4月のフィールドワーク予定 2020/コロナと劇場【さらにさらに中止が】【振替←中止】【加筆】

劇場文化の成立条件は、実演者と観客のからだが「いま、ここ」に現前するという一事につきる。両者のあいだで絶えず行き来する精神的なエネルギーの交換(目にみえない糸を通じての感情の交流)によってこそ、舞台は命をもつからだ(スタニスラフスキー)。新型コロナウィルスの感染が広がったいま、人の身体が同じ時空に存在することで感染リスクを生む。舞台公演が続々と中止に追い込まれる所以である。実演芸術の命が生まれる条件と疫病の感染リスクが表裏だというのは、なんともやるせない。一方で、この事実は、ペストを演劇(劇場)の分身として論じたアントナン・アルトーの認識を想起させる。社会のこれほど完全な崩壊、有機体のこのような混乱……。ペストは眠っているイメージの数々、潜在的な混乱を取りあげて、それを一気に最も極端な行動にまで持っていく。そして演劇もまた、行動を取りあげて、それを極限にまで追いつめる。ペストと同様に演劇は、あるものとないものとの間を、可能なものの潜在能力と物質化された自然のなかに存在するものとの間を、再び鎖で結びつける。……演劇は、ペスト同様……数々の葛藤を明るみに出し、いろいろな力を解き放ち、種々の可能性に火を付ける。そして、もし、その可能性や力が陰惨であったとしても、それはペストや演劇の罪ではなく、生の罪なのである》(『演劇とその分身』安藤信也訳)。疫病と演劇(劇場文化)と生と不可分な関係……。コロナ関連のニュースが飛び交う昨今、アルトーに触発されたという津野海太郎の『ペストと劇場』(1980)を無性に読み返したくなった。すでに中止が決まった公演も記録のため記す(3月18日)。

【さらに中止の告知が続き、いま現在(3月27日)、残った公演はBCJの《マタイ受難曲》(4/10)、新日本フィルのトリフォニー定演(4/17)そして新国立オペラの《ホフマン物語》の三つだけ。新国立は海外アーティストが来日できないからまず無理だろうし、新日本フィルもこれまでの流れから難しそう。一縷の望みはBCJだ。危機的な状況化で《マタイ》をやるのは大変意義深い。万全の対策を講じたうえで、ぜひ開催してほしい。】

【新国立オペラ《ホフマン物語》は予想通り中止。BCJの《マタイ》は予定のコンチェルティストらが海外ゲストなのでどうするかと思っていたが、中止ではなく8月3日に延期。とりあえずよかった。(3月30日)】

新国立劇場は緊急事態宣言に伴い中止期間を5月10日まで延長。したがって、演劇『反応工程』と、5月2日からのバレエ『ドン・キホーテ』6公演もすべて中止。新日本フィルからの発表はないが、まず無理だろう。(4月7日)】

【やはり17日の新日フィル定演も中止に。これで今月予定していた9公演が全滅。文化芸術自体の壊滅を防ぐには救済措置が必須。だが、首相は「個別救済」はしないというし、フリーランスを含む個人事業者への給付も条件が厳しく手続きが煩雑でスピード感もない。欧米での手厚い救済がリアルタイムで聞こえてくるだけに、失望どころか怒りすら湧く。ドイツでは文化大臣が「文化は良き時代においてのみ享受される贅沢品などではない」と明言し、フリーランスの芸術家に「速やかな、官僚的ではない救済策をとる」と約束した(モニカ・グリュッタース)。そもそも日本には文化省が存在しない(文化庁長官と文部科学大臣は居るが…)。生命より経済、文化芸術より経済。何が何でも経済/金。現政権を、この国を支配する価値観はこれだ。(4月8日)】

2日(木)15:00 東京春祭 ワーグナー 楽劇《トリスタンとイゾルデ》(全3幕) 指揮:マレク・ヤノフスキ/トリスタン(テノール):アンドレアス・シャーガー/マルケ王(バス):アイン・アンガー/イゾルデ(ソプラノ):ペトラ・ラング/クルヴェナール(バリトン):マルクス・アイヒェ/メロート(バリトン):甲斐栄次郎・ブランゲーネ(メゾ・ソプラノ):エレーナ・ツィトコーワ/牧童、若い水夫の声(テノール):菅野 敦/舵取り(バリトン):高田智士/管弦楽NHK交響楽団/合唱:東京オペラシンガーズ/合唱指揮:トーマス・ラング、宮松重紀/音楽コーチ:トーマス・ラウスマン/映像:中野一幸 @東京文化会館

4日(土)19:00 青年団プロデュース公演/尼崎市第7回「近松賞」受賞作品/座・高円寺 春の劇場01/日本劇作家協会プログラム『馬留徳三郎の一日』作:髙山さなえ/演出:平田オリザ/出演:田村勝彦(文学座)羽場睦子(フリー)猪股俊明(フリー)山内健司 山村崇子 能島瑞穂 海津 忠 折原アキラ/声の出演:永井秀樹/舞台美術:杉山 至/照明:三嶋聖子/音響:櫻内憧海/舞台監督:中西隆雄/演出助手:野宮有姫/衣裳:正金 彩/衣裳補佐:原田つむぎ/フライヤーデザイン:京(central p.p.)/制作:有上麻衣/制作助手:河野 遥 @座・高円寺

6日(月)19:00〈ウィーンプレミアコンサート〉J.S.バッハ管弦楽組曲 第2番 ロ短調 BWV1067(フルート独奏:エルヴィン・クランバウアー)/ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 Op.37(ピアノ独奏:小菅 優)/J.S.バッハオーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調BWV1060(オーボエ独奏:ベルンハルト・ハインリヒス、ヴァイオリン独奏:フォルクハルト・シュトイデ)/ベートーヴェン交響曲 第5番 ハ短調「運命」 Op.67//管弦楽トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン/芸術監督・コンサートマスター:フォルクハルト・シュトイデ(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター)/[ソリスト]ヴァイオリン:フォルクハルト・シュトイデ/フルート:エルヴィン・クランバウアー(ウィーン交響楽団ソロフルート奏者)/オーボエ:ベルンハルト・ハインリヒス(チューリッヒ歌劇場管弦楽団ソロオーボエ奏者)/ピアノ:小菅 優 @東京オペラシティコンサートホール

7日(火)17:30 新国立劇場オペラ ヘンデルジュリオ・チェーザレ》全3幕[イタリア語上演/日本語及び英語字幕付]指揮:リナルド・アレッサンドリーニ/演出・衣裳:ロラン・ペリー/美術:シャンタル・トマ/照明:ジョエル・アダム/ドラマトゥルク:アガテ・メリナン/演出補:ローリー・フェルドマン/舞台監督:大仁田雅彦/ジュリオ・チェーザレ:アイタージュ・シュカリザーダ/クーリオ:駒田敏章/コルネーリア:加納悦子/セスト:金子美香/クレオパトラ:森谷真理(ミア・パーションはキャンセル)/トロメーオ:藤木大地/アキッラ:ヴィタリ・ユシュマノフ/ニレーノ:村松稔之/合唱指揮:冨平恭平/合唱:新国立劇場合唱団・管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/芸術監督:大野和士 @新国立劇場オペラハウス

10日(金)18:30 BCJ #137 定演 J.S.バッハマタイ受難曲》BWV244 指揮:鈴木雅明エヴァンゲリスト:ジェイムズ・ギルクリスト/ソプラノ:ジョアン・ラン、松井亜希/アルト:ジョン・ミンホ、青木洋也/テノール櫻田亮/バス:ベンジャミン・ベヴァン、加耒徹/合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン @オペラシティコンサートホール←8月3日(月)に延期

11日(土)13:00 新国立劇場 演劇『反応行程』作:宮本 研/演出:千葉哲也/美術:伊藤雅子/照明:中川隆一/音響:藤平美保子/衣裳:中村洋一/ヘアメイク:高村マドカ/方言指導下:川江那/演出助手:渡邊千穂/舞台監督:齋藤英明/出演:天野はな 有福正志 神農直隆 河原翔太 久保田響介 清水 優 神保良介 高橋ひろし 田尻咲良 内藤栄一 奈良原大泰 平尾 仁 八頭司悠友 若杉宏二 @新国立小劇場←払い戻しか14日以降へ振り替え

12日(日)15:00 東京春祭 ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》指揮:マレク・ヤノフスキ/ソプラノ:イヴォナ・ソボトカ/メゾ・ソプラノ:エリーザベト・クールマン・テノールクリスティアン・エルスナー・バス:アイン・アンガー/管弦楽東京都交響楽団・合唱:東京オペラシンガーズ・合唱指揮:トーマス・ラング/合唱指揮:宮松重紀 @東京文化会館

【14日(火)14:00 新国立劇場 演劇『反応行程』作:宮本 研/演出:千葉哲也/美術:伊藤雅子/照明:中川隆一/音響:藤平美保子/衣裳:中村洋一/ヘアメイク:高村マドカ/方言指導下:川江那/演出助手:渡邊千穂/舞台監督:齋藤英明/出演:天野はな 有福正志 神農直隆 河原翔太 久保田響介 清水 優 神保良介 高橋ひろし 田尻咲良 内藤栄一 奈良原大泰 平尾 仁 八頭司悠友 若杉宏二 @新国立小劇場】←11日から振り替えた←緊急事態宣言に伴い中止

17日(金)19:15 新日本フィル定演 #618 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉レオポルド・ヴァン・デア・パルス:交響曲第1番 嬰ヘ短調 op. 4/ラフマニノフ交響曲第2番 ホ短調 op. 27(ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 op. 30から変更)/指揮:上岡敏之 @すみだトリフォニーホール

19日(日)14:00 新国立劇場オペラ オッフェンバックホフマン物語》全5幕〈フランス語上演/日本語及び英語字幕付〉指揮:マルコ・レトーニャ/演出・美術・照明:フィリップ・アルロー/衣裳:アンドレア・ウーマン/振付:上田 遙/[キャスト]ホフマン:レオナルド・カパルボニ/クラウス+ミューズ:小林由佳オランピア:安井陽子/アントニア:木下美穂子/ジュリエッタ:横山恵子/リンドルフ+コッペリウス+ミラクル博士+ダペルトゥット:カイル・ケテルセン/アンドレ+コシュニーユ+フランツ+ピティキナッチョ:青地英幸/ルーテル+クレスペル:大久保光哉/スパランツァーニ:晴 雅彦/シュレーミル:須藤慎吾/アントニアの母の声+ステッラ:谷口睦美/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/合唱:新国立劇場合唱団 @新国立劇場オペラハウス