『シンデレラ』の初日、4日目、7日目、8日目ソワレ、千穐楽を観た(10月17日 金曜 18:30,21日 火曜 18:30,24日金曜 18:30,25日 土曜 18:00 ,26日 日曜 14:00)。つまり、米沢・ムンタギロフ組は2回、米沢・渡邊組と木村・速水組と小野・井澤組はそれぞれ一回ずつ(池田・水井組と柴山・渡邊組は未見)。
第80回 文化庁芸術祭主催公演/振付:フレデリック・アシュトン(1904-1988)/初演:1948年12月/監修・演出:ウェンディ・エリス・サムス&マリン・ソワーズ/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ/美術・衣裳:デヴィッド・ウォーカー/照明:沢田祐二/指揮:マルク・ルロワ=カラタユード&冨田実里/管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
初日は25年10月21日に他の日は11月1日にポストしたキャスト別の感想メモを、以下に貼り付ける。
初日 シンデレラ:米沢 唯/王子:渡邊峻郁/義理の姉たち:奥村康祐、小野寺 雄/
仙女:吉田朱里/春の精:五月女 遥/夏の精:飯野萌子/秋の精:奥田花純/冬の精:根岸祐衣/道化:木下嘉人/指揮:マルク・ルロワ=カラタユード
久し振りの『シンデレラ』。米沢灰かぶりは、誰も居ない一人踊りは力みなく自在に、舞踏会のソロは清楚に、王子相手のPDDは慎ましさに輝きも。健闘した渡邊王子はナンデモコイの弾性が増せば更によい。義姉2人は少し活力不足か(紙幣の横取りは落とさずに、道化のスティックはちゃんと投げ返そう)。
初役の吉田仙女は伸びやかで好いが、守護する肚も加えたい。物乞い老女との分業は面白さが半減しないか。四季の春 五月女と秋 奥田はさすがのアシュトン踊り、夏 飯野はよい、冬の初役根岸はOK。道化木下は間違いない。王子の友人たちは、歴代のノーブルな残像を超えなかった。
ウェリントンとナポレオンの役名を求婚者に変更したのは、史的人物のパロディを自粛? やってることは同じだが。旧ナポレオンが落とした鬘、どうするかと思いきや、やはり木下道化が、ああ、あそこにと近づきかけたら、なんと廷臣らの1人がシモテに蹴り出しつつ退出した。面白いハプニング。
全体的にいま一つの印象は、精彩を欠く指揮=オケのせいもありそう。初日だからか。今後の好転に期待したい。2025.10.21
4日目 シンデレラ:木村優里/王子:速水渉悟/義理の姉たち:小柴富久修、宇賀大将/仙女:山本涼杏/春の精:広瀬 碧/夏の精:直塚美穂/秋の精:花形悠月/冬の精:金城帆香/道化:佐野和輝/指揮:冨田実里
冨田指揮の東フィルはカタラユードよりテンポが少し緩めか。たっぷり鳴らす部分はよいが、1幕ダンスレッスンのピットはまだぎこちない(バンダ直前のハーモニクス等)。
木村は2幕のソロやPDDで力みがなく自然。デビュー直後の、ザハロワ的ライン志向から〝これ見よがし〟を除いたような踊り。そう見えた。
速水は泰然とした王子らしい様。ソロは余裕を見せつつきれいに踊るが、少し必死さも覗いた。
初役の山本仙女は少しアニメ的? 四季の精は皆きれいに踊るが、春以外、アシュトン訛りを標準化した〝きれいさ〟に見えた。
道化は少し頼りないか。王子の友人たちは、やはり物足りない。中家は踊らないのか。怪我? 星の精はアシュトン的快楽がやや少なめか。25.11.1
7日目 シンデレラ:米沢 唯/王子:ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ)/義理の姉たち:仲村 啓、菊岡優舞/仙女:内田美聡/春の精:東 真帆/夏の精:山本涼杏/秋の精:赤井綾乃/冬の精:吉田朱里/道化:木下嘉人/指揮:マルク・ルロワ=カラタユード

5年半振りに共演した米沢・ムンタギロフは2人とも嬉しそうに見える。
灰かぶりがしっかり雑巾掛けしてる。こうした細かな演技の積み重ねが2幕3幕の展開で生きてくる。
義理の姉 仲村は踊りが綺麗すぎる時も。菊岡は悪くない。内田仙女は伸びやかで輝きもある。春の東は好い。夏の山本はもっとアシュトン訛りが欲しいか。秋の赤井は思い切りがいい。冬は誰か分からず見たが好い。吉田だったか。1幕で灰かぶりの哀しさを音楽が後押しした。音楽はこの日が一番か。例のハーモニクスもちゃんと出てた。2幕の時計でトランペットのか細いテーマをホルンの音量が覆い隠した。
3幕冒頭、幕前をカミテからシモテへ横切る王子、出が遅れたか音楽が終わってもまだ袖へ届かず…。帰宅後のシンデレラは布を巻いた箒を椅子に立てかけたが落ちたけど、問題ない。たった数日のリハーサルでも米沢・ムンタギロフが組むと〝倍音〟が出る。生の舞台でしか味わえない喜びだった。25.11.1
8日目ソワレ シンデレラ:小野絢子/王子:井澤 駿/義理の姉たち:奥村康祐、小野寺 雄/仙女:吉田朱里/春の精:五月女 遥/夏の精:飯野萌子/秋の精:奥田花純/冬の精:根岸祐衣/道化:山田悠貴/指揮:マルク・ルロワ=カラタユード
小野はいつものきめ細かな踊り。井澤のソロは王子の余裕が欲しい。奥村はハチャメチャ振りが戻り、小野寺も大変好い。中家は父親役の肚がある。仙女吉田、四季の五月女、飯野、奥田、根岸みなよい。山田は道化の肚はこれからか。
1幕 星の精や2幕 廷臣に綻びが見えたが、この日は全12回公演の前楽で昼夜公演。そりゃキツイだろう。25.11.1
千穐楽(9日目)シ ンデレラ:米沢 唯/王子:ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ)/義理の姉たち:仲村 啓、菊岡優舞/仙女:内田美聡/春の精:東 真帆/夏の精:山本涼杏/秋の精:赤井綾乃/冬の精:吉田朱里/道化:木下嘉人/指揮:マルク・ルロワ=カラタユード
米沢・ムンタギロフはよく似ている。共に内的な善さが舞台から視える(技術は前提)。仲村・菊岡はよくなった。この日は首輪も回せた。
中家はちょっと〝頼りないけど善良な父親〟を見事に生きてた。内田仙女はゴージャズで輝きもある。内田の起用はムンタギロフのスケールに合わせたか。東の春は質が高い、山本の夏は脱力、赤井の秋はパキパキ、吉田の冬は強度がある。
2幕で以下の発見があった。

シンデレラ登場後「グランドワルツ」でシンデレラの背後から王子が跳躍しつつ寄り添い、星の精の間を縫うように踊るシンデレラを王子が追いかけ、四季の精とシンデレラが踊り/友人たちと王子が踊り、四季の精と王子の友人たちがペアで踊るなか、シンデレラと王子もペアで踊る。「プロムナード」を経て、クラリネットで始まる音楽(Allegro grazioso 2/4)でシンデレラがソロを踊り(王子は腕を上げて何度も賛嘆する)/勇壮な音楽(Andante con brio 6/8)で王子がソロを踊る。「3つのオレンジ」を経て…見えなくなったシンデレラを王子が探し、二人きりで再会してPDD(Adagio 9/8)を踊る。
この間、王子はシンデレラと視線を合わせて踊る毎に思いが募り、PDDで確信となる。こうした感情の動きが途切れず高まるさまを、初めて感取できた。二人が舞台で気持ちを通わせ続けた故の〝奇跡〟(25日夜同様、シンデレラのソロで E.Hr.の低音が歪んだのは残念)。25.11.1
8日目ソワレ シンデレラ:小野絢子/王子:井澤 駿/義理の姉たち:奥村康祐、小野寺 雄/仙女:吉田朱里/春の精:五月女 遥/夏の精:飯野萌子/秋の精:奥田花純/冬の精:根岸祐衣/道化:山田悠貴/指揮:マルク・ルロワ=カラタユード