7月のフィールドワーク予定 2023+感想メモ

今月はコンサートが多くなった。佐藤俊介BCJの共演を聴きたくて、調布国際音楽祭のチケットを初めて買った。二年ぶりのボンクリ・フェスは本当に楽しみ。大塚直也のレクチャーコンサートも興味津々。

1日(土)17:00 〈調布国際音楽祭2023〉バッハ・コレギウム・ジャパン ヴィヴァルディ《四季》~春と夏~J.S.バッハ管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV1068/J.S.バッハチェンバロ協奏曲第2番 ホ長調 BWV1053/ヴィヴァルディ:「四季」より「春」「夏」/指揮・チェンバロ:鈴木優人/ヴァイオリン:佐藤俊介管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン @調布くすのきホール

佐藤俊介が弾き振りでBCJ奏者と対話し、嗾け、ジャズみたいにインプロみたいに装飾をつけると、みるみる音楽に生命が宿る。奏者らの身体も変化し、ダンスを見ている感じに。ダンサー柳本雅寛との競演は必然だった。後半の「夏」も凄まじい。俊介氏のヴァイオリンを聞くと、バッハのチェンバロ協奏曲が、正直、退屈に聞こえる。前半BCJのみの「エア(アリア)」(管弦楽組曲第3番)を、アンコールで俊介氏が弾き振り参加、テンポを動かすと皆呼応し、バッハが蘇った!

鈴木雅明氏の指揮が創り出す音楽にもダンスを感じることがよくあった。そういえば、シルヴィ・ギエムの公演で氏を見かけた記憶が。西野流呼吸法の実践者でもある雅明氏が、今回の佐藤俊介BCJの共演をどう感じたのか。ちょっと聞いてみたい気もする。(7/1のツイートに加筆)

2日(日)11:00 〈調布国際音楽祭2023〉バッハ・コレギウム・ジャパン ヴィヴァルディ《四季》~秋と冬~J.S.バッハ管弦楽組曲 第1番 ハ長調 BWV 1066/J.S.バッハチェンバロ協奏曲第1番 ニ短調 BWV1052/ヴィヴァルディ:「四季」より「秋」「冬」/指揮・チェンバロ:鈴木優人/ヴァイオリン:佐藤俊介管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン@調布くすのきホール

↑2日目は快晴。BCJ奏者は昨日と音が違った。身体がほぐれ、気持ちよさそうに舞曲を演奏。佐藤俊介効果か。二人のトークでは酔っ払った演技を交え「秋」の収穫の葡萄酒を先取り。俊介氏のインプロはさらに奔放さを増した。眠気を誘うフレーズで優人氏がチェンバロ前で眠り込み、それを弓で起こす俊介氏!女声のブラボーが飛んだ。この日、俊介氏はさほどBCJ奏者に嗾けない。すでにからだがほぐれていたからだろう。

後半のバッハのチェンバロ協奏曲第1番では、鈴木優人氏が名人芸を披露。トークで俊介氏が賞賛すると、この練習で「冬」のネタを考えてないと。同時に彼は直前まで他のコンサートを見守っていたエグゼクティブ・プロデューサーなのだから、頭が下がる。

後半の「冬」では、つんざくような寒さのなか、雹が窓に当たるが、室内では暖炉で心地よく…それを自在に、自由無碍と言いたいほどインプロを織り交ぜ、弾きだしていく。優人氏もプリペアドみたいに楽譜等をチェンバロの弦上に置き、ワイルドな音色を創り出していた。アンコールは、また来年季節が巡り音楽祭を迎えるべく昨日の「春」1楽章が演奏された。愉しそうに演奏する姿は実に気持ちが好い。最後はなんかグッときた。(7/2のツイートに加筆)

4日(火)14:00 Kawai Project vol. 8『悪い仲間』作・演出:河合祥一郎/音響:渡邉邦男/照明:渡邉雄太/演出部:梶原 航/舞台監督:髙山春夫/制作・美術・宣伝美術:河合祥一郎/出演:田代隆秀、髙山春夫、小田 豊、今井 聡、梶原 航、菊池夏野、西岡未央 @早稲田小劇場どらま館

↑フォールスタッフ役の高山春夫が素晴らしい。ゆったりとした佇まいでつねに開かれたあり方。思わず注視してしまう。途中で披露した詩吟の朗誦は聞かせた。ハル王子に抜擢された今井聡は以前より落ち着きが感じられ、よく演じたと思う。小田豊が体調不良で河合祥一郎氏が代役に。短期間で台詞を覚え、演じきった。脱帽。というか、よほど芝居が好きなのだろう。

作品は、フォールスタッフを描いたシェイクスピア史劇のアレンジに、生々しい戦争の場面が挿入された、ある種〝戦争の悲惨さを訴える劇〟の趣。特にウクライナへの空爆を思わせる場面での、河合氏の熱演は印象的。ただ、史劇をアレンジした場面は俯瞰的な視点からバランスよく描かれていたのに対し、悲惨さの表出を目指したと思われる後者の場面は、作者の距離感があまりうまく取れていない印象も。執筆の動機が「ウクライナの惨状に対する憤り」にある以上(プログラム)、理解できるが。冒頭と幕切れの、敵を見張り合う場面も、いまひとつ分かりにくかった。もう少し時間が経てば、よりバランスの取れた作品に育つかも知れない。

【4日(火)19:00 藤倉大 x 岡田利規リビングルームメタモルフォーシス』をめぐって/モデレーター:岡部真一郎明治学院大学白金校舎アートホール】←追記

↑面白かった。アンサンブル・ノマドの演奏も。映画『ドライブ・マイカー』で劇中の演出家が代役 or 中止の話から、演劇とオペラのカバーの違いについて、オペラだと歌手が体調不良になったが早いかカバーが飛行機で向かってると(F)。岡田演劇ではなぜ役者は声を張らないのか(F)。張ると情報量が減るから(O)。←よく分かる。トーンマイスターの話…。演劇は演奏より味が強い、だから本番では奏者を前に、演者を後ろに配置した(O)。見ながら色々考えるのが演劇だが、コンサートは考えるとそのとき音楽を聞いていない(O)。←これも分かるし、ブレヒトの〝美食的オペラ〟を想起したが、演奏を聴きつつ考えイメージするあり方もある? 演奏による? 映画でここはグッとくる音楽をと監督が作曲家に要求するのは…FOともネガティブ反応。岡田演劇は音楽を必要としていない(F)。←たしかに。頼まれもしないのにコストを考え奏者を最小限にして作曲してる(F)←藤倉氏らしい! 等々。マイクの音が聞きづらく、スタッフに言ったがさほど変わらず。話者が動くたびマイクから離れる点も再度告げたが改善されず。質疑応答が削られた点も残念。次回はぜひピンマイクで&タイムマネージメントをしっかり。7/7ツイート

8日(土)13:00 ボンクリ・フェス“Born Creative”Festival 2023/Special Concert【side A】❶ハリス・キトス/ファイブ・ウェイズ・トゥ・ムーブ(世界初演)/Haris Kittos: 5 ways to move (World Premiere)/演奏:アンサンブル・ノマド Ensemble NOMAD/映像:ハリス・キトス Haris Kittos/❷ドゥ・ユン/スロー・ポートレーツ(日本初演)/Du Yun/Slow Portraits (Japan Premiere)/演奏:アンサンブル・ノマド Ensemble NOMAD/映像デイヴィット・ミヒャレック David Michalek/❸藤倉 大/尺八協奏曲(アンサンブル版世界初演)/Dai Fujikura/Shakuhachi Concerto (World Premiere of ensemble version)/演奏:小濱明人(尺八)、アンサンブル・ノマド、佐藤紀雄(指揮)/Obama Akihito(Shakuhachi), Ensemble NOMAD, Sato Norio(Conductor)/写真:二コラ・フロック Artist Photographer: Nicolas Floc’h/アート・ディレクションフローレンス・ドゥルーエArt direction images: Florence Drouhet @東京芸術劇場コンサートホール

8日(土)16:00 ボンクリ・フェス“Born Creative”Festival 2023/tSpecial Concert【side B】❶ ヤスナ・ヴェリチュコヴィッチ/リモート・ミー~2つのリモコンと3つのコイルのための音楽~(日本初演)Jasna Veličković: REMOTE ME - music for two remote controls and three coils (Japan Premiere)/演奏:アンサンブル・ノマド Ensemble NOMAD/❷ アレックス・パクストン/モア・クラシカル・ミュージック(日本初演)Alex Paxton: More Classical Music (Japan Premiere)/演奏:アンサンブル・ノマド、芸劇オーケストラ・アカデミー・フォー・ウインド(GOA)、ノマド・キッズEnsemble NOMAD, GEIGEKI Orchestra Academy for Wind,NOMAD Kids/❸ スティーヴ・ライヒ/グランド・ストリート・カウンターポイント(世界初演)/Steve Reich: Grand Street Counterpoint(World Premiere)/演奏:レベッカ・ヘラー(ファゴット) Rebekah Heller (Bassoon)/❹ 大友良英/新作(世界初演)Otomo Yoshihide / New Work (World Premiere)/演奏:アンサンブル・ノマドノマド・キッズ、大友良英 Ensemble NOMAD, NOMAD Kids, Otomo Yoshihide/❺ 「大友良英/新作」ライブ・リミックスLive Remix of Otomo Yoshihide’s New Work by Jan Bang, Eivind Aarset, Anneli Drecker, Anders Engen, Audun Erlien, Otomo Yoshihide and Dai Fujikura/演奏:ヤン・バング(エレクトロニクス)、アイヴィン・オールセット(エレキギター)、アンネリ・ドレッカー(ボーカル)、アンデシュ・エンゲン(ドラムス)、アウドゥン・エリエン(ベース)、大友良英(ギター)、藤倉 大(エレクトロニクス)Jan Bang (Electronics), Eivind Aarset (electric guitar), Anneli Drecker(Vocal), Anders Engen (Drums), Audun Erlien (Bass), Otomo Yoshihide (Guitar), Fujikura Dai (Electronics) @東京芸術劇場コンサートホール

16日(日)15:00 BCJ  #156 定演〈トーマス・カントル就任300年記念〉教会カンタータ・シリーズ vol. 83/J. S. バッハ:カンタータ第147番《心と口と行いと生活が》BWV 147/カンタータ第75番《貧しい者たちは食べて》BWV 75/カンタータ第23番《まことの神でありダビデの子であるあなた》BWV 23ほか/指揮:鈴木優人/ソプラノ:松井亜希/アルト:アレクサンダー・チャンス/テノール:櫻田 亮/バス:クリスティアン・イムラ―/合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

↑いいコンサートだった。特にアレクサンダー・チャンスのカウンターテナーは、ケレン味や余計なものが一切なく、ただ歌う。素晴らしい! 鈴木優人氏もただ音楽をやってる。そう見える。アレクサンダーはマイケル・チャンスの息子だろう。2人は二代目同士で波長が合うのか。カンタータ147番のラストは75番 23番と聴いた後の賜物みたいに響いた。「主よ、人の望みの喜びよ」の題で知られるコラールは快速で進み、斎藤秀範氏の柔らかなスライドトランペット+オケもコーラスの歌声もみな透明度が高い。キリスト者でない自分は歌詞全てに共感する訳でもないのに何かグッときた。ただ一心に演奏し歌う。当たり前のようで実はそうでもない。ひたむきなアーティストたちの現場に立ち会うのは、じつに気持ちの好いものだ。7/17 ツイート

23日(日)14:00 大塚直哉レクチャー・コンサート in 埼玉会館 Vol.1 ~バッハ家の音楽帳より~/「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」より ペッツォールト:メヌエット ト長調/ト短調 BWV Anh. 114, 115/J. S. バッハ:《ゴルトベルク変奏曲》より〈アリア〉BWV 988/J. S. バッハ:フランス組曲第5番 ト長調 BWV 816/「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの音楽帳」より J. S. バッハ:〈小プレリュード〉〈インヴェンション〉から ほか/出演:大塚直哉(ポジティフ・オルガン、チェンバロクラヴィコード、お話)/主催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団/後援:一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)@埼玉会館 小ホール

29日(土)新国立劇場バレエ団〈こどものためのバレエ劇場 2023〉エデュケーショナル・プログラム『白鳥の湖振付:マリウス・プティパ+レフ・イワーノフ+ピーター・ライト/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/美術&衣裳:フィリップ・プロウズ/照明:ピーター・タイガン/[主演]オデット&オディール:米沢 唯/ジークフリード王子:渡邊峻郁/指揮:冨田実里/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス