東京バレエ団『眠れる森の美女』6日目(永久・宮川組)2025

東京バレエ団『眠れる森の美女』の6日目を観た(4月28日 月曜 14:00/東京文化会館)。

音楽:ピョートル・チャイコフスキー/台本:イワン・フセヴォロシスキー、マリウス・プティパシャルル・ペローの童話に基づく)/原振付:マリウス・プティパ/新演出・振付:斎藤友佳理/ステージング・アンド・プロダクション・コンセプト:ニコライ・フョードロフ/舞台美術:エレーナ・キンクルスカヤ/衣裳デザイン:ユーリア・ベルリャーエワ/照明デザイン:喜多村 貴

指揮:ベンジャミン・ポープ/演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団/協力:東京バレエ団OB・OG、東京バレエ学校

永久メイ・宮川新大の舞台は金曜(秋山瑛・大塚卓)に得た印象をかなり変えた。ただし版についての疑問は残る。席は3階の左バルコニー。以下、簡単にメモする。

国王フロレスタン14世:中嶋智哉/王妃:奈良春夏/オーロラ姫:永久メイ(ゲスト)/デジレ王子:宮川新大/カタラビュット、式典長:岡崎隼也/悪の精カラボス:柄本 弾/リラの精:榊優美枝

- プロローグ -

[妖精たち]カンディード(優しさ):三雲友里加/フルール・ド・ファリーヌ(やんちゃ):涌田美紀/パンくずを落とす精(寛大):足立真里亜/歌うカナリヤ(遊び心):安西くるみ/ヴィオラント(勇気):伝田陽美

- 第1幕 -

[4人の王子]フォルチュネ王子:生方隆之介/シャルマン王子:鳥海 創/シェリ王子:安村圭太/フルール・ド・ポワ王子:後藤健太朗

- 第2幕 -

公爵令嬢:加藤くるみ/ガリフロン、デジレ王子の家庭教師:安村圭太

- 第3幕 -

[宝石の精]ダイヤモンドの精:伝田陽美/サファイヤの精:平木菜子/金の精:足立真里亜/銀の精:加藤くるみ/プラチナの精:安村圭太、鳥海 創、本岡直也、陶山 湘/長靴をはいた猫と白い猫:涌田美紀-後藤健太朗/青い鳥とフロリナ王女:長谷川琴音-池本祥真/赤ずきんと狼:安西くるみ-岡﨑 司/親指小僧とその兄弟と人食い鬼:髙橋隼世+野本紗世、植村まお、川村いろは、那須井遥、林凛々花、深澤夏乃香、松岡由記

プロローグ 洗礼式の準備で式典長が指示し、部下がコミカルに動く。笑いは出ない。フランス王宮が舞台の『眠り』冒頭に見合っているか。国王役は若すぎるように見えた。

榊リラの精は伸びやか。この日は他の妖精も見応えあり。黄色(安西?)と赤色の妖精(伝田)の踊りが目に付いた。内からエネルギーが生き生きと出ている。柄本のカラボス造形は、あれでいいのか。老婆には見えない。マイムならぬ身振り手振りで、大きくなったら紡錘(現物を取り出し)が刺さって死ぬと告げる。リラの精が、何でもないです、心配しなくても大丈夫ですよと。

幕間の紗幕シモテでカラボスとその眷属が紡錘に糸を紡ぎ、シモテで村人らが姫の祝いの準備に花輪を作ったり、カタラビュットが禁じられた紡錘を所持する村娘を…。罰しているシーンはあったか。

第1幕 村人の花輪のワルツは、チャイコフスキーワルツに特有の目眩く快楽が生じない(振付?演奏?)。永久オーロラ登場。ヘアスタイルは秋山と同じで好いと思えないが、若いときのザハロワを思わせるラインと踊り。積極的な王子たちに気後れし母(王妃)の元へ…。踊りは優美で、軽やかだが芯というか様式性が感じられ、なにより音楽性(音感)が優れていた(よいダンサーの基本)。ローズアダージョで2回目のバランスに入る直前、心が動いた(指揮者ポープ=オケのノリが違う)。

皆が影武者(囮)に気を取られている隙に、カラボスはシモテ手前で紡錘が隠された花束をオーロラに渡し、オーロラが紡錘で指を刺して倒れ…勝ち誇ったカラボスが国王と王妃の椅子に座り、消える。その直前、弦のフライングが。

第2幕 森の狩りの場 デジレ、心ここにあらず、なにかが頭から離れない。あたりに気配が? 宮川は王子のメランコリックなありようをよく生きていた。一行の男たちの踊りもキレがある。総じてこの場の動きに意味が宿り、振付演出の意図が初めて理解できた。

幻想の場 永久オーロラの幻と榊リラの精、妖精たち、宮川王子の踊りから、王子とリラの精の関係が明確になった。チェロの骨太の響き。

パノラマはいつ聴いてもグッとくる。演出もよい(少しセルゲイエフ版を想い出した)。

目覚めの場 榊リラの精の力で目覚めがもたらされ、愛の力で悪が亡びる。なるほど。目覚めた永久オーロラと宮川王子の対話。先に両親を目覚めさせてもいいですか。もちろん。永久と宮川の対話力。目覚めのパ・ド・ドゥが短いのはよい。間奏曲とは別のあの音楽は?

第3幕 宝石の精はダイアモンドの伝田をはじめ、男性陣も力強く見応えあり。猫はまずまず(振付はちょっと)。青い鳥とフロリナは金曜と同じ。赤ずきんと狼は衣裳含め振付もぱっとしない。親指小僧と…は長靴を奪われた人食い鬼(髙橋)の走っても前に進まない動きが面白い。

アダージョ。踊りはよいが、+αは出ない。二人の息はいまひとつか。ホルンとトランペットに疲れが出たのは残念(6公演続けばヘタるのは分かるがよりによって…)。宮川デジレのヴァリエーションは溜めのある綺麗な踊り。少し見慣れぬ腕のかたちもあったが力強く気品も感じる。宮川は好いダンサーだ。オーロラのヴァリエーションは気品があり優美。

永久メイは来月(5月)で25歳か。踊りは20代のザハロワを想起させるが、より繊細で慎ましさや清楚さも感じる。ただ、舞台から何かが立ち現れたかといえば、それは感受できず。ゲストで初パートナー(?)と慣れない版を踊るのだから、やむをえないか。条件が変われば違うのか。いずれにせよ、素晴らしいバレリーナだと思うが、驚きはなかった。

たとえば、米沢唯が新国立劇場で初めて『白鳥』全幕を踊ったときは、本当に驚いた(2012年5月)。このとき米沢は25歳だが、白鳥と黒鳥を踊り演じる(生きる)あり方には目を見張るものがあり、それは誰とも似ていなかったから。

永久メイはマリインスキー・バレエとその劇場に足を運ぶ観客が育てた(ている)ダンサーだ。今回の上演で永久の真価を云々することは控えたい。彼女がマリインスキー劇場で踊るとき、観客はなにを感じ、なにを見るのだろう。いつか(戦後?)このバレエ団が日本で上演するときがくるなら、ぜひ確かめてみたい。