二兎社公演『狩場の悲劇』の初日を観た(11月7日金曜18:00/紀伊國屋サザンシアター)。
以下、昨年の11月15日にポストした感想メモを貼り付ける。
原作:アントン・チェーホフ/脚色・演出:永井 愛/美術:大田 創/照明:中川隆一/音響:市来邦比古/衣裳:竹原典子/ヘアメイク:川村和枝(p.bird)/演出助:内田倭史/舞台監督:澁谷壽久/宣伝美術:永瀬祐一(BATDESIGN inc.)/宣伝写真:西村 淳/宣伝ヘアメイク:清水美穂 甲斐美穂/ロシア言語・文化アドバイザー:石川ヒロ/ドラマトゥルク:松井憲太郎/票券:熊谷由子/制作助手:大友 泉 佐伯凛果/制作:白坂恵都子 持田有美/出演:溝端淳平 門脇 麦(体調不良のため降板)→原田樹里 玉置玲央 亀田佳明 大西礼芳 加治将樹 岡田地平 ホリユウキ 水野あや 石井愃一 佐藤 誓/企画・製作:二兎社
舞台は新聞社編集長(亀田)の書斎。予審判事のセリョージャ(溝端)が原稿「狩場の悲劇」の採否を聞きに来る。まだ読んでない。じゃ返してくれ。探して返すが、いきなりその場で物語が始まるメタ構造。
原作だと編集長が原稿を読者に紹介する態で、それが全体の9割余を占める。そこに編集長(А・Ч)の注が付され、稚拙な箇所、作者が抹消し、編集長が「粗暴」さに「呆れて」削除した条り等が示される。
舞台では、編集長がその場で物語にツッコミを入れ、虚構(小説内小説の作者=セリョージャと編集長の対話)の地平とさらに奥の虚構(小説内小説)の地平が交差する。そのあり方が巧みで面白い。
キャラクターはみなコミカルにデフォルメされ、やや単純化される(当初は原作の造形とつい比較したが、前半中頃から舞台の面白さにナルホドと説得された)。
物語が終わり、実はすでに読んでいた編集長が、肝心の真犯人が書かれていない、犯人はあなただと。ここまでは原作の結末と同じ。がそれだけではない。オーレニカ(原田)をあのように変貌させたのはなぜか、それを描かなければ…(原作にも示唆はある)。
さらに、編集長はА・Ч=アントーシャ・チェホンテ(チェーホフ)さんと呼びかけられ、登場人物たちからツッコミが入る。注で言い訳せず本文でちゃんと書けよと。悲喜劇的ドタバタにチェーホフ批評のオチ。つまりはメタ+メタ構造だ。この結末には驚愕哄笑。あの長編小説からこんな脚本が書けるのか。
階級差の問題やポーランド(カエタン/加治)とロシアの非対称な関係等々を肉付け等(これ自体もチェーホフ批評だ)。さすが永井愛。

配役はみな適材適所。編集長の亀田が素晴らしく、その場との別次元を体現できる希有な役者。溝端はいかにもセルゲイみたいにやりそう(!)だし、オーレニカ代役の原田はあの変貌をよく演じ、ナージェニカ大西は令嬢がいつの間にコメディエンヌ? ウルベーニン佐藤は舞台を落ち着かせ、ソージャ/スイチーハの水野はドラマに深みを与え、森番/カリーニン石井は笑いのツボを外さぬ得がたさ…等々。役者はみな好演した。
原作は中公の全集版で読んだが文庫も出ていたのか。戯曲は11/21頃に出るという。(2025/11/13ポスト)
