6月のフィールドワーク予定 2023【追加】+感想メモ

ピーター・ライト版『白鳥の湖』の再演。これまで「見ることは育てること」と勝手に思い全キャストを見てきたが、最近は本当に見たいダンサーだけになった。なぜだろう。理由や事情は見る側にむろんあるのだが、見られる側(バレエ団&劇場)にも確かにそれはある…。「ダンス・アーカイブ」はいつも妙な面白さを感じるが、今回はどうだろう。大野和士が振る《ラ・ボエーム》は楽しみだ。

10日(土)14:00 新国立劇場バレエ団『白鳥の湖振付:マリウス・プティパ&レフ・イワーノフ&ピーター・ライト/演出:ピーター・ライトガリーナ・サムソワ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/美術・衣裳:フィリップ・プロウズ/照明:ピーター・タイガン/[出演]オデット&オディール:米沢 唯/ジークフリード王子:福岡雄大/王妃:楠元郁子/ロットバルト男爵:中家正博/ベンノ:木下嘉人/クルティザンヌ(パ・ド・カトル):池田理沙子、飯野萌子/ハンガリー王女:飯野萌子/ポーランド王女:根岸祐衣/イタリア王女:奥田花純/指揮:ポール・マーフィー/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

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11日(日)18:30 新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』オデット&オディール:小野絢子/ジークフリード王子:奥村康祐/王妃:楠元郁子/ロットバルト男爵:中家正博/ベンノ:木下嘉人/クルティザンヌ(パ・ド・カトル):奥田花純、池田紗弥/ハンガリー王女:廣川みくり/ポーランド王女:直塚美穂/イタリア王女:赤井綾乃/指揮:ポール・マーフィー管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

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【14日(水)18:15 映画『テノール! 人生はハーモニー』(原題Tenor/2022年製作/101分/G/フランス)/監督:クロード・ジディ・Jr./製作:ラファエル・ベノリエル シリル・アヌナ ラムジ・キルン グレゴリー・バロ/脚本:ラファエル・ベノリエル シリル・ドルー クロード・ジディ・Jr./撮影:ローラン・ダイアン/美術:リズ・ペオ/衣装:レナイグ・ペリオット=ブールベン/編集:ベンジャミン・ファブルール/音楽:ローラン・ペレズ・デル・マールミシェル・ラロック/[キャスト]マリー・ロワゾー:ミシェル・ラロック/アントワーヌ・ゼルカウィ:/ディディエ:ギョーム・デュエム/サミア:マエバ・エル・アロウシ/エリオ:サミール・デカザ/ジョセフィーヌ:マリー・オペール/マキシム:ルイ・ド・ラビ二エール/ピエール:ステファン・デバク/ロベルト・アラーニャ(本人役):ロベルト・アラーニャ/ドゥードゥー・マスタ/オスカー・コップ @ヒューマントラストシネマ有楽町】←追加

↑パリ郊外でアルジェリア系の少年が警察官の発砲で死亡した事件は、映画『テノール! 人生はハーモニー』の背景と同じ。移民系ゆえに警官に職質される青年ラッパーが出自から生じる困難や葛藤を経て、オペラのオーディションで「誰も寝てはならぬ」に挑戦する。サクセスストーリーだが、ラッパー役が似た経緯で世に出た新人ゆえに、ハイカルチャー(オペラ)とローカルチャー(ラップ)が衝突し、後者から前者への闖入を描いても、絵空事にならずリアルだった。ピエール・ブルデューはこうした文脈で〝文化資本〟について考察したんだと納得。

アリアを歌う場面が楽しい。主人公のラッパー(MB14=モハメド・ベルヘール)や本人役のロベルト・アラーニャだけでなく、オペラの生徒役(ジョゼフィーヌ = マリー・オペールはミュージカル&オペレッタ歌手、マキシム=ルイ・ド・ラヴィニエールはバリトン歌手)はみな実際に歌っていたという。こうでなくっちゃ。7/3 ツイート

16日(金)19:00 新国立劇場演劇[未来につなぐもの]Ⅲ『楽園』The Blissful Land/作:山田佳奈/演出:眞鍋卓嗣/美術:伊藤雅子/照明:佐藤 啓/音楽:久米大作/音響:加藤 温/衣裳:山下和美/ヘアメイク:高村マドカ/演出助手:城田美樹/舞台監督:川除 学/[配役]若い子:豊原江理佳/東京の人:土居志央梨/娘:西尾まり/村長の娘:清水直子/区長の嫁:深谷美歩/おばさん:中原三千代/司さま:増子倭文江 @新国立小劇場

↑沖縄と思しき島の拝所で年に一度の祭祀がおこなわれる日。それが区長選挙と重なるなかで、立場が異なる7人の女性(娘、おばさん、村長の娘、若い子、区長の嫁、東京の人、司さま)が悲喜劇を繰り広げる。面白い。特に、短パン姿で〝意識高い系〟のセリフを小気味よく連発する「若い子」は、豊原江理佳が好演。「村長の娘」は対立候補の「区長の娘」(深谷美歩)を虚偽で陥れる憎まれ役。清水直子が見事な〝憎まれ演技〟で舞台を下支えした。清水は横山拓也の『雉、はじめて鳴く』『猫、獅子になる』『フタマツヅキ』でも優れた理解力で要の役を担った。『雉』『猫』も演出した眞鍋の指名だろう。

演出もいいし、役者の芸も楽しめる好い舞台だった。が、内外で見てきた作品群を見渡したうえでいえば、内容形式ともに無難なフレーム内で作られている印象は拭えない。この〝保守性〟を、作者や演出家に帰するのは多分筋違いだろう。二人に委嘱した劇場の限界だと思う。ここで二十数年見てきた蓄積がそう告げている。かつてこの劇場で平田オリザ岡田利規や深津篤史らの舞台から受けた破格の面白さや異和感は、もうここでは望みえないのか。劇場のこの変化は何に起因するのか。芸監? だが、それを選び、よしとしているのは劇場だ。

【17日(土)「木下晋展」@枝香庵(銀座)】←追加

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17日(土)18:30 新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』オデット&オディール:米沢 唯/ジークフリード王子:速水渉悟/王妃:楠元郁子/ロットバルト男爵:中家正博/ベンノ:木下嘉人/クルティザンヌ(パ・ド・カトル):池田理沙子、飯野萌子/ハンガリー王女:飯野萌子/ポーランド王女:根岸祐衣/イタリア王女:奥田花純/指揮:冨田実里管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

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21日(水)19:00 N響 #1988 定演〈B-1〉バッハ(レスピーギ編):3つのコラール/レスピーギグレゴリオ風協奏曲*/ラフマニノフ交響曲 第1番 ニ短調 作品13/指揮:ジャナンドレア・ノセダ/ヴァイオリン:庄司紗矢香サントリーホール

レスピーギ編のバッハ《3つのコラール》。「来たれ、異教徒の救い主よ」は辻󠄀本玲の匂い立つチェロが効いてた。「私の魂は主をあがめ」は木管が主体の軽やかさ。カンタータで聴き慣れた「目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ」は各声部を奏する楽器が少しずつ増え、tuttiの壮大で豊かな響きはフルオケならではの愉悦。

レスピーギグレゴリオ風協奏曲》は初めて聞いた。Vnは庄司紗矢香教会旋法? 印象はむしろ東洋的な華やぎや中国風の感触。庄司の音は、TVで聴く印象と違い、糸を引くように細いけど、オケと絡んでも埋没せず繊細に輝く音色が響いてくる。アンコールはバッハ《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》の「パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004」から第3曲のサラバンド。弓にほとんど重力をかけず(要所はグッとかけるけど)ヴィブラートも最小に装飾音符は即興のようにさりげなく弾いた。とても好い。

ラフマニノフ交響曲第1番 ニ短調 作品13》は面白い。4つの楽章ともタタタ・タンのリズムの入りが共通し、冒頭楽章では「怒りの日」のテーマがムキになって繰り返される。フィナーレは民族音楽的な要素もあり、〝いわゆる〟でない部分があちこちに。終わり方もユニーク。20代前半の作か。若さ漲る音楽だった。6/21 のツイートを若干修正

25日(日)14:00 新国立劇場 日本の洋舞100年・第4弾「ダンス・アーカイブ in Japan 2023」照明:杉浦弘行/音響:山本 直/制作協力:(一社)現代舞踊協会 ダンス・アーカイヴ企画運営委員会//『土面』(1972年初演)振付:芙二三枝子/音楽:三木 稔、松村禎三ほか/出演:高瀬譜希子、中川 賢ほか//『夏畑』(1983年初演)振付:折田克子/音楽:マラン・ゴゾフ/出演:平山素子、島地保武//『マーサへ』より三章「運命の道」(2002年初演)/振付:アキコ・カンダ/出演:折原美樹ほか//『バルバラを踊る』より(1980年初演)振付:アキコ・カンダ/音楽:バルバラ/出演:中村恩恵 @新国立中劇場

28日(水)19:00 新国立劇場オペラ《ラ・ボエーム》全4幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉作曲:ジャコモ・プッチーニ/原作:アンリ・ミュルジェール『ボヘミアンの生活情景』/台本:ジュゼッペ・ジャコーザ&ルイージ・イッリカ/指揮:大野和士/演出:粟國 淳/美術:パスクアーレ・グロッシ/衣裳:アレッサンドロ・チャンマルーギ/照明:笠原俊幸/舞台監督:髙橋尚史/[配役]ミミ:アレッサンドラ・マリアネッリ/ロドルフォ:スティーヴン・コステロ/マルチェッロ:須藤慎吾/ムゼッタ:ヴァレンティーナ・マストランジェロ/ショナール:駒田敏章/コッリーネ:フランチェスコ・レオーネ/べノア:鹿野由之/アルチンドロ:晴 雅彦/パルピニョール:寺田宗永/合唱指揮:三澤洋史/合唱:新国立劇場合唱団/児童合唱:TOKYO FM 少年合唱団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

30日(金)18:30 英国ロイヤルバレエ団『ロミオとジュリエット』ジュリエット:ナターリヤ・オシポワ/ロミオ:リース・クラーク/指揮:クーン・ケッセルズ/演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団東京文化会館

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