2回目の「横浜バレエフェスティバル」を観た(8月7日 19:00/横浜県民ホール)。遅まきながら簡単にメモする。
席は3Fバルコニー(B席5400円)。昨年はB席(6000円)で2Fバルコニーに座れた。席割りがS・A・B・CからS・A・B(親子券あり)に変更したためか。結構空席が見られたが、来年は6月に二日間開催するらしい。大丈夫か。
芸術監督:遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト/振付家)
プロデューサー:吉田智大
主催:株式会社ソイプランニング/神奈川県民ホール
後援:横浜アーツフェスティバル実行委員会
スポットライトで各出演者を紹介するのだが、客席のフットライトが消えず完全な暗闇にならない。そのため効果が半減。昨年もそうだったが、なんとかならないか(緊急時に備えたホールの無意味なルールのせいか)。7月に上演された新国立の「こどものためのバレエ劇場」でいっとき真っ暗になると、子供らが思わず声を発し怖がり喜んでいた。いまや都会の子は漆黒の闇を知らないのだ。
【第1部】フレッシャーズガラ
『眠れる森の美女』第1幕よりオーロラ姫のヴァリエーション
中島耀(シンフォニーバレエスタジオ)
きれいな体型。技術もある。
『パキータ』よりエトワールのヴァリエーション
縄田花怜(梨木バレエスタジオ)
回転技が正確で気品もある。
『エスメラルダ』のヴァリエーション
みこ・フォガティ
鷹揚さは美点。かつての体操選手チャフラフスカみたい(古いか)。
菅井の笑顔が印象的。二山の浮遊感はさすが。両回転にチャレンジ。
【第2部】 World Premium 1
新作「Measuring the Heavens」 振付:高瀬譜希子
高瀬譜希子
演奏:佐藤健作
高瀬は手脚が(髪も)長くチャーミング。ボルダリングのような仕草も。佐藤はスネア大の和太鼓(?)を二本のばちで叩く。悪くない。
「瀕死の白鳥」
倉永美沙(ボストン・バレエ団)
音源が大仰な演奏(チェロ)で気品に欠ける。自然、踊りもそうなった。
二人のテクニックを見せるために創られたような作品。が、両人共これ見よがしは微塵もない。二山は本当にきれいな踊り。フォガティはここでも鷹揚。
「Lilly」 振付:+81
柳本雅寛(コンテンポラリーダンサー・ +81主宰)
青木尚哉(ダンサー・振付家)
闇の中、無音で何かが床に落ちるような音から始まる・・・。3.11の復興チャリティ・ガラで見たときはめちゃめちゃ笑った記憶がある。
ヌレエフ版『ライモンダ』 第1幕より夢のパ・ド・ドゥ
米山実加 (ボルドー・オペラ座バレエ団)
高岸直樹(元東京バレエ団)
米山は優美なたたずまい。サポートが必ずしも盤石ではなかったが、悪くない。それにしても、ヌレエフ版を本当にやりたいのか。
【第3部】 World Premium 2
新作「埋火 UZUMIBI」 振付:遠藤康行
米沢唯(新国立劇場バレエ団)
遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト・ 振付家)
米沢は前髪を下ろし紺のノースリーブに赤のチュチュ姿でシック。ミモザかと思った。ひたすら米沢のよさを引き出すパ・ド・ドゥ。遠藤はサポートとしても振付としても黒衣に徹した。結果、作品の個性は希薄。いわば無印良品の振付。音楽はピアノ伴奏のヴァイオリンソロ。曲名は? 出てこない。
『ヴァスラフ』よりソロ 振付: ジョン・ノイマイヤー
菅井円加(ハンブルク・バレエ団)
グレーのコスチュームで生き生きとかつきれいに踊ったが、作品にはなにもない(全幕で観たはずだが)。
『エスメラルダ』よりダイアナとアクティオンのグラン・パ・ド・ドゥ
近藤亜香(オーストラリア・バレエ団)
チェンウ・グオ(オーストラリア・バレエ団)
どこまでも明るい二人。グオはケレンに見応えあり。
『ロメオとジュリエット』より死のパ・ド・ドゥ 振付:アンジェラン・プレルジョカージュ
津川友利江(バレエ・プレルジョカージュ)
バティスト・コワシュー(バレエ・プレルジョカージュ)
久し振り。調べてみたら15年振り。国立リヨンオペラ座バレエ団の公演で、まずマッツ・エックの『Solo for Two』と『カルメン』を、そしてプレルジョカージュの『ロミ&ジュリ』を赤坂ACTシアターで見た(2001)。まずはその時のメモから少し転記――「・・・劇場は仮設のような作り。開演直前に子供の泣き声が聞こえ、父親が抱いて連れ出したかと思いきや、さらに、真後ろの中年男性の席から携帯の着メロが鳴り出す始末。なんという環境。だが、公演は素晴らしかった!・・・なんといっても、最後の、仮死状態のジュリエットとロミオの、そして、自死したロミオと息を吹き返したジュリエットのパ・ド・ドゥは圧巻だった! 前者では、仮死のジュリエットをやや乱暴ともいえる手つきで抱き上げ、愛撫するロミオの悲しみ。後者では、息を吹き返したジュリエットが死んだロミオを椅子に座らせ、その懐に何度も身体ごと投げ出してみるが、動かないロミオ。この間流れるプロコフィエフのツボを外さぬ音楽。胸が熱くなり涙があふれた・・・」。劣悪の環境にもかかわらず感動したことを覚えている。今回の二人もさすがに作品のよさをよく理解したパフォーマンス。涙。人間の原初的ななにかが立ち現れる振付。口で相手の手を咥える仕草は、動物が死傷した仔に対する様を想起させる。死=動かないこと。もちろんマクミランの振付なしにはありえなかったとしても、見事な振付作品だとあらためて感じた。
『くるみ割り人形』第2幕より金平糖の精と王子のグラン・パ・ド・ドゥ
倉永美沙(ボストン・バレエ団)
清水健太(ロサンゼルス・バレエ団)
倉永は『瀕死』とは別人。ちゃんと踊れば悪くない。スポーティで明るいパ・ド・ドゥ。
フィナーレは、バランシンの『テーマとヴァリエーション』で使われたチャイコフスキーの「組曲第三番」終楽章。各ペアのよさが出る踊りをそれぞれが繰り広げる。気持ちの好い幕切れ。