新国立劇場演劇『ご臨終 Vigil』

『ご臨終』の初日を観た(11月5日 19時/新国立小劇場)。
以下は直後の走り書きメモ。

シリーズ「二人芝居─対話する力─」Vol. 2
作:モーリス・パニッチ
翻訳:吉原豊司
演出:ノゾエ征爾

美術: 杉山 至
照明:服部 基
音響:井上直裕
衣裳:駒井友美子
ヘアメイク:川端富生
演出助手:渡邊千穂
舞台監督:村岡 晋

キャスト
ケンプ:温水洋一 
グレース:江波杏子

平成26年度(第69回)文化庁芸術祭主催公演

客席が舞台を両側から挟むかたち。寄せ木細工のような舞台に白いベッドと椅子。やはり寄せ木のような四角い箱が数個とレコードプレーヤーが置かれている。前半はこちら(C列)から見ると右手に大きな窓がフレームのみ設えられている。
1時間15分経過後、休憩。全然面白くない。なぜ? 役者? いや、本が。ブラックユーモアの毒がない。どこかチープな笑いを狙っている感じ。江波杏子は美しい。台詞はいまのところ最後にメリー・クリスマスと言っただけだが。何度も暗転し場面転換するが、その効果はどこにあるのか分からない。2009年に見た、ローラント・シンメルプフェニヒの『昔の女』のカットバック手法は内容と不可分でラディカルだと思った。一方、35回場面転換するらしい本作にそれは感じない。翻訳者は「型破りな作風」というが(「モーリス・パニッチの劇世界」プログラム)どこが型破りなのか。これは演出のせいなのか。
後半は前半の仕込みがほぐされる。つまりオチが用意され、それなりに驚きはあるのだが、やはり芝居としての味は薄い。温水はほとんど一人で台詞を喋る。よく演じたと思う。江波はやはり美しい。後半は少し台詞があるのだが、長年映画で鍛えた演技力と存在感はさすが。それでも、大した本とは思えない。
後半はセットの左右を反転させる趣向。舞台の下は地下室もしくは階下の見立て。ここへ無用となったクリスマスツリー等をケンプ(温水)が落とす。ラストはグレース(江波)の希望どおり、ケンプが植木鉢に遺骨の一部を混ぜ、アマリリスの球根を植える。やがて舞台に雪が降り、暗転後、鉢植えから新芽が出て、幕。そこだけ見れば美しい幕切れだが、胸に迫るものがない。もっとよい本があるはずだ。この劇場が取り上げる英語圏の作品はどれも・・・。