2月のフィールドワーク予定 2022(二人の代役指揮者のことなど)【追加】【中止の追記】

ガエターノ・デスピノーサ(11月)とジョン・アクセルロッド(1月)を知ったのはN響定期を代役で指揮したとき。二人とも大変気に入った。

デスピノーサは、とかく力みがちな組曲展覧会の絵》を豊かでふっくらした音楽に仕上げた。彼はゼンパーオーパー(シュターツカペレ・ドレスデン)のコンマスから指揮者になったという。オペラも聴きたいと思ったら、新国立劇場さまよえるオランダ人》の代役指揮ですぐに実現。初日を聴いた。序曲や第一幕はオケの調子(特に金管)がいまひとつで、さほどワーグナーらしい響きはない。やはりイタリア人指揮者には「合ってないのか」と思いきや(じゃあ日本人はどうなのか)、第二幕は歌手もオケも素晴らしく、トータルでは満足して劇場を出た。その後、デスピノーサのインタビュー動画を見た。序曲のカット(知らなかった)について演出家と話して元に戻した経緯や、この期のワーグナーベルカントなどイタオペの影響が強い等々、ドイツ語で語るのを聞いた。なるほど、中期以降のいわゆるワーグナー的響きを本作に求めたこちらがアナクロ(筋違い)だった。無性に聴き直したくなり、楽日のチケットを入手。その翌日は、デスピノーサが連続で振る《愛の妙薬》の初日だ。ドイツものとイタリアものをどう振り分けるか。楽しみ。

アクセルロッドN響のCプロでブルッフのヴァイオリン協奏曲とブラーブスの交響曲第3番を振った。独奏の服部百音は集中力と感覚が抜群。圧倒的な音とは言えないけど、こだわりのある音楽家だ。お辞儀がすごく丁寧で長い。ちょっと能みたいな感じ(笑わないし)。アンコールは「庭の千草変奏曲」。決して超絶っぽく弾かず、弱音を大事にし、糸を引くような感じ。すごく水分を含んだ音色で、きれいだった。アクセルロッドは、ブルッフのときオケの音を変えるタイプじゃないなと思ったが、ブラームスになると、違った。弦も管ものびのびと歌わせる。特に印象的なのは第二楽章。木管がとても自然で美しかった。例の第三楽章は思い入れを抑えさらっと振るが、チェロをはじめオケの方が自発的かつ伸びやかに歌う。フィナーレも自然さと自発性を失わず、ふっくらした気品のある音楽が生まれた。その後、彼の振る Bプロ定期が関係者の陽性で中止になったらしい。その日は《さまよえるオランダ人》の初日だったが、本番を失ったアクセルロッドをフォワイエで見かけたと思う(マスク姿で不確かだが)。もう一人の代役の活躍を見に来たのか。これで帰国するのかと思いきや、そのアクセルロッドが都響チャイコフスキーを振ると知り、聴くことにした。むろんこれも代役だ。

今月のN響Cプロ定期はヤルヴィの代わりに鈴木雅明が振る。リヒャルト・シュトラウスストラヴィンスキーに変えて。これも楽しみだ。BCJの定演でモーツァルトを振るのは鈴木優人の方。

演劇では市原佐都子の作・演出を初めて見る(シアターコモンズ)。『バッコスの信女——ホルスタインの雌』は見損ねた。自分(の身体=無意識)がどう反応するか楽しみ。

バレエでは「吉田都セレクション」がある。演目変更もあったが『アラジン』と『こうもり』(いずれも抜粋)を久し振りに見られるのは嬉しい。

2日(水)14:00 新国立劇場 演劇研修所 第15期生修了公演『理想の夫』作:オスカー・ワイルド/翻訳:厨川圭子/演出:宮田慶子/美術:池田ともゆき/照明:中川隆一/音響:信澤祐介/衣裳:西原梨恵/演出助手:高嶋柚衣/舞台監督:川原清徳/主催:文化庁新国立劇場 @新国立小劇場

↑男女や夫婦の関係や感情のあり方などを俯瞰的に分析したうえで書いた印象。ラストはちょっと感動的な場面だが、決して作者は共感していないだろうと思わせる。なんか三島由紀夫みたいだ(三島がワイルドみたいというべきか)。宮田慶子の演出を見て彼女の監督時代が懐かしかった。

6日(日)14:00 新国立劇場オペラ《さまよえるオランダ人》指揮:ジェームズ・コンロン(入国制限措置により降板 1/5)ガエターノ・デスピノーサ/演出:マティアス・フォン・シュテークマン/美術:堀尾幸男/衣裳:ひびのこづえ/照明:磯野 睦/再演演出:澤田康子/舞台監督:村田健輔/[キャスト]ダーラント:妻屋秀和/ゼンタ:マルティーナ・ヴェルシェンバッハ(同前)→田崎尚美/エリック:ラディスラフ・エルグル(同前)→城 宏憲/マリー:山下牧子/舵手:鈴木 准/オランダ人:エギルス・シリンス(スィリンシュ)(同前)→河野哲平/合唱指揮:三澤洋史/合唱:新国立劇場合唱団/管弦楽:東京交響楽団/協力:日本ワーグナー協会 @新国立劇場オペラハウス

7日(月)19:00 新国立劇場オペラ《愛の妙薬》全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉令和2年度 文化庁 子供文化芸術活動支援事業/作曲:ガエターノ・ドニゼッティ指揮:フランチェスコ・ランツィロッタ(入国制限措置等の諸般の事情により)ガエターノ・デスピノーサ/演出:チェーザレ・リエヴィ/美術:ルイジ・ペーレゴ/衣裳:マリーナ・ルクサルド/照明:立田雄士/アディーナ:ジェシカ・アゾーディ(同前)→砂川涼子/ネモリーノ:アン・フランシスコ・ガテル(同前)→中井亮一/ベルコーレ:ブルーノ・タッディア(同前)→大西宇宙/ドゥルカマーラ:ロベルト・デ・カンディア(同前)→久保田真澄/ジャンネッタ:九嶋香奈枝/合唱:新国立劇場合唱団/管弦楽:東京交響楽団

11日(金・祝)都響 プロムナードコンサート #395 シベリウス組曲《カレリア》op.11シベリウス交響曲5 変ホ長調 op.82指揮:オスモ・ヴァンスカ(「オミクロン株に対する水際措置の強化」に伴う外国人の新規入国停止措置が2月末まで延長となったため指揮者・曲目を変更)指揮:ジョン・アクセルロッド/チャイコフスキー:歌劇『エフゲニー・オネーギン』より「ポロネーズ」/グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 op.82/チャイコフスキー交響曲第4番 ヘ短調 op.36/ヴァイオリン:富田 心サントリーホール

11日(金・祝)N響 #1952 定演〈池袋Cプロ〉R. シュトラウスバレエ音楽《ヨセフの伝説》から交響的断章/R. シュトラウス:《アルプス交響曲》指揮:パーヴォ・ヤルヴィ(「オミクロン株に対する水際措置の強化」により外国人の新規入国停止措置のため曲目および指揮者を変更)ストラヴィンスキー組曲《プルチネッラ》/ストラヴィンスキーバレエ音楽ペトルーシカ》(1947年版)指揮:鈴木雅明 @東京芸術劇場コンサートホール

16日(水)19:00 新国立劇場演劇「こつこつプロジェクト -ディベロップメント- 第二期」3rd試演会『テーバイ』原作:ソフォクレス(『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』『アンティゴネ』より)構成・演出:船岩祐太/出演:植本純米、加藤理恵木戸邑弥、國松 卓、小山あずさ、成田 浬、西村壮悟、藤波瞬平 @新国立小劇場

17日(木)19:00 新国立劇場演劇「こつこつプロジェクト -ディベロップメント- 第二期」3rd試演会『夜の道づれ』作:三好十郎/演出:柳沼昭徳/出演:石橋徹郎、日髙啓介(理由は不明だが当初の記載から変更)→チョウ ヨンホ、林田航平、峰 一作、滝沢花野 @新国立小劇場

19日(土)14:00 新国立劇場バレエ団「吉田都セレクション」ファン・マーネン『ファイヴ・タンゴ』新制作/フォーサイス『精確さによる目眩くスリル』新制作(オミクロン株への水際対策強化により公演準備を万全に進めることが困難となり演目変更)新国立劇場バレエ団Choreographic Group作品より〉『Coppélia Spiritoso』振付:木村優/音楽:レオ・ドリーブ 他/出演:木村優子木村優里|『人魚姫』振付:木下嘉人/音楽:マイケル・ジアッチーノ/出演:米沢 唯、渡邊峻郁|『Passacaglia』振付:木下嘉人/音楽:ハインリヒ・ビーバー/出演:小野絢子、福岡雄大、五月女遥、木下嘉人(以上 録音音源での上演)||『アラジン』より「序曲」「砂漠への旅」「財宝の洞窟」振付:デヴィッド・ビントレー/音楽:カール・デイヴィス/美術:ディック・バード/衣裳:スー・ブレイン/照明:マーク・ジョナサン/[キャスト]アラジン:奥村康祐/ダイヤモンド:米沢 唯サファイア:柴山紗帆/ルビー:奥田花純、渡邊峻郁||『こうもり』より「グラン・カフェ」振付:ローラン・プティ/音楽:ヨハン・シュトラウスⅡ世/編曲:ダグラス・ガムレイ/美術:ジャン=ミッシェル・ウィルモット/衣裳:ルイザ・スピナテッリ/照明:マリオン・ユーレット、パトリス・ルシュヴァリエ/[キャスト]ベラ:小野絢子/ヨハン:福岡雄大/ウルリック:福田圭吾/指揮:冨田実里/管弦楽:東京交響楽団新国立劇場オペラハウス「公演関係者に…2名の陽性反応者が確認され…公演準備が整わないため」全公演が中止となった

20日(日)15:00 BCJ #146 定演 A. モーツァルト《戴冠ミサ曲 K 317》《第一戒律の責務 K 35》指揮:鈴木優人/ソプラノ:中江 早希 (K 317, K 35) 松井 亜希(K 35) 澤江衣里(K 35)/アルト:青木 洋也 (K 317)/テノール:櫻田 亮 (K 317, K 35) 谷口洋介 (K 35)/バス:加耒 徹 (K 317)/合唱・管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン @東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

【21日(月)15:00メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」国立新美術館 企画展示室1E】

21日(月)18:00 シアターコモンズ’22『妖精の問題 デラックス』作・演出:市原佐都子(Q)出演:[第一部]朝倉千恵子・筒井茄奈子[第二部]大石英史・キキ花香[第三部]廣川真菜美・富名腰拓哉・緑ファンタ/音楽:額田大志(東京塩麹/ヌトミック)/演奏:秋元修、石垣陽菜、高橋佑成、額田大志/舞台美術:dot architects/衣裳:南野詩恵/照明:魚森理恵/音響:稲荷森健/映像:小西小多郎/舞台監督:川村剛史(ロームシアター京都)/ドラマトゥルク:木村覚/演出助手:山田航大/制作助手:寺澤聖香/制作協力:山里真紀子(Q) @リーブラホール

23日(水・祝)14:00 新国立劇場バレエ団「吉田都セレクション」新国立劇場オペラハウス

23日(水・祝)18:00 名取事務所 公演『ペーター・ストックマン—『人民の敵』より』作:イプセン/翻訳:毛利三彌/翻案・演出: 瀬戸山美咲/出演:西尾友樹、森尾 舞、山口眞司、野坂 弘、水野小論、小林亜紀子、小泉将臣 @吉祥寺シアター

24日(木)13:00 シアターコモンズ’22 演劇的インスタレーション『吊り狂い』上演言語:英語(日本語字幕つき)/コンセプト&演出&脚本:モニラ・アルカディリ+ラエド・ヤシンロボットシステム開発:菅野 創+ピート・シュミット/音楽:ラエド・ヤシン/ヘッドペインティング:サイード・バアルバキ/企画・製作:ベルリン芸術祭・70周年記念プログラム「Wild Times, Planetary Motions」(キュレーション:ナターシャ・ギンワラ、イェルーン・フェルステール)東京公演 舞台協力:株式会社ステージワークURAK/協力:ゲーテ・インスティトゥート東京 @SHIBAURA HOUSE 5F

27日(日)13:00 シアターコモンズ’22 レクチャーパフォーマンス『おばけ東京のためのインデックス第1章』構成・演出・出演:佐藤朋子 @SHIBAURA HOUSE 5F