F/T14『春の祭典』/美術と音楽は素晴らしいが

春の祭典』の初日を観た(11月12日 19:30/東京芸術劇場 プレイハウス)。

演出・振付:白神ももこ
美術:毛利悠子
音楽:宮内康乃
作曲:イーゴリ・フョードロヴィチ・ストラヴィンスキー
出演:伊東歌織、北川 結、ド・ランクザン望、乗松 薫、花田雅美、浜田亜衣、原 千夏、船津健太、細谷貴宏、政岡由衣子、三浦健太朗、つむぎね(ArisA、浦畠晶子、大島菜央、筒井史緒、森戸麻里未)
エキストラ:阿部紗穂里、天辰哲也、石川綾子、井上名菜、上村克仁、加藤素子、川尻雛子、鯉沼トキ、斎藤説成、櫻井晋、佐藤真紀、柴田温比古、清水由紀子、杉本朝美、鈴木匠和、相馬陽一郎、滝沢優子、武田萌絵、手塚啓行、長岩七、中谷弥生、和海アキ、馬場妙子、東ゆうこ、堀江たかこ、眞嶋木綿、三鶴泰正、宮家珠代、宮澤恵美子、村田素子、森潔、柳内佑介、山崎春美、山本啓介、夕田智恵、吉澤慎吾
音楽ドラマトゥルク: 渡邊未帆
舞台監督: 坂野早織
舞台監督助手:梶原あきら
演出部:鈴木晴香、藤間浩也、平野遥香、馬場史子、渡邊くらら
美術製作補佐:伊藤里織、佐々木文美、永友聖也、堀尾寛太
照明:中山奈美
照明操作: 和田東史子
ムービングプログラマー:勝本英志
音響:星野大輔(有限会社サウンドウィーズ)
衣装:臼井梨恵(モモンガ・コンプレックス)
衣装製作: 柴田真梨子、木下晃一、田崎倫明、山内彩瑚
ホワイエ展示:毛利悠子『アーバン・マイニング』
制作:植松侑子
制作アシスタント:松宮俊文
制作協力: 加藤弓奈(急な坂スタジオ)
製作・企画・主催:フェスティバル/トーキョー

フォワイエにセット概念模型『アーバン・マイニング』が展示されていた。不要になった大きな街路灯や、廃ケーブルの塊の上に小さな街路灯の模型があり、実際に灯りが点灯している。ぺしゃんこに潰された無数の空き缶上に、やはり小さな街路灯のミニチュアがいくつもあって、扇風機の風で垂れ下がったケーブルが揺れると接触し(何に?)灯りが点灯する仕組みらしい。「都市の光の下には、私たちの想像が及ばない廃墟=都市鉱山が累々と横たわっている」ことをイメージさせたいらしい(毛利悠子/プログラム)。なるほど。面白い。原発事故以降のエネルギー問題等を想起させる刺激的な展示だ。ちょっと期待して舞台の始まりを待つ。
舞台は傾斜。「ゴミの埋め立て地」と「南相馬石巻の沈下した土地を埋め立てる風景」のイメージ(毛利/プログラム)。「傾斜の奥の小高い山」は「いけにえと現世の境界になってい」るとの由(白神ももこ/プログラム)。下手側の2階席側からトイレットペーパーが垂れ下がり、舞台の上手手前には大小のホーンスピーカーが数台ほど置かれている。
数人のパフォーマーが客席の入り口から登場し、前や後、あるいはサイドのバルコニー等の客席に座る。彼らが発する声でスタート。はじめは単なるノイズにしか聞こえないが、次第に森に棲息する鳥や動物たちの泣き声のように聞こえてくる。やがて声明のような、あーという合唱に変わる。傾斜舞台といい、人声を使った音楽といい、FT/12で見た三浦基演出・三輪眞弘音楽の『光のない。』によく似ている。ここで客席が暗くなり、ストラヴィンスキーの音楽が始まる。舞台に男女のペアが現れる。その後、日本の祭りの踊りが大勢のパフォーマーによって賑々しく踊られる。あとは・・・。
退屈。特に村歌舞伎「モモタロウ」はいただけない。チープな笑いを狙ったつまらないシークエンス。あとの展開も似たようなもの。『春の祭典』を日本の祭りで再構成したい気持ちはよく分かるが、これでは。特にエンディングは、此岸から彼岸へと逝った者たちが鳥に転生し戻って来たということだろうが、演出が安易。F/Tのこれまでと比べ、水準が低下しているように感じる。美術(毛利)と音楽(宮内康乃)には思想的にも芸術的にも見るべきものがあった。だが、演出・振付の白神ももこは、この両者に見合う中身を創りえていない。もったいない。