6月のフィールドワーク予定 2020(中止の記録)【配信版の追記など】

 緊急事態宣言は5月25日をもって解除された。が、以下の通り、6月に予定していた公演もすべて中止。バレエの再演やオペラの新制作ももちろん残念だが、岡田利規版の夢幻能、鈴木雅明BCJ(コーラス)とN響とのコラボ『ミサ・ソレムニス』はぜひ見た(聴きた)かった。

新国立劇場の2020/2021シーズンセット券はオペラ・バレエのいずれもすべてキャンセルとなった(6月5日発表)。感染予防の措置として座席数を50%以下に削減せざるをえないためらしい。両部門とも新シーズンを楽しみにしていただけに残念だが、状況を見ればやむをない。吉田都新芸術監督のバレエ開幕作品に予定されていたピーター・ライト版『白鳥の湖』の新制作は来秋に延期となり、5月に中止となった『ドン・キホーテ』に変更された。「海外との連携協力はもとより、国内での準備作業もままならず、苦渋の決断とな」った由。バレエの新制作では海外から招いたスタッフからダンサーたちが新しい振付を教わり身体に入れなければならない。オペラの新制作よりは長い時間がかかるのだろう。

4日(木)19:00 『挫波(ザハ)』『敦賀もんじゅ)』作・演出:岡田利規音楽監督・演奏:内橋和久/出演:森山未來片桐はいり栗原類石橋静河、太田信吾/七尾旅人(謡手) @KAAT 第スタジオ →その一部を27日・28日に無料配信へ(下記)。

5日(金)19:00 新国立劇場バレエ『不思議の国のアリス音楽:ジョビー・タルボット/振付:クリストファー・ウィールドン/指揮:ネイサン・ブロック/美術・衣裳:ボブ・クロウリー/照明:ナターシャ・カッツ/照明リプロダクション:サイモン・ベニソン/台本:ニコラス・ライト/映像:ジョン・ドリスコル、ジュンマ・キャリントン/パペット:トビー・オリー/マジック・コンサルタント:ポール・キエーヴ/アリス:米沢唯/ハートのキング:タイ・キング=ウォール管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団新国立劇場オペラハウス

6日(土)13:00 新国立劇場バレエ『不思議の国のアリス』アリス:小野絢子/ハートのキング:福岡雄大新国立劇場オペラハウス

6日(土)18:30 新国立劇場バレエ『不思議の国のアリス』アリス:池田理沙子/ハートのジャック:井澤 駿新国立劇場オペラハウス

14日(日)14:00 新国立劇場バレエ『不思議の国のアリス』アリス:アンナ・ローズ・オサリヴァン/ハートのジャック:渡邊峻郁新国立劇場オペラハウス

18日(木)19:00 #1943 N響 定演 Bプロ ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス ニ長調 作品123》指揮:鈴木雅明/ソプラノ:アン・ヘレン・モーエン/メゾ・ソプラノ:オリヴィア・フェルミューレン/テノールベンヤミン・ブルンス/バリトンクリスティアン・イムラー/合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン管弦楽NHK交響楽団サントリーホール

21日(日)14:00 オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World ワーグナーニュルンベルクのマイスタージンガー》(新制作)指揮:大野和士/演出:イェンス=ダニエル・ヘルツォーク/美術:マティス・ナイトハルト/衣裳:シビル・ゲデケ/照明:ファビオ・アントーチ/振付:ラムセス・ジグル/ハンス・ザックス:トーマス・ヨハネス・マイヤー/ファイト・ポーグナー:ビャーニ・トール・クリスティンソン・クンツ・フォーゲルゲザング:村上公太/コンラート・ナハティガル:与那城 敬/ジクストゥス・ベックメッサーアドリアン・エレート/フリッツ・コートナー: 青山 貴/バルタザール・ツォルン: 菅野敦/ウルリヒ・アイスリンガー:小原啓楼/アウグスティン・モーザー:伊藤達人/ヘルマン・オルテル:大沼 徹/ハンス・シュヴァルツ:長谷川 顯/ハンス・フォルツ: 妻屋秀和/ヴァルター・フォン・シュトルツィング:トミスラフ・ムツェック/ダーヴィット:望月 哲也/エーファ:林 正子/マグダレーネ:山下牧子/夜警:志村文彦/合唱:新国立劇場合唱団、二期会合唱団/管弦楽東京都交響楽団

【21日(土)20:00 調布国際音楽祭2020〈オリジナル楽器で奏でる音楽家100人が参加したオンライン合奏〉ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調作品125 より第4楽章/指揮:鈴木雅明/ソプラノ:アン=ヘレン・モエン/アルト:オリヴィア・フェアミューレン/テノールベンヤミン・ブルンス/バス:クリスティアン・イムラー/合唱&管弦楽バッハ・コレギウム・ジャパン /エグゼクティブ・プロデューサー:鈴木優人】

聴き(観)応えがあった。

【22日(月)14:00 神田日勝 大地への筆触」展 東京ステーションギャラリー

前売り券を買っていたので時間帯は自由だった。馬の絵は「開拓の馬」(1966)を含めどれも素晴らしく、何より表情が可愛い。「死馬」(1965)には思わずグッときた。絶筆の「馬」(1970)は未完で腰から後ろ足は描かれていない。まるで「死馬」がヒョッコリこの世に姿を現したかのようだ。画家はその年に32歳で亡くなっている。

【28日(日)16:00「『未練の幽霊と怪物』の上演の幽霊」作・演出:岡田利規音楽監督・演奏:内橋和久/出演:森山未來片桐はいり栗原類石橋静河、太田信吾/七尾旅人(謡手)/映像:山田晋平、音響:稲住祐平、美術協力:中山英之、演出助手:石内詠子、制作:小沼知子 @YouTube配信/神奈川芸術劇場(KAAT)】

岡田版の夢幻能。前半は新国立競技場のデザイン案を撤回され急死した建築家ザハ・ハディドが、後半は廃炉が決まった敦賀高速増殖炉もんじゅがモチーフ。設定・演出の妙。じつに面白い! 岡田利規はやはり才能がある。机の上が舞台。壁には6月のカレンダー。シモテのガラス窓から時おり車の走りすぎる音。仕事帰りらしい人や、犬を散歩させる人なども通り過ぎる(状況劇場でテントが裂開したとき銭湯帰りのオジサンが見えたのを思い出した)。だが、決して顔は見えない(カメラの)絶妙な位置。窓外の往来は、パソコン画面で観ているこちらと同じ時間がそこにも流れていると感じさせる(あとで日の暮れ具合からイリュージョンだと分かるが)。机の上に和紙(?)が貼られた写真立てのようなものが登場のタイミングでその都度置かれ、そこに出演者の映像が映し出される。歌手と演奏者のそれは少し小さめ。何か可愛い。机の上方に木枠のようなモビールが吊されており、時折、揺れる。幽霊の気配のよう。音楽も歌も素晴らしい。片桐はいりのラップまがいの激した語りと内橋和久のエレキギターとのコラボはインプロのセッションみたいで楽しい。配信版は前ジテがハケるところまで。後ジテを含む全篇をぜひライブの舞台で観たい。