2013-01-01から1年間の記事一覧

新国立劇場 演劇『効率学のススメ The Opportunity of Efficiency』 舞台の出来は微温的/企画の当否は数値で測るな

アラン・ハリスの『効率学のススメ』を観た(4月10日/新国立小劇場)。 「人生は数値で測ることができるのか。」(フライヤー)。「効率性」や「合理化」の名の下に、真っ先に切り捨てられてきたのは演劇を含む芸術文化そのものだ。特にこの国ではそういえ…

井上ひさし原案/蓬莱竜太 作『木の上の軍隊』 オキナワの内なる声

『木の上の軍隊』を観た(4月6日13:30/Bunkamura シアターコクーン)。 井上ひさしが最後までこだわり続けた企画の舞台化。千田是也の演出にすまけいと市川勇の二人芝居で1990年4月の上演が決まっていた。ところが、台本があがらずに中止。その後、2010年7…

東京春祭《ニュルンベルクのマイスタージンガー Die Meistersinger von Nürnberg》(演奏会形式・字幕映像付)

あっという間に4月が来た。3月26日に新国立中劇場で「Dance to the Future 2013」を観たがさほど心が動かず、感想は書かず仕舞い。3月29日金曜日のBCJによる《ヨハネ受難曲》はすばらしい演奏だったが、これも別の理由からアップせず。受難曲を聴くと、エヴ…

NHKバレエの饗宴2013/簡単なメモ

「NHKバレエの饗宴2013」を観た(3月16日/NHKホール)。 昨年からの企画のようだが、テレビで一部見ただけ。前回の新国立劇場バレエ団、谷桃子バレエ団、牧阿佐美バレヱ団、Noism1から今回は出演団体が入れ代わった。ただし、なぜか東京バレエ団だけは昨年…

新国立劇場 演劇『長い墓標の列』(2)中日再見/成長した舞台/古河耕史に痺れた/自死しないユダの決意

再度『長い墓標の列』を観てきた(3月15日/新国立小劇場)。やはり舞台は育ち成長していた。どの役者も初日に見られた硬さがほぐれ、それぞれの役を生きはじめている。なかでも城崎を演じた古河耕史には痺れた。 まずは第3幕の城崎と山名の対話。前言を翻…

新国立劇場 演劇『長い墓標の列』(1)優れた思想劇/役者の質が高い/観劇後はすっきりしない

福田善之作『長い墓標の列』の初日を観た(3月7日/新国立小劇場)。 作:福田善之 演出:宮田慶子美術: 伊藤雅子 照明:鈴木武人 音響:上田好生 衣裳:半田悦子 演出助手:渡邊千穂 舞台監督:福本伸生 キャスト 山名庄策 経済学部教授(純理派):村田雄…

新国立劇場オペラ《アイーダ》/代役のラトニア・ムーアに感動/ヴェントレの高音はトランペット

新国立劇場オペラ《アイーダ》の初日を観た(3月11日)。 このプロダクションを見るのは何回目だろうか。正直あまり得意な演目ではないのだが、今回初めて心動かされた。 指揮:ミヒャエル・ギュットラー 演出・美術・衣裳:フランコ・ゼッフィレッリ 照明:…

燐光群 創立30周年記念 第一弾 『カウラの班長会議』/歴史と現在を繋ぐ興味深い試み/説明的な台詞が多すぎる

坂手洋二作・演出『カウラの班長会議』の初日を観た(3月8日/下北沢ザ・スズナリ)。 作・演出:坂手洋二 照明:竹林功(龍前正夫舞台照明研究所) 音響:島猛(ステージオフィス) 美術:島次郎 衣裳:宮本宣子 振付:矢内原美邦 舞台監督:高橋淳一 演出…

劇団銅鑼『からまる法則』劇団創立40周年記念公演/適材適所の配役/台本と俳優を活かす演出

劇団銅鑼の『からまる法則』初日を観た(2月27日/俳優座劇場)。 作:小関直人 演出:松本祐子(文学座) 美術:石井強司 照明:伊藤孝 効果:熊野大輔 衣装:大野典子 舞台監督:稲葉対介 演出助手:柴田愛奈 舞台監督助手:鈴木正昭 イヤホンガイド:鯨エ…

ARICA 第24回公演『ネエアンタ』/山崎広太主演のベケットに基づく舞台/亡霊の現前に違和感

『ネエアンタ』の初日を観た(2月28日/森下スタジオ Cスタジオ)。 山崎広太がベケットに基づく舞台に出演するという。最近、ベケットの後期作品と舞踏との親近性について、また、米沢唯のジゼルを見ながらダンサーが亡霊を生きることについて、考えさせら…

ミンコフスキ指揮レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル - グルーノブル/聴きごたえのある二つの「未完成」

マルク・ミンコフスキが率いるレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル - グルーノブルの演奏会を聴いた(2月22日/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル)。 このオケは2009年に初来日したが、古楽のイメージとは裏腹によい意味でアバウトとい…

BCJ第100回定期演奏会【教会カンタータ・シリーズ 全曲達成記念】

バッハ・コレギウム・ジャパンの第100回定期演奏会を聴いた(2月24日/東京オペラシティコンサートホール タケミツ・メモリアル)。この公演でバッハの教会カンタータ全曲録音・演奏が達成された。 公演プログラムに「BCJ定期演奏会 第1〜100回のあ…

新国立劇場バレエ『ジゼル』(2)ジゼルが狂乱した理由/死者を生きた米沢唯/幽玄美

新国立劇場バレエ『ジゼル』の三キャスト目を観た(2月23日)。 音楽:アドルフ・アダン 振付:ジャン・コラリ/ジュール・ペロー/マリウス・プティパ 改訂振付:コンスタンチン・セルゲーエフ 美術:ヴャチェスラフ・オークネフ 照明:沢田祐二 指揮:井田…

新国立劇場バレエ『ジゼル』(1)初日はドラマティック/二日目はロマンティック

新国立劇場バレエの『ジゼル』を二つのキャストで観た(2月17日/2月20日)。土曜日には三つ目のキャストを観る予定だが、とりあえず二回の公演についてメモする。 音楽:アドルフ・アダン 振付:ジャン・コラリ/ジュール・ペロー/マリウス・プティパ 改訂…

カンパニーデラシネラ『異邦人』/ストーリー・テラーの才能

カンパニーデラシネラ『異邦人』を世田谷パブリックシアターで観た(2月14日)。再演らしいが、今回はじめて見た。ごく簡単にメモする。 [原作]アルベール・カミュ [翻訳]窪田啓作(新潮文庫刊) [構成・演出]小野寺修二 [テキスト協力]小里清(フラ…

サミュエル・ベケット『消滅するまえに…』劇団マウス オン ファイア /新世代のベケット?

アイルランドの劇団マウス オン ファイア Mouth on Fire による『消滅するまえに…』Before Vanishing . . . を観た(2月16日15:00/シアターX)。公演はベケット後期の4作から成る。「大事な視覚的要素の邪魔になる」(カハル・クイン芸術監督)ため、字幕…

ハーウッド作『テイキングサイド』Ronald Harwood, TAKING SIDES/深みに欠ける舞台/ドラマトゥルクの必要性

ロナルド・ハーウッド作『テイキングサイド〜ヒトラーに翻弄された指揮者が裁かれる日〜』の初日を観た(2月1日/天王洲 銀河劇場)。 戦時下の音楽家を扱う本作はそのテーマ(危機と芸術の問題)に惹かれ、原書で親しんできた。劇団民藝が『どちらの側に…

新国立劇場バレエ『ダイナミック ダンス! Bintley's Choice』ビントレーの絶妙なチョイス/サープが仕掛けた疑似ペンテコステ

『タンホイザー』初日の翌日から二夜連続で新国立劇場バレエ『ダイナミック ダンス! Bintley's Choice』を観た(1月24日・25日/新国立中劇場)。二つのキャストを見比べるとダンサー達の個性がよく分かりとても興味深い。ただ、残念ながら平日のため…

新国立劇場オペラ《タンホイザー》 卓越した合唱/ヴォルフラム役のクプファーが出色/気が漲る東京交響楽団

今年初めて更新する。生来の無精に加え、このところ面倒な雑務に追われて、つい四週間もほったらかしにしてしまった。 思えば暮れに観た最後の舞台は12月23日の『音のいない世界で』(新国立小劇場)。今年最初の公演は1月11日の新日本フィルのトリフォニー…