。役を入れ替えたあと、舞台が少しダレたのは残念。
今回のキャスティングは、田山涼成高橋一生をはじめ、空間を共有するだけで喜びを与えてくれる役者たちが少なくなかった。
ただ、あのような客の入れ方は、一見、面白そうだが、演劇としてどんな効果があったのか。この演出家には〝最先端〟への嗅覚はあるようだが、いつもそれらしいもので終わってしまうのは気のせいか。内発的な創意があるなら、たとえトレンドに反するとしても、無骨にそれに従う勇気がないと真にラディカルな舞台は生まれない。「決め打ちをしたくない」「決めきらない」(プログラム)というのは演出としてはどうなのか。いったん徹底的に解釈し尽くし、決め尽くしたうえで、結果として「決めきらない」世界が観客に届くよう組み立てるのが演出家の仕事だと思うのだが。