新日本フィル定期演奏会 トリフォニーシリーズ第一夜/代役指揮者はエル・システマ出身/聴き手の免疫性を高める演奏

新日本フィルハーモニー交響楽団の第500回定期演奏会を聴いた(10月26日/トリフォニーホール)。
当初予定の指揮者ヴォルフ=ディーター・ハウシルトが急病のため来日できず、代わりにドミンゴ・インドヤンが出演。この若手指揮者は、例のエル・システマで学んだベネズエラ人で、来年からベルリン国立歌劇場バレンボイムの第一アシスタントを務めるとの由。演目は変更なし。コンサートマスターは豊嶋泰嗣。
前半は楽劇『トリスタンとイゾルデ前奏曲と愛の死。朗々とよく響くのだが、禁欲した果てに解放されるワーグナー的なエロティシズムとは無縁。明るいワーグナー。インドヤンはかなり大柄で、指揮振りから器用なタイプではなさそうに見えたが、独特の音楽性が感じられた。大器かも知れない。
後半はベートーヴェン交響曲第3番 変ホ長調「英雄」op.55。7月にフィルハーモニアを指揮した演目らしく、一気にアットホームな指揮振り。身体のほぐれ方がまったく違う。二楽章は葬送の暗さはないが、弦がこれまでとは違う音色を出していた。三楽章のスケルツオは乗りがよく、トリオのホルン三重奏は実に気持ちが好い。四楽章のヴァリエーションでは、木管がジャズバンドのように次から次へとノリノリで吹きまくり、しかも色彩がとても豊か(古部賢一のオーボエはさすがだが、フルートは少し・・・)。音楽の楽しさ、喜びがひしひしと伝わってきた。久し振りにこちらの免疫性が高まるような体験だった。この指揮者には律動が必要のようだ。それにしても、音を出さない指揮者の文化的背景(南米)がこうも音楽に表れるものなのか。考えてみれば不思議である。