すみだトリフォニーホール開館20周年記念 すみだ平和祈念コンサート2018

今日「すみだ平和祈念コンサート2018」を聴いてきた(3月10日 18:00/すみだトリフォニーホール)。
取り急ぎ、簡単にメモする。

指揮:上岡敏之
管弦楽新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔 文洙


ドヴォルザーク作曲 ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品 B. 108
ヴァイオリン:大江 馨

初めて聴いたコンチェルト。コンチェルトとしては楽章間の変化にやや乏しい気もしたが、面白かった。ヴァイオリンの大江馨は初めて聴いたが、素晴らしい。音が好いし、技術も申し分ない。音楽家としての質の高さは半端ではない。
アンコールはバッハの無伴奏パルティータ第2番の「サラバンド」。冒頭のフレーズだけでグッときた。なんと澄み切った音! 73年前のこの日に空襲で亡くなった10万もの人々。その鎮魂と平和への祈り。ほんとうに深く澄み切った祈りの音楽だった。演奏後の万雷の拍手にも「自分はどうでもいいんです」といわんばかりの態度。仙台出身で、「震災後にはがれき処理のボランティア」や「数々の復興支援コンサートにも、積極的に参加してきた」らしい(プログラム)。なるほど。実に頼もしい芸術家だ。

ブラームス交響曲第1番 ハ短調 作品68

第1楽章は序章の “バン・バン・バン” と打ちつけるティンパニーの動機のあと、例えば弦バスのそれもかなり強調される。序章後のテンポは速め。悲劇的な感触と同時に瑞々しさも感じさせる。上岡は要所で目一杯のアタック。エネルギーの迸り。だが、新鮮さも。・・・4楽章もやや速め。ホルンとフルートのアルプスを想起させるフレーズはこのうえなく美しい。直後の例のテーマは、待ってましたと待ち受ける聞き手(実は聞いていない?)に肩透かしを食らわせる。出しゃばったところなど微塵もない、きわめて慎ましく奏でられる。その分、なんときれいに響くことか。コーダのトランペットも突出した咆吼ではなく他の楽器群と和して歌わせる。素晴らしい演奏だった。今回は指揮者のエネルギーがオケにしっかり伝わり、それが奏者の身体と楽器から客席にも伝播した。聴衆も定演とは違い、ノイズはほとんどなく、フライング拍手もなかった。
アンコールはなんと第9の第3楽章! これが意外に本コンサートにフィットしていた。テーマを各パートが変奏して次々に受け渡す。その際、互いに耳を澄まし、よく聴き合いながらハーモニーを作り出していく。グッときた。かなりきた。「平和」とは、ただ祈るだけでなく、そうやって作り出すのだと、奏者たちが実演して見せた。さすが上岡マエストロ。中身の濃い「平和祈念コンサート」だった。