2012-01-01から1年間の記事一覧

日中共同制作 オペラ《アイーダ》(コンサート形式) 堂々たる中国人歌手/挙動不審の和製ラダメス

正直、気が重かったのだが、オペラ《アイーダ》(コンサート形式)を新国立劇場で観た(7月29日)。 日中国交正常化40周年記念 2012「日中国民交流友好年」認定行事 指揮:広上淳一/東京フィルハーモニー交響楽団/合唱:新国立劇場合唱団・国家大劇院…

大島莉紗ヴァイオリン・コンサート〜パリ・オペラ座からの便り〜第2回 「実存」を音化する音楽家/新国立劇場オペラ研修所 試演会 アリア抜きのオペラ

先週の土曜日は午前11時から「大島莉紗ヴァイオリン・コンサート〜パリ・オペラ座からの便り〜」をトッパンホールで聴き、その後、初台へ移動し、14時から新国立劇場オペラ試演会の「《コジ・ファン・トゥッテ》重唱で綴るオペラ短縮版」を聴いた(7月28日)…

バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の定期演奏会/非キリスト者にとっての〝教会〟

先週の金曜日、BCJの定演を聴いた(7月20日/東京オペラシティコンサートホール)。今回は「教会カンタータ」ではなく〈J. S. バッハ:世俗カンタータ全曲シリーズ Vol.2〉の「結婚カンタータ」。もちろん指揮は先頃ライプチヒ市からバッハ・メダルを授…

シー・イージェ(Shi Yijie)テノール・リサイタル 残念ながら・・・

水曜の夜シー・イージェ(石倚洁)のテノール・リサイタルを聴いた(7月18日/東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル)。ピアノは浅野菜生子。数年まえ東フィルの定期でロッシーニの『ギョーム・テル』と『スターバト・マーテル』を聴いたと…

新国立劇場 演劇公演『温室』2回目/悪の造形について

昨夜『温室』の2回目を観た(7月13日)。 冒頭で段田安則=ルートがいきなり番号を間違えた。「6459号はどんな具合かね?」(正しくは「6457号」)。が、高橋一生=ギブズは何もなかったかのように応じる、「6457号でございますか?」/ルート「そう。」・…

シー・イージェ(石倚洁)のテノールがまた聴ける

上海生まれのテノール歌手シー・イージェ Shi Yijie(石倚洁)が日本での初リサイタルを開く。昨日の「朝日新聞」夕刊で初めて知った(危うく聴き逃すところ)。ただ、その記事には「韓国の若手テノール」と表記されていたが(もちろん中国が正しい)。 シー…

新日本フィル定期演奏会 トリフォニー・シリーズ第1夜/内面と外面のコントラスト/昨年のハーディング

新日本フィルの#497定演を聴いた(7月6日・トリフォニーホール)。指揮はダニエル・ハーディング。曲目は、シューベルトの交響曲第7(8)番 ロ短調「未完成」D759と、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」op.40。コンマスは崔文洙。 「未完成」…

ベルトルト・ブレヒト『ガリレイの生涯』演劇集団 円 森新太郎演出/昨年の『ゴドー』と比べると・・・

翻訳:千田是也/演出:森新太郎 今日シアタートラムでブレヒトの『ガリレイの生涯』を観た(7月7日)。円の公演はほんとうに久し振り。80年代には安西徹雄訳・演出のシェイクスピアや渡辺守章訳・演出のラシーヌ、中村雄二郎企画のチェーホフや別役作品等々…

新国立劇場バレエ『マノン』2012 サミングアップ 楽日【追記】/イエイツ/プログラム/照明/キャスティング【追記】/MVP

楽日を3階バルコニーの後方で観た(7月1日)。 小野・福岡組の二回目。1幕だけ見れば、この演目を何度も踊っているかのようななめらかさと美しさ。福岡雄大の挨拶のソロは、初日より抑制的で、踊りの外形よりも内的なあり方を大事にしているように見えた。…

新国立劇場バレエ『マノン』4日目 山本隆之の奮闘/寺田亜沙子の喜び/酒井はなの不在

この日のキャストは見ないつもりだったが、偶々チケットを貰いけっきょく行くことに(6月30日)。 デ・グリューの山本隆之はよく奮闘したと思う。挨拶のソロは踊りとしては物足りない向きもあろうが、理知的な味をしっかり出していた。さすがである。寝室の…

新国立劇場 演劇公演『温室』 「不安定さ」の感受自体が不安定

新国立小劇場でハロルド・ピンター『温室』の初日を観た(2012.6.26)。 演出:深津篤史/翻訳:喜志哲雄/美術:池田ともゆき/照明:小笠原純/音響:上田好生/衣装:半田悦子 対面式の観客席に挟まれたグレーの舞台には、赤に統一されたデスクやソファー…

新国立劇場バレエ『マノン』2日目/ゲスト組 文化のグローバル化?

昨日『マノン』の2日目を観た(6月24日)。 マノン=サラ・ウェッブ/デ・グリュー=コナー・ウォルシュ/レスコー=古川和則アメリカからのゲストダンサーは二人ともしっかりと充実した踊り。サラ・ウェッブのマノンは踊り・演技ともさすがにこなれていた…

新国立劇場バレエ『マノン』初日 成熟/退廃の不在

昨夕、新国立劇場バレエの『マノン』初日を観た。 マノン=小野絢子/デ・グリュー=福岡雄大/レスコー=菅野英男 演出=カール・バーネット、パトリシア・ルアンヌ 指揮・編曲=マーティン・イエイツ/東京フィルハーモニー交響楽団特筆すべきは音楽の素晴…

小林紀子バレエ・シアター『マノン』2011 島添亮子&ロバート・テューズリー

昨日から新国立劇場バレエの『マノン』が開幕した。そのメモを記す前に、昨夏、小林紀子バレエシアターが上演した『マノン』のメモを転記する。バレエの『マノン』を久し振りに観た(新国立劇場/2011.8.27)。自分が『マノン』を作品として好むことをあらた…

日本へのオマージュ ビントレーのバレエ『パゴダの王子』

新国立劇場のホームページによれば、舞踊部門の芸術監督は2014年9月から大原永子(68)が就任するとの由。これは、デイヴィッド・ビントレー現芸術監督(2010年9月〜)があと二年で辞めることを意味する。やっと真っ当なキャスティングを期待できると思った…

F/Tの野外劇 カステルッチの「天」/飴屋の「地べた」/維新派の「戯画」/ポレシュの…

フェスティバル/トーキョー12の開催が決定したとのメールが届く。昨秋のF/Tは4つの野外劇を含む6公演を観た。そのうち、ロメオ・カステルッチの作品が私には圧倒的だった。遅まきながらその時の体験メモをアップしたい。 カステルッチといえば、2009年の『…

新国立劇場『ローエングリン』 フォークトの不思議な魅力

新国立劇場の新制作オペラ『ローエングリン』初日と四日目を観た(6月1日/10日) 指揮:ペーター・シュナイダー/東京フィルハーモニー交響楽団 演出:マティアス・フォン・シュテークマン/美術・光メディア造形・衣装:ロザリエ/照明:グイド・ペツォル…

演劇公演『サロメ』 官能性の不在

新国立劇場でオスカー・ワイルドの『サロメ』を観た(6月2日/中劇場)。 翻訳:平野啓一郎/演出:宮本亜門/美術:伊藤雅子白を基調にしたモダンなセット。上方に大きな鏡が設置され、舞台上手の警備モニターが宴会場の不機嫌なサロメを捉える。舞台と客席…

別役実『やってきたゴドー』 「いわゆる」をめぐって

5月25日(金)俳優座劇場で別役実の『やってきたゴドー』を見た。 演出:K. KIYAMA/美術:石井みつる 五年ぶりの再演らしい(初演は未見)。いうまでもなくベケットのパロディだ。あれだけ待っても来なかったゴドー(吉野悠我)が、ついにやって来た。だが…

文学座アトリエ公演『NASZA KLASA ナシャ・クラサ』 異なる話法の語り分けについて

5月26日(土)文学座アトリエで『NASZA KLASA ナシャ・クラサ 私たちは共に学んだ——歴史の授業・全14課』を観た。作:タデウシュ・スウォボジャネク/演出:高瀬久男/訳:久山宏一+中山夏織。休憩を挟んで2時間40分。 刺激的な舞台だった。ポーランド人と…

新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』 成長した小野/ラインの川村/誰にも似ていない米沢/対話力の菅野

新国立劇場バレエ団の『白鳥の湖』を全4キャストで観た。初日の5月5日(土)はザハロワとウバーロフに代わり、中国中央バレエ団からワン・チーミンとリー・チュンがゲスト出演。 ジークフリート役のチュンは、国を代表しての出演を意識してか緊張が感じられ…

ラ・フォル・ジュルネ 疲弊のなかのコーラス(カペラ・サンクトペテルブルク)

一年ぶりのラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン。テーマは「Le Sacre Russe——サクル・リュス——」。2005年の「ベートーヴェンと仲間たち」以来、毎年足を運んできた。低料金で最高の音楽を提供し、新たなクラシックファンを開拓したいというルネ・マルタンの…

ローラン・プティの『こうもり』 ウィーン国立と新国立劇場のバレエ

ウィーン国立バレエの『こうもり』を東京文化会館で観た(2012.4.29ソワレ)。 やはりこの作品は素晴らしい。ローラン・プティは天才である。ただし、公演は踊りも音楽も低血圧。カンパニーの意向で「洗練」を目指した結果、あのように抑えた静謐な舞台にな…

野田秀樹『The Bee』 人間の非合理性と「ハミングコーラス」

野田作品は『パンドラの鐘』(1999)『贋作・桜の森の満開の下』(2001)『透明人間の蒸気』(2004)ぐらいしか観ていない。そこに才能の豊かさは感じたが、深刻な主題をちらつかせながらコトバ遊びではぐらかす手法には違和感があった。ヴェルディの『マク…

ダンス公演の楽しみ 『DANCE to the Future 2012』/『Shakespeare The Sonnets』/『静物画—still life』

平山素子振付によるトリプル・ビル『DANCE to the Future 2012』を新国立中劇場で観た(2012.4.21)。出演は新国立劇場バレエ団。ひとつめは「Ag+G」 バレエ団に振り付けた新作。消臭スプレーのようなタイトルだが、平山が好きな銀(Ag)に、ダンサーが意識…

舞台の愉悦 宮沢章夫と伊藤キム

昨秋(2011.10.14)F/T「トータル・リビング1986-2011」(宮沢章夫作・演出)をにしすがも創造舎で観た。宮沢の作品を観たのはこれが初めて。 ビルの屋上がセット。ビデオカメラが予め三台置いてある。色は白が基調。衣裳も綿素材のきなりのものが多く、みな…

脳のマッサージ 岩松了の舞台

プロの役者による完璧な舞台もよいが、素人やセミプロなどが交じった公演は「隙間」がある分、あれこれ考える自由があり、それなりに楽しめることも少なくない。昨年12月に観たさいたまゴールド・シアターの『ルート99』(作・岩松了/演出・蜷川幸雄)も…

劇団銅鑼の公演と「戯曲美」/追記 朗読劇のこと

数年前、銅鑼のアトリエ近くに引越して来たこともあり、劇団の公演を観る機会が増えている。 ・『ハンナのかばん』いずみ凜脚本/モニ・ヨセフ演出(銅鑼アトリエ 2009)・『センポ・スギハァラ 2009』平石耕一作・演出(東京芸術劇場小ホール2 2009)・マリ…

三好十郎の『胎内』について

劇場芸術の社会的な意義に関心があり、演劇・オペラ・バレエ等のフィールドワークをせっせと続けている。そこで感じたこと、考えたことを記し、簡便に取り出せるメモランダムとしてブログを開設することにした。まずは今月初旬、プロト・シアターで観た演劇…