1月のフィールドワーク予定 2023

近ごろ80年代から2000年代初頭に見た舞台が、折に触れて回帰してくる。老いの兆候なのか。マギー・マランの『May B』は 84年にオフ・ブロードウェイで見たアラン・シュナイダー演出のベケットを想起させたし、鈴木忠志の『サド公爵夫人(第2幕)』を見る気になったのは東京グローブ座ベルイマン演出が頭に残っていたから。アトリエ・センターフォワードの『三人姉妹』で何度も笑った後、82年に見た中村雄二郎台本の『プラトーノフ』で立川光貴(三貴)が自殺しようとして死ねない愉快な場面が頭に浮かんだ。年末の山崎広太の新作ダンスは、2001年に見た三公演での山崎の怒濤の踊りを一気に蘇らせた。

マーシャ・ノーマンの『おやすみ、お母さん』'night, Mother も回帰といえばそう。娘に自殺を思い止まるよう説得する母の話だが、たまたま84年2月にブロードウェイ(John Golden Theatre)で観た2年後、北林谷栄三田和代の舞台を渡辺浩子訳・演出で上演した(俳優座)。それをシアター風姿花伝那須さん親子が小川絵梨子の訳・演出で取りあげる。俳優がリアル親子だとどうなるのか。井上道義が創作したミュージカル・オペラは両親を描いたものらしい。どんな舞台になるのかまったく予想できない。「ニューイヤー・バレエ」4回公演の二演目にゲストダンサーのみを出演させる意図はなんだろう。団員の貴重な本番回数を減らしてまで行う意味はあるのか。もしチケットを売るためなら、効果は出ていない。どうも最近のバレエ団のキャスティング(退団の顔ぶれ)には腑に落ちない点が多い。具体的にはいずれまた。

13日(金)19:00 新国立劇場バレエ団「ニューイヤー・バレエ」『A Million Kisses to my Skin』<新制作>振付:デヴィッド・ドウソン/音楽:ヨハン・ゼバスティアン・バッハ/美術:デヴィッド・ドウソン/衣裳:竹島由美子/照明:バート・ダルハイゼン/出演:米沢 唯、柴山紗帆、小野絢子、五月女遥、木村優里、根岸祐衣、渡邊峻郁、速水渉悟、中島瑞生//『シンフォニー・イン・C』振付:ジョージ・バランシン/音楽:ジョルジュ・ビゼー/衣裳:大井昌子/照明:磯野 睦/出演:〔第1楽章〕米沢 唯、福岡雄大〔第2楽章〕小野絢子、井澤駿〔第3楽章〕池田理沙子、木下嘉人〔第4楽章〕木村優里、中家正博//『眠れる森の美女』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ/振付:マリウス・プティパ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/衣裳:ルイザ・スピナテッリ/出演:ヤスミン・ナグディ、マシュー・ボール(英国ロイヤルバレエ)//ドン・ジュアン』(抜粋)/振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:クリストフ・ヴィリバルト・グルック、トマス・ルイス・デ・ビクトリア/衣裳:フィリッポ・サンジュスト/出演:アリーナ・コジョカル(ハンブルク・バレエ ゲストダンサー)、アレクサンドル・トルーシュ(ハンブルク・バレエ)/指揮:ポール・マーフィー/管弦楽:東京交響楽 @新国立劇場オペラハウス

14日(土)13:00 新国立劇場バレエ団「ニューイヤー・バレエ」『A Million Kisses to my Skin』出演:直塚美穂、池田理沙子、飯野萌子、廣川みくり、中島春菜、川口 藍、奥村康祐、山田悠貴、森本晃介//『シンフォニー・イン・C〔第1楽章〕柴山紗帆、福岡雄大〔第2楽章〕小野絢子、井澤駿〔第3楽章〕廣川みくり、木下嘉人〔第4楽章〕木村優里、中家正博//『眠れる森の美女』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ/出演:ヤスミン・ナグディ、マシュー・ボール(英国ロイヤルバレエ)//ドン・ジュアン』(抜粋)/出演:アリーナ・コジョカル(ハンブルク・バレエ ゲストダンサー)、アレクサンドル・トルーシュ(ハンブルク・バレエ)/指揮:ポール・マーフィー/管弦楽:東京交響楽団

17日(火)14:00 青年団日本文学盛衰史』原作:高橋源一郎/作・演出:平田オリザ/出演:山内健司 松田弘子 永井秀樹 小林 智 兵藤公美 島田曜蔵 能島瑞穂 知念史麻 古屋隆太 石橋亜希子 井上三奈子 大竹 直 髙橋智子 村井まどか 長野 海 村田牧子 山本裕子 海津忠 菊池佳南 緑川史絵 佐藤 滋 串尾一輝 中藤 奨 田崎小春/舞台美術:杉山 至/舞台美術アシスタント:濱崎賢二/舞台監督:武吉浩二(campana)/照明:西本 彩 三嶋聖子/音響:泉田雄太/衣裳:正金 彩/衣裳製作:中原明子/衣裳アシスタント:陳 彦君 塚本かな 原田つむぎ/演出部:原田香純 たむらみずほ/小道具:中村真生/演出助手:小原 花/宣伝美術:工藤規雄+渡辺佳奈子 太田裕子/宣伝写真:佐藤孝仁/宣伝美術スタイリスト:山口友里/制作:太田久美子 金澤 昭[吉祥寺公演] 赤刎千久子 込江 芳/制作補佐:三浦雨林/タイトルロゴ制作資料協力:公益財団法人日本近代文学館/協力:(株)アレス @吉祥寺シアター

5年前の初演と印象が違うのは時事ネタの変化もあるが、志賀さんの不在が大きい。その位置に小柄の女性(井上みなみ)が配された。志賀の存在感との落差で異化効果を狙ったのか。長谷川(二葉亭四迷)の「中江先生、ずいぶん小さくなられた」に皆どっと笑った(実際は古屋隆太の降板でそうなったらしい)。時事ネタでは森鴎外森元首相を重ねたギャグはかなり受けたが、幸徳秋水と管野スガ子の関西弁漫才は新鮮だった(ミルクボーイ? 知らん)。初演は太鼓叩きながらシュプレヒコールしてた。この変更は役者が変わったからか。そのあと漱石が国家の怖れるものについて語るくだりで、小さな椅子を持ち出し相馬黒光に座らせる。そして、これはなんですかと。百年後、政治家たちは、ただ女の子が椅子に座っただけの像を恐れるでしょう…。その瞬間なんのことか分からなかったが、そうか、愛トリか。

国家が抱く恐怖(検閲)は、文学芸術の力を逆説的に証し立てる。戦時に岸田國士の『かへらじと』が改竄上演されたのもそう。

とにかくめっぽう面白い。当時の文学や思想に親しむ人は堪らないだろう。オリザ氏と高橋源一郎氏のアフタートークでは耳寄りの話が聞けた。あとは初演の感想メモに譲る。(1/19 ツイート)

20日(金)14:00 『おやすみ、お母さん』作:マーシャ・ノーマン/翻訳&演出:小川絵梨子/出演/那須 凜 那須佐代子/美術:小倉奈穂/照明:松本大介/音響:加藤 温/衣裳:前田文子/ヘアメイク:鎌田直樹/演出助手:渡邊千穂/舞台監督:梅畑千春/宣伝美術:チャーハン・ラモーン/絵画提供:佐和子/WEB:ブラン・ニュー・トーン(小林タクシー・阿波屋鮎美)/票券:北澤芙未子/制作:斎藤 努・加藤恵梨花・月館 森/プロデューサー:那須佐代子/企画・製作:合同会社 風姿花伝プロデュース @シアター風姿花伝

23日(月)19:00 ミュージカルオペラ『降福からの道 A Way from Surrender』総監督(指揮/脚本/作曲/演出/振付)井上道義/タロー(テノール):工藤和真/正義(バリトン):大西宇宙/みちこ(リリック・ソプラノ):小林沙羅/マミ(ソプラノ):宮地江奈/エミ(メゾ・ソプラノ):鳥谷尚子/ピナ(ソプラノ):コロンえりか/[アンサンブル]ソプラノ:中川郁文、太田小百合/メゾ・ソプラノ:蛭牟田実里ほか/テノール:斎木智弥、渡辺正親/バリトン:今井学、高橋宏典、山田大智/バス&バッソプロフォンド:仲田尋一ほか/洗足学園メモリアル合唱団/茂木鈴太(タローの分身)/大山大輔(朗読)@サントリーホール

25日(水)19:00 N響 #1976 定演〈B-1〉バルトークヴィオラ協奏曲(シェルイ版)/ラヴェル:「ダフニスとクロエ」組曲 第1番、第2番/ドビュッシー交響詩「海」/指揮:トゥガン・ソヒエフヴィオラ:アミハイ・グロス @サントリーホール←都合で行けなくなりオケピに

28日(土)14:00 新国立劇場オペラ《タンホイザー新国立劇場オペラハウスジ←都合で2月11日の楽日へエクスチェンジ