12月のフィールド予定 2023【追記】+感想メモ

久し振りに上岡敏之指揮の演奏(読響)を聴く。新日本フィル音楽監督として最後に振ったとき以来か。

新国立の《こうもり》を振るパトリック・ハーンは 21/22シーズンから(かつて上岡が首席指揮者を務めた)ブッパタール響と歌劇場の総監督に最年少で就任した28歳のオーストリア人。ジャズピアニストとしても種々の受賞歴があるらしい。初日は N響定期と重なったため 3日目を観る。楽しみだ。

民藝が 2018年に連続上演した「神と人とのあいだ」第一部『審判』(1970)第二部『夏・南方のローマンス』(1987)は見応えがあった。今回の『巨匠』は同じく木下順二が 1967年にNHKで放送されたポーランドのテレビドラマに感銘を受け、1991年に書き下ろした戯曲だ。ナチス占領下のワルシャワで、極限状況に追い込まれた老俳優がマクベスの〝短剣のモノローグ〟を朗読…。どんな舞台になるのか。

新国立バレエの『くるみ割り人形』は米沢唯、小野絢子、速水渉悟の三人が出演する日を見る。今年のフィールドワークはそれで終わり。

この一年はいろいろあったが、舞台から〝気〟や〝エネルギー〟をもらいながら何とかサバイブできた。舞台に上がったアーティストたち、その舞台を支えたスタッフたちに、感謝したい。

6日(水)19:00 N響 #1999 定演〈Bプロ〉ハイドン交響曲 第100番 ト長調「軍隊」/リスト:ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調・レーガー:モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ指揮:ファビオ・ルイージ/ピアノ:アリス=紗良・オットサントリーホール

↑アリス 紗良 オットがリストのピアノ協奏曲第1番を赤いドレスに素足で弾いた。ペダルを直に感じる為? 1番は14歳でオケと初共演した曲だという。ピアノにかなり負荷をかけたからアンコールはサティの《ジムノペディ》(第1番)を弾くと。超弱音で弾き始め最後はピアノを労るように音が消え入る。紗良は自由奔放で変人(褒めてる)。

ハイドン交響曲100番「軍隊」は面白かった。ロマン派や後期ロマン派を散々聞いた耳にハイドンの古典的書法は新鮮に響くのか。シンプルだけどユーモラス(シンバル+小太鼓+トライアングル、休止等)、端正さと遊びが共存している。

レーガーの《モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ》は、例のK331ピアノソナタのテーマを変奏し、最後はフーガで締めくくる。ペトレンコ+ベルリンフィル来日のB プロでやったらしい(Aプロしか聞いてないが)。ルイージ指揮は面白くないとは言わないけど、あまり…。12/7 のツイートに加筆修正

8日(金)18:00 北とぴあ国際音楽祭 2023 ラモー作曲 オペラ《レ・ボレアード》指揮・ヴァイオリン:寺神戸 亮/演出:ロマナ・アニエル/振付・バロックダンス:ピエール=フランソワ・ドレ/バロックダンス:松本更紗、ニコレタ・ジャンカーキ、ミハウ・ケンプカ(以上2名 クラコヴィア・ダンツァ@ポーランド)/アルフィーズ:カミーユ・プール(ソプラノ)/アバリス:シリル・オヴィティ[本人都合でキャンセル]→大野彰展(テノール)/アダマス&アポロン:与那城 敬(バリトン)/カリシス:谷口洋介(テノール)/ボリレ:山本悠尋(バリトン)/セミル&ポリムニ:湯川亜也子(ソプラノ)/ボレアス:小池優介(バリトン)/ニンフ:鈴木真衣(ソプラノ)/アムール:鈴木美紀子(ソプラノ)/合唱・管弦楽:レ・ボレアードピリオド楽器使用)@北とぴあ さくらホール

9日(土)18:00 東京二期会・二期会21 プレゼンツ・スペシャルコンサート ~上岡敏之×東京二期会プロジェクトⅠ~ ストラヴィンスキー詩篇交響曲》/モーツァルト《レクイエム》ニ短調 K. 626/指揮:上岡敏之/ソプラノ:盛田麻央、メゾソプラノ:富岡明子、テノール:松原友、バス:ジョン ハオ/合唱:二期会合唱団/合唱指揮:根本卓也/管弦楽読売日本交響楽団東京芸術劇場コンサートホール

10日(日)14:00 新国立劇場オペラ ヨハン・シュトラウスⅡ世《こうもり》全3幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉指揮:パトリック・ハーン/演出:ハインツ・ツェドニク/美術・衣裳:オラフ・ツォンベック/振付:マリア・ルイーズ・ヤスカ/照明:立田雄士/舞台監督:髙橋尚史/ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン:ジョナサン・マクガヴァン/ロザリンデ:エレオノーレ・マルグエッレ/フランク:ヘンリー・ワディントン[健康の理由でキャンセル]→畠山茂/オルロフスキー公爵:タマラ・グーラ/アルフレード:伊藤達人/ファルケ博士:トーマス・タツル/アデーレ:シェシュティン・アヴェモ/ブリント博士:青地英幸/フロッシュ:ホルスト・ラムネク/イーダ:伊藤 晴/合唱指揮:三澤洋史/合唱:新国立劇場合唱団/バレエ:東京シティ・バレエ団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

↑7回目の再演。初日はN響サントリー定期と重なり、すでに3回エクスチェンジ済みで、3日目の左バルコニーを改めて取った。アルフレードの伊藤達人が素晴らしい! 輝きある歌声で、芝居もドイツ人ソプラノ歌手の元カレ役を自然にこなす。このプロダクションは全部見ているがテノールのベスト。東京シティ・バレエの男性ダンサーたちは端正でキレのよい踊り。これもベストだと思う。若手指揮者ハーンは意外に正攻法で響きがよく整い、音楽は自然。

アイゼンシュタイン役のマクガヴァンはしっかり汗を掻き舞台を牽引した。ロザリンデ役のマルグエッレは姿が綺麗でエンターテイニング。ファルケ役のタツルはOK。アデーレ役のアヴェモは声量の問題もあるが、喜劇に必須の感情表出が足りない。フロッシュ役のラムネクがポルカで歌った。吃驚。フランク役の畠山茂は代役をよく務めた。

オルロフスキー役のグーラは声が出ていない。体調なのか。イーダ役の伊藤晴はいい仕事をした。12/10 のツイートに加筆修正

【追記】1幕フィナーレで「…たとえ消え去ろうとも 幻影が/かつて君の心を満たしていたものが/ワインがもう君の慰めになってくれる/忘れ薬として/幸せ者は忘れるのさ/どうしても変えられないことなんか!」(オペラ対訳プロジェクト)でなぜかグッときた。伊藤達人はロザリンデとのデュエットも絶妙で美しい。ソロのみならず二重唱でも優れ、欧米女性歌手と歌で愛を語れる男性歌手は、日本では残念だが希少価値。伊藤は2015年の研修所公演でも際立っていた。あれから本公演の《タンホイザー》や《鶯》の代役を経て正キャストで活躍する舞台を見るのは格別だ。

【11日(月)13:05 小津安二郎:モダン・ストーリーズ selected by ル・シネマ『父ありき 4Kデジタル修復版』©1942/2023 松竹株式会社/1942,92min. モノクロ/出演:笠智衆 佐野周二 津田晴彦 佐分利信 坂本武 ほか @ル・シネマ宮下】

【12日(火)13:05 小津安二郎:モダン・ストーリーズ selected by ル・シネマ『長屋紳士録 4Kデジタル修復版』©1947/2023 松竹株式会社/1947,72min. モノクロ/出演:飯田蝶子 青木放屁 小澤榮太郎 笠智衆 坂本武 ほか @ル・シネマ宮下】←小津の誕生日

14日(木)19:00 劇団民藝『巨匠―ジスワフ・スコヴロンスキ作「巨匠」に拠る―』作:木下順二/演出:丹野郁弓/装置:勝野英雄/照明:前田照夫/衣裳:緒方規矩子/効果:岩田直行/舞台監督:中島裕一郎/[配役]A:齊藤尊史/俳優:神 敏将/老人:西川 明/女教師:細川ひさよ/前町長:小杉勇二/ピアニスト:花城大恵/医師:天津民生/ゲシュタポ:橋本 潤/通訳:山本哲也/兵士たち:保坂剛大/兵士たち:工村健人/避難者たち:今野鶏三/避難者たち:滑川龍太/避難者たち:釜谷洸士/避難者たち:一之瀬朝登/避難者たち:河南フミ/避難者たち:齊藤みのり/避難者たち:石川 桃/避難者たち:船津優舞/助成:文化庁文化芸術振興費補助金舞台芸術等総合支援事業(創造団体支援))独立行政法人日本芸術文化振興会紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

↑先月亡くなった鈴木瑞穂らが民藝を退団後 1972年に創立したのが劇団銅鑼。ご近所なのでよく見てる。今週たまたま木曜に民藝の『巨匠』を見た翌日、銅鑼の新人試演会『ガラスの動物園』を連続して見ることに。

『巨匠——ジスワフ・スコヴロンスキ作「巨匠」に拠る——』は NHKが放送したポーランドのTVドラマに木下順二が〝感動〟し、エッセイ「芸術家の運命について」を執筆(1967)。このドラマを再構成したのが本作だ(1991)。5回目再演の今回 初めて見たが、エッセイを超えるものは見出せず。というか、そこまでに達していない印象だった。役者が役を生きればなにかが現出するはずだが、〝新劇臭い〟発話ではそれも難しい。

木下順二の「呪縛から逃れない道を探る」(プログラム)という演出家は敢えてそうしたらしい。木下が原作の前後に加えたメタ的役柄のAや「語りの要素」が関係するとしても疑問。観客は俳優の無意識=からだの発動(元ぶどうの会 竹内敏晴/スタニスラフスキー)を観る為にこそ劇場へ行く。同じ演出家の『夏・南方のローマンス』(2018)ではその発動を体感したのだが。

15日(金)19:00 劇団銅鑼 試演会 2023『ガラスの動物園』作:テネシー・ウイリアムズ/小田島雄志訳/演出:大谷賢治郎/演出助手:三浦琉希/装置:髙辻知枝/照明:館野元彦/音響:坂口野花/音響操作:真原孝幸/衣装:中村真由美・庄崎真知子/舞台監督:池上礼朗/協力:Labo/制作:齋藤裕樹/出演:伊藤大輝、井上公美子、大橋由華、中山裕斗 @銅鑼アトリエ

↑新人4人はみな筋がいい。語り手 トム役の中山裕斗は〝クオリティスタート〟で見事に舞台を作り、アマンダ役の大橋由華は振り幅大の母のパトスをよく制御し、ローラ役の井上公美子は受けの演技が素晴らしく、ジム役の伊東大輝バリトンの台詞回しに奥行きがありノーブル。

ローラとジムのローソクのシーンはグッときた。アトリエの四方を客席が一列で囲み、セットはテーブルや電話、蓄音機、ガラスの動物等、椅子以外全て天井から吊されている。トムのフィルターを通した追憶劇の、脆く儚い世界を見事に作り上げた。大谷賢治郎の演出は適切かつ秀逸。

というわけで今回の満足度は民藝より銅鑼の新人公演がかなり優った。12/16 のツイートに加筆修正

22日(金)19:00 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/振付:ウエイン・イーグリング/美術:川口直次/衣裳:前田文子/照明:沢田祐二/クララ&こんぺい糖の精:小野絢子/ドロッセルマイヤーの甥&くるみ割り人形&王子:福岡雄大/指揮:アレクセイ・バクラン管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/合唱:東京少年少女合唱隊新国立劇場オペラハウス

【24日(日)13:00 芸劇 dance ワークショップ2023 発表公演 √オーランドー 身体的冒険と三百年の遊び/原案:ヴァージニア・ウルフ『オーランドー』/講師・構成・振付・出演:中村蓉/出演:芸劇danceワークショップ2023『√オーランドー』参加者;秋山舜稀 内田颯太 川島信義 佐藤正宗 中野亜美 中野利香 中森千賀 幡野智子 廣庭賢里 巻島みのり 森口ありあ 大和奈月 山本結 吉村元希 律子/スペシャリスト(各専門分野の視点から作品創作にご協力をいただく方々):浅野ひかり(現代美術):三村一貴(中国語中国文学)ほか @芸劇シアターイースト】←追加

↑中村蓉の公演は初めて見た。面白い。WSの参加者を活かす舞台。ピナ・バウシュ特に瀬山亜津咲がさいたまゴールド・シアター(もうない)を振付・演出したwork in progress の公演を想起。舞台が閉じてない(ピナは閉じてた)。

舞台正面奥に扇や松で飾られた目出度いオブジェ。原作の謝辞になぞらえた中村の〝挨拶〟後、一人のメンバーが登場、その動き(行動)を別のメンバーが追いながら言語化し、それをさらに中村が追いながら言語化していく。このアクションを続々登場するメンバーが繰り返す。ヴァージニア・ウルフの原作『オーランドー』(1928)は主人公の行動を追いながら〝伝記作者〟が(当然)虚実ないまぜに書き記したフィクション(小説)だ。冒頭のシークエンスはこの原作構造に「発表公演」の取り組みを、さらなるメタ視線として重ねたように見えた。

舞台は小説『オーランドー』の主要な出来事を語るテクストが字幕で表示され、パフォーマンスが展開される。凍ったテムズ河の氷上でオーランドーがサーシャとスケートする場面、逃げ出したトルコでの暴動後オーランドーが昏睡し女性に変身する場面、遊牧民族(ジプシー)と行動を共にする場面等々。昏睡するオーランドーを女性が丁寧にケアする場面はなぜか見入った(音楽はブラームスピアノ曲「4手のためのワルツ集(16のワルツ)」から15番)。あのメンバーはナースなのか。横で「純潔」「貞節」「謙譲」をチアガールが賛美し、そこへオーランドーがベッドから〝幽体離脱〟して「真実」のカードを持ち…。

男女が互いに対で動きつつ対話するシークエンスは面白い。卵焼きになにをかけるか、インドア派かアウトドア派か等々。価値観に違いがあっても一緒に居られるか。無理、無理じゃない…動きとやりとりが次第に激化し、いつの間にか互いの意見が反転する。からだへの負荷が〝なぞられた〟発話を〝生きられた〟発話へ変えていく。対話とは互いに変わることだった。

女性経済学者のメンバーがオーランドーの行動に関する質問に次々答えていくシーンも印象的。メンバー数人にサポートされリフトされる女性学者は、インタビュアーにその都度マイクを口にあてがわれ、答える。結構アクロバティック。質問(中村?)はスピーカーから。答え:オーランドーは経済学的に言うと浪費が過ぎる…。質問:ではどうすべきだったか? 答え:投資すべきだった!(場内笑い)。このシークエンスも発話を〝なぞり〟から遠ざけ自発性に近づける仕掛けが見事。青年団(平田オリザ)の演技術を想起した。

暗転後「19世紀の夜明け…イギリス全土の上空に大きな雲が居座る」場面。メンバー数人うつ伏せに横たわり中央に中村も。上手のAmazonならぬAsazonボックス(アイデア等を定期便で届けた現代美術の浅野ひかりに因むらしい)から雲を模したスモークが湧き出てる。メンバーは徐々に捌け、中村だけ残る。男女が箱を持ち去りつつ「女の子は嫁に出すからつまらん」と。小津安二郎『晩春』(1949)で父役の笠智衆が吐くセリフ。続いて紀子(原節子)が嫁に行く前、親子で京都旅行した帰り際に交わす対話が音声だけ流れる。このまま父と一緒に居たいと言う紀子、それは違うと父。ここで踊る中村のソロに正直な願望(娘)と社会的制度(父の言葉)の葛藤に苦悶する様が見えた。最後は父に従う娘。はいと答える原の声に合わせ頷き発する中村。はいと頷く後の、うなだれる中村のからだ。そのシルエットは、笠が娘の婚礼後 自宅で一人うなだれるラストのシルエットと重なる。『晩春』にも出てくるワーグナーの結婚行進曲は、ここではトロンボーン重奏+ハープ演奏。この場面によく合ってた。12/30 のツイートに加筆修正

24日(日)18:00 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』クララ&こんぺい糖の精:米沢 唯/ドロッセルマイヤーの甥&くるみ割り人形&王子:井澤 駿 新国立劇場オペラハウス

【25日(月)13:35 映画『PERFECT DAYS』(124分)監督:ビム・ベンダース/脚本:ビム・ベンダース&高崎卓馬/製作:柳井康治/エグゼクティブプロデューサー:役所広司/プロデュース:ビム・ベンダース&高崎卓馬&國枝礼子&ケイコ・オリビア・トミナガ&矢花宏太&大桑 仁&小林祐介/撮影:フランツ・ラスティグ/美術:桑島十和子/スタイリング:伊賀大介/ヘアメイク:勇見勝彦/編集:トニ・フロッシュハマー/リレコーディングミキサー:マティアス・ランパート/インスタレーション撮影:ドナータ・ベンダース/インスタレーション編集:クレメンタイン・デクロン/キャスティングディレクター:元川益暢/ロケーション:高橋亨/ポスプロスーパーバイザー:ドミニク・ボレン/VFXスーパーバイザー:カレ・マックス・ホフマン/[キャスト]平山正木:役所広司/タカシ:柄本時生/アヤ:アオイヤマダ/ニコ:中野有紗/ケイコ:麻生祐未/ママ:石川さゆり/ホームレス:田中 泯/友山:三浦友和/竹ぼうきの婦人:田中都子/酔っ払いのサラリーマン:水間ロン/子供:渋谷そらじ/子供:岩崎蒼維/迷子の子供:嶋崎希祐/母親:川崎ゆり子/赤ちゃん:小林 紋/明神主:原田文明/旅行客:レイナ/番台:三浦俊輔/銭湯の老人:古川がん/かっちゃん:深沢 敦/常連客:田村泰二郎/居酒屋の店主:甲本雅裕/年配女性:岡本牧子/レコードショップの店員:松居大悟/レコードショップの客:高橋 侃/レコードショップの客:さいとうなり/レコードショップの客:大下ヒロト/野良猫と遊ぶ女性:研ナオコ/OL:長井短/地元の年配男性:牧口元美/地元の年配男性:松井 功/でらちゃん:吉田 葵/写真屋の主人:柴田元幸/古本屋の店主:犬山イヌコ/バーの常連客:モロ師岡/バーの常連客:あがた森魚/女子高校生:殿内虹風/ケイコの運転手:大桑 仁/電話の声:片桐はいり/タクシー運転手:芹澤興人/駐車場係員:松金よね子/佐藤:安藤玉恵 @TOHOシネマズ 池袋】←追加

28日(木)14:00 新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』クララ&こんぺい糖の精:柴山紗帆/ドロッセルマイヤーの甥&くるみ割り人形&王子:速水渉悟新国立劇場オペラハウス

太陽劇団『金夢島』2023

太陽劇団の『金夢島(かねむじま)』を観た(10月24日 火曜 18:00/芸劇プレイハウス)。

太陽劇団を見るのは2001年の『堤防の上の鼓手』(新国立中劇場)以来だから、実に22年振り。『鼓手』は俳優が(文楽)人形振りを見事に演じきる驚嘆すべき舞台だった。ただ演者らが東洋人に似せて顔を細目(吊り目)に作っていたのは少し違和感もあった。が、今回はまったく異なる印象。以下、簡単にメモする。

東京芸術祭 2023 芸劇オータムセレクション 太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)『金夢島 L’ÎLE D’OR Kanemu-Jima』フランス語上演(多言語の使用場面あり)・日本語字幕付き

演出:アリアーヌ・ムヌーシュキン(2019年京都賞受賞)/創作アソシエイト:エレーヌ・シクスー/音楽:ジャン=ジャック・ルメートル/出演:太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)

日本の大衆演劇(芝居)へのオマージュか。日本への愛が強く感じられた。ピナ・バウシュとロベール・ルパージュを合わせたような印象も。

老いた女性コーネリアがベッドで夢を見る。…日本の島(佐渡)で国際演劇祭を開催し、町おこしを企図する市長と、カジノリゾート開発(どこかで聞いたような)を目論む海外資本グループとの対立が展開される。舞台では、移動式ベッドのコーネリア+守護天使ガブリエルと、彼女が夢見る島での出来事が同時に現前し、進行する。能舞台や銭湯など、場面によって様々に変わるセットが素早く設えられるが、その間、舞台手前で芝居が繰り広げられる。素朴だか効果的な道具立ての数々(主に日本の古典芸能や大衆演劇を思わせる)を含め、見ていてとても楽しい。ヘリコプターの場面はルパージュばりのローテクの面白さ。日本の人形劇一座、中東一座、香港の劇団、アフガニスタンの難民劇団、ブラジルの劇団等々、いろんな国の演劇グループがフェスティヴァルのリハーサルをおこなう。その際、国の政治的な問題が顕在化するという趣向。富士山の背景画を設えた銭湯で女同士、男同士が入浴するシーンはリアルでとてもコミカルだった。

…ラストは巨大な鶴が奥から登場し、全員が扇子を持って舞踊(羽衣)を踊るなか "We’ll meet again" が流れる。ここはピナっぽい。「戻ってきた鶴」とは〝鶴の恩返し〟ではないか(佐渡木下順二が『夕鶴』で用いた「鶴女房」の伝説の地)。ムヌーシュキンたちは日本文化への恩返しに戻ってきた、そして「いつかまた会いましょう」と。なんかグッときた。(後ろの女性は "We’ll meet again" の歌詞を小声で口ずさんでいた。)

他にも、劇中で引用されたセリフや言葉が印象に残った。本屋のシーンで『桜の園』を注文していた女性客が、すでに読んだという『三人姉妹』のイリーナのラストのセリフを語る(もちろんロシア語で)——

やがて時が来れば、どうしてこんなことになったのか、なんのために苦しんできたのか、それが分かる日がやって来る。[…]でも、それまで生きていかなくてはいけないのね……。働かなくてはいけないのね。(浦雅春訳)

さらに、トーゼンバフが決闘に行く前の(死を賭した)セリフを店主が暗誦する——

あなたに恋してもう五年になるけど[…]でも、ただひとつ、たったひとつぼくの心をさいなむ棘がある——あなたはぼくのことを愛していない!(同上)

また、もっと前だったか、ジョン・ダン(1572-1631)の有名な英文の一節を誰かが暗誦した。スペインの内戦を扱ったヘミングウェイの長篇『誰がために鐘は鳴る』(1940)のタイトルおよびエピグラフに使われたあれだ。

誰一人として、自己充足的な孤島ではない。全ての人間は大陸の一部であり、本土の一部である。一塊の土が海によって洗い流されるなら、ヨーロッパはそれだけ小さくなる。それは一つの岬、或るいは、あなた自身の荘園、または、あなたの友人の荘園が、洗い流されたのと同じことである。誰かが死ねば、それだけ私は小さくなる。何故なら、私は全人類と関連があるからである。それ故、誰のために鐘は鳴っているのか、使いの者を出して聞く必要はない。鐘はあなたのために鳴っているのである。(湯浅信之訳)

これは厳密には詩ではないし説教でもない。ダンが流行性の熱病にかかり死線をさまよった経験から書かれた「不意に起きる出来事についての祈祷」と題する瞑想録(1623)の一節だ。ムヌーシュキンも「一時病に伏し」たらしい(ごあいさつ/プログラム)。とすれば、チェーホフのセリフもそうだが、ダンの瞑想は、自身のコロナ禍での経験や戦争で斃れた死者への思いを代弁させていたのかもしれない。

iaku『モモンバのくくり罠』2023

iakuの新作『モモンバのくくり罠』を観た(11月29日 水曜 19:00/シアタートラム)。

関西弁の対話から笑いが噴出し、ちょっと吉本新喜劇みたい。が、横山氏のことだ。笑わせながらも扱う問題はマジである。

作・演出:横山拓也出演:枝元萌 祷キララ 緒方晋(The Stone Age) 橋爪未萠里 八頭司悠友 永滝元太郎

主催:一般社団法人iaku/提携:公益財団法人せたがや文化財団&世田谷パブリックシアター/後援:世田谷区/助成:文化庁文化芸術振興費補助金舞台芸術等総合支援事業(創造団体支援))独立行政法人日本芸術文化振興会 

母(枝元萌)の考えから自給自足の山中で育った娘(祷キララ)が、その暮らしに違和感を覚え〝普通〟を求めて山を下り、1人で生活する。だが、生きづらい。染みついた〝普通でなさ〟が軋みを生むのか。娘は久し振りに父(永滝元太郎)の車で山の家へ帰り、自分の不幸を母のせいだとなじる。激しい応酬のなか、父が会社を辞め、バーを経営していることが明らかに。そこへ突然、バーの傭われママ(橋爪未萠里)が現れたり、母の百原[ももはら]真澄を初めて「モモンバ」と呼んだのが、獲物の解体を経験しに来ていた動物園職員(八頭司悠友)の小学時代だったとか、なにかと母の世話を焼く猟師仲間(緒方晋)は過去にライフル事故で母の足を負傷させた負目があった等々…どんどん話がややこしくなる。

だが、芝居の主題は明確だ。親の(身勝手な)価値観を植え付けられた子どもはどうするのか。「宗教二世」の苦境にも繋がるが、修正するのは難しい等々。結局〝普通でなさ〟(価値観)を奇貨(宝)として生きるあり方が示され、幕となる。

負い目や罪悪感の問題は『逢いにいくの、雨だけど』(2018)のメインテーマだった(岸田國士の戦争劇『かへらじと』に同様の設定がある)。この作家のこだわりか。

それにしても関西弁の芝居は観ていてとても楽しい(朝の連ドラ『ブギウギ』もそう)。役者がみな達者でないと、こうはいかないが。祷(いのり)キララは初めて見た(と思ったが濱口竜介監督の『ハッピーアワー』(神戸が舞台/2015)に出ていたらしい)。

来年2月には別の新作『う蝕』が瀬戸山美咲演出で上演される。キャストはなかなかの顔ぶれ。場所は同じくシアタートラム。横山拓也の〝快進撃〟は暫く続きそうだ。

週末のコンサート&バレエ—BPO・BCJ・Les Arts Flo・Young NBJ GALA 2023. 11【追記】

先週末に聴いた/観た三つのコンサートと一つのバレエについて感想メモを記す。

キリル・ペトレンコ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 来日公演〈プログラムA〉(11月24日 金曜 19:00 @サントリーホール

ベルリン・フィルの生演奏を聴いたのは実に42年振り。辛うじて取れた席は2F RA2の中央。ステージの真横だが、これが意外に面白かった。指揮者と奏者がよく見えるし、音もさほど悪くなかった。

モーツァルト交響曲第29番 イ長調 K.201(1774)

音楽の喜びを感じさせる演奏。第4楽章の悪戯っぽいフレーズに指揮者の笑顔が客席にも広がった。ペトレンコの集中力は半端ではない。彼は強音でない部分では、奏者でなく、宙を見ながら空気の振動を調節しているような手の動きをする。

ベルク:オーケストラの三つの小品 Op.6(1915/23)1929年改訂版

  大編成の凄絶な響き! 金管、特に目の前の打楽器群が大活躍。大きな木製ハンマーには吃驚だ。マーラーが6番で使ったやつ。終曲後、思いっきり叩いたパーカッショニストに、近くの観客から拍手が起きた。彼は客席の小さな女の子と握手。手が届くのだ。牧歌的なモーツァルトから一変した本作には《ヴォツェック》と重なる感触があり、20世紀の戦争のきな臭さや人民の怒り、呻吟などが音化されていた。最後にフライングブラボー(男の声)が飛んだのは残念*1。ただ、客席は女性が目立ち、両隣も自分より若い女性だった。なんか隔世の感。女性を含む若い客が増えれば、コンサートの雰囲気も変わっていくだろう。

休憩後、フライングブラボーをやんわりたしなめるアナウンスがあった。主催者はまとも。

ブラームス交響曲第4番 ホ短調 Op.98(1885)

あの印象的な出だし。弦の重厚な響き。ベルクを聞いた後では、個人の内面や情動が強く喚起される。第2楽章のホルン。穏やかで静まった、茫洋とした感触。第3楽章の激しく鋭いリズム。自棄っぱちのような。そして、いよいよ終楽章。冒頭でパッサカリアシャコンヌ)の楽句が奏される。これはバッハのカンタータ150番《主よ、あなたを私は仰ぎ望みます》第7曲(終曲)「私の苦難の日々を」に基づく。

このカンタータの歌詞は、磯山雅によれば「詩篇第25篇からアレンジされ、現世の苦難と、その中で神を信頼しつつ生き、救いを待ち望むキリスト者の心を扱」っており、ブラームスが使った終曲では「低音の奏する4小節楽句がシャコンヌの主題となり、その反復によって、信仰への決意が力強く支えられる」という*2

変奏が進んだ後、フルートがあの印象的なフレーズを吹く。次第に下降していき、低音の官能的な響きにからだが反応する。クラリネットオーボエが明るい調べを奏すると少しグッときた。トロンボーンがコラールを吹奏すると涙が。…そんな安らぎの空気をヴァイオリン群が強音で切断すると、一気に悲劇的な様相が高まっていき、突然終曲を迎える。

ブラームスの場合、主題の変奏(反復)は、バッハのように「信仰への決意が力強く支えられる」ことはない。むしろ、苦悩と慰撫を行き来しつつ、突如、生が断ち切られる、「救い」への懐疑は消えないまま。そんな印象を受けた。だが、音楽を聴いている時間は至福そのもの。行ってよかった。

コンマスは女性だった(コンミスか)。彼女は今年2月に第1ヴァイオリンから昇格したラトビア出身37歳のヴィネタ・サレイカ=フォルクナーで、ベルリンフィル初の女性コンサートマスターとのこと。この日フォアシュピーラーの樫本大進はBプロでコンマスを務めるらしい。指揮者のキリル・ペトレンコは自身はロシア生まれだが、「父がウクライナ生まれで、母はロシア出身。しかも2人ともユダヤ教徒だ。ウクライナイスラエルで起きている軍事衝突は、私にとって二重の悲劇といえる」と語っている(日経新聞11/4)。】

 BCJ #158 定演 教会カンタータ・シリーズvol. 84〈クリスマスと新年のカンタータ〉指揮:鈴木優人/ソプラノ:ハナ・ブラシコヴァ/アルト:ダミアン・ギヨン/テノール:櫻田 亮/バス:ドミニク・ヴェルナー/合唱・管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン( 11月25日 土曜 15:00 @オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

J. S. バッハ:管弦楽組曲第2番 ロ短調 BWV 1067

序曲はともかく、続く舞曲はもっと生き生き感があってもよい。フラウト・トラヴェルソはもう少し音量がほしい(楽器の性質上やむをえない面もあるが)。

カンタータ第36番《嬉々として舞い上がれ、星々の高みにまで》BWV 36

待降節の音楽。第7曲のアリア、ソプラノのプラシコヴァはいつ聴いても素晴らしい。ヴァイオリン(若松夏美)のオブリガートは後半でゾーンに入ったような演奏。

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カンタータ110番《われらの口には笑いが満ち》BWV 110

降誕節の音楽。第1曲に管弦楽組曲第4番の序曲が使われている(先般 鈴木雅明氏がフランクフルト放送交響楽団の客演で演奏 Frankfurt Radio Symphony Live: Masaaki Suzuki & Laura Vukobratović with Bach & Mendelssohn - YouTube)。第4曲のアリアではカウンター・テナーのダミアン・ギヨンがオーボエ ダモーレ(三宮正満)のオブリガート絶唱を聞かせた。続く第5曲のプラシコヴァと櫻田亮のデュエットは晴れやかで喜びに満ちていた。

カンタータ第190番《主に向かって、新しい歌を歌え》BWV 190(鈴木優人復元版)

新年の音楽。元旦は「キリスト教会では…イエス命名日の要素が強」いという(木村佐千子/プログラム)。優人氏が学生時代に手がけた復元版だが、トランペット三本(斎藤秀範・大西敏幸・村上信吾)とティンパニ(菅原淳)や櫻田の晴朗なテノール等が華やかさや祝祭感を際立たせた。ドミニク・ヴェルナー(バス)が前舞台で第4曲のレチタティーヴォを歌い終え、後方の席へ戻ってしまった。テノールとのデュエットが続くのに。だが、隣の歌手に促され、歌いながら前へ歩み出て事なきを得た。この珍事を笑顔で見守る指揮者やメンバーたちが〝ご愛敬〟に変えていた。さすがBCJ

 

新国立劇場バレエ団 令和5年度(第78回)文化庁芸術祭主催公演〈DANCE to the Future: Young NBJ GALA〉(11月26日 日曜 14:00 @新国立中劇場)

1時間後に開演するオペラシティのレザール・フロリサン公演と重なり、見たのは第一部[パ・ド・ドゥ集]のみ。第二部・三部は残念ながら断念。

『ラ・バヤデール』第3幕より 振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス/出演:廣川みくり&石山 蓮

音源が小さい。ヴァイオリンソロがあまり鳴っていない(ように聞こえる)。廣川はよく踊れるが、情感を表情ではなく踊りの様式性で出せるようになれば。石山もよく踊れるが、次の動きへの意識が見えてしまい、少しセカケカした印象を与える。もっとゆったり踊れば。

『眠れる森の美女』第3幕より 振付:ウエイン・イーグリング M.プティパ原振付による/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/出演:中島春菜&渡邊拓朗

音源については同上。中島のおっとりした感じは好ましいが、動きはもっと機敏でもよい。渡邊は技術をどんどん磨いていけば、ノーブルな味が生かせそうに見える。

『ジゼル』第2幕より 振付:ジャン・コラリ&ジュール・ペロー&マリウス・プティパ/音楽:アドルフ・アダン/出演:吉田朱里&仲村 啓

吉田はラインで何かを語り、仲村は役のハラがある。結果、二人で作品の空気をしっかり創り出していた。

ドン・キホーテ』第3幕より 振付:マリウス・プティパ&アレクサンドル・ゴルスキー/音楽:レオン・ミンクス/出演:金城帆香&山田悠貴

金城はアラベスクの角度など気になる点(指導の問題?)はあったが、気持ちをからだの動きで表現できる。山田の美点は意志的に動けること。「やったるでー」と。

【米沢唯や小野絢子の〝当たり前〟のようにやっていることが、いかに〝当たり前〟でないかよく分かった。】

 

ウィリアム・クリスティ指揮 レザール・フロリサン 来日公演(11月26日 日曜 15:00 @オペラシティコンサートホール)

J. S. バッハ:《ヨハネ受難曲 BWV 245》[日本語字幕付]バスティアン・ライモンディ(テノール&エヴァンゲリスト)/アレックス・ローゼン(バス/イエス)/レイチェル・レドモンド(ソプラノ)/ヘレン・チャールストン(アルト)/モーリッツ・カレンベルク(テノール)/マチュー・ワレンジク(バス)/レザール・フロリサン管弦楽&合唱)

コーラス、ソリスト、オケのいずれも質が高い。ただし宗教音楽を聴いている感触はあまりなかった。あくまでもピリオド楽器・奏法でバッハの音楽を演奏しましたという印象。ソリストは、語りの内容によって、向き合ったり、手振りを交えたりする。幾分、セミステージ版オペラの趣きが感じられた。

エヴァンゲリストは瑞々しい声だが、語るというより歌う感じ。イエスのバスはレチタティーヴォが素晴らしい。アリアも悪くないが少し若さが滲み出る。ソプラノは真率な歌唱で、唯一こちらのからだが反応した。アルト(女性)の30番アリア「成し遂げられた」は思わず聴き入った。テノールはOK。ピラト(バス)も質が高い。

第二部の静かなシークエンスでスマホが鳴ったのは残念。28番コラール「彼はすべてを然るべく慮り」はとてもよかったが、座ったままアカペラで歌った。この受難曲には複数の版がある。BCJ等でいくつか聴いたが、アカペラは初めてだ。クリスティのアレンジだとしたら少し疑問。39番のコーラス「安らかに憩い給え」はいつ聴いても慰められ、終曲のコラール「ああ、主よ、あなたの愛しい天使らに」ではなぜかグッとくる。全般的にテンポは遅めの印象。最後はもっと沈黙が欲しかったが、まあ許容範囲か。好いコンサートだった。

 

*1:オペラの引越はそれなりに行った一方で、来日オケを聞かなくなったのはフライングブラボーが理由だった。最後はバレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリンブラームス交響曲チクルスだったか。会場は同じサントリーホール。3番フィナーレの弱音が暴力的なブラボーでかき消され、コンマスなど明らかに表情が曇った。休憩時、主催者の元へ駆けつけると、数人がすでに同じをクレーム発していた。こんなのを許していたら彼らはもう来なくなりますよ等々。〝佐々忠〟は黙って聞いていたが、奥の方へ姿を消した。後半開始前「最後まで音楽の余韻を楽しんでいただきますよう」云々の女性アナウンスが入り、客席から大きな拍手が湧いたのを覚えている。2002年2月だからもう21年前だ。

*2:第7曲の歌詞は次の通り——「私の苦難の日々を/神は終わらせ、喜びへと変えてくださる。/いばらの道を歩むキリスト者たちを、/その時には天の力と祝福が導くのだ。/神が私のまことの護りであるかぎり、/私は、世の人の逆らいなどものともせぬ。/キリストが私たちの側に立ち、/私の日々の戦いを助け、勝たせてくださるのだから。」磯山雅訳

新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』2023

新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』の初日、3日目のマチネとソワレ、6日目のソワレを観た(10月20日 金曜 19:00,22日 日曜 13:00,18:30,28日 土曜 18:30/新国立劇場オペラハウス)。

振付:マリウス・プティパ+アレクサンドル・ゴルスキー/改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ/音楽:レオン・ミンクス/美術・衣裳:ヴャチェスラフ・オークネフ/照明:梶 孝三/指揮:マシュー・ロウ(28日ソワレ 冨田実里)/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

[初日]キトリ:米沢 唯/バジル:速水渉悟/ドン・キホーテ:趙 載範/サンチョ・パンサ:福田圭吾/ガマーシュ:奥村康祐

指揮者マシュー・ロウ(オランダ国立バレエの音楽監督)は初めて聴いた。勢いに任せず丁寧にコントロールするタイプか。各声部がよく聞こえ、音楽が整っている。舞台上も同じ。主演者はもとより、みな隅々までよく整い、雑なところが見当たらない。3年前の勢いは必ずしも感じないが、そのぶん綻びがなく、全体的にクオリティが上がった印象(改訂振付アレクセイ・ファジェーチェフの来日指導が理由かもしれない)。

プロローグ。キホーテの趙は少しおとなしめ。パンサの福田は相変わらず。このとき一階右後方で災害アラームのようなスマホ音(?)が。

第1幕。キトリ米沢とバジル速水の息はピッタリ。速水は自信をもって舞台に立っている。ジャンプは高くピルエットは正確できれい。それをこれみよがしな印象なしにやってのける。米沢は嬉しそうにキトリを生きていたが、思うように出力が上がらない感じも。自分を拉致しそうなキホーテにみんなで踊りませんかとメヌエットを一緒に踊るシーンは、やはりグッとくる。米沢の goodness が滲み出た。ガマーシユの奥田は素晴らしい。福田パンサはトランポリンで見事な空中芸を見せた。『くるみ割り人形』「ロシア」の側宙といい、余人をもっては代え難いダンサーだ。エスパーダの木下嘉人はカッコいい。街の踊り子の奥田花純は踊りはいいが、大勢集う街の場で少し小さく(ドメスティックに)見える。

第2幕。1場。カスタネットの朝枝尚子は内に秘めたパトスを爆発させる。相変わらずカスタネットのリズムがよい。オケは、爆発よりバランスを重視している。メルセデス渡辺与布は華やかで大きな踊り。そこになぜか妙な〝面白さ〟が滲む(性格?)。フェイク自殺のシーンでバジルは脚を掻く。面白い。速水のコマのような回転! 飛び込む米沢…。2場。ジプシーの頭目 中家正博はツボを外さず、動きがきれい。3場。森の女王 吉田朱里は手脚が長い。森の精を支配するにはこれからだが、自信がついてきた(継続すれば芸監の期待に応えらそう)。キューピッドの五月女遥はうまい。最後に下手へはける高速のパドブレがすごい。ドゥルシネアの米沢は〝さすが〟としか言いようがない。

第3幕。アントレの音楽でいつものようにワクワクせず。演奏が落ち着いているからか。ファンダンゴは…いいと思ったことがない。PDD 笑顔の二人。米沢の長いバランス! 初めて見た。素晴らしいアダージョ。速水のヴァリエーションは力強く美しい。米沢のヴァリエーションはまずまず。コーダーへ。米沢のフェッテは赤い扇子でアクセントをつけトリプル? ただただすごい! 会場は爆発した。速水もマジでくるくる回る。カーテンコール。スタンディング、口笛、すごい歓声。客席(左上方)はいつもと違う反応で、新鮮だった。今後も二人のペアでもっと見たい。

 

[22日 13:00]キトリ:池田理沙子/バジル:福岡雄大ドン・キホーテ:趙 載範/サンチョ・パンサ:福田圭吾/ガマーシュ:奥村康祐

指揮者ロウはダイナミクスが細かい。舞台上の進行に合わせている。というか、振り付けが音楽に沿って作られているというべきか。

友人ピッキリアの飯野の踊りは音楽的。メロディやリズムに体が同期し、見ていて気持ちが好い。福岡は新たな気持ちで踊っているように見える。芝居にも工夫を凝らし、池田とのやりとりはコミカル。リフトはやはりうまい。キトリがキホーテに拉致されそうな例の場面で、キトリがみんなで踊りましょうと促しバジルに扇子を所望。すると福岡は扇子をピシャリとキトリの手に叩きつける。まあバジルったらとキトリ。バジルのソロもキレがあった。片手リフトもさすがにいい。懸命に踊る姿を見ていて、なんかグッときた。キホーテ趙は初日よりよい。福田パンサは本当に素晴らしい。演技が生きていて、トランポリンにも工夫がある。東フィルはトランペットが疲れ気味。コンマスは後ろ姿から三浦氏か。

三階はかなり空席が。福岡に拍手が少ない。(フォワイエのビデオは開演前だけでなく、休憩中も音を出してる。)

第2幕。キトリがバジルに飛び込むシーンは、はみ出しそうなくらい。カスタネットの踊りの朝枝はパトスの強さ。オケは洗練された演奏。極端なクレッシェンドはしない。ジプシーの頭目は中島瑞生、OK。あの二人は誰(役として)? アップテンポのコール・ド、音楽はアゴーギクがかなり。ハンガリアン(ロマの)ダンスのラッス(緩やか)とフリス(速い)のコントラストが気持ちいい。風車にキホーテ(の人形)が引っ掛かり飛ばされるの見損ねた。

休憩時、1幕の音楽が聞こえてくる(生の余韻を疎外するのはやめてほしい)。

第3幕。アントレ直前のスネアの〝ドロドロ〟はさほどクレッシェンドせず(ワクワク感が弱いのはそのせいか)。アダージョ、なぜかグッときた。池田も悪くない。福岡ヴァリエーション、二回目ジャンプの着地は危うかった。少し動揺もあったようだがなんとかまとめた。ブラボーが飛んで安堵(こっちが)。池田のヴァリエーション、いいと思う。コーダで福岡は空を蹴り上げるクペ・ジュテ・アン・トゥールナン(?)をコントロールして(歯を食いしばって)やり切った。ラストのキメ(ファイヴ・フォーティ?)は強め。福岡らしい。池田のフェッテは開始はダブル(?)後半シングルでしっかり(愚直に)。ブラボーがかかった。福岡のピルエットも根性で。よかったと思う。

 

[22日 18:30]キトリ:小野絢子/バジル:中家正博/ドン・キホーテ:中島駿野/サンチョ・パンサ:小野寺雄/ガマーシュ:小柴富久修

小野絢子はとてもよい。街の娘だ。中家のリフトは高い! それがどれほど尊いか。踊りは形がきれいで伸びやか。ソロもまずまず。エスパーダの中島瑞生は見違えるほど素晴らしい! 舞台では大きく高いことはいいことだ。直塚の街の踊り子は強度と大きさがあり、瑞生とのバランスがとてもよい。駿野キホーテは力強さ、意志がある。トウヘンボク感はやや薄めか。小野寺のパンサ造形はこれからか。トランポリンもひと工夫欲しい。

第2幕。フェイク自殺はまずまず。カスタネットの原田舞子が素晴らしい! カスタネットのリズムがきわめて正確で、うちに秘めた思いを伸びやかに表現。それを受けてエスパーダ瑞生が踊る。すると今度はメルセデス益田裕子が負けじと華やかに踊る。なるほどそういうことか。この場のドラマがここまで立ち上がって見えたのは初めてだ。パンサはもっと可愛らしさがほしい(素が見えてしまう)。

夢の場の中島春菜、悪くない。

第3幕。ボレロの仲村啓が素晴らしい! 滞空時間が長く形もいい。アダージョ。中家のサポートの堅実さ、リフトの長さ、かたちのよさ。小野も新鮮な気持ちで踊っている。そう見える。花純の1stヴァリエーション、よく踊っている。中家のヴァリエーション、余計なものは一切なし。振付をして語らしめる。人工美ならぬ自然美。素晴らしい! 基本がからだに入っている。飯野の2ndヴァリエーションは実に音楽的。芸監を柔和にしたような。どんどん踊りがよくなっている。小野ヴァリエーションはキメが細やか。コーダで中家は開脚してジャンプしながらマネージュするグラン・ジュテ・アン・トゥールナン(?)。きれい。自然。素晴らしい。小野のフェッテはダブルからシングル。最後は少し…OK。カーテンコールコールで中家が真ん中で嬉しそうにレヴェランス。こっちも嬉しくなる。もっと中家の主役が見たい。

 

[28日 18:30]キトリ:木村優里/バジル:渡邊峻郁/ドン・キホーテ:中島駿野/サンチョ・パンサ:宇賀大将/ガマーシュ:奥村康祐/指揮:冨田実里

この日はごく簡単に。キトリ木村 特になし。バジル渡邊 キレはある。3幕アダージョは普通によい。パンサ宇賀 マイムが大きく明快でとてもよい。ロレンツォ清水 よい。ガマーシュ奥村 とてもよい。ジュアニッタ山本 強度がある。ピッキリア花形 きれい。エスパーダ井澤 もっと。街の踊り子柴山 役に合っている。カスタネット原田 しっとりとじわじわ高まる、素晴らしさを再確認。ジプシーの頭目 瑞生は何かを掴んだか、思い切り演技してる。森の女王 内田 ゆったりと優雅に踊る、主役ができそう。キューピッド廣川 いいと思うが、少しコケティッシュすぎ? 指揮が冨田に変わり、音楽が少し〝スポーティ〟になったか。

音楽堂 室内オペラ・プロジェクト第6弾 ヘンデル《ジュリオ・チェーザレ》2023

鈴木優人指揮のBCJ によるヘンデルジュリオ・チェーザレ》を聴いた(10月14日 土曜 15:00/神奈川音楽堂)。

昨年の新国立版より満足度は高い。セミステージのシンプルかつ効果的な演出(佐藤美晴)。余計なものがない分、音楽に集中できる。ステージのオケを小高い通路が囲む。円ではないが円環をイメージしたらしい(プレトーク)。また、見た目を含む適材適所な配役でドラマがグッと立ち上がった。

 全3幕 セミ・ステージ形式 イタリア語上演 日本語字幕付

指揮:鈴木優人/演出:佐藤美晴/管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン

クレオパトラ:森 麻季/セスト:松井亜希/チェーザレ:ティム・ミード/トロメーオ:アレクサンダー・チャンス/コーネリア:マリアンネ・ベアーテ・キーラント/ニレーノ:藤木大地/クーリオ:加藤宏隆/アキッラ:大西宇宙

タイトルロールのティム・ミードは歌唱、演技、姿のいずれも申し分なく、特に高速のアジリタは圧巻だった。何より華やかさがある。森麻季クレオパトラにピッタリ。ゆるやかなカンタービレよりアジリタやコロラトゥーラでよさを発揮した。特にコミカルな演技がいい。弟のトロメーロをやり込めるシーンは見応え(聞き応え)あり。悪役トロメーロのアレクサンダー・チャンスは出てきただけでこちらの体がほぐれ、頬が緩む。歌唱の安定は群を抜いていた。歌っていないときの〝受け〟のあり方が素晴らしく、つい注視してしまう。コスチュームは右腕に巻いたヘビ同様似合ってた。シェイクスピアの道化(wise fool)をやらせたら嵌まるだろう(歌手だけど)。キーラントは新国立ではタイトルロールをやったが、本意でなかったはず。“美しい”と口を揃えて言われ、セストの母でもあるコーネリアがやはり似合っている。白いコスチュームのゆったりした佇まいは、歌唱を含めよく効いていた。

トロメーロの配下で悪役アキッラの大西宇宙は声が太い。存在も。自分が殺すのを手伝った男の妻に求愛するのはシェイクスピア『リチャード3世』のリチャードを、いまわの際の改悛(?)は『リア王』のエドマンドを想起。新国立版では気づかなかった。チェーザレの副官クーリオを歌った加藤宏隆の声量は半端ではない。コーネリアの息子セスト役の松井亜紀はBCJ定期以外で初めて聞いた。バッハ等の宗教音楽よりセキュラーな方が合っている。クレオパトラの召使いニレーノは藤木大地。〝オカマ風〟キャラで終始コミカルに立ち回る。少しはみ出し気味だがOK。

オケ(BCJ)はリュート(野入志津子)、テオルボ(佐藤亜紀子)がよく効いてた。ハープ(伊藤美恵)も。ホルン(福川伸陽)がドラマでも活躍。チェーザレのアリアでは若松夏実のVnが美しかった。鈴木優人は歌手のノリによく呼応し、ヘンデル音楽を見事に造形したと思う。

11月のフィールドワーク予定 2023【追加】+感想メモ

なぜか今年はベルリン・フィルを聞かねば!とチケットを取った(出遅れて希望の席ではないが)。生で聴くのは42年振り。最初は1977年のカラヤン指揮〈ベートーヴェン・チクルス〉で、第4夜(11/16)のシンフォニー6番・5番、第6夜(11/18)の9番を普門館で聴いた(館はもうない)。次は 1981年(11/7)に東京文化会館でむろんカラヤンが振ったブラームスのシンフォニー2番・4番。ベルリン・フィルはレコードやCDでは何度も何度も聴いたが、ライブではこの3公演だけ。今回は前回同様、大好きなブラームス4番を含むプログラムを選んだ。指揮者のペトレンコは6年前バイエルン国立歌劇場の来日公演《タンホイザー》をNHKホールで聴いたが、引き締まった透明な響きに好印象をもった。彼がベルリン・フィルからどんな音を引き出すのか、生だとどんな響きに聞こえるのか、とても楽しみだ。

新国立劇場バレエ団 DANCE to the Future:Young NBJ GALA は14時開始の2回公演だが、土曜は15時開始のBCJ定演と、日曜は同じく15時開始のクリスティ指揮レザール・フロリサンの《ヨハネ受難曲》と重なってしまった。どちらも諦めきれず、思案の末 日曜に若手のパ・ド・ドゥ集を45分見て、隣のオペラシティへ駆け込むことにした。45分だと見られるのはせいぜい3組か…。残念だけど仕方ない。

新国立がシェイクスピアの問題劇2作を上演するが、中劇場の演劇はいつも期待しないで見る(打率が極めて低いので)。iaku 横山拓也の新作は期待して見る。実際はどうなるか。

3日(金 祝)13:00 新国立劇場演劇『終わりよければすべてよし』作:ウィリアム・シェイクスピア/翻訳:小田島雄志/演出:鵜山 仁/美術:乘峯雅寛/照明:服部 基/音響:上田好生/衣裳:前田文子/ヘアメイク:馮 啓孝/演出助手:中嶋彩乃/舞台監督:北条 孝[配役]岡本健一:フランス王/浦井健治:バートラム/中嶋朋子:ヘレナ/ソニン:ダイアナ/立川三貴:ラフュー/吉村 直:ラヴァッチ/木下浩之フィレンツェ公爵/那須佐代子:ルシヨン伯爵夫人/勝部演之リナルドー/小長谷勝彦:兵士2/下総源太朗:デュメーン兄/藤木久美子:キャピレット/川辺邦弘:兵士1/亀田佳明:ぺーローレス/永田江里:マリアナ/内藤裕志:紳士/須藤瑞己:従者/福士永大:小姓/宮津侑生:デュメーン弟 @新国立中劇場

3日(金 祝)18:00 新国立劇場演劇『尺には尺を』作:ウィリアム・シェイクスピア/翻訳:小田島雄志/演出:鵜山 仁/美術:乘峯雅寛/照明:服部 基/音響:上田好生/衣裳:前田文子/ヘアメイク:馮 啓孝/演出助手:中嶋彩乃/舞台監督:北条 孝[配役]岡本健一:アンジェロ/浦井健治:クローディオ/中嶋朋子マリアナソニン:イザベラ/立川三貴:典獄/吉村 直:バーナーダイン&紳士1/木下浩之:ヴィンセンシオ/那須佐代子:オーヴァーダン/勝部演之:判事/小長谷勝彦:ポンピー/下総源太朗:エスカラス/藤木久美子:フランシスカ/川辺邦弘:エルボー&紳士2/亀田佳明:フロス&アブホーソン/永田江里:ジュリエット/内藤裕志:ピーター/須藤瑞己:召使い/福士永大:使者/宮津侑生:ルーシオ @新国立中劇場

【13日(月)19:00 〈じしゅコン〉vol. 2 村松稔之 カウンターテナー リサイタル/A. ルナー:「さくらんぼの実る頃」/R. アーン:「牢獄にて」/G. F. ヘンデル:「優しい木蔭」歌劇《セルセ》より/J. A. ハッセ」:「我が苦しみよ、急げ」オラトリオ《聖ペトロとマグダラのマリア》より 他/カウンターテナー村松稔之/ジャズピアノ:高田ひろ子/ピアノ:江上菜々子 @としま区民センター多目的ホール8F多目的ホール←追加

15日(水)19:00 N響 #1996 定演〈B-1〉シベリウス交響詩「タピオラ」作品112/ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ調/シベリウス交響曲 第1番 ホ短調 作品39/指揮:ユッカ=ペッカ・サラステ/ヴァイオリン:ペッカ・クーシスト サントリーホール

N響サントリー定期。ストラヴィンスキーVn協奏曲、面白い。奏者ペッカ・クーシストの音色は明るめで自在。視野の広さを感じる。アンコールはフィンランドの民謡舞曲【「コプシン・ヨーナス」とのこと】と思うけどアイリッシュに似てる。霧の彼方から微かに聞こえ次第に高まり消えていく。ハーモニクスというよりホーミーの弦楽版みたい。

ペッカ・サラステが振ったシベリウス交響曲1番はスケール大で聞き応えあり。緩徐楽章や終楽章はチャイコに似てる。主題を弦で改めてリピートする点等々。チャイコは悲壮感が滲み出る感じだが、シベリウスはそこから少し距離がある印象。

スケルツォで同じ動機を楽器で渡し最後ティンパニで締める所は気持ちいい。第九を想起するけど感触は全然違う。フィンランド人指揮者が振るとなぜかオケは寒い/冷たい音を出す(ロシア人指揮者もそう)。コンマスは郷古廉。オーボエのゲストは以前新日フィルに居た古部氏か。決然とした吹きぶりは多分そう。チェロのトップもゲストか。11/15ツイート

18日(土)14:00 新国立劇場オペラ《シモン・ボッカネグラ》〈新制作〉プロローグ付き全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉指揮:大野和士/演 出:ピエール・オーディ/美術:アニッシュ・カプーア/衣裳:ヴォイチェフ・ジエジッツ/照明:ジャン・カルマン/舞台監督:髙橋尚史[キャスト]シモン・ボッカネグラ:ロベルト・フロンターリ/アメーリア(マリア・ボッカネグラ):イリーナ・ルング/ヤコポ・フィエスコ:リッカルド・ザネッラート/ガブリエーレ・アドルノ:ルチアーノ・ガンチ/パオロ・アルビアーニ:シモーネ・アルベルギーニ/ピエトロ:須藤慎吾/隊長:村上敏明/侍女:鈴木涼子/合唱指揮:冨平恭平/合唱:新国立劇場合唱団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/共同制作:フィンランド国立歌劇場、テアトロ・レアル @新国立劇場オペラハウス

↑初めて聴いた。ヴェルディらしからぬ抒情性が沁みる。平民派と貴族派が憎み合うなか平和を願うシモン(ロベルト・フロンターリ)の歌がいま痛切に響く。敵方の娘マリアへの愛(娘アメーリアとの再会)がベースに。冒頭で黒服の人々が匍って登場。平民は地べたに這いつくばって生きていると。

レバノン出身のピエール・オーディ演出は極めてアクチュアル。赤と黒が基調のアニッシュ・アプーアの美術もシンプルだが効果的。4人のイタリア人男声と1人のロシア人ソプラノ+2人の日本人男声がとても充実。ここまで揃うのは珍しい。大野和士指揮の東フィルは手触り感のある好い音を出していた。11/20ツイート

24日(金)19:00 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 来日公演〈プログラムA〉モーツァルト交響曲第29 番 イ長調 K.201/ベルク:オーケストラのための3つの小品 Op.6/ブラームス交響曲第4番 ホ短調 Op.98/指揮:キリル・ペトレンコサントリーホール→感想メモ

25日(土)15:00  BCJ #158 定演 教会カンタータ・シリーズvol. 84〈クリスマスと新年のカンタータ〉 J. S. バッハ:管弦楽組曲第2番 ロ短調 BWV 1067/カンタータ第36番《嬉々として舞い上がれ、星々の高みにまで》BWV 36/カンタータ110番《われらの口には笑いが満ち》BWV 110/カンタータ第190番《主に向かって、新しい歌を歌え》BWV 190(鈴木優人復元版)/指揮:鈴木優人/ソプラノ:ハナ・ブラシコヴァ/アルト:ダミアン・ギヨンテノール:櫻田 亮/バス:ドミニク・ヴェルナー/合唱・管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン@オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル→感想メモ

26日(日)14:00 新国立劇場バレエ団 令和5年度(第78回)文化庁芸術祭主催公演〈DANCE to the Future: Young NBJ GALA〉[パ・ド・ドゥ集]『ジゼル』第2幕より 振付:ジャン・コラリ&ジュール・ペロー&マリウス・プティパ/音楽:アドルフ・アダン/出演:吉田朱里&仲村 啓 『眠れる森の美女』第3幕より 振付:ウエイン・イーグリング M.プティパ原振付による/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/出演:中島春菜&渡邊拓朗 『ラ・バヤデール』第3幕より 振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス/出演:廣川みくり&石山 蓮 ドン・キホーテ』第3幕より 振付:マリウス・プティパ&アレクサンドル・ゴルスキー/音楽:レオン・ミンクス/出演:金城帆香&山田悠貴//[新国立劇場バレエ団 Choreographic Group より]『Coppélia Spiritoso』振付:木村優/音楽:レオ・ドリーブ、カール・ジェンキンス/出演:木村優子木村優里 『人魚姫』振付:木下嘉人/音楽:マイケル・ジアッチーノ/出演:米沢 唯&渡邊峻郁 『Passacaglia』振付:木下嘉人/出演:小野絢子&福岡雄大&月女遥&木下嘉人//『ドゥエンデ』振付:ナチョ・ドゥアト/音楽:クロード・ドビュッシー/美術:ナチョ・ドゥアト&ウォルター・ノブ/衣裳:スーザン・ユンガー/照明:ニコラス・フィシュテル/ステージング:キム・マッカーシー/オーガナイザー:カルロス・イトゥリオス/出演:直塚美穂 赤井綾乃 木村優子 徳永比奈子 花形悠月 山本涼杏 中島瑞生 山田悠貴 石山 蓮 小川尚宏 西 一義 森本晃介 @新国立中劇場→感想メモ

26日(日)15:00 ウィリアム・クリスティ指揮 レザール・フロリサン J. S. バッハ:《ヨハネ受難曲 BWV 245》[日本語字幕付]バスティアン・ライモンディ(テノール&エヴァンゲリスト)/アレックス・ローゼン(バス/イエス)/レイチェル・レドモンド(ソプラノ)/ヘレン・チャールストン(アルト)/モーリッツ・カレンベルク(テノール)/マチュー・ワレンジク(バス)/レザール・フロリサン管弦楽&合唱)@オペラシティコンサートホール→感想メモ

29日(水)19:00 iaku『モモンバのくくり罠』作・演出:横山拓也/出演:枝元萌 祷キララ 緒方晋(The Stone Age) 橋爪未萠里 八頭司悠友 永滝元太郎/主催:一般社団法人iaku/提携:公益財団法人せたがや文化財団&世田谷パブリックシアター/後援:世田谷区/助成:文化庁文化芸術振興費補助金舞台芸術等総合支援事業(創造団体支援))独立行政法人日本芸術文化振興会 @シアタートラム→感想メモ