今月も4公演と少なめで、しかもすべてコンサート(〝チェルフィッチュ×藤倉大〟は演劇+コンサートか)。N響定演の新シーズは曜日変更で金曜となり、他の公演と重なる機会が増えそうで少し気がかりだ。
先月は暑かったけど、公演が少ないぶん落ち着いて本が読めた。なかでもプラトンの『ゴルギアス』(岩波文庫)は出色。相手がほぼ相槌を打つだけのソクラテスの〝対話〟はなんだかなあと思っていたが、本書は違ってた。特に後半からのカリクレスとの対話はとても〝劇的〟だ。ソクラテスは、「不正(悪)を行なうよりも、むしろ不正(悪)を受けるほうがまし」だという。戦時の鶴見俊輔を想起したが、この命題をめぐるソクラテスとポロスやカリクレスとの遣り取りは、大変興味深い。
5月に観た『オットーと呼ばれる日本人』(紀伊國屋サザンシアター)関連で、気になっていた加藤哲郎『ゾルゲ事件——覆された神話』(平凡社新書 2014)と渡部富哉『偽りの烙印——伊藤律・スパイ説の崩壊』(五月書房 1993)を読めたのはよかった。どちらも文献資料の渉猟と現地調査の徹底ぶりには舌を巻く。『ゾルゲ事件』は『オットー』の上演プログラムに掲載の加藤氏へのインタビューで知った。『オットー』に登場の林こと川合貞吉が戦後はGHQのスパイだったこと、尾崎(オットー)をゾルゲ(ジョンスン)に紹介したのはスメドレー(宋夫人と呼ばれるアメリカ女性)ではなく鬼頭銀一という人物だった等々。『偽りの烙印』は、新国立の上演時(2008)に入手していたが〝積ん読〟のまま手放していた。やはり読む時機というものはあるらしい。渡部は「伊藤律スパイ説」をあらゆる角度から検証し、粘り強く突き崩していく。そのプロセスは実に読み応えがあった。それにしても、かつての日本共産党内の権力闘争は凄まじい。『オットー』に関わる事柄については、その感想メモに追記したい。
【15日(日)13:00 伊藤野枝・大杉栄から読み解く、1920年代の女性と社会のシンポジウム「関東大震災から戦争の時代へ 女性は如何に闘ったか」講演:鈴木 淳(東京大学教授) 森まゆみ(作家) 加藤陽子(東京大学教授)/開会挨拶:田中ひかる(明治大学教授)/協力:亜紀書房、皓星社、ぱる出版/特別協力:アットワンダー、古書りぶる・りべろ/主催:「伊藤野枝・大杉栄から読み解く1920年代」シンポジウム実行委員会/共催:初期社会主義研究 @明治大学駿河台キャンパス リバティタワー大教室 1階1011教室】←追加
20日(金)19:00 N響 # 2017 定演〈B-2〉シューベルト《イタリア風序曲 第2番 ハ長調 D. 591》/シューマン《ピアノ協奏曲 イ短調 作品54》/ベートーヴェン《交響曲 第7番 イ長調 作品92》/指揮:ファビオ・ルイージ/ピアノ:エレーヌ・グリモー(新型コロナ感染のため来日不可)→アレッサンドロ・ダヴェルナ @サントリーホール
21日(土)14:00 東京芸術祭 2024 芸劇オータムセレクション チェルフィッチュ×藤倉大 with アンサンブル・ノマド『リビングルームのメタモルフォーシス』作・演出:岡田利規/作曲:藤倉 大/出演:青柳いづみ、朝倉千恵子、川﨑麻里子、椎橋綾那、矢澤 誠、渡邊まな実/演奏:アンサンブル・ノマド/音響:白石安紀/音響スーパーバイザー:石丸耕一(東京芸術劇場)/照明:髙田政義(RYU)/衣裳:藤谷香子(FAIFAI)/美術:dot architects/ドラマトゥルク:横堀応彦/技術監督:守山真利恵/舞台監督:湯山千景/テクニカルアドバイザー:川上大二郎(スケラボ)/英語翻訳:アヤ・オガワ/宣伝美術:岡﨑真理子(REFLECTA, Inc.)/プロデューサー:水野恵美(precog)、黄木多美子(precog)/プロダクションマネージャー:武田侑子/アシスタントプロダクションマネージャー:遠藤七海/委嘱:Wiener Festwochen/製作:Wiener Festwochen、一般社団法人チェルフィッチュ/共同製作:KunstFestSpiele Herrenhausen、Holland Festival、愛知県芸術劇場、独立行政法人国際交流基金/企画制作:株式会社precog/主催:東京芸術祭実⾏委員会[公益財団法⼈東京都歴史⽂化財団(東京芸術劇場・アーツカウンシル東京)、東京都]/助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業(劇場・音楽堂等機能強化総合支援事業))独立行政法人日本芸術文化振興会/協賛:アサヒグループジャパン株式会社 @シアターイースト
25日(水)19:00 チェルフィッチュ×藤倉大 with アンサンブル・ノマド『リビンルルームのメタモルフォーシス』@シアターイースト
27日(金)19:00 BCJ #163 定演 J. S. バッハ《ミサ曲 ロ短調BWV 232》指揮:鈴木雅明/ソプラノ:松井亜希、マリアンネ・ベアーテ・キーラント/アルト:アレクサンダー・チャンス/テノール:櫻田 亮/バス:加耒 徹/合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン @オペラシティコンサートホール