「バレエ・アステラス 2019」【追記】

「バレエ・アステラス 2019」の初日を観た(3日18:30/新国立劇場オペラハウス)。

今回は10回目を記念し2回公演となった(見たのは初日のみ)。なかなか見応えのある舞台だった。ごく簡単にメモする。

バレエ・アステラス委員(五十音順):安達悦子(東京シティ・バレエ団理事長・芸術監督)/岡本佳津子(井上バレエ団理事長)/小山久美(スターダンサーズ・バレエ団代表・総監督)/小林紀子小林紀子バレエ・シアター芸術監督)/牧阿佐美(新国立劇場バレエ研修所長)/三谷恭三(牧阿佐美バレヱ団総監督)

指揮:ポール・マーフィー

管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

『ワルツ』音楽:シャルル・グノー 振付:牧阿佐美 出演:新国立劇場バレエ研修所第15期生、第16期生、予科

 よく揃ってはいるが、もっと踊ってほしい。

『ダイアナとアクティオン』音楽:リッカルド・ドリゴ 振付:アグリッピナ・ワガノワ 出演:高森美結&森本亮介(ハンガリー国立バレエ団)

 悪くない。

ラ・シルフィード』第2幕よりパ・ド・ドゥ 音楽:ヘルマン・ルーヴェンシュキョル 振付:オーギュスト・ブルノンヴィル 出演:横山瑠華with ディエゴ・ブッティリオーネジョージア国立バレエ)

 ヴァイオリンとフルートのソロがこの曲のスタイルに乗り切れていない。シルフィードはかたちはよい。ジェイムズはブルノンヴィル・スタイルから遠い。ニーナ・アナニアシヴィリジョージアの芸術監督)はブルノンヴィル(デンマーク)好きのはずだが。

『Take Me With You』音楽:レディオヘッド(録音使用)振付:ロベルト・ボンダラ 出演:海老原由佳with クリストフ・シャボ(ポーランド国立歌劇場バレエ団)

 ダンサーのクラッピングで始まり、やがてドラムとアコースティックギター(?)+ヴォイス(3声?)の音楽(録音)に合わせて踊る。男女とも白シャツに黒の短パン。趣味のよいステージ。悪くない。

『ロメオとジュリエット』より寝室のパ・ド・ドゥ 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ 振付:ジョバンニ・ディ・パルマ 出演:石崎双葉with ダービット・モルナー(ハンガリー国立バレエ団)

 振付に時おりアクロバティックなリフトが入るが、場面や音楽と合っているか(全幕を見れば違うのかも)。二日目の「『天地創造』よりパ・ド・ドゥ」(振付:U. ショルツ)を見たかった。

『海賊』第2幕よりパ・ド・ドゥ 音楽:アドルフ・アダン 振付:マリウス・プティパ 出演:直塚美穂with アリシェイ・カリヴァイ(国立モスクワ音楽劇場バレエ)

 女性はよいと思うが、男性が…。

『Notre Chopin』音楽:フレデリック・ショパン(ピアノ協奏曲第1番第2楽章)振付:リアム・スカーレット 出演:影山茉以with マルコ・エスポジト(ポーランド国立歌劇場バレエ団)ピアノ演奏:金子三勇士

〝静かなバレエ〟の印象。緩徐楽章だからか。さほど難しいことをしているわけではないが、効果的。音楽をよく生かしているからだろう。女は動かず男が移動して、また女に近づくシークエンスなど面白い。ゆったりと音楽に耳を傾けながら、二人の動きに注視させる。『Take Me With You』同様、客席から口笛が。ポーランドのサポーター? ここで25分休憩。 

『ヴァリエーションfor 4』音楽:ウィリアム・ウォルトン 振付:三谷恭三 出演:新国立バレエ研修所、井上興紀、石山蓮、小野寺雄(新国立劇場バレエ団ファースト・アーティスト/研修所第7期修了)、山本達史(牧阿佐美バレヱ団/研修所第10期修了)

 面白い振付。二人はゲストだが、あとの二人は研修生か。素質がありそう。

『ラ・バヤデール』第3幕影の王国よりパ・ド・ドゥ 音楽:レオン・ミンクス 振付:マリウス・プティパ 出演:プラウダ・トランフィールド&ベンジャミン・アレキサンダー(カナダ国立バレエ学校)

 若いですね。

『Three Images of Hope』よりデュエット 音楽:オーウェン・パレット(録音使用)振付:ロバート・ビネー 出演:イザベラ・キンチ&マッキンリー・ベイナード(カナダ国立バレエ学校)

 同じく。

『タランテラ』音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク&ハーシー・ケイ 振付:ジョージ・バランシン 出演:宮崎たま子&滝口勝巧(ワシントンバレエ)

 アジリティ! 二人ともガッツとショーマンシップが素晴らしい。ちょっとオシポワ&ワシリーエフの元カップルを思い出した。

『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥ 音楽:アドルフ・アダン 振付:ジャン・コラーリ&ジュール・ペロー&マリウス・プティパ 出演:永井綾香(シビウ劇場バレエ団)with ロベルト・エナケ(ブカレスト国立歌劇場バレエ団)

 ヴィオラのトップはオフだったのか。ホルンも? ダンサーは気の毒だが、演目が合っていたのか疑問も。

『グラン・パ・クラシック』よりパ・ド・ドゥ 音楽:フランソワ・オーベール 振付:ヴィクトル・グゾフスキー 出演:菊地桃花with パブロ・オクタビオカールスルーエ州立バレエ団)

 つい応援したくなるような二人。男性は小柄だが誠実で技術も高い。技はもちろん前提だが、その内側がいかに大切か。私の前の観客二人は拍手の仕方から彼の母と兄かも。 とすればブラジルから見に来たのか。

【追記:nonさんのコメントによれば、女性はシュツットガルト・バレエの元プリマ ビルギット・カイル、若い男性の方はハンブルグ→NDTでダンサー兼振付家として活躍中のティアゴ・ボァディンとのこと。菊池&オクタビオはカイルの教え子らしい。隣に居たボァディンも。愛に満ちた応援振りに、つい家族と勘違いしたようだ。】

ドン・キホーテ』第3幕より 音楽:レオン・ミンクス 振付:マリウス・プティパ&アレクサンドル・ゴルスキー 改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ 出演:米沢唯&渡邊峻郁 奥田花純(第1ヴァリエーション)廣川みくり(第2ヴァリエーション) 赤井綾乃 中島春菜 土方萌花 関晶帆 廣田奈々 横山柊子

 米沢唯はここまできたか。とても感慨深い。登場しただけで、磨き抜かれた美しさと風格(アウラ)が際立つ。踊りもこれまで以上に洗練されていた(新たな指導が入っている?との声も)。 数日前まで「子どものためのバレエ『白鳥』」を三回も踊り、数日後には「Last Dance」の二回公演が控える。しかもこの暑さだ。にもかかわらず、米沢はアダージョアラベスク・パンシェの角度!)、ヴァリエーション、グランフェッテ(扇子!)を見事に踊りきった(かつて同劇場のガラ公演でフィリピエワやコジョカルはあまりの暑さにフェッテを中断)。『ことばが劈かれるとき』の著者はさぞ喜んでいるだろう。渡邊も意志と責任感を感じさせる素晴らしい踊り。さらに様式性と重みが加わればもっとよくなる。奥田や廣川もしっかり役割を果たした。

フィナーレ『バレエの情景』Op.52 より第8曲"ポロネーズ" 音楽:A.グラズノフ 出演者全員

 気持ちの好いフィナーレ。見てよかった。