2014新国立劇場オペラ《ドン・カルロ》

これも年が変わる前にアップする。ドン・カルロ》再演の初日を観た(11月27日 18:30/新国立オペラ劇場)。
プロダクションの初演は2006年9月。

ドン・カルロ》全4幕〈イタリア語上演/字幕付〉
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
原作:フリードリヒ・フォン・シラー
台本:ジョセフ・メリ/カミーユ・デュ・ロクル
イタリア語訳:アキッレ・デ・ラウジェレス/アンジェロ・ザナルディーニ


指揮:ピエトロ・リッツォ
演出・美術:マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
衣裳:ダグマー・ニーファイント=マレッリ
照明:八木麻紀
合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団


キャスト
フィリッポ二世:ラファウ・シヴェク
ドン・カルロセルジオエスコバル
ロドリーゴマルクス・ヴェルバ
エリザベッタ:セレーナ・ファルノッキア
エボリ公女:ソニア・ガナッシ
宗教裁判長:妻屋秀和
修道士:大塚博章
テバルド:山下牧子
レルマ伯爵/王室の布告者:村上敏明
天よりの声:鵜木絵里

[第1幕・第2幕]厚みのある四角形のパネルによる十字を基調としたセット。シンプルだが効果的。冒頭のホルン重奏を聴いてああと思ったが、弦楽器群が入るとよくなった。タイトルロールのセルジオエスコバルはマッチョな身体同様、楽々とふくよかで豊かな声を出す。ロドリーゴ役のマルクス・ヴェルバは、サントリーホールで『フィガロの結婚』のアルマヴィーヴァ伯爵(2008年)、『ドン・ジョヴァンニ』のタイトルロール(2009年)、『コジ・ファン・トゥッテ』のグリエルモ(2010年)を聴いている。今回はヴェルディだが、姿も歌唱もノーブルで強い意志が感じられた。ドン・カルロとの友情のデュエットは二人が必ずしも合っているわけではないのだが、よい。フィリッポ二世のラファウ・シヴェクはたっぷりした声量で、ちょっと抵抗が少ないがOK。一方、女声では、エリザベッタのセレーナ・ファルノッキアは久し振り。さすがに以前の強度は弱まったが、香りのある歌声でさすが。さほど声量を上げずとも貫禄で聴かせる。エボリ公女のソニア・ガナッシはまずまずか。女官が帰される時のエリザベッタのアリアは、スカラ座公演(2009年)でのフリットリを想い出した。この女官役の日本人は演技のみだが悪くない。ブラスはよく鳴っている。指揮もまずまずか。
[第3幕・第4幕]エボリ公女は罪を告白するアリアでは力を発揮した(前半のコロラトゥーラは不安定だったが)。ただ、オケの後奏が続いているのに左側から野蛮な拍手が。残念。エリザベッタのファルノッキアも、前半は、第4幕の長いアリアのためにセーブしていたようだ。高音は少しきついがさすがの歌唱。フィリッポ二世のシヴェクは声はよく出るが、3幕冒頭のアリアは深みがない。初演時のヴィタリ・コワリョフの歌唱は、権力者の人知れぬ内面をのぞくようだった。チェロのソロも初演時と同じく金木博幸氏だが、若干陰影に乏しくなった印象(それでもバレエ『眠り』の別の奏者のソロよりよほどましだが)。ロドリーゴの死はなかなかのもの(が、隣の隣でハンドバッグに手を突っ込んでゴソゴソやり出した。何もここでやらなくても・・・)。今日は客席の質があまりよくなかった。質のよい聴衆とはただ音楽に耳を傾ける人。それだけ。ドン・カルロ役のエスコバルは潜在能力が高くよい歌手だと思うが、もっと舞台にトータルに貢献しなければならない。すべてを出し切っていない印象。ピエトロ・リッツォは便利屋のような指揮。もっとヴェルディ節を聴かせて欲しい。イタリア人の〝臭み〟が欲しい。