北とぴあ国際音楽祭2015 オペラ《妖精の女王》

オペラ《妖精の女王》の初日を観た(12月11日 18:00/北とぴあ さくらホール)。
遅ればせながら簡単にメモする。

作曲:ヘンリー・パーセル(1659-95) 
原作:ウィリアム・シェイクスピア『夏の夜の夢』(c.1594-96)
指揮:寺神戸 亮  
演出:宮城 聰(SPAC)
 
歌手: エマ・カークビー(ソプラノ)、広瀬 奈緒(ソプラノ)、波多野 睦美(メゾソプラノ)、中嶋 俊晴(カウンターテナー)、ケヴィン・スケルトン(テノール)、大山 大輔(バリトン)ほか


俳優: 劇団SPAC
渡辺 敬彦(公爵)/大高 浩一(イージアス)/泉 陽二(ライサンダー)/大道無門 優也(ディミトリアス)/保 可南(ハーミア)/本多 麻紀(ヘレナ)/貴島 豪(オベロン)/たきい みき(タイテーニア)/牧山 祐大(パック)/小長谷 勝彦(機屋のボトム)/加藤 幸夫(大工のクインス)/武石 守正(指物師のスナッグ)/春日井 一平(ふいごなおしのフルート)/吉見 亮(鋳掛屋のスナウト)/若宮 羊市(仕立屋のスタヴリング)


合唱・管弦楽: レ・ボレアード(オリジナル楽器使用)


主催:(公財)北区文化振興財団
共催:東京都北区
協力:SPAC-静岡県舞台芸術センター
後援:ブリティッシュ・カウンシル
助成:平成27年文化庁 文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業/(公財)三菱UFJ信託芸術文化財団/公益財団法人 野村財団/(公財)花王芸術・科学財団/公益財団法人 朝日新聞文化財団/グレイトブリテン・ササカワ財団

いつものように舞台上に古楽オケが並ぶ。そのやや奥に、下の舞台間口とほぼ同じ幅の上段舞台が設置され、一階にオケ、二階に演技場という二層構造(オケが陣取るフロアの手前部分等もアクション場)である。上段は横幅一杯に手摺りがあり、そこに蔓の茎が巻き付けられ、パーティの部屋飾りに見える。
上段の紗幕が上がると、先日観たフェスティバル・トーキョーによるSPACの『真夏の夜の夢』(11月2日/にしすがも創造舎)のセットがほぼそのまま現れた。歌手たちも同じコスチューム。F/Tで見た芝居が、少し違和感を弱めて再現された印象。アジアを感じさせるジャングルで、妖精たちが浮遊し、恋人たちが疾走する。ただし、役者たちの芝居とオケが奏する音楽は合っているのか。宮城聡が野田秀樹の潤色版『真夏』を舞台化した当初のコンセプト(音楽:棚川寛子)と、パーセルの音楽は融合できるのか。前半は、俳優たちのギャグを含んだ勢いのある快活さとバロック音楽の美を追究するあり方に齟齬を感じた。三年前の『病は気から』ではかなりうまくかみ合っていた記憶があるのだが。
後半は、慣れてきたせいか悪くないと感じる。ラストの結婚式。歌手たちは日本人は洋服、外国人ゲストは和服(男は紋付き袴、女も紋付き)で登場。これがとてもよかった。互いに異なる文化を尊重(前者は「尊重」を超えた習慣化だが)。エマ・カークビーも前半の歌唱は衰えを隠せずどうなるかと思ったが、後半の「嘆きの歌」などはとてもよかった。歌をとりまく文脈の作り方も秀逸で、アドリブで挿入したかのよう。客もよく反応するようになった。指揮の寺神戸亮は時折ソロヴァイオリンの繊細な調べて楽しませてくれた。歌手ではソプラノの広瀬奈緒メゾソプラノ波多野睦美らが質の高い歌唱を聴かせた。男声陣は、ケヴィン・スケルトンのダンサーのような優美な動きをはじめ、中嶋俊晴や大山大輔の奇抜な演技など、歌唱よりも芝居等で魅せた。俳優では、F/Tのときもそうだが、ライサンダー役の泉陽二が素晴らしい。ヘレナ役の本多麻紀も(よい意味で)変な味がある。もちろんタイテーニアのたきいみきやオベロンの城島豪は存在感を示したし、パックの牧山祐大は人一倍汗をかいた。
来年の演目はモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』らしい。楽しみだ。