iakuの新作『モモンバのくくり罠』を観た(11月29日 水曜 19:00/シアタートラム)。
関西弁の対話から笑いが噴出し、ちょっと吉本新喜劇みたい。が、横山氏のことだ。笑わせながらも扱う問題はマジである。
作・演出:横山拓也/出演:枝元萌 祷キララ 緒方晋(The Stone Age) 橋爪未萠里 八頭司悠友 永滝元太郎
主催:一般社団法人iaku/提携:公益財団法人せたがや文化財団&世田谷パブリックシアター/後援:世田谷区/助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(創造団体支援))独立行政法人日本芸術文化振興会
母(枝元萌)の考えから自給自足の山中で育った娘(祷キララ)が、その暮らしに違和感を覚え〝普通〟を求めて山を下り、1人で生活する。だが、生きづらい。染みついた〝普通でなさ〟が軋みを生むのか。娘は久し振りに父(永滝元太郎)の車で山の家へ帰り、自分の不幸を母のせいだとなじる。激しい応酬のなか、父が会社を辞め、バーを経営していることが明らかに。そこへ突然、バーの傭われママ(橋爪未萠里)が現れたり、母の百原[ももはら]真澄を初めて「モモンバ」と呼んだのが、獲物の解体を経験しに来ていた動物園職員(八頭司悠友)の小学時代だったとか、なにかと母の世話を焼く猟師仲間(緒方晋)は過去にライフル事故で母の足を負傷させた負目があった等々…どんどん話がややこしくなる。
だが、芝居の主題は明確だ。親の(身勝手な)価値観を植え付けられた子どもはどうするのか。「宗教二世」の苦境にも繋がるが、修正するのは難しい等々。結局〝普通でなさ〟(価値観)を奇貨(宝)として生きるあり方が示され、幕となる。
負い目や罪悪感の問題は『逢いにいくの、雨だけど』(2018)のメインテーマだった(岸田國士の戦争劇『かへらじと』に同様の設定がある)。この作家のこだわりか。
それにしても関西弁の芝居は観ていてとても楽しい(朝の連ドラ『ブギウギ』もそう)。役者がみな達者でないと、こうはいかないが。祷(いのり)キララは初めて見た(と思ったが濱口竜介監督の『ハッピーアワー』(神戸が舞台/2015)に出ていたらしい)。
来年2月には別の新作『う蝕』が瀬戸山美咲演出で上演される。キャストはなかなかの顔ぶれ。場所は同じくシアタートラム。横山拓也の〝快進撃〟は暫く続きそうだ。