新国立劇場バレエ団 新制作『くるみ割り人形』2025-26 ②

新制作『くるみ割り人形』の初日・2日目夜・5日目・7日目昼・夜・11日目(新国立劇場オペラハウス)の感想その②

①では主に振付演出についてメモした。チャイコフスキーの三つのバレエでは『くるみ』が一番好きだ。『くるみ』の音楽はどれも好いが、特に「樅の森」と「パ・ド・ドゥ」は素晴らしい。「花のワルツ」から「パ・ド・ドゥ」へのトランジションにいつも引き込まれる。それがタケット版で無惨に切断されてしまった(詳しくはで)。

以下、キャスト別に舞台の感想を簡単に記す。

初日 19日(金)19:00[1F15列中央]クララ&金平糖の精:米沢 唯/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割りの王子:渡邊峻郁/ドロッセルマイヤー:福岡雄大/ダンス教師&ねずみの女王:根岸祐衣/わたあめ:花形悠月/ゼリー:宇賀大将、菊岡優舞/キャンディ:飯野萌子/ポップコーン:上中佑樹、山田悠貴、樋口 響/フォンダンローズ:直塚美穂、木下嘉人/指揮:マーティン・イエイツ/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/合唱:東京少年少女合唱隊/合唱指揮:長谷川久恵

福岡ドロッセルマイヤーは支配的なキャラ造形で、2幕のディヴェルティスマンでも階段上から常時舞台に視線を向ける。役というより、リハーサル指導補佐がダンサーの踊りに睨みをきかせている感じ。

米沢はつねに快活なクララを生きていた。特にパ・ド・ドゥではこれまでと感触が異なり、快活で明るい。タケット版を理解した上でのあり方だろう。【パーティの終わりでクララがドロッセルマイヤーの助手との別れ際、米沢クララは渡邊助手をチラッと後ろ見する仕草。恋の芽生えがよく出ていた。】

渡邊峻郁のドロッセルマイヤーの助手/くるみ割りの王子は、いまひとつノーブルに見えない。特に二幕でドロッセルマイヤーに促されシェフパティシエやマイスターにクララとの経緯を説明するマイムは、あれでいいのか。

関優奈シュタールバウム夫人は役にフィット、演技と踊りに奥行きがある。

根岸は、ステッキで厳しく指導するダンス教師にぴったりだ。

上中兵士人形、五月女コロンビーヌ人形、森本亮介ハーレキン人形、みなよい。

花のワルツ/ファンダンローズの直塚・木下ペアはとてもよい。直塚はここ初台では少し変則的に見えたラインが、伸びやかで美しくなった(ロシア風からロイヤル風にアジャストしたのか)。木下のたしかなサポートがそれを支えた。

イエイツが振ると響きが瑞々しい。オケに酸素が行き渡っているかのよう。フルートがよい。たぶん神田氏か。チェロも好い、たぶん服部氏か。コンマスは不明。

20日(土)18:00[3F 1列左]18:00 クララ&金平糖の精:小野絢子/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割り王子:李 明賢/ドロッセルマイヤー:中家正博/ダンス教師&ねずみの女王:関 優奈/わたあめ:花形悠月/ゼリー:宇賀大将、菊岡優舞/キャンディ:飯野萌子/ポップコーン:上中佑樹、山田悠貴、樋口 響/フォンダンローズ:直塚美穂、木下嘉人/指揮:マーティン・イエイツ

「樅の森」での小野、李、中家のトロアは素晴らしい! 李はきれいに回転し、踊る。中家が小野を李へ投げ渡す高さ! しかも優雅に。小野は怖がらず嬉しそうに踊ってる。【「戦い」でねずみの女王(関優奈)の頭をスリッパでパッカンと叩くクララの仕草は、小野の喜劇的センスが躍動。】

2幕頭で李くるみ王子がクララに助けられた経緯を説明するマイムもノーブルだった。

パ・ド・ドゥはグッときた。男女のヴァリエーションも素晴らしかった。李のva は昨日と別物に見えた。李のva が終わると、悲鳴のような女声と男声のブラボーが飛んだ。

フリッツ村田は生き生きしていてとてもよい。

大木シュタールバウム夫人は小野クララのママに見えた。

関優奈ダンス教師/女王はとてもよい。踊りが大きい。

フルートの表情豊かな響きはやはり神田氏だった。上階からだと見えた。

24日(水)19:00[3F L3列]19:00 クララ&金平糖の精:柴山紗帆/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割り王子:井澤 駿/ドロッセルマイヤー:渡邊拓朗/ダンス教師&ねずみの女王:山本涼杏/わたあめ:内田美聡/ゼリー:佐野和輝、田中陣之介/キャンディ:五月女 遥/ポップコーン:小野寺 雄、森本亮介、石山 蓮/フォンダンローズ:吉田朱里、中島瑞生/指揮:冨田実里

この日はあまりぱっとしなかった。柴山はクララに合ってない。渡邊拓朗ドロッセルマイヤーの造形はあれでいいのか?

群舞は上から見ると、ダンサーの居ないスペースが目立つ。雪のコール・ドは魅力がない。隊列が平凡。ダンサーのせいではない(詳しくはで)。ファンダンローズ吉田・中島はもっとできるはず。

指揮の冨田はパ・ド・ドゥの終結辺りで打楽器に必要以上に強音させる。なぜあそこで?

27日(土)13:00[3F L6列]13:00 クララ&金平糖の精:東 真帆/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割り王子:奥村康祐/ドロッセルマイヤー:福岡雄大/ダンス教師&ねずみの女王:根岸祐衣/わたあめ:花形悠月/ゼリー:宇賀大将、菊岡優舞/キャンディ:飯野萌子/ポップコーン:上中佑樹、山田悠貴、樋口 響/フォンダンローズ:直塚美穂、木下嘉人

東クララ/金平糖の精はアラベスクが美しい。ゲストプリンシパルの2人を相手に申し分のない踊り。今後が楽しみ。奥村は笑顔で若い東をサポートする。福岡は流石の演技と踊り。世代の違う男女が一緒に踊るのを見る面白さ、楽しさ。

27日(土)18:00[3F L5列]18:00 クララ&金平糖の精:木村優里/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割り人形&王子:速水渉悟/ドロッセルマイヤー:小柴富久修/ダンス教師&ねずみの女王:山本涼杏/わたあめ:内田美聡/ゼリー:佐野和輝、田中陣之介/キャンディ:五月女 遥/ポップコーン:小野寺 雄、森本亮介、石山 蓮/フォンダンローズ:吉田朱里、中島瑞生/指揮:冨田実里

木村は以前のような後味の悪さは薄れた。フリッツは小寺もよい。

速水に贈る言葉、《…果たして心を打っていただけるようなお芝居[舞台]になったかどうか、ただ「うまいな」では困るよね、「よかったな」って言われるのがええよね》(十五代目 片岡仁左衛門)。

組む相手が誰であっても「うまいな」ではなく「よかったね」と言われるような踊り(舞台)を目指してほしい。米沢唯のように。

2026年1月1日(木祝)14:00[4F L6列]14:00 クララ&金平糖の精:小野絢子/ドロッセルマイヤーの助手&くるみ割り人形&王子:李 明賢/ドロッセルマイヤー:中家正博/ダンス教師&ねずみの女王:関 優奈/わたあめ:花形悠月/ゼリー:宇賀大将、菊岡優舞/キャンディ:飯野萌子/ポップコーン:上中佑樹、山田悠貴、樋口 響/フォンダンローズ:直塚美穂、木下嘉人/指揮:マーティン・イェーツ

李のピルエットは大きく見えるような回り方。

中家はさすが。小柴・大木夫妻はとてもよい。村田フリッツめっちゃいい。

関優奈ダンス教師は、強すぎず、大きさを感じさせる演技と踊り。

山田兵士人形、奥田コロンビーヌ人形、佐野ハーレキン人形、みなよかった。

オケは弦がすっきり、トランペットはふっくら響く。この日が聞いた6回のうちでベスト。