新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』上田公演 2021【追記】

新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』の上田公演を観た(11月7日(日)14:00/サントミューゼ 大ホール)。簡単な感想メモを記す。この版については初台の本公演メモと共に、後ほどアップしたい(本公演 全4キャストの感想メモ)。

振付:マリウス・プティパ&レフ・イワーノフ+ピーター・ライト/演出:ピーター・ライト/共同演出:ガリーナ・サムソワ/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー/美術・衣裳:フィリップ・プロウズ/照明:ピーター・タイガン/指揮:冨田実里/管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団/[主要キャスト]オデット&オディール:米沢 唯/ジークフリード王子:速水渉悟(怪我のため降板)→福岡雄大/王妃:本島美和/ロットバルト男爵:中家正博/ベンノ:中島瑞生/クルティザンヌ(パ・ド・カトル):池田理沙子、池田紗弥/ハンガリー王女:廣田奈々/ポーランド王女:飯野萌子/イタリア王女:奥田花純

速水渉悟が怪我で降板し、米沢・速水の舞台は実現せず残念だった。結局、初台と同じ米沢・福岡のペアとなったが、二人の2回目(10月30日)が岡田利規の演出オペラ《夕鶴》と重なったため、上田で改めて見られてよかったと思う。

前奏曲の葬列。王妃(本島)の嘆きが初めて見えた。席は18列だがピットの奥行きがあまりない分、ステージが近く感じた【この公演は客を50%の市松模様に制限】。第1幕の王子の福岡雄大は、マリッジブルーからわりあい早く気張らしへ転換? ベンノの中島瑞穂は手足が長く華やか。踊りもよい。ただ、演技は応答の動きが小さく分かりにくい。これからか。第2幕。福岡王子はオデットへの思いをけっこう出していた。二人が見つめ合う頻度も高め。米沢唯のオデットは初台同様しなやかで伸びやか。マイムの美しさと雄弁は特筆もの。ちょっとユーモアも感じる(年長者が年下に諭してるような感じも)。速く強い動きは強度が高い。ジークフリードへの思いは募るが、どこか超然さも残している。完全に人ではないから? 悲劇的結末への予感を表出?

オケは編成を若干縮小か(弦バス3名)。すっきりした響きで初台とはひと味違う。

第3幕ハンガリー王女の廣田奈々はアウラが濃い。ポーランド王女の飯野萌子は踊りが自在でからだ全体の表情が豊か。イタリア王女の奥田花純は相変わらず勘がよく、運動神経のよい動き。チャルダッシュ細田・木下)は相互性の高い踊り(男女が互いを支点に…)。ナポリはタンバリンを男女で交互に。オディール(米沢)登場。ジークフリード(福岡)にエスコートされシモテから退場。それらはすべてオデットとは別人(悪魔)のあり方。スペインの男性の帽子は悪魔? パ・ド・ドゥ。オディールの王子へのもたれ掛かり方! いかにも誘惑。ロットバルトに囁いたあとの動きがとても素早い。飛びつく動き。バランス。すべて悪魔の娘。けっして相手に気を許さない。福岡のヴァリエーションは抑えたロイヤル(王子)の踊り。そこにオディール(オデット)への思いがつい出てしまう。好い。米沢のフェッテは豪快とも違う。その後の動きもすべて、あくまで悪魔の娘として王子を騙すためのもの。ロットバルト中家正博の芝居は徹底している。フェッテの直前で、オディールに出の合図を送っていた(初めて気づいた)。ヴァイオリンソロは音程がややフラット気味。

第4幕。スモークの量が初台より少なめ。というか、奥行きが短いのか。いやコール・ドを1列減らした(30→24)ためらしい。オディールの「身投げします」のマイムが弱々しい。それほど打ちひしがれているのか。ジークフリードとのパ・ド・ドゥ。福岡は初日より感情を表に出そうとしている(出し方がちょっとぎこちないけど)。パ・ド・ドゥののち、オディールが再度マイムし湖に身を投げる。飛び込み方もよい。ロットバルトとジークフリードとの闘い。加勢する白鳥たち。フクロウの頭をもぎ取り、慌てた隙に飛び込むジークフリード(飛び込み方はいまひとつ)。ロットバルトが白鳥たちに追い詰められるシーン。中家は初台のときほど演技する面積が位置的に残ってなかった。ベンノ中島がカミテから登場。王子の行方を白鳥たちに尋ねるが、あとの応答が弱い。湖の向こうに二人が仲良く佇む姿。ベンノがジークフリードの亡骸を抱いて正面から前へ。何度見てもグッとくる。

会場に大勢居た子供たちはどう思ったかな。すっきりしたオケは悪くない。冨田実里は初台よりも自分の棒を振っていた印象。初めからひとりで仕上げていたらさらに違っていただろう。

【追記 サントミューゼは新国立劇場とよく似ている。それもそのはず、どちらも同じ建築家(松本市出身の柳澤孝彦)が手がけたという。大ホールのキャパは1530席(ピット時は1376席)で4階席がないため新国立の1800席よりは少なめだが、インティメットな感触でとても居心地が好かった。舞台の間口もほぼ同じぐらいか(奥行きはさすがに新国立ほどではなさそう)。他に320席の小ホールや大ホールの主舞台と同じ広さの大スタジオ等もあるようだ。また市立美術館が隣接している。山や河など豊かな自然に恵まれているし、また訪れてみたいと思わせる劇場だった。】