DULL-COLORED POP 福島三部作 第二部『1986年:メビウスの輪』昨年の第一部も少々【+脚注】

福島三部作 第二部『1986年:メビウスの輪』の二日目を観た(8月9日19:00/東京芸術劇場シアターイースト)。

簡単にメモする。が、その前に、昨年7月に観た第一部『1961年:夜に昇る太陽』についても少しだけ。

細部は覚えていないが、こころが強く動いた舞台だった(今回もう一度見たかったが都合で断念)。福島に原発ができた経緯を、双葉町に誘致した1961年を起点に独特のタッチで描いていた。冒頭は主人公の青年が故郷へ帰る汽車の中の場面だったか。そこで青年は『三四郎』ばりに「先生」と出会い、対話する。その後の、子どもの縫いぐるみを使ったドタバタ芝居には少し面食らった。孝と美弥が夜に出会って話す件りは、ペーソスたっぷりで、とても印象的。双葉町に残る娘と、自由を求め故郷を捨てて東京に旅立つ青年。今後の二人はどうなるのか、想像を刺激された(二人の役者は誰?*1 今回は別キャスト?)。声をはり上げた福島弁は笑いと共に田舎(双葉町)の純情を喚起するが、都会から来た東電(先生)がその純情につけ込み、搾取=開発する。その冷徹な「先生」を古屋隆太(青年団)が見事に演じていた。

作・演出:谷 賢一/美術:土岐研一/照明:松本大介/音響:佐藤こうじ/衣裳:友好まり子/舞台監督:竹井祐樹/演出助手:美波利奈/宣伝美術:ウザワリカ/制作助手:柿木初美・德永のぞみ・竹内桃子(大阪公演)/制作:小野塚央

 助成:セゾン文化財団/アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、芸術文化振興基金

主催:合同会社DULL-COLORED POP

 第二部。ハイテンションの発話は、正直、苦手だが、さほど不快でなかったから不思議。ちょっとつかこうへいの舞台を想起した。昨年はなかった連想だ。

穂積 忠(元県議・反原発派のリーダー):岸田研二

穂積美弥(忠の妻):木下祐子

穂積 久(忠の息子):宮地洸成(マチルダアパルトマン/DULL-COLORED POP)

穂積モモ(穂積の飼い犬):百花亜希(DULL-COLORED POP)

丸富貞二(双葉町出身の県議):藤川修二(青☆組)

吉岡 要(自民党所属・町議の秘書):古河耕史

徳田秀一(忠の娘の婚約者・東電社員):椎名一浩

 セットは主人公の家の和室で、テーブルに座布団。後半は町長の執務室で中央奥にデスクが、シモテ手前に応接セットがある。幕切れは再び家の和室。カミテ上方に、常時、無数の電球が吊されたモノが見える。京都の十日ゑびすで売っているらしい「人気大よせ」を連想した(赤い傘の下に紙製の人形が沢山吊されているあの縁起物)。電球はもちろん電力を想起させる。衝立に電球をはめ込んだようなパネルも左右両側に立っている。

主人公は元県会議員で原発反対派のリーダーだった穂積忠(岸田研二)。自民党町議の秘書吉岡(古河耕史)は、そんな忠をあえて双葉町の町長選に立候補するよう説得する。当選した忠は、チェルノブイリ原発の事故が起きても、町長として「日本の原発は安全です」と宣言せざるをえない。その苦渋。こうした忠らの本来性から逸脱=頽落せざるをえないありようを、忠の(途中からは)死んだ愛犬モモ(百花亜希)が、ダス・マン(Das Man)ならぬ動物(非人間)の視点から、コロスとして異化し相対化する(モモの口からハイデガーへの言及もあった!)。面白い。幕切れ近くで、突然、赤く隈取りした忠らがスタンドマイクで「日本の原発は安全です!」と歌い踊る。これまたブレヒトばりの異化効果。ラストの和室の場面で、隈取りはそのままの忠が見せる泣き笑いの表情がとてもよい。ちょっと草薙剛を思い出す。忠の苦渋の表情に作品の肝が見て取れた。町の安全を一途に考え反原発を訴えた忠が、町のためにと町長になり、いつのまにか、当初の思いとは裏腹の自分を見出す悲喜劇。こうした苦境に忠らを追い込んだのは何なのか…。

忠役の岸田は方言ネイティブかと思ったが、静岡出身か。いい味出していた。忠の娘(登場せず)の婚約者で東電の社員である徳田の役は椎名一浩。椎名のつんのめった演技には何度も笑った。モモ(の霊魂)を演じた百花はバレエの嗜みがあるのか、トランジション等でアラベスクして回転したりジャンプしたりと浮遊感を出していた。吉岡(古河)は第一部の先生に相当する要の役。古河を見たのは何年ぶりだろう。『長い墓標の列』(2013)以来か。声と演技のレンジがとても広く、改めていい役者だと思った。

第三部は明日のマチネを見る予定。楽しみだ。

*1:今日(8月15日マチネ)第三部を見てきた。その終演後、ロビーで鼻を赤くした若い女性と目が合い、声を掛けられた。見覚えがある。教え子らしい。10年近く前か。「あたし昨年の第一部に出てたんですよ」。えっ? 役はまさか…「美弥です」 なんと、あれは教え子だったのか! まったく分からなかった。あの場面は今でもよく覚えているが。座って少し話す。授業では『エネミイ』と『ヘッダ・ガーブレル』を見に行ったと。あの年か。顔は数回会ったら忘れない自信があったのに。まあ、何年も経ってるし、舞台で役者は化けるからな。それにしても、ブログに「あの役者は誰?」と書いた翌日、本人に劇場でバッタリ会い、しかもそれが教え子だったとは。