iaku『モモンバのくくり罠』2023

iakuの新作『モモンバのくくり罠』を観た(11月29日 水曜 19:00/シアタートラム)。

関西弁の対話から笑いが噴出し、ちょっと吉本新喜劇みたい。が、横山氏のことだ。笑わせながらも扱う問題はマジである。

作・演出:横山拓也出演:枝元萌 祷キララ 緒方晋(The Stone Age) 橋爪未萠里 八頭司悠友 永滝元太郎

主催:一般社団法人iaku/提携:公益財団法人せたがや文化財団&世田谷パブリックシアター/後援:世田谷区/助成:文化庁文化芸術振興費補助金舞台芸術等総合支援事業(創造団体支援))独立行政法人日本芸術文化振興会 

母(枝元萌)の考えから自給自足の山中で育った娘(祷キララ)が、その暮らしに違和感を覚え〝普通〟を求めて山を下り、1人で生活する。だが、生きづらい。染みついた〝普通でなさ〟が軋みを生むのか。娘は久し振りに父(永滝元太郎)の車で山の家へ帰り、自分の不幸を母のせいだとなじる。激しい応酬のなか、父が会社を辞め、バーを経営していることが明らかに。そこへ突然、バーの傭われママ(橋爪未萠里)が現れたり、母の百原[ももはら]真澄を初めて「モモンバ」と呼んだのが、獲物の解体を経験しに来ていた動物園職員(八頭司悠友)の小学時代だったとか、なにかと母の世話を焼く猟師仲間(緒方晋)は過去にライフル事故で母の足を負傷させた負目があった等々…どんどん話がややこしくなる。

だが、芝居の主題は明確だ。親の(身勝手な)価値観を植え付けられた子どもはどうするのか。「宗教二世」の苦境にも繋がるが、修正するのは難しい等々。結局〝普通でなさ〟(価値観)を奇貨(宝)として生きるあり方が示され、幕となる。

負い目や罪悪感の問題は『逢いにいくの、雨だけど』(2018)のメインテーマだった(岸田國士の戦争劇『かへらじと』に同様の設定がある)。この作家のこだわりか。

それにしても関西弁の芝居は観ていてとても楽しい(朝の連ドラ『ブギウギ』もそう)。役者がみな達者でないと、こうはいかないが。祷(いのり)キララは初めて見た(と思ったが濱口竜介監督の『ハッピーアワー』(神戸が舞台/2015)に出ていたらしい)。

来年2月には別の新作『う蝕』が瀬戸山美咲演出で上演される。キャストはなかなかの顔ぶれ。場所は同じくシアタートラム。横山拓也の〝快進撃〟は暫く続きそうだ。

週末のコンサート&バレエ—BPO・BCJ・Les Arts Flo・Young NBJ GALA 2023. 11【追記】

先週末に聴いた/観た三つのコンサートと一つのバレエについて感想メモを記す。

キリル・ペトレンコ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 来日公演〈プログラムA〉(11月24日 金曜 19:00 @サントリーホール

ベルリン・フィルの生演奏を聴いたのは実に42年振り。辛うじて取れた席は2F RA2の中央。ステージの真横だが、これが意外に面白かった。指揮者と奏者がよく見えるし、音もさほど悪くなかった。

モーツァルト交響曲第29番 イ長調 K.201(1774)

音楽の喜びを感じさせる演奏。第4楽章の悪戯っぽいフレーズに指揮者の笑顔が客席にも広がった。ペトレンコの集中力は半端ではない。彼は強音でない部分では、奏者でなく、宙を見ながら空気の振動を調節しているような手の動きをする。

ベルク:オーケストラの三つの小品 Op.6(1915/23)1929年改訂版

  大編成の凄絶な響き! 金管、特に目の前の打楽器群が大活躍。大きな木製ハンマーには吃驚だ。マーラーが6番で使ったやつ。終曲後、思いっきり叩いたパーカッショニストに、近くの観客から拍手が起きた。彼は客席の小さな女の子と握手。手が届くのだ。牧歌的なモーツァルトから一変した本作には《ヴォツェック》と重なる感触があり、20世紀の戦争のきな臭さや人民の怒り、呻吟などが音化されていた。最後にフライングブラボー(男の声)が飛んだのは残念*1。ただ、客席は女性が目立ち、両隣も自分より若い女性だった。なんか隔世の感。女性を含む若い客が増えれば、コンサートの雰囲気も変わっていくだろう。

休憩後、フライングブラボーをやんわりたしなめるアナウンスがあった。主催者はまとも。

ブラームス交響曲第4番 ホ短調 Op.98(1885)

あの印象的な出だし。弦の重厚な響き。ベルクを聞いた後では、個人の内面や情動が強く喚起される。第2楽章のホルン。穏やかで静まった、茫洋とした感触。第3楽章の激しく鋭いリズム。自棄っぱちのような。そして、いよいよ終楽章。冒頭でパッサカリアシャコンヌ)の楽句が奏される。これはバッハのカンタータ150番《主よ、あなたを私は仰ぎ望みます》第7曲(終曲)「私の苦難の日々を」に基づく。

このカンタータの歌詞は、磯山雅によれば「詩篇第25篇からアレンジされ、現世の苦難と、その中で神を信頼しつつ生き、救いを待ち望むキリスト者の心を扱」っており、ブラームスが使った終曲では「低音の奏する4小節楽句がシャコンヌの主題となり、その反復によって、信仰への決意が力強く支えられる」という*2

変奏が進んだ後、フルートがあの印象的なフレーズを吹く。次第に下降していき、低音の官能的な響きにからだが反応する。クラリネットオーボエが明るい調べを奏すると少しグッときた。トロンボーンがコラールを吹奏すると涙が。…そんな安らぎの空気をヴァイオリン群が強音で切断すると、一気に悲劇的な様相が高まっていき、突然終曲を迎える。

ブラームスの場合、主題の変奏(反復)は、バッハのように「信仰への決意が力強く支えられる」ことはない。むしろ、苦悩と慰撫を行き来しつつ、突如、生が断ち切られる、「救い」への懐疑は消えないまま。そんな印象を受けた。だが、音楽を聴いている時間は至福そのもの。行ってよかった。

コンマスは女性だった(コンミスか)。彼女は今年2月に第1ヴァイオリンから昇格したラトビア出身37歳のヴィネタ・サレイカ=フォルクナーで、ベルリンフィル初の女性コンサートマスターとのこと。この日フォアシュピーラーの樫本大進はBプロでコンマスを務めるらしい。指揮者のキリル・ペトレンコは自身はロシア生まれだが、「父がウクライナ生まれで、母はロシア出身。しかも2人ともユダヤ教徒だ。ウクライナイスラエルで起きている軍事衝突は、私にとって二重の悲劇といえる」と語っている(日経新聞11/4)。】

 BCJ #158 定演 教会カンタータ・シリーズvol. 84〈クリスマスと新年のカンタータ〉指揮:鈴木優人/ソプラノ:ハナ・ブラシコヴァ/アルト:ダミアン・ギヨン/テノール:櫻田 亮/バス:ドミニク・ヴェルナー/合唱・管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン( 11月25日 土曜 15:00 @オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

J. S. バッハ:管弦楽組曲第2番 ロ短調 BWV 1067

序曲はともかく、続く舞曲はもっと生き生き感があってもよい。フラウト・トラヴェルソはもう少し音量がほしい(楽器の性質上やむをえない面もあるが)。

カンタータ第36番《嬉々として舞い上がれ、星々の高みにまで》BWV 36

待降節の音楽。第7曲のアリア、ソプラノのプラシコヴァはいつ聴いても素晴らしい。ヴァイオリン(若松夏美)のオブリガートは後半でゾーンに入ったような演奏。

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カンタータ110番《われらの口には笑いが満ち》BWV 110

降誕節の音楽。第1曲に管弦楽組曲第4番の序曲が使われている(先般 鈴木雅明氏がフランクフルト放送交響楽団の客演で演奏 Frankfurt Radio Symphony Live: Masaaki Suzuki & Laura Vukobratović with Bach & Mendelssohn - YouTube)。第4曲のアリアではカウンター・テナーのダミアン・ギヨンがオーボエ ダモーレ(三宮正満)のオブリガート絶唱を聞かせた。続く第5曲のプラシコヴァと櫻田亮のデュエットは晴れやかで喜びに満ちていた。

カンタータ第190番《主に向かって、新しい歌を歌え》BWV 190(鈴木優人復元版)

新年の音楽。元旦は「キリスト教会では…イエス命名日の要素が強」いという(木村佐千子/プログラム)。優人氏が学生時代に手がけた復元版だが、トランペット三本(斎藤秀範・大西敏幸・村上信吾)とティンパニ(菅原淳)や櫻田の晴朗なテノール等が華やかさや祝祭感を際立たせた。ドミニク・ヴェルナー(バス)が前舞台で第4曲のレチタティーヴォを歌い終え、後方の席へ戻ってしまった。テノールとのデュエットが続くのに。だが、隣の歌手に促され、歌いながら前へ歩み出て事なきを得た。この珍事を笑顔で見守る指揮者やメンバーたちが〝ご愛敬〟に変えていた。さすがBCJ

 

新国立劇場バレエ団 令和5年度(第78回)文化庁芸術祭主催公演〈DANCE to the Future: Young NBJ GALA〉(11月26日 日曜 14:00 @新国立中劇場)

1時間後に開演するオペラシティのレザール・フロリサン公演と重なり、見たのは第一部[パ・ド・ドゥ集]のみ。第二部・三部は残念ながら断念。

『ラ・バヤデール』第3幕より 振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス/出演:廣川みくり&石山 蓮

音源が小さい。ヴァイオリンソロがあまり鳴っていない(ように聞こえる)。廣川はよく踊れるが、情感を表情ではなく踊りの様式性で出せるようになれば。石山もよく踊れるが、次の動きへの意識が見えてしまい、少しセカケカした印象を与える。もっとゆったり踊れば。

『眠れる森の美女』第3幕より 振付:ウエイン・イーグリング M.プティパ原振付による/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/出演:中島春菜&渡邊拓朗

音源については同上。中島のおっとりした感じは好ましいが、動きはもっと機敏でもよい。渡邊は技術をどんどん磨いていけば、ノーブルな味が生かせそうに見える。

『ジゼル』第2幕より 振付:ジャン・コラリ&ジュール・ペロー&マリウス・プティパ/音楽:アドルフ・アダン/出演:吉田朱里&仲村 啓

吉田はラインで何かを語り、仲村は役のハラがある。結果、二人で作品の空気をしっかり創り出していた。

ドン・キホーテ』第3幕より 振付:マリウス・プティパ&アレクサンドル・ゴルスキー/音楽:レオン・ミンクス/出演:金城帆香&山田悠貴

金城はアラベスクの角度など気になる点(指導の問題?)はあったが、気持ちをからだの動きで表現できる。山田の美点は意志的に動けること。「やったるでー」と。

【米沢唯や小野絢子の〝当たり前〟のようにやっていることが、いかに〝当たり前〟でないかよく分かった。】

 

ウィリアム・クリスティ指揮 レザール・フロリサン 来日公演(11月26日 日曜 15:00 @オペラシティコンサートホール)

J. S. バッハ:《ヨハネ受難曲 BWV 245》[日本語字幕付]バスティアン・ライモンディ(テノール&エヴァンゲリスト)/アレックス・ローゼン(バス/イエス)/レイチェル・レドモンド(ソプラノ)/ヘレン・チャールストン(アルト)/モーリッツ・カレンベルク(テノール)/マチュー・ワレンジク(バス)/レザール・フロリサン管弦楽&合唱)

コーラス、ソリスト、オケのいずれも質が高い。ただし宗教音楽を聴いている感触はあまりなかった。あくまでもピリオド楽器・奏法でバッハの音楽を演奏しましたという印象。ソリストは、語りの内容によって、向き合ったり、手振りを交えたりする。幾分、セミステージ版オペラの趣きが感じられた。

エヴァンゲリストは瑞々しい声だが、語るというより歌う感じ。イエスのバスはレチタティーヴォが素晴らしい。アリアも悪くないが少し若さが滲み出る。ソプラノは真率な歌唱で、唯一こちらのからだが反応した。アルト(女性)の30番アリア「成し遂げられた」は思わず聴き入った。テノールはOK。ピラト(バス)も質が高い。

第二部の静かなシークエンスでスマホが鳴ったのは残念。28番コラール「彼はすべてを然るべく慮り」はとてもよかったが、座ったままアカペラで歌った。この受難曲には複数の版がある。BCJ等でいくつか聴いたが、アカペラは初めてだ。クリスティのアレンジだとしたら少し疑問。39番のコーラス「安らかに憩い給え」はいつ聴いても慰められ、終曲のコラール「ああ、主よ、あなたの愛しい天使らに」ではなぜかグッとくる。全般的にテンポは遅めの印象。最後はもっと沈黙が欲しかったが、まあ許容範囲か。好いコンサートだった。

 

*1:オペラの引越はそれなりに行った一方で、来日オケを聞かなくなったのはフライングブラボーが理由だった。最後はバレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリンブラームス交響曲チクルスだったか。会場は同じサントリーホール。3番フィナーレの弱音が暴力的なブラボーでかき消され、コンマスなど明らかに表情が曇った。休憩時、主催者の元へ駆けつけると、数人がすでに同じをクレーム発していた。こんなのを許していたら彼らはもう来なくなりますよ等々。〝佐々忠〟は黙って聞いていたが、奥の方へ姿を消した。後半開始前「最後まで音楽の余韻を楽しんでいただきますよう」云々の女性アナウンスが入り、客席から大きな拍手が湧いたのを覚えている。2002年2月だからもう21年前だ。

*2:第7曲の歌詞は次の通り——「私の苦難の日々を/神は終わらせ、喜びへと変えてくださる。/いばらの道を歩むキリスト者たちを、/その時には天の力と祝福が導くのだ。/神が私のまことの護りであるかぎり、/私は、世の人の逆らいなどものともせぬ。/キリストが私たちの側に立ち、/私の日々の戦いを助け、勝たせてくださるのだから。」磯山雅訳

新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』2023

新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』の初日、3日目のマチネとソワレ、6日目のソワレを観た(10月20日 金曜 19:00,22日 日曜 13:00,18:30,28日 土曜 18:30/新国立劇場オペラハウス)。

振付:マリウス・プティパ+アレクサンドル・ゴルスキー/改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ/音楽:レオン・ミンクス/美術・衣裳:ヴャチェスラフ・オークネフ/照明:梶 孝三/指揮:マシュー・ロウ(28日ソワレ 冨田実里)/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

[初日]キトリ:米沢 唯/バジル:速水渉悟/ドン・キホーテ:趙 載範/サンチョ・パンサ:福田圭吾/ガマーシュ:奥村康祐

指揮者マシュー・ロウ(オランダ国立バレエの音楽監督)は初めて聴いた。勢いに任せず丁寧にコントロールするタイプか。各声部がよく聞こえ、音楽が整っている。舞台上も同じ。主演者はもとより、みな隅々までよく整い、雑なところが見当たらない。3年前の勢いは必ずしも感じないが、そのぶん綻びがなく、全体的にクオリティが上がった印象(改訂振付アレクセイ・ファジェーチェフの来日指導が理由かもしれない)。

プロローグ。キホーテの趙は少しおとなしめ。パンサの福田は相変わらず。このとき一階右後方で災害アラームのようなスマホ音(?)が。

第1幕。キトリ米沢とバジル速水の息はピッタリ。速水は自信をもって舞台に立っている。ジャンプは高くピルエットは正確できれい。それをこれみよがしな印象なしにやってのける。米沢は嬉しそうにキトリを生きていたが、思うように出力が上がらない感じも。自分を拉致しそうなキホーテにみんなで踊りませんかとメヌエットを一緒に踊るシーンは、やはりグッとくる。米沢の goodness が滲み出た。ガマーシユの奥田は素晴らしい。福田パンサはトランポリンで見事な空中芸を見せた。『くるみ割り人形』「ロシア」の側宙といい、余人をもっては代え難いダンサーだ。エスパーダの木下嘉人はカッコいい。街の踊り子の奥田花純は踊りはいいが、大勢集う街の場で少し小さく(ドメスティックに)見える。

第2幕。1場。カスタネットの朝枝尚子は内に秘めたパトスを爆発させる。相変わらずカスタネットのリズムがよい。オケは、爆発よりバランスを重視している。メルセデス渡辺与布は華やかで大きな踊り。そこになぜか妙な〝面白さ〟が滲む(性格?)。フェイク自殺のシーンでバジルは脚を掻く。面白い。速水のコマのような回転! 飛び込む米沢…。2場。ジプシーの頭目 中家正博はツボを外さず、動きがきれい。3場。森の女王 吉田朱里は手脚が長い。森の精を支配するにはこれからだが、自信がついてきた(継続すれば芸監の期待に応えらそう)。キューピッドの五月女遥はうまい。最後に下手へはける高速のパドブレがすごい。ドゥルシネアの米沢は〝さすが〟としか言いようがない。

第3幕。アントレの音楽でいつものようにワクワクせず。演奏が落ち着いているからか。ファンダンゴは…いいと思ったことがない。PDD 笑顔の二人。米沢の長いバランス! 初めて見た。素晴らしいアダージョ。速水のヴァリエーションは力強く美しい。米沢のヴァリエーションはまずまず。コーダーへ。米沢のフェッテは赤い扇子でアクセントをつけトリプル? ただただすごい! 会場は爆発した。速水もマジでくるくる回る。カーテンコール。スタンディング、口笛、すごい歓声。客席(左上方)はいつもと違う反応で、新鮮だった。今後も二人のペアでもっと見たい。

 

[22日 13:00]キトリ:池田理沙子/バジル:福岡雄大ドン・キホーテ:趙 載範/サンチョ・パンサ:福田圭吾/ガマーシュ:奥村康祐

指揮者ロウはダイナミクスが細かい。舞台上の進行に合わせている。というか、振り付けが音楽に沿って作られているというべきか。

友人ピッキリアの飯野の踊りは音楽的。メロディやリズムに体が同期し、見ていて気持ちが好い。福岡は新たな気持ちで踊っているように見える。芝居にも工夫を凝らし、池田とのやりとりはコミカル。リフトはやはりうまい。キトリがキホーテに拉致されそうな例の場面で、キトリがみんなで踊りましょうと促しバジルに扇子を所望。すると福岡は扇子をピシャリとキトリの手に叩きつける。まあバジルったらとキトリ。バジルのソロもキレがあった。片手リフトもさすがにいい。懸命に踊る姿を見ていて、なんかグッときた。キホーテ趙は初日よりよい。福田パンサは本当に素晴らしい。演技が生きていて、トランポリンにも工夫がある。東フィルはトランペットが疲れ気味。コンマスは後ろ姿から三浦氏か。

三階はかなり空席が。福岡に拍手が少ない。(フォワイエのビデオは開演前だけでなく、休憩中も音を出してる。)

第2幕。キトリがバジルに飛び込むシーンは、はみ出しそうなくらい。カスタネットの踊りの朝枝はパトスの強さ。オケは洗練された演奏。極端なクレッシェンドはしない。ジプシーの頭目は中島瑞生、OK。あの二人は誰(役として)? アップテンポのコール・ド、音楽はアゴーギクがかなり。ハンガリアン(ロマの)ダンスのラッス(緩やか)とフリス(速い)のコントラストが気持ちいい。風車にキホーテ(の人形)が引っ掛かり飛ばされるの見損ねた。

休憩時、1幕の音楽が聞こえてくる(生の余韻を疎外するのはやめてほしい)。

第3幕。アントレ直前のスネアの〝ドロドロ〟はさほどクレッシェンドせず(ワクワク感が弱いのはそのせいか)。アダージョ、なぜかグッときた。池田も悪くない。福岡ヴァリエーション、二回目ジャンプの着地は危うかった。少し動揺もあったようだがなんとかまとめた。ブラボーが飛んで安堵(こっちが)。池田のヴァリエーション、いいと思う。コーダで福岡は空を蹴り上げるクペ・ジュテ・アン・トゥールナン(?)をコントロールして(歯を食いしばって)やり切った。ラストのキメ(ファイヴ・フォーティ?)は強め。福岡らしい。池田のフェッテは開始はダブル(?)後半シングルでしっかり(愚直に)。ブラボーがかかった。福岡のピルエットも根性で。よかったと思う。

 

[22日 18:30]キトリ:小野絢子/バジル:中家正博/ドン・キホーテ:中島駿野/サンチョ・パンサ:小野寺雄/ガマーシュ:小柴富久修

小野絢子はとてもよい。街の娘だ。中家のリフトは高い! それがどれほど尊いか。踊りは形がきれいで伸びやか。ソロもまずまず。エスパーダの中島瑞生は見違えるほど素晴らしい! 舞台では大きく高いことはいいことだ。直塚の街の踊り子は強度と大きさがあり、瑞生とのバランスがとてもよい。駿野キホーテは力強さ、意志がある。トウヘンボク感はやや薄めか。小野寺のパンサ造形はこれからか。トランポリンもひと工夫欲しい。

第2幕。フェイク自殺はまずまず。カスタネットの原田舞子が素晴らしい! カスタネットのリズムがきわめて正確で、うちに秘めた思いを伸びやかに表現。それを受けてエスパーダ瑞生が踊る。すると今度はメルセデス益田裕子が負けじと華やかに踊る。なるほどそういうことか。この場のドラマがここまで立ち上がって見えたのは初めてだ。パンサはもっと可愛らしさがほしい(素が見えてしまう)。

夢の場の中島春菜、悪くない。

第3幕。ボレロの仲村啓が素晴らしい! 滞空時間が長く形もいい。アダージョ。中家のサポートの堅実さ、リフトの長さ、かたちのよさ。小野も新鮮な気持ちで踊っている。そう見える。花純の1stヴァリエーション、よく踊っている。中家のヴァリエーション、余計なものは一切なし。振付をして語らしめる。人工美ならぬ自然美。素晴らしい! 基本がからだに入っている。飯野の2ndヴァリエーションは実に音楽的。芸監を柔和にしたような。どんどん踊りがよくなっている。小野ヴァリエーションはキメが細やか。コーダで中家は開脚してジャンプしながらマネージュするグラン・ジュテ・アン・トゥールナン(?)。きれい。自然。素晴らしい。小野のフェッテはダブルからシングル。最後は少し…OK。カーテンコールコールで中家が真ん中で嬉しそうにレヴェランス。こっちも嬉しくなる。もっと中家の主役が見たい。

 

[28日 18:30]キトリ:木村優里/バジル:渡邊峻郁/ドン・キホーテ:中島駿野/サンチョ・パンサ:宇賀大将/ガマーシュ:奥村康祐/指揮:冨田実里

この日はごく簡単に。キトリ木村 特になし。バジル渡邊 キレはある。3幕アダージョは普通によい。パンサ宇賀 マイムが大きく明快でとてもよい。ロレンツォ清水 よい。ガマーシュ奥村 とてもよい。ジュアニッタ山本 強度がある。ピッキリア花形 きれい。エスパーダ井澤 もっと。街の踊り子柴山 役に合っている。カスタネット原田 しっとりとじわじわ高まる、素晴らしさを再確認。ジプシーの頭目 瑞生は何かを掴んだか、思い切り演技してる。森の女王 内田 ゆったりと優雅に踊る、主役ができそう。キューピッド廣川 いいと思うが、少しコケティッシュすぎ? 指揮が冨田に変わり、音楽が少し〝スポーティ〟になったか。

音楽堂 室内オペラ・プロジェクト第6弾 ヘンデル《ジュリオ・チェーザレ》2023

鈴木優人指揮のBCJ によるヘンデルジュリオ・チェーザレ》を聴いた(10月14日 土曜 15:00/神奈川音楽堂)。

昨年の新国立版より満足度は高い。セミステージのシンプルかつ効果的な演出(佐藤美晴)。余計なものがない分、音楽に集中できる。ステージのオケを小高い通路が囲む。円ではないが円環をイメージしたらしい(プレトーク)。また、見た目を含む適材適所な配役でドラマがグッと立ち上がった。

 全3幕 セミ・ステージ形式 イタリア語上演 日本語字幕付

指揮:鈴木優人/演出:佐藤美晴/管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン

クレオパトラ:森 麻季/セスト:松井亜希/チェーザレ:ティム・ミード/トロメーオ:アレクサンダー・チャンス/コーネリア:マリアンネ・ベアーテ・キーラント/ニレーノ:藤木大地/クーリオ:加藤宏隆/アキッラ:大西宇宙

タイトルロールのティム・ミードは歌唱、演技、姿のいずれも申し分なく、特に高速のアジリタは圧巻だった。何より華やかさがある。森麻季クレオパトラにピッタリ。ゆるやかなカンタービレよりアジリタやコロラトゥーラでよさを発揮した。特にコミカルな演技がいい。弟のトロメーロをやり込めるシーンは見応え(聞き応え)あり。悪役トロメーロのアレクサンダー・チャンスは出てきただけでこちらの体がほぐれ、頬が緩む。歌唱の安定は群を抜いていた。歌っていないときの〝受け〟のあり方が素晴らしく、つい注視してしまう。コスチュームは右腕に巻いたヘビ同様似合ってた。シェイクスピアの道化(wise fool)をやらせたら嵌まるだろう(歌手だけど)。キーラントは新国立ではタイトルロールをやったが、本意でなかったはず。“美しい”と口を揃えて言われ、セストの母でもあるコーネリアがやはり似合っている。白いコスチュームのゆったりした佇まいは、歌唱を含めよく効いていた。

トロメーロの配下で悪役アキッラの大西宇宙は声が太い。存在も。自分が殺すのを手伝った男の妻に求愛するのはシェイクスピア『リチャード3世』のリチャードを、いまわの際の改悛(?)は『リア王』のエドマンドを想起。新国立版では気づかなかった。チェーザレの副官クーリオを歌った加藤宏隆の声量は半端ではない。コーネリアの息子セスト役の松井亜紀はBCJ定期以外で初めて聞いた。バッハ等の宗教音楽よりセキュラーな方が合っている。クレオパトラの召使いニレーノは藤木大地。〝オカマ風〟キャラで終始コミカルに立ち回る。少しはみ出し気味だがOK。

オケ(BCJ)はリュート(野入志津子)、テオルボ(佐藤亜紀子)がよく効いてた。ハープ(伊藤美恵)も。ホルン(福川伸陽)がドラマでも活躍。チェーザレのアリアでは若松夏実のVnが美しかった。鈴木優人は歌手のノリによく呼応し、ヘンデル音楽を見事に造形したと思う。

11月のフィールドワーク予定 2023【追加】+感想メモ

なぜか今年はベルリン・フィルを聞かねば!とチケットを取った(出遅れて希望の席ではないが)。生で聴くのは42年振り。最初は1977年のカラヤン指揮〈ベートーヴェン・チクルス〉で、第4夜(11/16)のシンフォニー6番・5番、第6夜(11/18)の9番を普門館で聴いた(館はもうない)。次は 1981年(11/7)に東京文化会館でむろんカラヤンが振ったブラームスのシンフォニー2番・4番。ベルリン・フィルはレコードやCDでは何度も何度も聴いたが、ライブではこの3公演だけ。今回は前回同様、大好きなブラームス4番を含むプログラムを選んだ。指揮者のペトレンコは6年前バイエルン国立歌劇場の来日公演《タンホイザー》をNHKホールで聴いたが、引き締まった透明な響きに好印象をもった。彼がベルリン・フィルからどんな音を引き出すのか、生だとどんな響きに聞こえるのか、とても楽しみだ。

新国立劇場バレエ団 DANCE to the Future:Young NBJ GALA は14時開始の2回公演だが、土曜は15時開始のBCJ定演と、日曜は同じく15時開始のクリスティ指揮レザール・フロリサンの《ヨハネ受難曲》と重なってしまった。どちらも諦めきれず、思案の末 日曜に若手のパ・ド・ドゥ集を45分見て、隣のオペラシティへ駆け込むことにした。45分だと見られるのはせいぜい3組か…。残念だけど仕方ない。

新国立がシェイクスピアの問題劇2作を上演するが、中劇場の演劇はいつも期待しないで見る(打率が極めて低いので)。iaku 横山拓也の新作は期待して見る。実際はどうなるか。

3日(金 祝)13:00 新国立劇場演劇『終わりよければすべてよし』作:ウィリアム・シェイクスピア/翻訳:小田島雄志/演出:鵜山 仁/美術:乘峯雅寛/照明:服部 基/音響:上田好生/衣裳:前田文子/ヘアメイク:馮 啓孝/演出助手:中嶋彩乃/舞台監督:北条 孝[配役]岡本健一:フランス王/浦井健治:バートラム/中嶋朋子:ヘレナ/ソニン:ダイアナ/立川三貴:ラフュー/吉村 直:ラヴァッチ/木下浩之フィレンツェ公爵/那須佐代子:ルシヨン伯爵夫人/勝部演之リナルドー/小長谷勝彦:兵士2/下総源太朗:デュメーン兄/藤木久美子:キャピレット/川辺邦弘:兵士1/亀田佳明:ぺーローレス/永田江里:マリアナ/内藤裕志:紳士/須藤瑞己:従者/福士永大:小姓/宮津侑生:デュメーン弟 @新国立中劇場

3日(金 祝)18:00 新国立劇場演劇『尺には尺を』作:ウィリアム・シェイクスピア/翻訳:小田島雄志/演出:鵜山 仁/美術:乘峯雅寛/照明:服部 基/音響:上田好生/衣裳:前田文子/ヘアメイク:馮 啓孝/演出助手:中嶋彩乃/舞台監督:北条 孝[配役]岡本健一:アンジェロ/浦井健治:クローディオ/中嶋朋子マリアナソニン:イザベラ/立川三貴:典獄/吉村 直:バーナーダイン&紳士1/木下浩之:ヴィンセンシオ/那須佐代子:オーヴァーダン/勝部演之:判事/小長谷勝彦:ポンピー/下総源太朗:エスカラス/藤木久美子:フランシスカ/川辺邦弘:エルボー&紳士2/亀田佳明:フロス&アブホーソン/永田江里:ジュリエット/内藤裕志:ピーター/須藤瑞己:召使い/福士永大:使者/宮津侑生:ルーシオ @新国立中劇場

【13日(月)19:00 〈じしゅコン〉vol. 2 村松稔之 カウンターテナー リサイタル/A. ルナー:「さくらんぼの実る頃」/R. アーン:「牢獄にて」/G. F. ヘンデル:「優しい木蔭」歌劇《セルセ》より/J. A. ハッセ」:「我が苦しみよ、急げ」オラトリオ《聖ペトロとマグダラのマリア》より 他/カウンターテナー村松稔之/ジャズピアノ:高田ひろ子/ピアノ:江上菜々子 @としま区民センター多目的ホール8F多目的ホール←追加

15日(水)19:00 N響 #1996 定演〈B-1〉シベリウス交響詩「タピオラ」作品112/ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ調/シベリウス交響曲 第1番 ホ短調 作品39/指揮:ユッカ=ペッカ・サラステ/ヴァイオリン:ペッカ・クーシスト サントリーホール

N響サントリー定期。ストラヴィンスキーVn協奏曲、面白い。奏者ペッカ・クーシストの音色は明るめで自在。視野の広さを感じる。アンコールはフィンランドの民謡舞曲【「コプシン・ヨーナス」とのこと】と思うけどアイリッシュに似てる。霧の彼方から微かに聞こえ次第に高まり消えていく。ハーモニクスというよりホーミーの弦楽版みたい。

ペッカ・サラステが振ったシベリウス交響曲1番はスケール大で聞き応えあり。緩徐楽章や終楽章はチャイコに似てる。主題を弦で改めてリピートする点等々。チャイコは悲壮感が滲み出る感じだが、シベリウスはそこから少し距離がある印象。

スケルツォで同じ動機を楽器で渡し最後ティンパニで締める所は気持ちいい。第九を想起するけど感触は全然違う。フィンランド人指揮者が振るとなぜかオケは寒い/冷たい音を出す(ロシア人指揮者もそう)。コンマスは郷古廉。オーボエのゲストは以前新日フィルに居た古部氏か。決然とした吹きぶりは多分そう。チェロのトップもゲストか。11/15ツイート

18日(土)14:00 新国立劇場オペラ《シモン・ボッカネグラ》〈新制作〉プロローグ付き全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉指揮:大野和士/演 出:ピエール・オーディ/美術:アニッシュ・カプーア/衣裳:ヴォイチェフ・ジエジッツ/照明:ジャン・カルマン/舞台監督:髙橋尚史[キャスト]シモン・ボッカネグラ:ロベルト・フロンターリ/アメーリア(マリア・ボッカネグラ):イリーナ・ルング/ヤコポ・フィエスコ:リッカルド・ザネッラート/ガブリエーレ・アドルノ:ルチアーノ・ガンチ/パオロ・アルビアーニ:シモーネ・アルベルギーニ/ピエトロ:須藤慎吾/隊長:村上敏明/侍女:鈴木涼子/合唱指揮:冨平恭平/合唱:新国立劇場合唱団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/共同制作:フィンランド国立歌劇場、テアトロ・レアル @新国立劇場オペラハウス

↑初めて聴いた。ヴェルディらしからぬ抒情性が沁みる。平民派と貴族派が憎み合うなか平和を願うシモン(ロベルト・フロンターリ)の歌がいま痛切に響く。敵方の娘マリアへの愛(娘アメーリアとの再会)がベースに。冒頭で黒服の人々が匍って登場。平民は地べたに這いつくばって生きていると。

レバノン出身のピエール・オーディ演出は極めてアクチュアル。赤と黒が基調のアニッシュ・アプーアの美術もシンプルだが効果的。4人のイタリア人男声と1人のロシア人ソプラノ+2人の日本人男声がとても充実。ここまで揃うのは珍しい。大野和士指揮の東フィルは手触り感のある好い音を出していた。11/20ツイート

24日(金)19:00 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 来日公演〈プログラムA〉モーツァルト交響曲第29 番 イ長調 K.201/ベルク:オーケストラのための3つの小品 Op.6/ブラームス交響曲第4番 ホ短調 Op.98/指揮:キリル・ペトレンコサントリーホール→感想メモ

25日(土)15:00  BCJ #158 定演 教会カンタータ・シリーズvol. 84〈クリスマスと新年のカンタータ〉 J. S. バッハ:管弦楽組曲第2番 ロ短調 BWV 1067/カンタータ第36番《嬉々として舞い上がれ、星々の高みにまで》BWV 36/カンタータ110番《われらの口には笑いが満ち》BWV 110/カンタータ第190番《主に向かって、新しい歌を歌え》BWV 190(鈴木優人復元版)/指揮:鈴木優人/ソプラノ:ハナ・ブラシコヴァ/アルト:ダミアン・ギヨンテノール:櫻田 亮/バス:ドミニク・ヴェルナー/合唱・管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン@オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル→感想メモ

26日(日)14:00 新国立劇場バレエ団 令和5年度(第78回)文化庁芸術祭主催公演〈DANCE to the Future: Young NBJ GALA〉[パ・ド・ドゥ集]『ジゼル』第2幕より 振付:ジャン・コラリ&ジュール・ペロー&マリウス・プティパ/音楽:アドルフ・アダン/出演:吉田朱里&仲村 啓 『眠れる森の美女』第3幕より 振付:ウエイン・イーグリング M.プティパ原振付による/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/出演:中島春菜&渡邊拓朗 『ラ・バヤデール』第3幕より 振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス/出演:廣川みくり&石山 蓮 ドン・キホーテ』第3幕より 振付:マリウス・プティパ&アレクサンドル・ゴルスキー/音楽:レオン・ミンクス/出演:金城帆香&山田悠貴//[新国立劇場バレエ団 Choreographic Group より]『Coppélia Spiritoso』振付:木村優/音楽:レオ・ドリーブ、カール・ジェンキンス/出演:木村優子木村優里 『人魚姫』振付:木下嘉人/音楽:マイケル・ジアッチーノ/出演:米沢 唯&渡邊峻郁 『Passacaglia』振付:木下嘉人/出演:小野絢子&福岡雄大&月女遥&木下嘉人//『ドゥエンデ』振付:ナチョ・ドゥアト/音楽:クロード・ドビュッシー/美術:ナチョ・ドゥアト&ウォルター・ノブ/衣裳:スーザン・ユンガー/照明:ニコラス・フィシュテル/ステージング:キム・マッカーシー/オーガナイザー:カルロス・イトゥリオス/出演:直塚美穂 赤井綾乃 木村優子 徳永比奈子 花形悠月 山本涼杏 中島瑞生 山田悠貴 石山 蓮 小川尚宏 西 一義 森本晃介 @新国立中劇場→感想メモ

26日(日)15:00 ウィリアム・クリスティ指揮 レザール・フロリサン J. S. バッハ:《ヨハネ受難曲 BWV 245》[日本語字幕付]バスティアン・ライモンディ(テノール&エヴァンゲリスト)/アレックス・ローゼン(バス/イエス)/レイチェル・レドモンド(ソプラノ)/ヘレン・チャールストン(アルト)/モーリッツ・カレンベルク(テノール)/マチュー・ワレンジク(バス)/レザール・フロリサン管弦楽&合唱)@オペラシティコンサートホール→感想メモ

29日(水)19:00 iaku『モモンバのくくり罠』作・演出:横山拓也/出演:枝元萌 祷キララ 緒方晋(The Stone Age) 橋爪未萠里 八頭司悠友 永滝元太郎/主催:一般社団法人iaku/提携:公益財団法人せたがや文化財団&世田谷パブリックシアター/後援:世田谷区/助成:文化庁文化芸術振興費補助金舞台芸術等総合支援事業(創造団体支援))独立行政法人日本芸術文化振興会 @シアタートラム→感想メモ

10月のフィールドワーク予定 2023【変更・追記】

10月はバレエ4,オペラ2,演劇1,ダンス1,コンサート1,映画1。さすがに〝芸術の秋〟は先月より少し増えた。

『ドン・キ』は大好きな作品。新国立バレエは同演目を別キャストも見るから多くなる。/新国立オペラのシーズン開幕はダブルビル。プッチーニ《修道女アンジェリカ》は間奏曲しか、ラベル《子どもと魔法》はまったく聴いたことがない。あまりよい印象のない指揮者だけど…。/鈴木優人指揮のBCJヘンデルジュリオ・チェーザレ》を上演する(オペラシティでもやるが都合で神奈川音楽堂の方)。タイトルロールにカウンターテナーのティム・ミードが配された。楽しみ。昨年 新国立でチェーザレを歌ったキーラントはここではコーネリヤ役。あのときは事実上の代役だったので本来の位置か。/太陽劇団は2001年に『堤防の上の鼓手』(新国立中劇場)を見て以来。もう22年経つのか。『鼓手』は俳優が(文楽)人形振りを見事に演じきる驚嘆すべき舞台だった。ただ演者らが東洋人に似せて顔を細目(吊り目)に作っていたのは少し違和感も…。柿沢麻莉子のダンスは遅まきながら昨秋 初めて見た(鈴木竜演出・振付『never thought it would』『When will we ever learn?』)。今回のセレクションでは自分の振付で踊る。島地保武の振付・出演もあり、楽しみだ。/長年にわたり平田オリザと協働してきたパスカル・ランベール。『KOTATSU』は、彼が青年団の俳優に当て書きした作品らしい。/96歳のブロムシュテットサントリーHで N響を振るのは、ブラームスの三番シンフォニー。ベートーヴェンの「皇帝」ピアノ協もある。さてどんな音がするのか。/映画は教え子が出るので少しドキドキ。

1日(日)14:00 令和5年度(第78回)文化庁芸術祭オープニング・オペラ ジャコモ・プッチーニ《修道女アンジェリカ》<新制作>全1幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉モーリス・ラヴェル《子どもと魔法》<新制作>全2部〈フランス語上演/日本語及び英語字幕付〉指揮:沼尻竜典/演出:粟國 淳/美術:横田あつみ/衣裳:増田恵美/照明:大島祐夫/振付:伊藤範子/舞台監督:髙橋尚史/[配役=修道女アンジェリカ]アンジェリカ:キアーラ・イゾットン/公爵夫人:齊藤純子修道院長:塩崎めぐみ/修道女長:郷家暁子/修練女長:小林由佳/ジェノヴィエッファ:中村真紀/オスミーナ:伊藤 晴/ドルチーナ:今野沙知恵/看護係修道女:鈴木涼子/托鉢係修道女1:前川依子/托鉢係修道女2:岩本麻里/修練女:和田しほり/労働修道女1:福留なぎさ/労働修道女2:小酒部晶子[配役=子どもと魔法]子ども:クロエ・ブリオ/お母さん:齊藤純子/肘掛椅子&木:田中大揮/安楽椅子&羊飼いの娘&ふくろう&こうもり:盛田麻央/柱時計&雄猫:河野鉄平/中国茶碗&とんぼ:十合翔子/火&お姫様&夜鳴き鶯:三宅理恵/羊飼いの少年&牝猫&りす:杉山由紀/ティーポット:濱松孝行/小さな老人&雨蛙:青地英幸/合唱指揮:三澤洋史/合 唱:新国立劇場合唱団/児童合唱:世田谷ジュニア合唱団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

13日(金)18:00 『KOTATSU』作・演出:パスカル・ランベール/共同演出・日本語監修:平田オリザ/翻訳:平野暁人/出演:山内健司 兵藤公美 太田 宏 知念史麻 申 瑞季 荻野友里 佐藤 滋 森 一生 名古屋 愛 淺村カミーラ(以上、青年団)/初演・共同制作:国際交流基金+(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場+structure production/企画制作・主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場/助成:文化庁文化芸術振興費補助金+劇場・音楽堂等活性化・ネットワーク強化事業(地域の中核劇場・音楽堂等活性化)+独立行政法人日本芸術文化振興会 @シアタートラム

14日(土)15:00 音楽堂 室内オペラ・プロジェクト第6弾 ヘンデルジュリオ・チェーザレ》全3 セミ・ステージ形式 イタリア語上演 日本語字幕付/指揮:鈴木優人/演出:佐藤美晴/管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパンクレオパトラ:森 麻季/セスト:松井亜希/チェーザレ:ティム・ミード/トロメーオ:アレクサンダー・チャンス/コーネリア:マリアンネ・ベアーテ・キーラント/ニレーノ:藤木大地/クーリオ:加藤宏隆/アキッラ:大西宇宙 @神奈川音楽堂感想メモ

18日(水)19:00 完成披露試写会 映画『さよなら ほやマン』監督・脚本:庄司輝秋/音楽:大友良英/出演:アフロ(MOROHA)呉城久美 黒崎煌代 津田寛治 園山敬介 澤口佳伸 松金よね子/製作:シグロ+オフィス・シロウズ+Rooftop+ロングライド/制作プロダクション:シグロ+オフィス・シロウズ @ユーロライブ

20日(金)19:00 新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ振付:マリウス・プティパ+アレクサンドル・ゴルスキー/改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ/音楽:レオン・ミンクス/美術・衣裳:ヴャチェスラフ・オークネフ/照明:梶 孝三/キトリ:米沢 唯/バジル:速水渉悟ドン・キホーテ:趙 載範/サンチョ・パンサ:福田圭吾/ガマーシュ:奥村康祐/指揮:マシュー・ロウ/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

21日(土)14:00 東京芸術祭×愛知県芸術劇場×Dance Base Yokohama 〈パフォーミングアーツ・セレクション 2023 in Tokyo〉柿崎麻莉子『Can’t-Sleeper』演出・振付:柿崎麻莉子/振付:アリス・ゴドフリー/出演:柿崎麻莉子、栗 朱音//島地保武×環ROY 新作『あいのて』演出・振付:島地保武/演出・音楽:環ROYドラマトゥルギー:⻑島 確/出演:島地保武、環ROY @芸劇シアターイース

22日(日)13:00 新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』キトリ:池田理沙子/バジル:福岡雄大ドン・キホーテ:趙 載範/サンチョ・パンサ:福田圭吾/ガマーシュ:奥村康祐 @新国立劇場オペラハウス

22日(日)18:30 新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』キトリ:小野絢子/バジル:中家正博ドン・キホーテ:中島駿野/サンチョ・パンサ:小野寺雄/ガマーシュ:小柴富久修 @新国立劇場オペラハウス

24日(火)18:30 東京芸術祭 2023 芸劇オータムセレクション 太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)『金夢島 L’ÎLE D’OR Kanemu-Jima』※フランス語上演(多言語の使用場面あり)・日本語字幕付き/演出:アリアーヌ・ムヌーシュキン(2019年京都賞受賞)/創作アソシエイト:エレーヌ・シクスー/音楽:ジャン=ジャック・ルメートル/出演:太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)@東京芸術劇場プレイハウス

25日(水)19:00 N響 #1994定演〈B-1〉ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73 「皇帝」/ブラームス交響曲 第3番 ヘ長調 作品90/指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット[体調不良のためキャンセル]→尾高忠明/レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)@サントリーホール

【27日(金)生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ/主催:東京国立近代美術館NHKNHKプロモーション、東京新聞東京国立近代美術館←追記

28日(土)18:30 新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』キトリ:木村優里/バジル:渡邊峻郁ドン・キホーテ:中島駿野/サンチョ・パンサ:宇賀大将/ガマーシュ:奥村康祐/指揮:冨田実里 @新国立劇場オペラハウス

9月のフィールドワーク予定 2023 追記+感想メモ

先月同様、今月も映画1 演劇1 コンサート2 と少なめ。

先月は公演が少ない分、気になっていた本をいろいろ読めた。中沢啓治はだしのゲン』全10巻、吉原真里『親愛なるレニー——レナード・バーンスタインと戦後日本の物語』、平野啓一郎『死刑について』、村田喜代子・木下晋『存在を抱く』等々。

なかでも『はだしのゲン』(1973-1987)は読後感が後を引き、また、いっけん無関係に読んだ別の本とも響き合い、中沢の『はだしのゲン 自伝』(1994)『はだしのゲン わたしの遺書』(2012)黒いシリーズ短編集『黒い雨にうたれて』(1968-1973)等を読み、さらに、複数のヴォランティア(Project Gen)で訳したという英語版全10巻(2004-2009) を入手することに。漫画を読んだのは、やはりヒロシマの原爆体験を扱ったこうの史代の『この世界の片隅に』以来だ。『ゲン』を読みはじめたら、二十数年前に読んだアート・スピーゲルマン『マウス——アウシュヴィッツを生き延びた父親の物語』(1986/91)が頭に浮かんだ。これも20世紀の災厄を描いた漫画作品である。この作者が『ゲン』の英語版序文(1990)を書いたのは偶然とは思えない。スピーゲルマンは『マウス』に着手してほどなく『ゲン』を読んだという。おそらく1978年の最初の英語版だろう(翻訳は年月を経ながら進化を遂げたらしい)。『ゲン』についてはまた改めてメモしたい。

4日(月)17:10 映画『福田村事件』監督:森 達也/脚本:佐伯俊道、井上淳一荒井晴彦/企画:荒井晴彦/統括プロデュ―サー:小林三四郎/プロデュ―サー:井上淳一 片嶋一貴/企画協力:辻野弥生、中川五郎、若林正浩/アソシエイトプロデュ―サー:内山太郎、比嘉世津子/撮影:桑原 正/照明:豊見山明長/録音:臼井 勝/美術:須坂文昭/装飾:中込秀志/衣装:真柴紀子/ヘアメイク:清水美穂/編集:洲崎千恵子/音楽:鈴木慶一/助監督:江良 圭/キャスティング:新井康太/スチール:佐藤芳夫/メイキング:綿井健陽/出演:井浦 新、田中麗奈永山瑛太東出昌大コムアイ、木竜麻生、松浦祐也、向里祐香、杉田雷麟、カトウシンスケ、ピエール瀧水道橋博士豊原功補、柄本 明 @イオンシネマ板橋

7日(木)19:00 東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『勧進帳』監修・補綴:木ノ下裕一/演出・美術:杉原邦生 [KUNIO]《通常公演》武蔵坊弁慶リー5世/源九郎判官義経:高山のえみ/富樫左衛門:坂口涼太郎常陸海尊&番卒オカノ:岡野康弘/亀井六郎&番卒カメシマ:亀島一徳/片岡八郎&番卒シゲオカ:重岡漠/駿河次郎太刀持ちの大柿さん:大柿友哉 @芸劇シアターイース

17日(日)15:00 BCJ #157 定演 シューベルト:ミサ曲第5番 変イ長調 D 678/交響曲第7番 ロ短調《未完成》D 759/指揮:鈴木雅明/ソプラノ:安川みく/アルト:清水華澄/テノール:鈴木 准/バス:大西宇宙/合唱・管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン @オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル

20日(水)19:00 N響 #1991 定演 モーツァルト交響曲 第29番 イ長調 K. 201/モーツァルト:フルート協奏曲 第2番 ニ長調 K. 314/モーツァルト交響曲 第39番 変ホ長調 K. 543/指揮:トン・コープマン/演奏:神田寛明(フルート/N響首席フルート奏者)@サントリーホール

コープマンはかなりモーツァルト交響曲全曲演奏してなかったか、たしか芸劇で。テレビで見た記憶がある。いま78歳だからかつての跳ねるような指揮振りとは違ったが、片鱗はあった。

モーツァルト交響曲第29番イ長調 K.201》編成はオーボエ2,ホルン2,弦楽。

地味目な始まりは後半39番との違いを計算した点もありそう。それでも面白い箇所がちらほら、特に第4楽章。

《フルート協奏曲第2番ニ長調 K.314》編成は29番と同じだが弦の人数を減らしてる。

神田寛明のフルートは優美。聞かせ所でもこれ見よがしにならずオケとよく馴染む。といって埋没はしない。幸福感とウキウキ感が漲る音楽。カデンツァも素晴らしかったが、神田自身の作とは! アンコールは《魔笛》「私は鳥刺し」フルート二重唱のアレンジを一人で吹いたと。すごい。

交響曲第39番変ホ長調 K. 543》フルート1(神田氏が入ってる!),クラリネット2,ファゴット2,ホルン2,トランペット2、ティンパニ1,弦楽。

初めて聴いたのは十代半ばだったか。なぜかモーツァルトで一番好きなシンフォニー。序奏がいい。かつてのベームカラヤンを聞き慣れた耳でアーノンクールを聞いたとき驚いた。すごいハイテンポで、軽やか。むろんコープマンもこの方向。序奏からアレグロに入ったときの爽快感! 氷の上を滑っているような気持ちの好さがある。3楽章のクラリネット(フルート)のトリオはオペラのアリアみたい。どこかでクラリネットが遊んだ! ティンパニも!18歳で作曲の29番から24歳の協奏曲を経て34歳の39番を聞くと、悪戯好きの個性が開花していくさまを聴き取れる。コープマン指揮の賜物か。(9/24のツイートを修正)

【29日(金)19:00 劇団銅鑼 Labo 企画 第三弾『雌伏~「ながい坂」三浦主水正、江戸に潜む~』原作:山本周五郎『ながい坂』より/脚色・演出:平石耕一/出演:鈴木正昭 長谷川由里 黒田志保 柴田愛奈 野内貴之 髙辻知枝 大竹直哉 川口圭子 金子幸枝 吉野孝正/音楽:寺田テツオ/音楽助手:北村友佳/効果:真原孝幸/照明:館野元彦/結髪:佐藤亭子/衣装&美術協力:中村真由美/舞台監督:鈴木正昭/演出助手:館野元彦/宣伝美術:中村真由美/制作:柴田愛奈 @銅鑼アトリエ】←追記