「こつこつプロジェクト-ディベロップメント-第二期」3rd 試演会の『テーバイ』を観た(2月16日 水曜 19:00/新国立小劇場)。抽選のため席は選べず最前列の左寄り。近い席は苦手だが面白かった。簡単にメモする。
ソフォクレスの『オイディプス王』(前428-25)、『コロノスのオイディプス』(前401)、『アンティゴネ』(前441-42)はそれぞれ独立した悲劇だが、この三作を現代化(等身大化)し、合理的に繋ぎ、2時間にうまくまとめている。衣裳は現代服で、セットは机、椅子、乳母車、車椅子など。かつてのシェイクスピア・シアター(ジャンジャン)やイングリッシュ・シェイクスピア・カンパニーの『薔薇戦争』(ボグダノフ&ペニントン)と似た感触があった。アリストテレスが原作から読み取った「カタルシス」はない。むしろ、権力者(クレオン)のあり方にフォーカスしていた。〝平凡な人間がいかにして権力者(独裁者)となるのか〟——とてもアクチュアルな問題だ。冒頭で、国を治める仕事に向いていないと呟くクレオンはアヌイ版『アンチゴーヌ』のそれに近い。その彼が、様々な契機や状況を経ることで自分が統治者として神々に選ばれたと思い込み、いつの間にか独裁者になる。幕切れで、アテナイ王テセウスからの使者がクレオンを訪ね、放置されたアルゴス兵士の亡骸を埋葬してほしい旨のメッセージを伝える。アルゴスの女(兵士の妻)たちがテセウスにそう嘆願したと。この遣り取りで、テセウスが神々ではなく、アテナイの民に選ばれた王であることが明らかになる*1。この挿話は、両者の統治者としての対照的なあり方を際立たせた。その後、クレオンが統治者としての所信原稿を練り上げ、それを民衆たち(死んだアンティゴネらも含まれる)に演説する印象的な場面で幕となる。セットはシンプルで演出も悪くない。ただ、要所でいわゆる〝聖歌〟のようなカタルシスっぽい合唱曲が流れる度に、少し違和感を覚えた。