吉田都版『ジゼル』新制作(2022年10月21日〜30日)初演は全5キャストを見た。当時リーフレットと手帳への走り書きから、米沢唯主演の舞台のみツイートしていた(2022.10.23/失念してたが)。今回再演の3キャスト(25年4月10日,12日マチネ・ソワレ)を見たあとメモを見つけ、記録のためブログへ転記補足することにした(かなり断片的な箇所もあるが、もはや加筆せず/できずそのままに)。
プロダクション(制作):吉田都/ステージング(舞台構成)&追加振付(改訂振付):アラスター・マリオット/セット&衣裳デザイナー:ディック・バード/照明デザイナー:リック・フィッシャー/プロダクション(制作)&ステージング(舞台構成)補佐:ジョナサン・ハウエルズ
[リーフレットの走り書き]
バチルドの人物造形——魅力がないどころか negative[成金趣味で品がない]。 extremely rich な娘に変えたのは、アルブレヒトは政略結婚を渋々受け入れ、そこに愛はなく、真の愛はジゼルへのもの、としたいから?[パリ・オペラ初演の台本作者]ゴーティエ[第2幕末尾で駆けつけたバチルドは震えながらアルブレヒトに手を伸ばすと、消えゆくジゼルは恋人に「愛と忠誠をこの優しい女性に捧げなさい」と示唆する設定]からさらに遠ざかっている。
10月21日 金曜1 9:00 初日
ジゼル:小野絢子/アルブレヒト:奥村圭吾/ヒラリオン:福田圭吾/ミルタ:寺田亜沙子/ベルタ:楠元郁子/バチルド:益田裕子/ペザントパ・ド・ドゥ:池田理紗子&速水渉悟
第1幕 セットがよい。田舎の家、背後に白樺林、訪れてみたいような。
振付の違いは分からない。母のマイムシーンはよい。が、ラストの娘との関わりはロイヤル版ほど…
久し振りのバクランを見られてうれしい。東フィルは少し香りがあった(特に中音)。が、弦のnoise フルート弱い、オーボエ、クラリネットはよい。
小野、ジゼルらしさ。心臓が悪いので踊ってはいけない、は改めて《ホフマン物語》[オペラのアントニアは歌/ダレル版バレエでは踊り]に似た設定。奥村、小さい、足さばき…
バチルド益田、品がない(設定から意図的か)。ペザントPDD 速水は前より筋肉がついた、大きく柔らかで、自信に溢れる。踊る事の喜びが強く感じられた。
ウィリたちの agressive な踊り。吉田の腕、ヴィオラソロ(加藤大輔)でグッときた。PDDよりソロに? 小野は全体的によかった。第2幕は…自分を大事にしないあり方(wild)がよかった。
10月22日 土曜 13:00
ジゼル:柴山沙帆/アルブレヒト:井澤駿/ヒラリオン:中家正博/ミルタ:根岸祐衣/ベルタ:中田実里/バチルド:関晶帆/ペザントパ・ド・ドゥ:奥田花純&
中島瑞生→山田悠貴
柴山ジゼル、踊りはよかったが、ソロのラストでよろけた。井澤アルブレヒトはまずまず。中家ヒラリオン、うまい。中田ベルタ、好いと思う、母らしい。関晶帆バチルド、品がなくはない(マリオット台本から逸れる?)。ペザントPDD 中島瑞生→山田悠貴、きれいに踊る、クリア
10月28日 金曜 19:00
ジゼル:木村優里/アルブレヒト:福岡雄大/ヒラリオン:木下嘉人/ミルタ:吉田朱里/ベルタ:楠元郁子/バチルド・益田裕子/ペザントパ・ド・ドゥ:五月女遥&佐野和輝
第1幕 木村はわりあい抑えて踊っている感じ。shy な村娘という感じではないか、アルブレヒトに対してもバチルドに対しても。mad scene は何か来なかった。内からの行動に見えない。バッカスの子にしがみ付くところも、約束事でそうしている。他者との関わりから生まれるものを勘定に入れていない。
福岡はジゼルを本当に好きなのか。
木下ヒラリオンはとてもよい。マイムも明快で演技もうまい。
ペザントPDD は踊りが小さい。
第2幕 ミルタ吉田朱里は手脚が伸びやかで、大きな踊り、こんなダンサーがいたのか。
ヒラリオン木下、驚き方!
ジゼル-アルブレヒト、第1幕よりよい。感情のない役はOK。かたち
福岡のソロも役の中。
オケ、全体的に安定していた。
セルゲイエフ版でロシア人ゲストが来てた頃の後味、内側への感情移入がほぼなく、作品・踊りの外形だけが見える感。
木下がこの組みに入るのはもったいない。
[手帳のメモ]
[アラスター・マリオット版への]疑問点
①ジゼルの母ベルタは「ブドウ園を営」んでいるのか?
②アルブレヒトの婚約者バチルドは「大富豪の娘 extremely rich」? クーランド公爵の娘ではない? コスチュームやふるまいに品がないのはそのため?
①はアルブレヒト王子とジゼルの格差を弱めることにならないか?
②は金持ちの娘と婚約しているにもかかわらず村人ジゼルを口説くのは、前者に愛がなく後者こそ真の愛だということ? するとアルブレヒトの罪(裏切り)を弱めてしまう。なぜそうしたのか?アルブレヒトへの共感を引き出したい? すると裏切り[と赦し]のテーマ[ジゼルは裏切られたにもかかわらず彼を赦し慈愛すら示すという]は?
セット
第1幕 温かみのある村。シモテにジゼルの家、カミテに村人に身をやつした王子の小屋。正面奥に白樺林。
第2幕 墓場だが、森なのか。倒木が正面に、左右は数本の木の根元——そこに妙な、横に接ぎ木したような色の明るい(茶色?)植木のようなものが生えている。
カーテンが開くとスモーク、シモテ奥の木の根元がジゼルの墓。つまり、どの木も墓らしい。十字架があちこちに。チラチラと光るもの。第1幕とのコントラストだろうが、気持ちが悪い。
10月23日 日曜 14:00
ジゼル:米沢唯/アルブレヒト:渡邊峻郁/ヒラリオン:中島駿野/ミルタ:根岸祐衣/ベルタ:楠元郁子/バチルド:渡辺与布/ペザントパ・ド・ドゥ:飯野萌子&山田悠貴
やっと〝初日〟が来た。バクラン=東フィルはこれまでより引き締まった演奏。
第1幕 米沢はおぼこい村娘、ちょっとはずかしいという。アルブレヒトとのやりとり、花のところ、花びらを一つずつの前から、なぜかグッときた。悲劇の予兆。すでに含んでいた。初めて。バチルドとのやりとり。憧れ。ドレス。その分あとのショックが大きい。
ペザント・パ・ド・ドゥの間、バチルドのうしろでドレスに見とれる。母との対話。狂乱は、ある種、死の前の走馬灯を動きとダンスで表現したかのよう。ラストの死へ突進する勢いは凄まじかった! バッカスの少年にしがみ付いて話さぬさまは!
アルブレヒト渡邊はちょっと悪役に見えた。もっとノーブルさが欲しいが。これだと裏切りを意識している感じだな。そんな相手に米沢ジゼルは本当に惹かれているあり方を生きていた。
ヒラリオン中島駿野は無骨さや…さが足りない。押しが弱い。もっとジゼルに惚れてる感を出せ。ミスキャスト。
ペザントPDDの飯野・山田はとても好かった。喜びに溢れたダンス。山田は昨日(代役)もそうだが、伸びやかでうまいし、クリアで喜びもあり、役として気品がありすぎるくらい。サポートを磨けば主役ができる。
バチルドは渡辺与布だったのか。三人見た中では一番好い。ただ、版の人物設定からすると?
バクランが舞台のエネルギーに同調し、ノッて振ってた。バチルド一行への村娘たちのミーハー的反応が面白い。
第2幕 中島の立ち姿(素の棒立ち)は問題。米沢の浮遊感。ヴィオラソロに〝気〟が行かない。舞台上に注視させ、そこに聞こえてくる感じ(今までは…)。ラスト——去って行く。グッときた。
10月29日(土)13:00
ジゼル:池田理紗子/アルブレヒト:速水渉悟/ヒラリオン:中家正博/ミルタ:寺田亜沙子/ベルタ:中田実里/バチルド:渡辺与布/ペザントパ・ド・ドゥ:奥田花純&中島瑞生
第1幕 池田ジゼル—少女。shyness は出ていたが、踊りからは何も出ない。狂乱は自分なりによくやってはいた。
速水、踊りは抑え気味。ヒラリオン中家とのやりとり、特にジゼルが死んだあとの、お前のせいだと指さすシーン。久し振りに見たような(今回やってたか?)剣を取り殺そうとするが、止められる。この時、中家は抵抗せず呆然としているが、あとで頭をかかえる。与布のバチルドはやはりhumanで人のよさが滲み出る。Act 2 で[パリオペの]オリジナルだとこれが生きるだろうが。
ペザントPDD 中島瑞生は技術はさほどでないが長身だと見栄えがする。
第2幕 中家横向き(シモテ)。ミルタ寺田。ウィリのリーダーとしての格はあった。好い。
アルブレヒト、エンター、墓を探す。見つけてからのオーボエのリピートは p になり、痛切さを際立たせる。速水のマント捌きはあざやか。ジゼル、やはり小さいがよくやってはいた。PDD ヴィオラ。速水のソロ、ドラマの中の踊り、これ見よがしでない。さらに踊らされ、アントルシャ、素晴らしい。ラスト、少しグッときた。
10月29日土曜18:00
配役1/23と同じ
米沢ジゼル、踊りが好きでしょうがない。それをロイス(アルブレヒト)と共有——それが嬉しく、見ててください——踊る。
ペザントPDD農民同士のカップル——ジゼルーロイスとの対照。