4月のフィールドワーク予定 2023【追記】+感想メモ

現在、鈴木優人の指揮で佐藤俊介が芸監を務めるオランダ・バッハ協会の《マタイ受難曲》をツアー中(全13公演)。テノール櫻田亮ソリストとして参加しているらしい。聴いてみたいけどオランダでは仕方ない。BCJの《マタイ》は2003年以来ほぼ毎年聴いているが、鈴木雅明は今回の《マタイ》で初めて児童合唱を使うという。ソプラノのルビー・ヒューとバスのマーティン・へスラーも初めて聴くが、エヴァンゲリストは昨年同様リヴァイアサン』の著者と同姓同名の歌手が務める。BCJに児童合唱が加わるとどんな響きになるのだろう。

新国立劇場バレエ団の新制作「シェイクスピア・ダブルビル」では、アシュトンの『夏の夜の夢』(The Dream, 1964)に加え、ウィル・タケットが新たに創作する『マクベス』が登場する。音楽はドラマの舞台設定に相応しくスコットランド生まれのジェラルディン・ミュシャ(1917-2012)が1965年に作曲した同名バレエ音楽で、マーティン・イエイツが編曲・指揮を担当する。米沢唯と小野絢子がどんなマクベス夫人を造形するのか、興味津々だ。一方『夢』の主演キャストは少し物足りなさを感じる。

演劇では久々に平田オリザの『ソウル市民』を観る。コリン・カリー・グループによるライヒ作品が聴けるのも久し振り。新国立劇場オペラでは5年振りに《アイーダ》が登場する。〝困ったときの『(仮名手本)忠臣蔵』〟みたいなものか。

5日(水)18:00 新国立劇場オペラ《アイーダ》指揮:カルロ・リッツィ/演出・美術・衣裳:フランコ・ゼッフィレッリ/照明:奥畑康夫/振付:石井清子/再演演出:粟國 淳/舞台監督:斉藤美穂/[配役]アイーダ:セレーナ・ファルノッキア/ラダメス:ロベルト・アロニカ/アムネリス:ユディット・クタージ(本人の都合により降板)→アイリーン・ロバーツ/アモナズロ:フランコ・ヴァッサーロ(本人の都合により降板)→須藤慎吾/ランフィス:妻屋秀和/エジプト国王:伊藤貴之/伝令:村上敏明/巫女:十合翔子/合唱指揮:三澤洋史/合唱:新国立劇場合唱団/バレエ:東京シティ・バレエ団/児童バレエ:ティアラこうとう・ジュニアバレエ団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団 @新国立劇場オペラハウス

7日(金)18:30 BCJ #154 定演〈受難節コンサート2023〉J. S. バッハ《マタイ受難曲BWV244》指揮:鈴木雅明/[出演:トマス・ホッブズエヴァンゲリスト)/ルビー・ヒュー(Sop)/松井亜希(Sop)/久保法之(Alt)/青木洋也(Alt)/谷口洋介(Ten)/マーティン・へスラー(Bas)/加耒徹(Bas)/合唱:東京少年少女合唱隊/合唱+管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン @オペラシティコンサートホール

9日(日)14:00 青年団 第94回公演『ソウル市民』作・演出:平田オリザ/舞台美術:杉山 至/舞台美術アシスタント:濱崎賢二/舞台監督:中西隆雄 三津田なつみ/照明:三嶋聖子/衣裳:正金彩/衣裳製作:中原明子/衣裳アシスタント:陳 彦君/宣伝美術:工藤規雄+渡辺佳奈子 太田裕子/宣伝写真:佐藤孝仁/宣伝美術スタイリスト:山口友里/制作:太田久美子 込江 芳/協力:(株)アレス/出演:永井秀樹 天明留理子 木崎友紀子 太田 宏 田原礼子 立蔵葉子 森内美由紀 木引優子 石松太一 森岡 望 新田佑梨 中藤 奨 藤瀬のりこ 吉田 庸 名古屋 愛 南風盛もえ 伊藤 拓 松井壮大 @こまばアゴラ劇場

21日(金)19:00 コリン・カリー・グループ=ライヒ《18人の音楽家のための音楽》ライヒ:《ダブル・セクステット》(2007),《トラベラーズ・プレイヤー》(2020)[←これ《トラベラーズ・プレアー(旅人の祈り)》とすべきで〝プレイヤー〟だと「旅人の祈る人」になる][日本初演][オランダ公共放送アムステルダム土曜マチネ、サウスバンクセンター、カーネギーホールフィルハーモニー・ド・パリ、ハンブルク・エルプフィルハーモニーバークレー・カルパフォーマンス、東京オペラシティ文化財団共同委嘱],《18人の音楽家のための音楽》(1974〜76)/出演:コリン・カリー(パーカッション&指揮)/コリン・カリー・グループ/シナジー・ヴォーカルズ @オペラシティコンサートホール

↑初めて聴いたのは2012.12 。前回が6年前の2017.3.1だった。今回ライヒは来日せず。《ダブル・セクステット》(2007)セクステット(六重奏)の構成はフルート、クラリネットヴィブラフォン、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ。これがダブル(x2)に。ヴィブラフォンとピアノが通奏低音のようにリズムを刻み、前へ前へと駆動する。…後半テンポが緩みメロディが印象的なシークエンスはバンドネオンの響きが聞こえた。実際はヴァイオリン、フルート、クラリネット等の重奏。面白い。また最初のリズムに戻り、前へ進んでいく…。

《トラベラーズ・プレイヤー》(2020)Prayerを「プレイヤー」と読むと「旅人の祈る人」になり意味が破綻する。「旅人の祈り」Traveler’s Prayer なら「トラベラーズ・プレアー」とすべき。編成はテノール2、ソプラノ2、ヴィブラフォン2、ピアノ、ヴァイオリン4、ヴィオラ2、チェロ2。ヘブライ語の祈りの言葉(創世記、出エジプト記詩篇からの抜粋)に付された音楽はグレゴリオ聖歌を想起したが、ハーモニーならぬカノンでズレながら独特の響きを生み出していく。彼の地の空気(本で知るのみだが)を彷彿させる不思議な音楽。歌われた詩句は「旅の無事を祈る時、さらに、この世からあの世への旅の無事を祈る時にも唱えられる」と(ライヒ)。なるほど。

《18人の音楽家のための音楽》(1974-76)編成はヴァイオリン、チェロ、クラリネット(バスクラを兼ねる)、女声4、ピアノ4、マリンバ3、シロフォン2、ヴィブラフォン(モーターなし)、マラカス2(打楽器奏者が兼ねる)。一つのリズムを繰り返し(パルス)後から少しずらして別の奏者が同じリズムを反復していく。するとハレーションというか眩暈が生じ、聴く者をめくるめく世界に没入させる。聖歌が唱えられなくとも、読経に似た、ある種の宗教的体験を誘発する。バスクラのクレッシェンドがよく効いてた。マラカスうまい。最後は奏者が次第に減り、音が徐々に弱まり、ヴァイオリン一人となり消滅。ハイドンの《告別》みたい。拍手が早すぎたのは残念だが、始終頬が緩み、心と体が満たされた。一気にスタンディング。若い人が多い。個々の〝平凡な作業〟の積み重ねが奇跡的な効果を生み出す。ミニマルミュージックはデモクラティックな価値観と親和性が高そう。だから若者に受けるのか。2012年の感想メモはここ。(4/29 ツイート)

【26日(水)19:00 N響 #1982定演 B-1 シベリウス交響曲 第4番 イ短調 作品63/ラフマニノフパガニーニの主題による狂詩曲 作品43*/チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」作品32/指揮:パーヴォ・ヤルヴィ/ピアノ:マリー・アンジュ・グッチ* @サントリーホール←追記(忘れてた!)

↑素晴らしいプログラムはロシアのウクライナ侵攻を意識? 前半のシベリウス交響曲第4番》は胸に染みる演奏。病など困難の時代に書いたらしい。〝ありきたり〟が皆無。中低音の響き。チェロ(ゲスト?)、ビオラ、ヴァイオリンのソロ。人間の肉声(呻吟)がここ彼処で聞こえた。

後半1曲目はラフマニノフパガニーニの主題による変奏曲》。マリー・アンジュ・グッチのピアノはタッチがさりげなく華麗。主題の変奏がかなり進み、突然、例のロマンティックなメロディがピアノで優美に弾かれ、オケがTuttiで応答する。胸がすくような晴れやかさ。が再び短調に戻り「怒りの日」のテーマを金管で鳴らして終わる。あらためて聴くと奇妙な作品。死のテーマが忍び込んでる。グッチは何度もカーテンコールで呼び出されたがアンコールなし。後半の途中だから遠慮した?

チャイコフスキーの《フランチェスカ・ダ・リミニ》は、地獄の凄まじい描写のあと、松本健司氏のクラリネットが弱音ソロ。美しい! ダンテに答えるパウロ(フランチェスカの相手)の語りを髣髴。その後、二人の愛の愉悦が雄弁かつ甘美に奏され、頬が緩んだ。ここでもいろんな声が聞き取れる。やがて壮絶な地獄の描写に戻り悲劇的に終わる。ヤルヴィに指示表出的な演奏意図はなかったと思うし、むしろ純粋音楽的な志向を感じたけど、人間の声がたくさん聞き取れるコンサートだった。(4/28 ツイート)

29日(土祝)14:00 新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」『マクベス』振付:ウィル・タケット/音楽:ジェラルディン・ミュシャ/編曲:マーティン・イェーツ/美術・衣裳:コリン・リッチモンド/照明:佐藤 啓/[配役]マクベス:福岡雄大マクベス夫人:米沢 唯/バンクォー:井澤 駿/3人の魔女:奥田花純、五月女遥、廣川みくり//『夏の夜の夢』振付:フレデリック・アシュトン/音楽:フェリックス・メンデルスゾーン/編曲:ジョン・ランチベリー/美術・衣裳:デヴィッド・ウォーカー/照明:ジョン・B・リード/[配役]ティターニア:柴山紗帆/オーベロン:渡邊峻郁/パック:山田悠貴/ボトム:木下嘉人/指揮:マーティン・イェーツ/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/合唱:東京少年少女合唱隊 @新国立劇場オペラハウス感想メモはここ

30日(日)14:00 新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」『マクベス』/マクベス:奥村康祐/マクベス夫人:小野絢子/バンクォー:井澤 駿/3人の魔女:原田舞子、廣田奈々、根岸祐衣//『夏の夜の夢』ティターニア:池田理沙子/オーベロン:速水渉悟/パック:石山 蓮/ボトム:福田圭吾 @新国立劇場オペラハウス感想メモはここ