『お勢登場』片桐はいり・黒木華出演

『お勢登場』を観た(2月21日 14:00/シアタートラム)。
作・演出は倉持裕江戸川乱歩(1894-1965)の八つの短編小説を再構成した作品。乱歩作品はテレビ・ドラマ等を見るのみで、原作はまったく読んだことがない。倉持の舞台を見るのは現代能楽集VII『花子について』(2014年2月)以来か。遅ればせながら簡単にメモする。

【出演】黒木 華 片桐はいり 水田航生 川口 覚 粕谷吉洋 千葉雅子 寺十 吾 梶原 善

【美術】 二村周作
【照明】 杉本公亮
【音響】 高塩顕
【衣裳】 太田雅公
【ヘアメイク】 宮内宏明
【演出助手】 相田剛志
【舞台監督】 橋本加奈子
【主催】公益財団法人せたがや文化財団/RKB毎日放送・スリーオクロック(福岡)/梅田芸術劇場(大阪)
【企画制作】世田谷パブリックシアター

上下に舞台。左右に両者を繋ぐ階段。大正や昭和初期を感じさせる黒ずんだ木製のセット。上舞台で汽車内の場面から始まる。男が別の男に押絵を見せるが、そこには椅子に座った正装の男に寄り添う振袖姿の娘が描かれている・・・。下舞台のカミテが旅館の一室に。そこで女(片桐)と顔に火傷の跡が残る女(千葉)の対話からお勢の物語が、中央・シモテで演じられる。お勢が病気の夫を殺すエピソードは平板に演じられた。これは意図的か。その後のカットバックや脇筋から次第に面白くなった。謎解き、笑い・・・。古びた感じのセットと映像(映写)を合わせた舞台。場面転換等でローテクを強調。悪くないが、ルパージュなどを見ると、もっと演劇的に改善できるのではとも思う。部分的には、特に後半は面白いところもあるが、全体としてはいまひとつ物足りない印象。異なる物語を一本に再構成した手腕は大したものだが、構成はこれでよいのか。フレームに問題はないのか。たとえば、冒頭の押絵を見せる/結末の遠眼鏡で覗く一番外側のラインと、旅館での対話のラインとの関係はどうなっているのか。台本を読めば分かるのかも知れないが、舞台を見る限り、両者の位相関係がストンと腑に落ちなかった。岩松了ばりのめくるめくような眩暈が生じてもおかしくないはずだが・・・。
黒木華木馬館で働く娘の役が一番よかった。夢遊病の女(片桐)と絡む場面も悪くない。が、一幕の「お勢登場」ではもっと妖しさが欲しい。片桐はいりは刑事(男)役を含め、いろんな役を巧みにかつ面白がって演じ分ける。その喜びが見る側のからだにも伝わってきた。川口覚はよい役者。さいたまネクスト・シアターの『オイディプス王』に出ていたらしい。あれはオイディプスクレオンのWキャストだったがどっちの役で見たのか。千葉雅子寺十吾梶原善らはさすがの演技。粕谷吉洋は脇で汗を掻いた。水田航生は、客に受けたとき虚構性が壊れぬよう注意が必要。