新日本フィル定演#608 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉「リクエストコンサート」才能!

新日本フィルの定演で「リクエストコンサート」を聴いた(19日 19:00/すみだトリフォニーホール)。

指揮:上岡敏之コンサートマスター:豊嶋泰嗣 

ビゼー(1838):交響曲 ハ長調

なんと快活で瑞々しい演奏だろう。まさに音符が飛び跳ねているように感じた。初めて聴いたのは、もちろんバランシン振付のバレエ『シンフォニーインC』で。ゆえに、聞けば必ずダンサーたちの動きが目に浮かぶ。上岡も跳ねていた? アダージョはやや速めだが、そのぶんオーボエソロの装飾的音型がコブシのようにも聞こえた。面白い(ソロは東フィルの加瀬氏)。フィナーレでは上岡お得意のめくるめく音楽的陶酔に包まれた! バランシンといえば、新日本フィルニューヨーク・シティ・バレエが来日すると、必ずオーチャードホールのピットに入っていた(指揮はバレエ団の音楽監督だが)。上岡敏之は弾むようなダンス音楽はお手のもの。上岡指揮の新日本フィル新国立劇場バレエ団の舞台を見てみたい。ぜひ!

サン=サーンス(1835-1921):ピアノ協奏曲第2番 ト短調 op. 22

ピアノ:マリアム・バタシヴィリ(1993- )

マリアム・バタシヴィリはとんでもないピアニストだ! かなり小柄でまだ20代半ばのはずだが(黒のパンツスーツ姿は就活中の女子学生のよう)、テクニックとパトスが半端ではない。ちょっとヴァイオリニストのコパチンスカヤみたいだ。そこまで〝野蛮〟じゃないけど、共演者との〝気〟のやりとりを燃料にどんどん熱量が上がっていく。指揮台の上岡が振り向くとバタシヴィリも彼を見る。見交わす二人の顔はかなり近い! ラブシーンみたいでドキドキした。1楽章の深い情念。2楽章の軽み。3楽章の圧倒的な名人芸。が、バタシヴィリはどんなに速く激しく弾いても音はつねに美しい。天才的! 上岡とは馬が合う感じ。アンコールはリストのパガニーニによる大練習曲集 第4番。超絶技巧のアルペジオを難なく弾きこなした。

20分休憩後の後半は二曲ともバレエ音楽。簡単にメモする。

ラヴェル(1875-1937)作曲『マ・メール・ロワ組曲はじつにカラフルで、多様な質感が楽しい。同じくラヴェルの『ダフニスとクロエ』第2組曲では、流麗なフルートソロが見事! ソロはオーボエと同じく東フィルの神田氏。(ホルンを含め管のトップ三名はエキストラだが)新日本フィルはここまで色彩豊かで美味しいサウンドになったのかと、ちょっと感慨深い。アンコールはドビュッシー管弦楽のための『映像』から「イベリア」より第三曲「祭りの日の朝」。

今回の「リクエスト・コンサート」はフランス音楽が取り上げられたが、隠し味のバレエ的な躍動感が全曲を貫いていた。バタシヴィリのみならず、指揮者やオケのソロを含め、才能っていいなあ、とつくづく思った。