5月のフィールドワーク予定 2023【+感想メモ】

エンジェルス・イン・アメリカ』第一部・第二部を見た。これは両方見て初めて納得できるし、見応えも感じる。その感想はいずれまた。それより、新国立劇場における〝フォワイエ内の宣伝ビデオ・ノイズ問題〟だ。4年前もツイートし、劇場に直接伝えもしたがいまだに未対応。ノイズ被害はバレエ公演のみならず演劇でも同じ(なぜかオペラ公演だけは「音無し」対応)。

小劇場のフォワイエ二階で『エンジェルス・イン・アメリカ』第一部の開演を待っていると、増幅された人声が聞こえてくる。一階窓際のビデオで出演者インタビューを流しているらしい。二階からは、何を言っているのか分からない。つまりノイズでしかない。さらに劇場スポンサーのCMも流された。字幕付きなので、音無しでも問題はないはず。アテンダントにそう伝えてもらうと、ボリュームを下げる措置をしたと。むろんノイズは解消されず。これは〝生の舞台〟を上演する劇場の根幹に関わると話し、聞かれたので名前も名乗った。次の休憩では音無しになったと思う。よかった。

と思いきや、翌日第二部を見にくると、また音が。今度はバレエ『マクベス』の音楽付き宣伝まで流れていた。開演後、休憩中は音無しになった。上演前なら音を出しても構わないと判断したらしい。

テレビやYouTubeに限らず、世の中には宣伝等のノイズで溢れている。それは仕方ない。だからこそ劇場は、そうしたノイズに侵されない〝聖域〟であってほしい。けして安価ではないチケット代を払って劇場へ行くのは、もちろん〝生の舞台〟を体験するためだが、同時に、様々なノイズから、束の間ではあれ、逃れるためともいえる。演劇・オペラ・バレエ等の劇場芸術は、実演者と受容者が同じ時空を共有する唯一の芸術だ。そこには〝いまここ〟にしかない存在の〝一回性〟がある。せめて国立と名の付く劇場には、そうした〝生の舞台〟を提供する意義や使命について、再考されることを願っている。

2日(火)13:00 新国立劇場演劇 フルオーディション Vol.5『エンジェルス・イン・アメリカ』第一部「ミレニアム迫る」作:トニー・クシュナー/翻訳:小田島創志/演出:上村聡史/美術:乘峯雅寛/照明:阪口美和/音楽:国広和毅/音響:加藤 温/衣裳:前田文子/ヘアメイク:鎌田直樹/演出助手:谷こころ/渡邊千穂/舞台監督:棚瀬 巧/技術監督:小西弘人/出演:浅野雅博 岩永達也 長村航希 坂本慶介 鈴木 杏 那須佐代子 水 夏希 山西 惇 @新国立小劇場

3日(水祝)13:00 新国立劇場演劇『エンジェルス・イン・アメリカ』第二部「ペレストロイカ@新国立小劇場

6日(土)14:00 新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」『マクベス』振付:ウィル・タケット/音楽:ジェラルディン・ミュシャ/編曲:マーティン・イェーツ/美術・衣裳:コリン・リッチモンド/照明:佐藤 啓/[配役]マクベス:福岡雄大マクベス夫人:米沢 唯/バンクォー:井澤 駿/3人の魔女:奥田花純、五月女遥、廣川みくり//『夏の夜の夢』振付:フレデリック・アシュトン/音楽:フェリックス・メンデルスゾーン/編曲:ジョン・ランチベリー/美術・衣裳:デヴィッド・ウォーカー/照明:ジョン・B・リード/[配役]ティターニア:柴山紗帆/オーベロン:渡邊峻郁/パック:山田悠貴/ボトム:木下嘉人/指揮:マーティン・イェーツ管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/合唱:東京少年少女合唱隊新国立劇場オペラハウス

7日(日)15:00 BCJ #155 定演 G. F. ヘンデル:オラトリオ《復活》 HWV47/指揮:鈴木優人/ソプラノ:キャロリン・サンプソン、中江早希/アルト:マリアンネ・ベアーテ・キーラント/テノール櫻田亮/バス:加耒徹/合唱&管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン @東京オペラシティ コンサートホール タケミツメモリアル

18日(木)19:00 新国立劇場オペラ ジュゼッペ・ヴェルディリゴレット》[新制作]全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉指揮:マウリツィオ・ベニーニ/演 出:エミリオ・サージ/美術:リカルド・サンチェス・クエルダ/衣裳:ミゲル・クレスピ/照明:エドゥアルド・ブラーボ/振付:ヌリア・カステホン/舞台監督:髙橋尚史/[キャスト]リゴレットジョルジュ・ペテアン[本人の都合により降板2/9→ロベルト・フロンターリ/ジルダ:ハスミック・トロシャン/マントヴァ公爵:イヴァン・アヨン・リヴァス/スパラフチーレ:妻屋秀和/マッダレーナ:清水華澄/モンテローネ伯爵:須藤慎吾/ジョヴァンナ:森山京子/マルッロ:友清 崇/ボルサ:升島唯博/チェプラーノ伯爵:吉川健一/チェプラーノ伯爵夫人:佐藤路子/小姓:前川依子/牢番:高橋正尚/合唱指揮:三澤洋史/合唱:新国立劇場合唱団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

24日(水)N響 #1985 定演〈B-1〉ハイドン交響曲 第82番 ハ長調 Hob. I-82「くま」/モーツァルト:ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調 K. 447/ベートーヴェン交響曲 第6番 へ長調 作品68「田園」指揮:ファビオ・ルイージ/ホルン:福川伸陽サントリーホール

27日(土)14:00 新国立劇場オペラ リヒャルト・シュトラウスサロメ》全1幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉指揮:コンスタンティン・トリンクス/演出:アウグスト・エファーディング/美術・衣裳:ヨルク・ツィンマーマン/[キャスト]サロメ:アレックス・ペンダ/ヘロデ:イアン・ストーレイ/ヘロディアス:ジェニファー・ラーモア/ヨハナーン:トマス・トマソン/ナラボート:鈴木 准/ヘロディアスの小姓:加納悦子/5人のユダヤ人1:与儀 巧/5人のユダヤ人2:青地英幸/5人のユダヤ人3:加茂下 稔/5人のユダヤ人4:糸賀修平/5人のユダヤ人5:畠山 茂/2人のナザレ人1:北川辰彦/2人のナザレ人2:秋谷直之/2人の兵士1:金子慧一/2人の兵士2:大塚博章/カッパドキア人:大久保光哉/奴隷:花房英里子/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

27日(土)18:30 キッド・ピボット『リヴァイザー/検察官』脚本:ジョナソン・ヤング(字幕あり)/演出・振付:クリスタル・パイト/台本:ニコライ・ゴーゴリ『Revisor』より/出演:Rakeem Hardy, Rena Narumi(鳴海令那), Brandon Alley, Doug Letheren, Ella Rothschild, Greg Lau, Jennifer Florentino, Renee Sigouin @神奈川県民ホール

↑とりあえず面白かった。古典戯曲のフレームを使ったダンス作品。英語セリフと戯画的な動きのマッチング。セリフやナレーションは録音か。ダンサーは音楽に合わせて振付を踊るように、セリフやナレーションに合わせ、動き踊る。超絶的に素速い、時に大きな動きはプロのダンサーならでは。笑いも出たが、頻度の低さはセリフが観客の母語ではないからか。笑いの質もゴーゴリ戯曲とは別次元の、お笑い芸人のギャグに近い印象。

見ながら小野寺修二の古典物(『カラマーゾフの兄弟』『異邦人』等)やチェルフィッチュの舞台を想起。こちらは俳優がその場で喋り(当たり前だが)動く。小野寺は身体の動きに意外性もあるが、ストーリーの語り方に意表をつく点が魅力だった。他方『リヴァイザー』はあくまでダンス。時折りドラマを離れ、ナレーターの指示に合わせてダンサーが動く。よく見るシーンだが、振付(演出)家とダンサーの支配関係が可視化されたようであまり好みではない。いずれにせよ、ゴーゴリの原作はダンサーの能力を引き出す手段なのだろう。ダンサーはみな上手い。演出も面白いが、原作の喜劇(風刺)性はあまりとどめていない。

何より本作に2493席の県民ホールは大きすぎる。せめて新国立中劇場(1030)か、彩の国大ホール(773)や新国立小劇場(468)なら、迫力が違っただろう(出来ない理由は見当がつく)。字幕はかなり高い位置にうっすら出る。見やすくすれば舞台を見なくなるからだとしても、フラットレーションが募った。5/30 ツイート