「バレエ・アステラス 2024~海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて世界とつなぐ~」初日を見た(8月3日 土 14:00/新国立劇場オペラハウス)。
公演が重なったせいか、入りはあまりよくない。以下は、極々簡単なメモ。
指揮:井田勝大/管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
[バレエ・アステラス委員(五十音順)]安達悦子(東京シティ・バレエ団理事長/芸術監督),岡本佳津子(井上バレエ団代表理事),小倉佐知子(新国立劇場バレエ研修所長),小山久美(スターダンサーズ・バレエ団代表/総監督),小林紀子(小林紀子バレエ・シアター芸術監督),法村牧緒(法村友井バレエ団団長),堀内 充(大阪芸術大学教授),三谷恭三(牧阿佐美バレヱ団総監督)
第1部 オープニング
『眠れる森の美女』第3幕冒頭の「行進曲」で出演者・演目をプロジェクションで紹介。
『Une Promenade』〈日本初演〉振付:キム・ヨンゴル/音楽:フレデリック・ショパン
シモテのピアノでシン・ジェミンがショパン《ノクターン第10番》変イ長調と《ワルツ第4番》ヘ長調(猫のワルツ)を弾き、男女が踊る。二人のやりとりは変化していき、最後はピアニストが女性に花を捧げ…面白いPDDだ。あとでクランコの『オネーギン』第1幕がモチーフだと知る(プログラム)。なるほど。キム・ジヨンはかわいらしい踊り、というか達者。チョン・ミンチョルは踊りもサポートも体型も一級品。こうした男性ダンサーを輩出する環境の韓国がうらやましい。
『The Prejudice』〈日本初演〉振付:キム・ヨンゴル/音楽:カミーユ・サン=サーンス
[同上]アン・セウォン/ピアノ演奏:シン・ジェミン
サンサーンスの「白鳥」をピアノで(少し奇妙に)アレンジ。ちぎられたようなチュチュ。バー。「偏見」? ダンサーは好いと思うが、岡田利規の「瀕死の白鳥 その死の真相」を見た分、作品のインパクトは弱まる。
『海賊』第1幕より奴隷のパ・ド・ドゥ/振付:マリウス・プティパ/音楽:オルデンブルク公
升本結花 (フィンランド国立バレエ団 ファースト・ソリスト&有水俊介 (フィンランド国立バレエ団 ファースト・ソリスト)
すべったのは残念…。
『ロメオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ〈日本初演〉振付:デヴィッド・ドウソン/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
綱木彩葉 (ドレスデン国立歌劇場バレエ プリンシパル)&ジョセフ・グレイ (ドレスデン国立歌劇場バレエ セカンド・ソリスト)
作品に少し〝いなかくささ〟を感じた。
『白鳥の湖』第3幕パ・ド・ドゥ/振付:マリウス・プティパ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
フェッテを数回で止め、再開…。やはり暑さのせい? かつてフィリピエワやコジョカルもこの劇場でフェッテを止めたことがあった。あれも8月のガラだったか。
『ハムレット』よりパ・ド・ドゥ〈日本初演〉振付:レオ・ムジック/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、カミーユ・サン=サーンス
この部分だけだと『ハムレット』に見えなかった。あれがオフィーリア? とはいえ二人とも好いダンサー。
『ラプソディ』よりパ・ド・ドゥ〈追加演目〉振付:フレデリック・アシュトン/音楽:セルゲイ・ラフマニノフ/ピアノ演奏:圓井晶子
[ゲスト出演]アリーナ・コジョカル (ハンブルク・バレエ ゲストダンサー)&吉山シャール ルイ (チューリヒ・バレエ ファースト・ソリスト)
《パガニーニの主題によるラプソディ》の第18変奏 アンダンテ・カンタービレで。「NHKバレエの饗宴2013」の吉田都&テューズリーの華やかな印象が残ってる。あのとき吉田は48歳。いまコジョカルは43か。〝老いて〟も誠実に踊る。ちょっとグッときた。相変わらずポワント音は大きいけど。
『眠れる森の美女』第3幕パ・ド・ドゥ/振付:ウエイン・イーグリング (マリウス・プティパ原振付による)/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
とにかく詩情が出ないと…。
第2部
『Conrazoncorazon』より/振付:カィェターノ・ソト
[新国立劇場バレエ研修所]
黒の乗馬キャップに薄グレーのシャツと短パンと黒のハイソックスで踊る。悪くないけど、この演目だと…よく分からない。意図的?
『ライモンダ』第3幕よりジャン・ド・ブリエンヌのヴァリエーション/振付:マリウス・プティパ/音楽:アレクサンドル・グラズノフ
[韓国芸術総合学校バレエアカデミー]イ・カンウォン
やや小柄のため役に合っているとは言いがたいけど、生きのよい踊り。
ロマンティック・バレエらしい、好感度の踊り。二人ともうまい。
『デンジャラス・リエゾンズ』第2幕より寝室のパ・ド・ドゥ〈日本初演〉振付:リアム・スカーレット/音楽:カミーユ・サン=サーンス/編曲:マーティン・イェーツ
吉田合々香 (クイーンズランド・バレエ プリンシパル)&ジョール・ウォールナー (クイーンズランド・バレエ プリンシパル)
濃色。危険な感じがよく出てた。二人ともよく踊れる。
『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
[ゲスト出演]近藤亜香 (オーストラリア・バレエ プリンシパル)&チェンウ・グオ (オーストラリア・バレエ プリンシパル)
二人ともよく踊れるけど、男性は〝出稼ぎ〟感が。
『マノン』第1幕より寝室のパ・ド・ドゥ/振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ/編曲:マーティン・イェーツ+/
[ゲスト出演]アリーナ・コジョカル (ハンブルク・バレエ ゲストダンサー)&吉山シャール ルイ (チューリヒ・バレエ ファースト・ソリスト)
コジョカルのマノンは19年振りだ(コボーと踊ったあのとき24歳か)。リフトされるあり方が他の誰とも違う素晴らしさ。やはり大したダンサーだ。
フィナーレ
グラズノフ『バレエの情景』から第8曲「ポロネーズ」で全員出演
この音楽はもっと華やかなものに変えた方がよくないか。
コンマスは依田真宣氏。指揮者はたっぷり気味の音楽作り。配布プログラム冒頭の演目・出演者を記した頁に振付家の記載がないのは、かなり不便。