アメリカン・バレエ・シアター「オール・スター・ガラ」Aプロ/オール・スター?

ABTの「オール・スター・ガラ」Aプロを観た(2月25日 18:30/BUNKAMURA オーチャードホール)。
座席は3F左バルコニー後方。2・3階は空席がかなり目立つ。1階にキャロライン・ケネディ駐日米国大使の姿が見えた。
ごく簡単にメモする。

《テーマとヴァリエーション》 [23分]
振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー組曲第3番より)
舞台装置・衣装:ザック・ブラウン
指揮:チャールズ・バーカー
イザベラ・ボイルストン/ダニール・シムキン
ミスティ・コープランド,メラニー・ハムリック,ルシアーナ・パリス,リーヤン・アンダーウッド,グラント・デロング,ダニエル・マンタイ,ジャレッド・マシューズ,クレイグ・サルステイン,マリアン・バトラー,ニコラ・カリー,ツォンジン・ファン,ニコール・グラニエロ,ローレン・ポスト,カレン・アップホフ,ルシアーナ・ヴォルトリーニ,ジェニファーウェイレン,アレクセイ・アグーディン,ケネス・イースター,トーマス・フォースター,パトリック・オーグル,ルイス・リバゴルダ,アロン・スコット,エリック・タム,ロマン・ズービン

全体的にゆるいというか、ローカルな感じ。赤系の衣裳のせい? 音符が飛び跳ねるようなバランシンらしさはあまりない。シムキンはさすがだが。オケは華麗さをもっと。

《ジゼル》第2幕よりパ・ド・ドゥ [9分]
振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー、マリウス・プティパ/舞台指導:ケヴィン・マッケンジー
台本:テオフィル・ゴーティエハインリッヒ・ハイネの作品に基づく)/音楽:アドルフ・アダン/編曲:ジョン・ランチベリー
指揮:デイヴィッド・ラマーシュ

加治屋百合子/エルマン・コルネホ

加治屋は少し作為的に見える。コルネホはターボエンジンの持ち主。ヴィオラのソロが素晴らしい。

《マノン》第2幕よりマノンのソロ [4分]
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ/編曲:マーティン・イエーツ/衣装:ピーター・ファーマー
指揮:デイヴィッド・ラマーシュ

ナターリヤ・オーシポワ
コリー・スターンズ/ロマン・ズービン

当初予定の《ドン・キホーテ》パ・ド・ドゥ(ナターリヤ・オーシポワ&イワン・ワシーリエフ)は、ワシーリエフの体調不良で来日不可となり、上記の演目に変更。オーシポワのソロは悪くない(ただしマノンらしくはない)が、そもそもガラでやるピースではない。スターンズとズービンはただ歩くだけでちょっと気の毒。

《眠れる森の美女》第3幕よりパ・ド・ドゥ [10分]
原振付:マリウス・プティパ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/衣装:ウィラ・キム
指揮: デイヴィッド・ラマーシュ

ヒー・セオ/アレクサンドル・ハムーディ

セオは気品があり、よいダンサーだと思うが、踊りでプラスアルファが出るのはこれからか。ハムーディは長身で姿形は恵まれているが、踊りには何もない。

《椿姫》第3幕より〈黒〉のパ・ド・ドゥ [12分]
振付:ジョン・ノイマイヤー/原作:アレクサンドル・デュマ・フィス/舞台指導:ケヴィン・ヘイゲン、ヴィクター・ヒューズ
音楽:フレデリック・ショパン/衣装:ユルゲン・ローゼ
ピアノ: エドワード・ニーマン

ジュリー・ケント/ロベルト・ボッレ

ボッレは上背があるし高い技術もノーブル(善美)さも備えている。ケントにもっと潤いとパトスがあれば、爆発したかも。ピアノのニーマンはバレエの伴奏として模範的。やや健康的なショパンではあったが。

≪ピアノ・コンチェルト第1番≫ [23分]
振付:アレクセイ・ラトマンスキー/音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ(ピアノ協奏曲第1番ハ短調、作品35より)
衣装:ケソ・デッカー/舞台装置:ジョージ・ツィーピン/照明デザイン:ジェニファー・ティプトン/照明:ブラッド・フィールズ
管弦楽東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

ジリアン・マーフィー/スカイラー・ブラント
コリー・スターンズ/ゲイブ・ストーン・シェイヤー
ツォンジン・ファン,コートニー・ラヴァイン,イサドラ・ロヨラジェシカ・サーンド,リーヤン・アンダーウッド,キャサリン・ウィリアムズ
アレクセイ・アグーディン,グラント・デロング,ケネス・イースター,ダニエル・マンタイ,パトリック・オーグル,ホセ・セバスチャン

ピアノ: バーバラ・ビラック
トランペット:上田仁
指揮: チャールズ・バーカー

面白い作品。なんといってもジリアン・マーフィーの踊りと存在感。今回、全幕での踊りを見れないのが残念。ピアノもさることながら、トランペットの上田仁が素晴らしかった。この曲は、ピアノとトランペットのダブルコンチェルトといってもよいくらい。ところで、本作が始まるとき、ケネディ大使は座席に居なかった。都合で帰ったのか、それともショスタコが嫌いなのか。
とても「オール・スター・ガラ」といえる舞台ではなかった。とにかくスターが居ない(居なくなった)。「ガラ」で〝がらがら〟なのも頷ける。ワシーリエフが来ていれば多少は格好がついたかも知れない。ヴィシニョーワやゴメスは『マノン』に集中したかったのだろう。考えてみれば、かつてはフェリやアナニアシヴィリ、カレーニョやマラーホフやコレーラらが居たのだ。ABTは大リーグでいえば、ヤンキーズみたいなものだ。余所(外国)で育った大物スターを寄せ集めて興行を打つ。たしかに豪華で見応えはあるが、自前で育てることをしないため、あとでつけが回ってくる。今回のガラを見ていてそう感じた。