新国立劇場バレエ『白鳥の湖』2014/初日

白鳥の湖』の初日と二日目を観た(2月15日 14時・16日 14時/新国立劇場オペラハウス)。
まずは初日から。
福岡雄大ジークフリート王子はこれまでとは違う感触。できる限り王子らしく振る舞おうとの意図がさらによく見える。一幕のソロや三幕のヴァリエーションでは、スポーティなこれ見よがしを抑えての踊り。ただ、踊り方がウヴァーロフそっくり。なぜか指導に来ていたらしいが、彼のスタイルが福岡に合っているのかは疑問。これまで福岡にはもっとノーブルさが欲しいと散々書いてきた。それには借り物の演技ではなく、まずは王子の属性に見合う在り方を自分のなかに見出していくしかないように思われる。このプロセスがないと、内側から支えられた力強さが出てこない。
第二幕。小野絢子のオデットと福岡の王子のアダージョは、ロシア風の濃厚なヴァイオリンソロ(グレブ・ニキティン)の陰に隠れた印象。小野は踊りそのものはよいと思う。だが、二人の踊りから〝響き〟が聞き取れず、ドラマが立ち上がらなかった。すぐにイギリスでの『パゴダの王子』が控えていることも影響しているのか。
第三幕。小野のオディールは、ある意味〝投げやりな感じ〟が黒鳥にマッチすると同時に彼女の好さを外に出す結果となり、これまでのベストかも。小野絢子はあまり几帳面にやり過ぎると、独特の魅力が封殺されてしまう(責任感が強いのはもちろん彼女の美点だが)。
キャラクターダンスでは、いつものようにトレウバエフのスペインの踊りが、溜めの入り方が極めて自然で素晴らしい。江本拓が同じ振りを踊っているとはとても見えなかった。五月女遥・竹田仁美・福田圭吾のナポリの踊りも好印象。本島美和は第一幕のトロワでは精彩を欠いたが、ルースカヤは頑張って大きな踊りを見せた(今回はニキティンのヴァイオリンがグリッサンドで下降するフレーズも印象的)。花嫁候補のダンサーたちは、オディールが踊るとき、もっと嫌そうにしてもよい。厚木三杏などは「なにこのひと、イヤーねー」と心から嫌そうな表情で隣のダンサーと顔を見合わせていた。
牧版『白鳥』への批判は前回も書いたが(http://d.hatena.ne.jp/mousike/20120515/1337087553)、最も腑に落ちないのはやはり第四幕。ダンサーが気の毒だ。四幕の幕が下りたとき、これで終わり? という感じ。物足りない。
牧版がベースにしているセルゲーエフ版も、幕切れは気に入らなかった。誓約を破ったにもかかわらず二人がこの世で結ばれるというのは、やはりフィクションの文法に反していると思われる。
アレクセイ・バクラン指揮の東京交響楽団は、金管は総じてよかった(東フィルよりはまし)。トランペットのソロは軽やかでホルンもまずまず。オーボエは音色に輝きが足りないし、不安定。せめて『白鳥』のときはベストのオーボエ奏者を使って欲しい。バクランは、第一幕の幕切れや第二幕冒頭の白鳥のテーマのとき、弦楽器のトレモロを思いっきりけしかけて荒涼感を出そうした。そこまでやる、という感じ。でも、まあ面白いが。