新日本フィル #556 サントリー定演/上岡敏之音楽監督就任前/マーラー「巨人」他

上岡敏之新日本フィル音楽監督に就任後、初のコンサートを聴いた(9月9日)。その感想を記す前に、上岡が指揮した3月定演の短い走り書きを以下に転記する。
上岡敏之音楽監督就任前の最後の演奏会(3月16日 19:15/サントリーホール)。コンサートマスターは崔文洙。
前半はシューベルト交響曲第1番 ニ長調 D82。
力みがなく、よく歌う演奏。初めて聴く曲だが、音楽の喜びを感じる。とても自然。終曲後、指揮者は弦バスから立たせた。次に第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第1ヴァイオリン・・・。音楽が主題を奏する楽器だけで成り立つわけではないことを示したかったのか。
20分休憩後は、マーラー交響曲第1番 ニ長調「巨人」。
面白い。弦楽器のグリッサンドは、すべらせるプロセスを十分味わわせる聴いたことのないようなニュアンス。・・・ヴァイオリン群への挑発するような指揮振り。弱音は本当に弱音。みな耳を澄まして聴き入る。弾むような律動は聴衆の身体をも弾ませる。が、次第に沈むような感触も。起伏の激しい、まさに躁鬱病のような音楽が現出した。ラストは肥大した自我の昂揚でフィニッシュ。ブラボーの嵐。ただし、上岡の望む音が出ているのかは不明。もっと中身の詰まった音質が欲しいか。