10月のフィールドワーク予定 2022【感想メモ付】

またまた更新が大幅に遅延! すでに2公演終了し、3公演目が目前に迫っている。感想も手書きメモはあるものの、まったくブログにあげてない。これでは〝ものぐさフィールドワーク〟だ。予定表にコメントを付けるかたちでなんとか継続していきたい。

2日(日)14:00 新国立劇場オペラ《ジュリオ・チェーザレ》新制作 全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉作曲:ヘンデル(初演1724)/台本:ニコラ・フランチェスコ・ハイム/原作:ジャコモ・フランチェスコ・ブッサーニのオペラ台本『エジプトのジュリオ・チェーザレ』1677/1685/指揮:リナルド・アレッサンドリーニ/演出・衣裳:ロラン・ペリー/美術:シャンタル・トマ/照明:ジョエル・アダム/ドラマトゥルク:アガテ・メリナン/演出補:ローリー・フェルドマン/舞台監督:髙橋尚[キャスト]ジュリオ・チェーザレ:マリアンネ・ベアーテ・キーランド/クーリオ:駒田敏章/コルネーリア:加納悦子/セスト:金子美香/クレオパトラ:森谷真理/トロメーオ:藤木大地/アキッラ:ヴィタリ・ユシュマノフ/ニレーノ:村松稔之/通奏低音:栞形亜樹子(チェンバロ) 懸田貴嗣(チェロ) 上田朝子(テオルボ) 瀧井レオナルド(テオルボ)/合唱指揮:冨平恭平/合唱:新国立劇場合唱団/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団 @新国立劇場オペラハウス

9日(日)13:30 《浜辺のアインシュタイン》(ロバート・ウィルソン&フィリップ・グラス 1976初演)音楽:フィリップ・グラス/台詞:クリストファー・ノウルズ、サミュエル・ジョンソン、ルシンダ・チャイルズ/翻訳:鴻巣友季子/演出・振付:平原慎太郎/指揮:キハラ良尚/[出演]松雪泰子 田中要次 中村祥子/ヴァイオリン:辻彩奈/電子オルガン:中野翔太、高橋ドレミ/フルート:多久潤一朗、神田勇哉、梶原一紘(マグナムトリオ)/バスクラリネット:亀居優斗/サクソフォン:本堂誠、西村魁/合唱:東京混声合唱団 @神奈川県民ホール

15日(土)15:00 新国立劇場演劇『レオポルトシュタット』作:トム・ストッパード/翻訳:広田敦郎/演出:小川絵梨子/美術:乘峯雅寛/照明:原田 保/音響:加藤 温/衣裳:前田文子/ヘアメイク:川端富生/演出助手:大澤 遊/舞台監督:山下 翼/技術監督:小西弘人/[出演]浜中文一 音月桂 村川絵梨 土屋佑壱 岡本 玲 浅野令子 木村 了 那須佐代子 泉関奈津子 内田健介 太田緑ロランス 椎名一浩 椙山さと美 鈴木勝大 鈴木将一朗 瀬戸カトリーヌ 田中 亨 野口卓磨 松本 亮 万里紗 八頭司悠友 伊奈聖嵐 久住星空 高橋菜々音 塚越一花 寺戸 花 根本葵空 前田武蔵 三田一颯 @新国立中劇場

17日(月)17:00 東京芸術祭 2022 野外劇『嵐が丘』作:エミリー・ブロンテ/演出:小野寺修二/訳:小野寺健嵐が丘(上)(下)」光文社古典新訳文庫/出演:王下貴司 久保佳絵 斉藤 悠 崎山莉奈 菅波琴音 竹内 蓮 丹野武蔵 鄭 亜美 辻田 暁 富岡晃一郎 中村早香 西山斗真 塙 睦美 宮下今日子 片桐はいり @GLOBAL RING THEATRE〈池袋西口公園野外劇場〉

21日(金)19:00 新国立劇場バレエ団『ジゼル』新制作/振付:ジャン・コラリ&ジュール・ペロー&マリウス・プティパ/演出:吉田 都/改訂振付:アラスター・マリオット/音楽:ドルフ・アダン/美術・衣裳:ディック・バード/照明:リック・フィッシャー/ジゼル:小野絢子/アルブレヒト:奥村康祐/指揮:アレクセイ・バクラン管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団 @新国立劇場オペラハウス

22日(土)13:00 新国立劇場バレエ団『ジゼル』ジゼル:柴山紗帆/アルブレヒト:井澤 駿/指揮:冨田実里 @新国立劇場オペラハウス

23日(日)14:00 新国立劇場バレエ団『ジゼル』ジゼル:米沢 唯/アルブレヒト:渡邊峻郁/指揮:アレクセイ・バクラン @新国立劇場オペラハウス

26日(水)19:00 N響 #1967 定演〈B-1〉グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16/ニルセン:交響曲 第3番 作品27「広がり」/指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット/ピアノ:オリ・ムストネン @サントリーホール

27日(木)19:00 劇団銅鑼 ラボ企画#2 プロジェクトYu-kaプロデュース公演 黒い喜劇『友達』作:安部工房/演出:野﨑美子/出演:松田崇 金子幸枝 沓澤周一郎 長谷川由里 野井一十 龍ともこ 向 暁子 福井夏紀 山中宏明 鈴木結翔 鶴田尚子 今井聡 @劇団銅鑼アトリエ

↑役者は適材適所に見えた。男のキャラはぴったりだし、家族の父、三女(トランペットも)、三男など皆うまい。/前半、男の部屋に見ず知らずの〝家族〟9人が闖入してくる。この理不尽さがさほど感じられない。我が物顔で家の中を物色しながら、善意を押し付けてくる厚かましさや気持ち悪さがもっと出てもよかった。他方、押されっぱなしの被害男に、何やってんだ、と言いたくなる人のよさは、ある程度、出てはいたが、もっと両者の相乗関係を意識したあり方が模索できたのではないか。/後半の方が芝居としてはよかった。当事者からは〝外部〟となる警官は、結局〝家族〟側の言い分に納得してしまう。このとき、観客はニュートラルな警官が前半の理不尽さを解消してくれるかもと淡い期待を抱き、それが無残に裏切られ、がっかりしなければならない。難しい役だが、このあたりの機微がより十全に体現できるとさらによい。婚約者の兄はこれと同じではないが似たようなものか。今井くんがこの役に選ばれたのは、プロデュース側が新国立の『どん底』を見たから?全体的に、演技を見る喜びはあったが、ディレクションの方向性がつかめなかった。/この〝家族〟は男の退職金や婚約者、ひいては男の命まで奪ってしまうのだから悪質な詐欺集団に違いない。しかも、相手を孤独から救うため、隣人愛等々、要するに相手のためだというのは、たしかに旧統一教会の手口と似ていなくもない。あるいは、通常は何でもないが、逆らうと〝同調圧〟としてその牙をむく〝世間〟の怖さ? 演出家の意図はどうだったのか。

28日(金)19:00 新国立劇場バレエ団『ジゼル』ジゼル:木村優里/アルブレヒト:福岡雄大 @新国立劇場オペラハウス

29日(土)13:00 新国立劇場バレエ団『ジゼル』ジゼル:池田理沙子/アルブレヒト:速水渉悟 @新国立劇場オペラハウス

29日(土)18:00 新国立劇場バレエ団『ジゼル』ジゼル:米沢 唯/アルブレヒト:渡邊峻郁新国立劇場オペラハウス

↑29日(土)ソワレ、自分にとっての初日がやっと来た。こんなに注視させるダンサーは米沢唯だけ。花占いのモチーフでジゼルにアルブレヒトが言い寄るシーン、ベンチに座る前からなぜかグッときた。羞じらいながらも心ときめく米沢ジゼルは、すでに悲劇の予兆を含んでいた。裏切りを知った後のジゼルは、死の直前に見るという〝走馬灯〟の一瞬を動きと踊りで引き延ばしたかのよう。バッカスの少年にしがみついて放さぬ様は凄まじかった。あとは一気に死へ突進するだけ。

今日の第2幕は気づくとヴィオラを聴いていなかった。ひたすら米沢ジゼルに注視し、そこにヴィオラが聞こえてくる。そんな感じ。最後、アルブレヒトをいたわりながらも以前のようにあえて〝気〟を入れず、というか、この世の人ではないモノとして、スーッと退き、墓の中へ消えていく。グッときた。

今日のバクラン+東フィルは、冒頭から引き締まった演奏。米沢が踊る時、このウクライナ人指揮者はノリが違う。山田悠貴と飯野萌子のペザントpddはよかった。山田は昨日も見たが、きれいでクリアな踊り。村人にしては気品と輝きがありすぎるくらい。王子で見てみたい。今日の客は初日2日目より上質。

渡辺与布のバチルド造形は3人中最も人間的で好かったが、今回の設定変更からは、演出から食み出した結果かもしれない。そもそもクールラント公爵から大富豪の娘に変更したのは何故? アルブレヒトは愛でなく金を理由に婚約した? ジゼルとは遊びでなく真実の愛だった? もしそうなら、アルブレヒトの裏切り(罪)が弱まり、悲劇性も薄れないか。ベルタが葡萄園を営む設定(セットの家は立派)も、ジゼルとアルブレヒトの〝身分格差〟を多少なりとも縮める印象を与えないか等々。2幕のセットを含め少々疑問がある。新制作の演出ノートをリーフレットに記して欲しかった。10/23 ツイート

30日(日)15:00 BCJ #152 定演 A. モーツァルト交響曲第39番 変ホ長調 KV 54/《レクイエム》 KV 626/指揮:鈴木優人/ソプラノ:森 麻季/アルト:藤木大地/テノール:櫻田 亮/バス:ドミニク・ヴェルナー/合唱・管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン @東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル

BCJ 定演のモーツァルト《レクイエム》は力強さと勢いが印象的。破綻を恐れていない感じ。鈴木優人氏が自身の補筆版を初めて振ったとき、その明るさに驚いた。今回はさらに伸びやさが加わった。父の雅明氏がプログラム巻頭言でこの神童と父親との関係を論じていた。その父はいまポーランド。優人氏の奔放さは〝厳格な父〟から解放されたせい?  前半演奏の39番はモーツァルトで一番好きな交響曲。3楽章トリオでクラリネットとホルンがインプロしてた。演奏の喜びはこっちに伝染する。アンコールの《アヴェ・ヴェルム・コルプス》は心に沁みた。新国立劇場バレエ団 『ジゼル』を6回見た後の《レクイエム》は、食後酒として悪くない。ジゼルを亡くしたアルブレヒトの嘆きは、失って初めて分かるかけがえの無さと不可分なのか。‘Parting is all we know of heaven, / And all we need of hell.’ Emily Dickinson(10/30 ツイート)