ダンス作品兼演劇作品『ダンスの審査員のダンス』の2日目を観た(10月2日 木曜 19:30/芸劇シアターイースト)。
作・演出:岡田利規/[出演]紅天女(くれないあまめ)センセイ:中村恩恵/ピュアームーブメントセンセイ:酒井はな/踊りンごセンセイ:島地保武/2EZ2Danceセンセイ:入手杏奈/風林火山センセイ:矢澤 誠/ハルカナルタカミザワセンセイ(ときどき蜘蛛):小林うてな/音楽:小林うてな/舞台美術デザイン:佐々木文美/衣裳デザイン:藤谷香子/照明デザイン:櫛田晃代/音響デザイン:中原 楽(KARABINER inc.)/舞台監督:湯山千景、川上大二郎(スケラボ)/演出助手:中村未希/制作:平岡久美、上林元子(愛知県芸術劇場)/テクニカルディレクター:世古口善徳(愛知県芸術劇場)/統括プロデュ―サー:唐津絵理(愛知県芸術劇場劇場 芸術監督)/製作:愛知県芸術劇場(公益財団法人愛知県文化振興事業団)、舞台芸術祭「秋の隕石」(東京舞台芸術祭実行委員会〔東京都、東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)〕)/共同製作:Dance Base Yokohama(一般財団法人セガサミー文化芸術財団)/助成:ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル/協力:株式会社precog
セットは、中央の横長テーブルの奥に一人がけソファが4台、左右両端に1台ずつ置かれ、カミテにプロンプターのディスプレーがある。途中、シモテにドラムセットが運び込まれる。
ソファに座った6人のセンセイたちは、座ったまま、時にテーブル上で、あるいは床で、ダンスの審査をしながらダンスを/ダンスをしながらダンスの審査を、する。
審査対象作は「入れ歯」、次に「ダークマターキングダム」、そして三作目はなんと「ダンスの審査員のダンス」だったというオチ。6人が踊りながら語るコトバとあり方に、からだやコトバや主体にまつわる洞察がユーモラスに体現される。大笑いしながら舞台の面白さに圧倒された。
岡田は鷲田清一の『所有論』にインスパイアされて創ったと。なるほど。
私は私のからだを所有している? 振付を与える? 私はダンスをする? ダンスが私のからだでダンスする? からだは場所なのか? 意のままにならない私のからだ?
小林うてなは絶妙なノイズ=音楽(スマホのノイズかと思いきや、超小型大正琴みたいな楽器の微かな引っ掻き音やパーカッションのリズムやリコーダーの音等々)と〝ときどき蜘蛛〟で、振付家は褒められるが、ダンサーにねぎらいのコトバはないのか! と。他のセンセイたち「それなー!」
踊りンごセンセイこと島地は迫力の大きな踊りで、コンセプトありきの頭でっかちで意味ありげなダンスは嫌い!と深いバリトンで主張。島地の踊りを面白がる中村。

ピュアームーブメントセンセイこと酒井の審査基準はもちろん美。均整の取れた美しい踊りで語る。2EZ2(too easy to)Danceセンセイこと入手は大事なのはグルーヴ、グルーヴとは血であると。ダンスは液体にほかならないと言い張る風林火山センセイこと矢澤は、グルーヴ主義者の2EZ2Danceセンセイと論争を展開し場内爆笑。途中、眼に見えない蜘蛛(小林)が空間に張った巣をよけながらダンスする踊りンごセンセイ…。
風林火山センセイは黒い物体が大きくなる云々と「ダークマター」を批判してたが、あれは自分(矢澤)が出てた『リビングルームのメタモルフォーシス』じゃないのか。

入手が「私はダンスをするとは言いたくない」と言い、テーブル上や床でダンスが彼女のからだでいとも容易くダンスする(too easy to dance)長いシークエンス。その間、手前の床で紅天女(あまめ)センセイこと中村が悠然と独特のアウラを発しつつ踊るダンスは見応えがあり、じっと見守るソファの酒井と島地。その中村がカミテで入手と一瞬からむとき、なぜがグッときた。若い入手を慈愛で(と感じた)包み込み、そこに身を任せる入手。そもそもダンスはコトバ(演劇)で表せない、コトバを越えたものを表出すると発言の紅天女センセイこと中村の存在は、本作自体を相対化し地に足を付ける重しのように感じた。
出演のダンサー・俳優・ミュージシャンはみな言いそうなことを言う。事前の意見交換等を経て岡田がテキスト化したのだろう。鷲田の『所有論』からインスパイアされたとしても、重要なのは、彼/彼女らのダンスのあり方がその叡知と背馳せず、むしろ生きられていたこと。
出演者のよさ(真実)が現れた素晴らしい舞台だった。
