新国立劇場オペラ研修所《ドン・パスクワーレ / こうもり(抜粋上演)》

上記の試演会の初日を聴いた(7月18日 14:00/新国立中劇場)。今回は都合で初日のみ。もう二週間経ったが簡単にメモする。

指揮:河原忠之(オペラ研修所音楽主任講師)
演出:粟國淳(オペラ研修所演出主任講師)
ピアノ:岩渕慶子/木下志寿子
ダンス指導:西川貴子

出演:新国立劇場オペラ研修所 第16期生、第17期生、第18期生
ゲスト:伊藤達人(14期修了)

《ドン・パスクワーレ》(初演1843年パリ)
【18(土)/19(日)】
ドン・パスクワーレ:松中 哲平(16期)/氷見 健一郎(18期)
マラテスタ:小林 啓倫(16期)/ 大野 浩司(17期)
エルネスト:伊藤 達人(14期修了)/水野 秀樹(17期)
ノリーナ:種谷 典子(16期)/城村 紗智(17期)

眠かった。タイトルロールの松中はあまり力まないタイプ。ただ、時折強い声を出そうとすると音程がうわずり気味。マラテスタの小林ほどではないが、彼に引きずられたのかも知れない。エルネストの伊藤は演技も歌唱もよいのだが、今回は独特の音色が少し徒になる感じも。ノリーナの種谷は声質の熟成度不足がこれまで以上に気になった。音程の取り方がストライクに聞こえないのもそのためか。後半、庭のベンチでノリーナとエルネストが歌う弱音のデュエットはハーモニー(音程)がいまひとつ。ピアノ伴奏だと音が取りにくいのか。変な話、指揮とピアノには音楽の喜びを感じた。

《こうもり》(初演1874年ウィーン)
【18(土)/19(日)】
アイゼンシュタイン:岸浪 愛学(16期)
ロザリンデ:飯塚 茉莉子(16期)/西尾 友香理(18期)
フランク:松中 哲平(16期)/ 氷見 健一郎(18期)
オルロフスキー公爵:高橋 紫乃(17期)
アルフレード:伊藤 達人(14期修了)/水野 秀樹(17期)
ファルケ博士:小林 啓倫(16期)/大野 浩司(17期)
アデーレ:竹村 真実(17期)/砂田 愛梨(18期)
イーダ:宮地 江奈(18期)/吉田 美咲子(18期)

高橋紫乃のオルロフスキー公爵が楽しみで来たのだが、期待どおり素晴らしい。アリアの造形力、芝居のうまさ。ドイツ語もよい。今回は指揮者のサポートのもと、ややゆったりかつきっちり歌った印象。ロザリンデの飯塚茉莉子は血の通った見事な「チャルダッシュ」だった。この人の歌には野性味がある。それにしても、河原忠之はぜったいに書き順を間違えない指揮振り。
抜粋上演とはいえ、この演目ではダンス(ワルツ)がいかに重要か、その不在により思い知らされた。たしかに上半身は動いていたが、下半身がまったく使えていない。あるいは使うような振付が施されていない。今回は「イタリア語レチタティーヴォの習得に加え、ドイツ語のテキスト、しかも台詞に挑戦」(永井和子/プログラム)したため、そこまで余裕がなかったのかも知れない。ダンス指導に西川貴子の名があるが、振付は誰?