もう2月も半ば/舞台芸術の社会的機能を考えるために

一月半もほったらかしにしてしまった。
といっても、この間フィールドワークをサボっていたわけではない。

12/9 モーツァルト 鈴木優人 補筆校訂『レクイエム』BCJ(オペラシティ コンサートホール)
12/17『くるみ割り人形』小野・菅野・五月女 新国立バレエ団 (新国立劇場オペラハウス)
12/18『くるみ割り人形』米沢・福岡・井倉 新国立バレエ団 (新国立劇場オペラハウス)
12/22『くるみ割り人形』米沢・福岡・井倉 新国立バレエ団 (新国立劇場オペラハウス)
1/11 プロコフスキー版『アンナ・カレーニナ』下村・佐々木 日本バレエ協会東京文化会館
1/13 山田うん春の祭典』『結婚』(スパイラルホール)
1/19『カルメン新国立劇場オペラ(新国立劇場オペラハウス)
1/23(「クラシック・バレエ・ハイライト」新国立バレエ団(厚木市文化会館 大ホール)
1/24 新日本フィル#519 定演 ハウシルト指揮(すみだトリフォニーホール
1/25 小野寺修二 カンパニーデラシネラ『ある女の家』(新国立中劇場)
1/30『蝶々夫人新国立劇場オペラ(新国立劇場オペラハウス)
2/5 現代能楽集VII「花子について」――『葵上』『花子』『班女』(シアタートラム)
2/9 ノイマイアー版『ロミオとジュリエット東京バレエ団東京文化会館
2/11『マノン』から「寝室のパ・ド・ドゥ」『火の鳥のパ・ド・ドゥ』『HAGOROMO』『Opus 131』 ARCHITANZ 2014(新国立中劇場)
2/12 バッハ「ブランデンブルク協奏曲」全曲 フライブルクバロック・オーケストラ(オペラシティ コンサートホール)

そこそこ見(聴い)ている。週末からは新国立バレエの『白鳥の湖』が開幕する。
そもそもこのブログは、個別の舞台の感想メモをベースに、舞台芸術の社会的な機能について根底的に考えるために始めたものだ。
劇場芸術(パフォーミング・アーツ)は社会にとってどのような意味(意義)があるのか。劇場体験は観客に何をもたらすのか。
ここ数ヶ月、そうした問いを念頭に置きながら、これまで読んだ主に原理的な著作(理論書)を再読したり、新たに読んだりした。いまも読んでいる。そうしたら、ブログを更新しないまま2月になっていたというわけだ。
いま机上に並んでいるのはこんな本である。
・・・バーク『崇高と美と観念の起源』、スミス『道徳感情論(道徳情操論)』、ホイジンガホモ・ルーデンス――文化のもつ遊びの要素についてのある定義づけの試み』、カイヨワ『遊びと人間』、宮地尚子『環状島=トラウマの地政学』『震災トラウマと復興ストレス』、中村明一『倍音――音・ことば・身体の文化誌』、平田オリザ『新しい広場をつくる――市民芸術概論綱要』、『竹内敏晴の「からだと思想」1 主体としての「からだ」』『竹内敏晴の「からだと思想」2 「したくない」という自由』、リゾラッティ+シニガリア『ミラー・ニューロン』・・・
アリストテレスは『詩学』以外に『政治学』『ニコマコス倫理学』が、プラトンは『国家』のほかに『法律』が参考になる。ブレヒトの異化効果を論じた著作とボアールの『被抑圧者の演劇』も欠かせない。
アダム・スミスの『道徳情操論』はいま読んでいるのだが、同時代のエドマンド・バーク『崇高と美と観念の起源』と並べてみるとたいへん面白い。「共感」や「感情移入」の社会的な機能について考えるには、アリストテレスブレヒトと同様、両者は必須の文献といえるのではないか。ただし、スミスの翻訳本は、岩波文庫版は評判が最悪だし、昨年出た講談社学術文庫版は好評なので買ってみたがほぼ一頁毎につっかえて原文チェックの繰り返しになりとても読み進む気になれない(たとえば ''Of all the calamities to which the condition of mortality exposes mankind, the loss of reason appears . . .'' を「死を免れえないような健康状態が人間に体験させる苦難のうち、正気を失うことは・・・」と訳すような言葉感覚に強烈な異和感)。結局、1948年刊行の本邦初訳(米林富男訳)で読んでいる(米林は同じ箇所を「生者必滅の運命が人類に課したあらゆる災厄のうちでも、理性の喪失こそは・・・」とマトモ。それでも原文チェックは必要だが)。
宮地尚子が論じる〈環状島〉(感情島)は、「トラウマをめぐる発話の位置と発話能力との、ある意味で直感に反する関係の在り方を探ろうとして」考案されたモデルだ。昨年は3.11やフクシマの災厄を題材にした複数の舞台を見る機会があったが、宮地本は、創り手(作者・演出家・役者等)の立ち位置(ポジショナリティ)を考える上で、有効な視点を与えてくれる。・・・
そんなわけで、公演の感想がずいぶん溜まってしまったが、いずれ、まとめて簡単なメモをアップするつもり(ほんとか)。